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OOO ~Original Objective Online~ 称号に振りまわされる者  作者: 1048
第1部 第1章
7/65

第1回公式イベント 3

アキラのいない月曜日から金曜日までの5日間で、今までのダイス運が嘘のように5~8の数字も出た。ただ、何回振っても9と10は出なかったのだが、課題の方にも恵まれて、採集や採掘系が多く出たので助かったな。


討伐系も有るには有ったのだが、数の討伐だった為に時間をかけてヒット&アウェイでクリアしていった。ピンチらしいピンチは無く85マスまでたどり着いている。


まぁ、5日で85マスだから微妙と言えば微妙だがな。



『明日は午後からは久しぶりにパーティープレイか』

ホームでいつも通り紅茶を飲みながら、ようやく2人でイベントを進めて行けると思い、思わず独り言が漏れた。


『このところ1人だったもんな』

バッと振り返るとそこにはアクアがいた。


『急に入って来るな、マジで……』

マジでビビるから止めて欲しいよな。


『すまん、悪かったな。ホームにいると思って勝手にお邪魔した』

ホームのリビング部分だけは、アキラと僕の両方共にフレンド登録されているプレイヤーは自由に入れるように設定している。当然、工房や倉庫等は入れない様にしてあるけどな。


『シュンに相談があって来たんだ。俺のパーティーは、今日なんとか2回目をクリア出来たんだが、明日、明後日は集まれなくてイベント攻略は終了になった。良かったら明日、明後日パーティーに入れてくれないか?』

登録したメンバー以外とパーティー組んで攻略しても課題をクリア出来るのか?


『僕は課題がクリア出来るなら、アクアがパーティーに入るのはかまわないぞ。今からそれを試して良いか?』

アクアに疑問点を説明してテストしてみる事に。タブレットを起動してダイスを振る。4が出て………


・リザード系50体討伐


テストしてみるには無難な課題が出た。


『これなら試しやすいな。取り敢えず50体狩ってみるか?駄目ならパーティーから外して協力プレイかな。アクアは協力プレイでも良いのか?』

協力プレイが出来るのは、ジュネ達のお陰で分かっている。


『イベント中は、Lvが上がりやすいからな、なるべくソロは避けたい。だから協力プレイでも構わないぞ』

Lv上げがメインなら問題ないかな。



湖の北側でリザード系を狩り始める。リザードやリザードマンが出て来て欲しいのだが、ホワイトタイガの方が多くでるな。これが良く聞く物欲センサーってのかな?


『今日タイガ多くないか?』

前衛で壁役をしながら器用に狩り続けるアクアが聞いてくる。やっぱり余裕が有るよな。


『だよな。ちょっと多いかも。夜明けだからか?』

さっき午後8時をすぎて太陽が昇り始めている。今日は後衛から銃と魔法で魔物を狩る。最近は前衛もしていたので、後衛オンリーは久しぶりだよな。


『それは、どうでも良いんだけどな』

話しながらでも警戒や牽制を怠ったりはしないので、優秀な前衛だと思う。


『アクア達はギルド作らないのか?』

便利だと思うし、βからの仲間や知り合いも多いはずだよな?


『それは、イベント終わってからだな。金は、この前貰った分が殆ど残ってるしな。これで終わりだ〈グランブレイク〉』

アクアの放った範囲アーツで残っていた全ての魔物が死滅した。


『どうだ?かなり狩ったと思うが……』


『ホワイトタイガの方が多かったからな。ドロップの感じからだと残り20くらいじゃないか?』

ホワイトタイガのドロップは、かなりの量を回収出来ている。イベントが終わったら牙や爪を使って矢でも作るか。どうやら頭の中は既にイベント後の生産活動でいっぱいの様だな。かなり生産系に染まってるよな。


『あと20くらいか。じゃあ、また《探索》よろしく』

既に《探索》は始めている。って言うか街の外なら常に使っている。《銃士》を不意討ちに弱いんだぞ。まぁ、《銃士》だけでなく後衛系のプレイヤー全てだがな。


『視認でリザードマン8、左側から来てる』

アクアも確認できたようだ。既に戦闘準備が終わっているみたいだな。初撃で《騎士剣》のアーツ〈スラッシュ〉を繰り出し一網打尽にする。


〈スラッシュ〉は威力が低いがアーツの出が早いのが魅力だな。それに、剣系のアーツでは珍しく範囲攻撃だ。アーツに巻き込まれた魔物の殆どが、銃でトドメを刺すだけの状態になっているので美味しく頂く。アクア、ゴチです。


増援等も退け25~26体くらい狩るとタブレットにダイスが表示されていた。


『パーティー組んでいても課題に問題無さそうだな。パーティー組むのはOKだが、今目指している高難度の報酬はアキラの欲しいアイテムだから分けれないぞ。それでも良いのか?イベントで集まったアイテムは山分けするが………』


『OKだ。当然、報酬の方は貰うつもりはない。アイテムの分配だけで十分だ』

交渉成立だな。タブレットからダイスを振る。


・真っ(96)な魔物を狩る


7が出て96マス目に止まった結果がこれだ。ダジャレ系、いくらなんでもアバウト過ぎるだろう……基準が分からない。


『真っ黒い魔物か、亀やウルフも黒いが真っ黒ってほどじゃないよな……』

アクアにも心当たりが内容だ。当然、僕には無い。


『明日までに調べてとくわ。今日は、そろそろ良い時間だからな、明日は何時集合だ?』

どうやら狩りに3時間以上かけていたみたいだな。


『明日は、昼過ぎにアキラとホームで待ち合わせしてる。後で念の為にアキラにメールでアクアの事を確認だけしておく。多分、大丈夫だと思うけど。返事来たら連絡する』

それだけ話して2人揃ってログアウトする。





携帯が鳴る………晶からだ。なんてタイミングが良いんだ。


「もしもし、駿くん?寝てたかな」


「大丈夫。今ログアウトしてきたところ」


「そうなんだ、良かった。明日の部活が急遽休みになったから、朝からでもログイン出来るよって伝えようと思って電話しちゃった」

今日クリアした課題や進んだ状況を伝えて、蒼真の事を話す。


「………別に、それでも良いよ。3人の方が課題クリアしやすいしね」

うん?晶ちょっと機嫌が悪いのか?


「何かあったのか?それとも疲れてるのか?大丈夫か?」

ちょっと心配だな。無理してないと良いんだがな。


「大丈夫。何でもないよ。明日は朝からでも良い?」


「晶が大丈夫なら、僕は大丈夫だよ」


「じゃあ9時にホームでどう?」

了解と答えて電話を終わる。切れる直前に晶の言った「馬鹿、鈍感」は僕の耳には聞こえる事は無かった。


僕も蒼真にメールして風呂に入ってから寝るか。





朝起きると蒼真から返信が来ていた。内容は………


真っ黒な魔物の正体が分かったぞ。夜限定の魔物で【ヴェール】の近くに出てくる黒烏ってカラスだ。


夜限定のカラスか……見つかるのか?確かに真っ黒な魔物にピッタリだよな。



掃除や洗濯を済ませてログインする。待ち合わせまで30分。優雅に紅茶を飲んでいる時だった。


〔OOO公式運営からの連絡です。イベントまで約36時間を迎えました。明日の午後6時で第1回公式イベントは終了となります。今まで高難度が上限でしたが、100マス目に最高難度の分岐を設置致しました。難度も報酬の方も格段にランクが上がっております。短い時間ですが、是非お楽しみ下さい。詳細の方は広場やゲートにも掲示しておきますので、ご確認下さい。以上、OOO公式運営からの連絡です。繰り返します………〕

イベントが進展………いや、発展した。


運が良い事に、今は96マスにいるがどうしようか?まぁ、2人が来てから相談だな。




9時少し前に2人がログインしてくる。公式からの通達の事を話して一緒に広場に向かう事にした。


『マジだったか……それで、どうするんだ?』

当たり前だ、嘘をつく必要性が無い。


………って言うか、僕は、そんな事よりも、ランキングが載っている掲示板を見て1番多いパーティーは高難度を既に5回クリアしている事に驚いたぞ。パーティーリーダーはガイアと言うらしい。多分トッププレイヤー達のパーティーだろうな。名前からして強そうだ。


『う~ん……私としては3人で最高難度のクリアは難しいと思うんだ』

それは僕も同意見だ。って言うか、高難度の残り54マスをクリア出来るのかも怪しいよな。


『僕も同じだ。分岐前にいてチャンスでは有るが、予定通り高難度のクリアを目指した方が良いと思う』


『OK。了解だ。もともと臨時参加だからな。反対する気が無いぞ』

僕達は予定通り高難度をクリアを目指して、黒烏を狩りに【ヴェール】にゲートで飛ぶ。



『俺は全く見えないのだが、シュン達は見えるのか?』


『いや、僕も見えないけど………魔物の気配は感じる』


『私も同じかな。右側から鳥系が3か4?やっぱり夜は精度が落ちるね』

同感だ。暗視系のスキルとか有ったかな?今なら、ちょっと欲しいからな。



『じゃあ、いつも通り俺が前衛でアキラとシュンが中衛兼遊撃で良いか?』


『私達は大丈夫。《扇》スキル取得してるから、期待しても良いよ。シュン先制攻撃はヨロシク』

個人的には、遊撃こそが《扇》の真価が発揮されるポジションだと思っている。


『それは、お任せ下さい。〈必射〉』

魔物の注意を引き付けると同時に《付与銃》で《付与魔法》を前衛のアクアまで飛ばす。


『攻撃力と防御力を強化した。牽制頼む』

援護攻撃を開始する。合間にアキラも強化する。


『残念。黒烏ではないみたい。〈蒼水扇〉〈紫雷扇〉』

コンボだ。水で濡らして雷で感電させる。当然〈起動破棄〉は使えるようになっている。


『かなりダメージ高いな。近接攻撃並じゃないか?』


『僕らは、いつも1人か2人で戦ってるからな。これくらいは出来るぞ』

これくらいダメージ出ないと狩りが出来ないからな。


『悪いシュン、1体そっちに行ったぞ』

シェルバードの突進だ。僕は、左手で軽く捌き射撃で撃破する。

《拳》スキルはアーツを覚えない代わりにMPを消費して腕を強化出来る。簡単に言うなら盾要らずだ。勿論、攻撃も出来る。


殴る、殴る、射撃は今の僕に出来るコンボだ。《拳》と《短銃》での擬似二刀流ってところか?


『大丈夫だ。残りも片付けるぞ』

アクアが削って僕とアキラが止めを刺す。このローテーションで狩り続ける。かなり効率が良いよな。


『来た。アレじゃないかな?黒烏って』

アキラの視線の先に真っ黒な鳥が飛んでいる。きっとそうだろうな。僕は、すかさず〈必射〉で確実なダメージを与えて、注意を引き付け逃がさない様にする。やっと遭えたのだ逃がす訳にはいかないからな。


『頭は抑えた。来るぞ』

強さが未知数、油断は出来ない。黒烏は高い位置を取り羽根を無数(ランダム)に飛ばしてくる。


『俺では攻撃が届かない。引き付けるから攻撃は頼む』

アキラは〈翠風扇〉。僕は〈ウインドカッター〉と風属性で羽根の軌道を変えながらも黒烏を削っていく。


『アクア!!』

黒烏はターゲットをアクアに絞り急降下してきたが………


『危な、悪い、追い討ちは出来なかった』

アクアは冷静に盾で捌く。


再び上昇して、急降下してくる。2回目は上手く捌いて追い討ちをきっちり入れ左の羽根を削ぎ落とした。


勝敗がついた瞬間だった。あとは3人でボコる、あまりにも無惨だった………


『やっぱり黒烏だったね。羽根と嘴がドロップで有るよ』

アキラは直ぐにドロップから名前の確認をしたようだ。


続けてダイスを振っていく。再開後いきなりアキラは9を出す。流石だよな。僕は5日間で一回も出なかったのにな。


・薬草、毒草を各3種採集しろ


『これは、別々でだけど、昨日と一昨日でクリアした課題だ。ここから直ぐの森の入口付近で採集出来るぞ』

僕が案内して素早く集める。薬草、解毒草、解痺草の薬草3種。毒草、麻痺(しびれ)草。ここまでは誰にでも、すぐに見見付かる。


最後の毒草1つは発見が難しかったよな。以前に見つけて無かったら、悩んだんだろうな。1回見付けると2回目からは超簡単なのだけどな。そこら中に有るからな………毒キノコ。


『はっ!?毒キノコ!?毒草に入るのか?』


『あぁ、何故か入る』

タブレットにダイスが表示されているのを見せる。つまりは、課題のクリアだな。


『多分、このイベントは色々な抜け道が用意されているぞ』

気付くか、気付かないかは別だがなと付け加えておく。


・111ゾロ目のボーナス もう一度ダイスを振る


『このパターンは2回目?かな。運良いよね』

アキラは6を出してマスの目を確認しながら話す。


『こんなマスも有るのか?出た事ないぞ』

アクア達はこう言うマスは出なかったみたいだな。


『戻る系や進む系は知ってるか?』


『あぁ。それは知ってるな』

これは知っていたらしい。戻る系は、よく出たたらしい。アキラが続けてダイスを振る。


・料理アイテム20種作成


8を出した結果だが……


『これは《料理》スキル無かったら詰むんじゃないか?まぁ、新しく取得したら良いだけか、流石は高難度ってとこか』


『アクアの意見には同感かな。丁度リアルでもお昼か、取り敢えず休憩するか?午後からは、まずアキラと僕が料理でアクアが料理の材料集めかな』


『そうしようか。じゃあ、また午後からね』

3人一緒にログアウトした。






昼御飯は、朝作り置きしていたサンドイッチを食べる。今日は長時間ログインする予定にしている為、簡単に作れるサンドイッチにした。3人分を纏めて作り易いってのもあるが、料理アイテムでサンドイッチ作ったら種類稼げるのかな?後で、試してみようかな?


「駿、腹減ったぞ」

いつも通り蒼真がやってくる。


「勝手に食べろ。冷蔵庫にサンドイッチが入ってる。コーヒーで良いか?」

確認するまでもなくコーヒーを入れる。


「サンキュ、午後からも頼むわ」

自分の分は紅茶を入れて飲む。純は既に食べたようだな。食べ終わった食器が綺麗に洗ってあった。





午後はホームに集合だ。僕は少し早くログインして料理アイテムを作っていた。ナポリタンやペペロンチーノ、唐揚げやフライドポテト等、簡単に作れて美味しいモノをどんどん作っていく。OOOの世界では料理アイテムは腐らないし冷めない。いつでも温かくて美味しく頂ける。どんなに食べても太らないのも魅力だろう。


思った通りサンドイッチは、中身によって違うアイテムに分類された。当然効果も微妙に変わっている。


今《料理》をしているが、感じ的にはアイテムの研究に近いと思っている。今回のイベントは次回以降のバージョンアップの伏線ではないのかな?アイテムや生産系で制限や改定があるかもしれないよな。


『お待たせって、かなり作ってるね。あと何種類くらい?』


『《料理》は好きだからな。あとは7種類くらいかな……アキラは何作る?僕は、おにぎり作ろうかと思う』


『じゃあ、私はサラダや野菜の天ぷら作ろうかな。多目に作って、付け合わせに使えるように』

天ぷらはうどんやそばに凄く合う。考えただけで美味そうだな。


『アキラ、すごく期待してるから』

思わず本音が出てしまう。野菜の天ぷら最高。特に椎茸と獅子唐。


料理に集中した結果。種類で言うなら30種類以上、量に至っては測定不能なくらい出来ていた。


『ちょっとやり過ぎたかな?明日イベント終わったら皆で打ち上げでもするか。アキラもアクアも知り合いにメールしておいて』

イベント中はバラバラだったが、仲間内で打ち上げくらいはしたいからな。


『了解。メールしとくね。じゃあ、ダイス振るよ』

出目は10………本当に、そんな簡単に出さないで下さい。


・ビー系からハチミツを15本ドロップしろ


ビー系?ハチミツ?MOBには昆虫類もいるのか?ってか単位が本ってどういうこと?


『これなら任せろ』

アクアは内容を理解したようだ。


『どういう事なんだ?』


『【ヴェール】の側の滝は分かるよな?それより奥に行った場所に巨大な蜂の巣が在って、そこから蜂MOBが出る。それのドロップ素材の中にハチミツもある。何故か瓶に入った状態でドロップされるんだ。クィーンにさえ気をつければ問題無い課題だ』

疑問点を全てアクアが説明してくれた。新な疑問が出てきたのだが……


『クィーンって?』

アキラも気になったようだ。


『クィーンは蜂の巣の蜂を全て倒したら出てくるボスMOBだ、全部倒さないと出てこないから大丈夫だ。毒以外あまり強く無いし、すぐに終わるだろう。ただ毒だけは本当に強力だぞ』

それなら今回は問題無さそうだな。かなり毒を強調しているが以前に何かあったのか?まぁ、掘り返してまで聞きはしないけど。





『いつ見ても滝は素敵だよね』

【ヴェール】に移動してさらに滝より更に奥を目指す。滝の側を通るとアキラはいつも見とれているよな。僕もそうなんだけどな。


『蜂の巣を視認出来たが………かなり蜂MOBいないか?』


『いつもこんな感じだ。準備は良い?いくぞ』

アクアは盾を装備せずに二刀流で蜂MOBを切り払って行く。一撃で一殺。なるほど、HPは高くないようだな。僕も射撃していく一撃で一殺……はできないので二撃、三撃していく。攻撃力の差を感じるよな。横では、アキラもナイフで一撃で一殺をしている。どうやら僕だけが一撃一殺出来ないようだ。


『そろそろ課題達成してないか?』

アクアの声で、ドロップを確認すると十分達成している。


『OK集まった。逃げよう』

さっさと【ヴェール】まで待避する。ドロップはハチミツ以外にも羽根や針があった。針には毒性が有ったので弾や矢の改良に使えそうだ、今度試さなければな。


『アキラ、ダイス頼む』

あと21マス今日中にあと1、2回は課題をクリアしたい。4が出た。


・湖を一週する


簡単だが時間のかかりそうな課題が出た。


じっくり3時間も掛かった。疲れはしないのだが、無くても良いような課題だった。湖の南東に祠と鳥居が有ったがイベントとは関係無いようだった。


戦闘目的では無かったので倒した魔物の数は知れているが、種類は9種類と豊富だった。中にはこんなMOBいたのかって……驚かされた魔物もいた。時間がかかったので残りは最終日にまわす。例の如くダイスだけは振る。アキラは5を出してマスの確認をしたようだ。


『ごめんね………今、出すのは少し厳しい感じがするの出したみたい……』


・最大MP半減


『残り少ないし、何とかなるよ。大丈夫』

何とか乗り切らなければ。ここまで頑張ってくれたアキラに申し訳ない。


『そう言えばアキラの欲しい報酬って何?』

話題を変えよう。


『まだ、内緒かな』

楽しみにしてて、と付け加えている。まぁ、明日には分かるから良いんだが……アキラは続けてダイスを振り7を出す。


『…………』


『…………』


『…………マジか!?……』

3人同時に固まった。理解に時間がかかる。


………OOO、この世界に神はいない事は確定した。


・レクトパス討伐


非情、非情、非情にも、こんなマスが用意されているとはな、はっきり言って心が折れました。根元からポッキリと容赦なく………


『取り敢えず、今日は終わろうか、明日は早めにお昼を食べて12時くらいにホームに集まろうか、それでは各自解散!!』

今日はもうプレイを続ける気力がない。出たものは仕方ないからな、トラウマ称号の成長チャンスだと割りきるか。




翌日は、待ち合わせの12時より早くログインしている。レクトパス討伐の為に、昨日回収した蜂の針を使って弾や矢の改良をしたかったからだ。予想通り、今までLvより高い毒が生成出来る。


『これを使えば………


【銃弾・毒Lv2】攻撃力+10〈特殊効果:毒Lv2〉


【矢・毒Lv2】攻撃力+15〈特殊効果:毒Lv2〉


だよね』

これには、予想通りの結果が得られて満足している。これを量産して………よし、各20個用意出来た。


相手がレクトパスだけに心持たない数ではあるが、無いよりは良いだろう。前よりLvもスキルLvも上がっているが、パーティー人数も少ないし、トラウマ的な恐怖も有るので不安が尽きない。



『おはよ~』

紅茶を飲んでリラックスしているとアキラがログインしてきた。今のうちに渡しておこう。


『アキラ、これ昨日の蜂MOBからドロップした蜂を使って作ったから。使ってくれ』

矢を渡す。


『もう作ったんだ。ありがとう。あっ!!毒のLv上がってるね』

矢の性能にもう気付いたようだ。


『そんなところだ。間に合わせになってしまったが、無いよりは良いだろう?』

アキラは装備を確認しながら頷いている。


『う~っす』

アクアも来たようだ。


『じゃあ、行くか』

レクトパス討伐&リベンジへ出発だ。目指せ完全勝利。





レクトパスの出現条件は解明されている。単純に湖の波打ち際で暴れる。シンプルなだけに同じような不意討ちを喰らったプレイヤーも何人かいる。当然、レクトパスがいる湖を泳ぐプレイヤーはいない。


『アクア前衛は頼んだ、アキラは〈紫雷扇〉で遠距離から攻撃して、僕はアキラ守りながら遊撃する』

アクアが波打ち際でバシャバシャと音をたてる………湖の中央付近から巨大な影が向かってくる。


『来たぞ、集中!!』

アクアの声で気を引き締めなおす。〈攻撃力上昇〉〈防御力上昇〉をアクアに、〈攻撃力上昇〉〈回避上昇〉をアキラに、〈魔法攻撃力減少〉〈攻撃力減少〉〈速度減少〉をレクトパスに………《付与銃》でMPがほぼ尽きる。


『MPは、ほぼ尽きた。一気にいこう』

最大MP半減が思いのほか効いている。銃でレクトパスの脚を捌いていく。近づきすぎた脚は〈零距離射撃〉で吹き飛ばす。何気にアキラが後方で使う〈紫雷扇〉の効果が凄い。レクトパスを感電させている。稀にだが動きまで止めている。


『〈ブレイズエッジ〉……この分なら楽勝じゃないか』

レクトパスの脚も半減して、アクアの最大アーツ〈ブレイズエッジ〉も決まり、油断しかけた時だった。


……脚が復元、更に4本増えた。計12本。


『はい?』

言いたい事は分かる……それは、本当に酷くないですか。捌いて捌いて攻撃を避ける。


『僕が壁役を代わる。2人共その間に態勢を立て直して』

前に飛び出し《短銃》と《拳》の擬似二刀流で攻撃を捌いていく。1撃たりとも貰うわけにはいかない。1撃が致命傷になりかねない……〈回避上昇〉最後のMPを使い切った。後は、ひたすら回避だな。


銃で捌く間に〈零距離射撃〉で3本の脚を吹き飛ばす。僕は立ち止まれない。リロードする暇も無い。銃の使い捨てだ。あと2丁、残っているのは攻撃力の劣る【ハンドガン】しか無い。ただ【ハンドガン】には、作ったばかりの【銃弾・毒Lv2】のマガジンが装填されているがな。



《拳》で捌き1歩1歩近づいていく。後ろの2人に回復する時間を作らなければ………レクトパスの関心を惹き付け続ける。頭部に攻撃して毒のスリップダメージも狙う。若干、本当に若干だが動きも鈍くなったような気もする。レクトパスが体勢を変えて残り9本の脚の同時攻撃に出てくる。


『くっ!!』

しまった。近付き過ぎたぞ。捌くのも、回避するのも限界だな。


レクトパスはスミを吐く、視界を奪われ、その瞬間に足元を掬われた………9本の脚が僕を目掛けてくる。


『うっ………』

死に戻りを覚悟し………


『〈シールドブロー〉』

たと同時に、目の前に盾で脚を吹き飛ばすアクアが見えた。


『〈紫雷扇〉シュン大丈夫?』

アキラも態勢を立て直せたようだ。また〈紫雷扇〉を連続で放っている。


『2人共、助かったありがとう』

僕も2人の援護に入る。MPが尽きているためアーツは〈零距離射撃〉以外は使えないが、そんな事は関係ない。


ダメージは少ないが、援護は出来る。アクアは二刀流に変えて脚を斬り裂いていく。どんどん脚の数が減っていく………どうやら復元した脚は耐久性が低い様だ。


『これがラスト〈スラッシュ〉』

アクアのアーツでレクトパスの脚は無くなった。それにより攻撃方法が激変する。


スミを吐いて視界を潰した後に岩を吐いてくる。急に雑魚臭がしだしたな………もう、レクトパスに勝機は無いだろうな。


『〈紫雷扇〉』


『〈ブレイズエッジ〉』


『〈零距離射撃〉』

3人で同時にアーツを撃ち込む。


レクトパスは2度と動く事は無かった。


『おっ!!これでリベンジ達成か?シュン、どんな気分だ?』

僕の顔を見て、既に分かっているだろう。


『そっくり返そう、アクアはどんな気分だ?』


『最高だ』

良い笑顔だな。


『私も最高かも』

アキラにも笑顔が溢れている


『だよな。ほら、サンドイッチと紅茶、MPだけは回復させとこうぜ』

3人で紅茶とサンドイッチで、ささやかな打ち上げだ。称号もまともに成長したし。名前は変だが気分は良いな。



称号成長

〈トラウマを乗り越えし者リターンズ〉

2度目のトラウマを乗り越えた者への称号/成長称号






『多分、最後になるだろうな。アキラさっさとダイス振っちまえ。シュン、これでアキラの欲しい報酬が分かるな』

十分にMPを回復してアクアがせかす。


『急かさないで。じゃあ、振るよ』

5か、最後はピッタリとゴールに止まる。


『広場で申請して終わりだな。このイベント結構楽しめたよな』


『うん。すごろくなんて小さい時以来だから、結構熱くなったかも』


『僕も楽しかった、2人共ありがとう』

3人で広場に向かう為、【ソルジェンテ】のゲートを目指す。その時だった。




〔緊急連絡、緊急連絡。ただ今、最高難度のゴールマスにガイア様のパーティーが到着致しました〕

早いな流石ランキングトップのパーティーだな。


〔つきましては、最終イベント【レイドバトル・ツインテールドラゴンの討伐】が10分後に発動致します〕


『はっ!?』


〔場所は【ソルジェンテ】南近辺。街を目掛けて進行してきます。イベント終了まで【ソルジェンテ】のゲートは封印させて頂きます。ツインテールドラゴンを討伐しますとイベントは強制終了になります。報酬の申請がまだのパーティー様はお早めに申請下さい。皆様のご参加を心よりお待ちしております。以上OOO運営からの緊急連絡でした〕


『ぃ~~~~~!?』

言葉にならないし、洒落にもならないな。


『シュン達はどうする?俺は参加する』

アクアはいち早く参加を決めたようだ。


『僕も、街は守りたいかな。アキラ、【シュバルツランド】まで歩きになって悪いんだけど、報酬の申請をお願いして良いかな?欲しい物が有るんだよね?』


『うん………分かった。出来るだけ早く戻ってくるから、2人共無理はしないでね』

アキラに〈速度上昇〉を掛けると同時にアキラは走り出した。



『じゃあ、いくかアクア』

今回のイベントの最後を………街を守る為に。






装備

武器

【デルタシーク】攻撃力30〈特殊効果:なし〉×2丁

【銃弾Lv2】攻撃力+10〈特殊効果:なし〉

【ハンドガン】攻撃力15〈特殊効果:なし〉×2丁

【銃弾・毒Lv2】攻撃力+10〈特殊効果:毒Lv2〉

防具

【ゴーグル】防御力3〈特殊効果:命中補正・微〉

【レザーブレスト】防御力15〈特殊効果:なし〉

【冒険者の服】防御力10〈特殊効果:なし〉

【メタルバングル】攻撃力+5/防御力+15〈特殊効果:なし〉〈製作ボーナス:軽量化〉

【レザーブーツ】防御力5〈特殊効果:なし〉

【ノワールローブ】防御力15/魔法防御力10〈特殊効果:回避上昇・中〉〈製作ボーナス:速度上昇・中/重量軽減〉

アクセサリー

【ウルフダブルホルスター】防御力5〈特殊効果:速度上昇・微〉〈製作ボーナス:リロード短縮・小〉

【左狼脚ホルスター】防御力2〈特殊効果:回避上昇・微〉〈製作ボーナス:リロード短縮・小〉

【右狼脚ホルスター】防御力2〈特殊効果:回避上昇・微〉〈製作ボーナス:リロード短縮・小〉



《銃士》Lv55

《短銃》Lv60※上限《拳》Lv26《速度強化》Lv42《回避強化》Lv39《風魔法》Lv40《魔力回復補助》Lv43《付与魔法》Lv42《付与銃》Lv15《錬金》Lv14《探索》Lv50※上限


サブ

《調合》Lv14《鍛冶》Lv17《家事》Lv32《革職人》Lv34《木工》Lv12《料理》Lv15《鞄職人》Lv40《細工》Lv10


SP 42


称号

〈もたざる者〉〈トラウマを乗り越えし者リターンズ〉〈略奪愛?〉〈大商人〉〈大富豪〉〈自然の摂理に逆らう者〉

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