サラベール山脈 頂上2
『おい!!シュン、これでこの辺一帯の魔物は大体狩れたんじゃないか?』
『そうだな。また少し先に進むか』
僕達は、昨日決めた予定通りにサラベール山脈の頂上、もしくは現時点で登れる最高到達点を目指している。既に、僕が最初に降り立った湖よりも高い位置まで来ているが、出現する魔物の強さや数に大きな変化は無い。もう他には出て来ないのか?それとも………まぁ、どのみちまだまだ先は長そうだけどな。
それよりも、2人だけで登っていて、僕が銃を全く使ってない状態になっているのにも関わらず、【noir】のメンバーでパーティーを組んで下った時よりも時間が掛かっていないのは、アクアのお陰なんだろうな。流石、種族Lvがカンストしているだけは有るよな。
『ところで、さっきから気になっているんだが、アクアが今使っている変わった武器は誰かの製作品か?色々と変形と言うか、バリエーションが有るみたいだけど………』
『あぁ、これか?これは【AFI】と言って、フレイに依頼して造って貰ったばかりの三長剣一対の大剣だ。素材もダマスカスを使ってるんだぞ』
『ダマスカス?三長剣一対の大剣?』
さっきまでの戦闘を見ているから、アクアが何を言いたいかはだいたい分かるが、フレイはいつの間にそんな凶器を生み出してたんだ?
素材となっているダマスカスは【ペンタグラス】周辺で手に入れた新素材だったはずだぞ。って言うか、既に武器として実用化するまでに至ってたんだな。手に入れた頃は、ダマスカス原石をダマスカス塊にする方法にも悩まされていたはずなのに、本当に恐れ入ります。
それに、その形状と言うか形態バリエーションも今までの戦闘で見ただけでも3パターンが存在している、その3パターンを見ただけで他にも数パターンが存在するのが分かるからな。
『そうだ。【AFI】正式名称は、Air・Flame・Ice。全財産+ギルドの仲間に借金して買った一級品だぞ。ちょっと説明してやるから、借金の件はアキラには内緒な。これが、右刀身の火属性【フレイムソード】で、こっちが左刀身の氷属性【アイスソード】、そして最後の刀身軸として中心に有る風属性【エアブレイド】の3種類の属性を持つ長剣にも分離出来る優れものだ』
アクアは、説明しながら数パターンの形態を見せてくれる。それにしても、いくら一級品の武器を買う為とは言え、懲りずにまた借金したんだな。嬉しくて、うっかり口を滑らせたんだろうけど………しっかりと報告させて貰うよ。付き合いの長い幼なじみの責任としてな。
〔『主よ、既に雪に連絡しておいたのじゃ。遅かれ早かれ、虎猫の姉さんに伝わるはずなのじゃ』〕
〔『サンキュ、助かった』〕
まぁ、白も思うところが有ったんだろうな。ファミリアの主として、もっとしっかりして欲しいだけなんだろうけどな。
【AFl】攻撃力400〈特殊効果:分離/氷属性/火属性/風属性/合計攻撃力+15%〉
【フレイムソード】攻撃力200〈特殊効果:合体/火属性〉
【アイスソード】攻撃力200〈特殊効果:合体/氷属性〉
【エアブレイド】攻撃力200〈特殊効果:合体/風属性〉
『こっちの2本【フレイムソード】と【アイスソード】だが、形状の見た目は刀に近いけど武器の分類としては長剣なんだぞ。そして、この3本が合体した状態が【AFl】と言う3属性を兼ね備えた大剣なんだ。合体した状態でも属性は上位属性にはならないんだが、それは今後の改良点らしいな。それと、まだ完成したばかりで分離と合体に慣れてないが、他にも各々2本が合体したバージョンも有るからな。それは、おいおい見せてやるよ』
今、アクアは完成したばかりって言ったよな。おいおい、分離と合体をあれだけ上手く使いこなしていて、まだ慣らしの段階だったのか、そのゲームセンス、戦闘センスには軽く呆れるんだがな。
それに、合体した状態で現れる攻撃力+15%の特殊効果って破格過ぎではないか?この性能はちょっとした兵器だよな。
〔『主よ、間違っておるのじゃ。合計攻撃力+15%なのじゃ。それに、能力の方はシヴァ様からしてみれば比べるまでもない事なのじゃ』〕
〔『それは、シヴァがファミリア三大王の一角だからだろう。これは、プレイヤーが製作した………かなり特殊だと思うけど、あくまでも僕達が製作出来る範囲の武器だ。それが、こんな性能を持っているとか、性能の上限が計り知れないぞ。まぁ、それは良いんだが、合計攻撃力+15%と攻撃力+15%って何か違うのか?』〕
〔『勿論なのじゃ。合計攻撃力とは、武器の攻撃力と自分自身の攻撃力を足した物なのじゃ』〕
なるほど、そんな違いが有るんだな。うん!?
〔『じゃあ、普通の攻撃力+15%以上の効果って事だよな』〕
〔『そうなのじゃ。自身のステータスにも効果が有る恐ろしい特殊効果なのじゃ』〕
まぁ、恐ろしいって言うのは、この場合アクアの武器にではなく、この特殊効果を付ける事の出来たフレイについてなんだけどな。
まぁ、そんな事よりも………
『ちょっと待てアクア、性能面は今の説明とステータスを見て大体把握出来たんだが、さっきその大剣を左手で片手持ちしてなかったか?僕の記憶だと大剣は両手持ち専用の武器のはずなんだが………』
キャラメイク時、スキルの選択をする上で武器の項目だけは、じっくりと読み込んでいる。両手が塞がれる辺りを敬遠して、最初から大剣や槍、鎌の類いは除外したからな。
それに、僕の見間違いでなければ、さっきの戦闘中、分離させずに合体状態の【AFl】を使っている時の空いている右手には【聖犬クラウ・ソラス】(こちらも大剣)が握られていた。ただ単に力任せに片手持ちをしただけでなく、《二刀流》までも難なくこなすとか、普通に可能なのか?
まぁ、今現在話題の的の一部になっているラウ自身は、自分には|関係無いと言わんばかりの《ふてぶてしい》表情(ブルドックだから、そう見えるのかも知れないけど………)で、アクアの足下で行儀良くお座りしているのだけどな。
以前見た時のラウは、アクアの肩にしがみついていて離れない甘えん坊と言った感じだったはずだが、今では何も言わなくても、お座りで待機出来る様に躾られている。僕のファミリア達も、この行儀の良さだけは少し見習って貰いたいものだな。
『…………心外』
『待つのじゃ、主よ。全くもって心外なのじゃ。ワシらも態度はともかく行儀は良いはずなのじゃ』
まぁ、確かに普段待機している時の行儀は良いかもな。待機している場所が僕の頭の上で無かったらの話だけどな。別に肩の上なら問題無いんだけど、たまに頭の上に留まるのだけは止めて欲しいんだよな。態度について自覚が有るのなら………
『主よ、その辺りは今後善処するのじゃ。ぷゅひゅ~~』
白々しく、吹けもしない口笛を吹く真似をしても無駄だからな。
『そんなはずはあるまい。我はファミリアの王なのだ。我は紳士なのだ。我は常識も有るのだ。だから1番高い場所は我の特等席なのだ』
言っている事は理不尽だと思うけど、ファミリアも3匹いたら、2つしか無い僕の肩では1匹余るのも分かる。だから、無下には出来ないんだよな。まぁ、付き合いもそれなりに長いから仕方ないんだけどな。
『…………今まで通り諦める』
黒の言う通り、諦めてはいるのも事実なんだけど………本人達に言われるのは違う気がするよな。
『あぁ、大剣の片手持ちの話だな。それは《二刀流》のスキルを|《似闘流》《にている》スキルに進化させてあるからだ。これは、近接用の武器なら何でも2本装備出来る様になる《二刀流》スキルに似ているスキルなんだ。だから、大剣の片手持ちも可能だぞ』
名前は似ているのかも知れないが、性能が似なさすぎてるよな。
『そんなスキルも有るんだな』
銃の2丁持ちは《短銃》スキルの進化した影響で有って、特殊なスキルではないからな、何か別の特殊なスキルに進化する事も無いんだろうな。今となっては銃系のスキルを気に入っているから問題無いけど、ちょっと残念では有るよな。
『それよりも、シュン、気のせいかも知れないが、さっきから会話している声が1つ多く無いか?』
『会話の声が1つ多い?………僕、アクア、それにファミリアの白、黒、シヴァ、それにラウの吠え声か………』
指を折りながら何度か数えてみるが、何度数えてみても2人と4匹しかいない。
『2人とファミリア4匹で合っていると思うけど………』
『そうか、俺の気のせいか………いや、ちょっと待て、4匹ってなんだ?ファミリアは俺のラウとシュンの白、黒の3匹じゃないのか?』
『あっ、そう言う事か………まぁ、そこは気にするな。企業秘密だ』
そう言えば、ギルドメンバー以外にシヴァの事を話してないよな。話せる内容でも無いのだけどな。
『シュンは何か知っているのか?隠し事か?俺にも教え………』
『以前の貸しを全返済してくれたらな。教えてやらなくもないぞ』
シヴァに関しては説明が面倒だからギルドのメンバー以外には説明する気はない。スルー出来るならスルーするべきだろうな。
『うっ、それを言われると俺は立場的に辛いぞ』
どちらかと言うと、以前の貸しが依然として返ってくる気配の無い僕の方が辛い立場だと思うんだけどな。現在、貸しの返済に来たのファミリアの卵を持ち込んだ【ワールド】のリツだけだからな。アクアもだが、我が姉の方も返済に来る気配は無い。それに、アクアに対しては貸しが増え続けている気もするしな。
『シュン、我は隠し事は嫌いなのだ』
シヴァは、そう言ってホルスターから勝手に飛び出して鯨の姿で僕の頭の上に陣取った。
さっきの今で、よく頭の上に留まれるよな。僕に、そんな権限は無いのかも知れないが、流石に自由過ぎでは無いのかな?
それに、隠し事が嫌いと言い切るならば、少しは僕達の出会いを思い出して貰いたいものだな。
『シュン、それを言っては我の立つ瀬が無いのだ』
有る意味で自業自得だと思うけど………
『おい、シュン。この空飛ぶミニ鯨の親子は何なんだ!?昨日もいたのか?って言うか、俺の知らないファミリアは1匹じゃ無かったのか?』
アクアは、頭の中では目の前に現れた2匹の鯨が僕のファミリアだと理解しているのだろうけど、体の方は武器を身構えて警戒を怠っていない。
『新しく仲間になった僕のファミリアだ。そんなに警戒しなくても大丈夫だぞ。名前は下が雨鯨のシヴァで上が光鯨のアート、2匹でセットの魔獣器ファミリアだ。ちなみにだが、2匹は親子ではなくてペットと飼い主の関係だ。それと上にいるアーちゃんは全く喋れないからな。それ以上の情報は、本当に企業秘密だ。シヴァも良いな。勝手に喋ると暫くの間は絶対に武器として使わないからな』
シヴァの武器としての威力まではともかく、シヴァの別名と特殊効果の方は事情を知らないギルドメンバー以外に見せられた物では無い。まぁ、その辺りはシヴァも分かっているみたいだけど。逆に事情を話せば、この幼馴染みは理解するとも思うが、1から全てを説明するのは手間がかかり過ぎる。特に〈食物連鎖の最下層〉と〈パラサイト・キャリアー〉この2つの不本意な称号達の説明とか、考えただけでも嫌過ぎるからな。
『当たり前なのだ。我はシヴァルヴァーニ・バジェーナと申すのだ。気軽にシヴァと呼ぶが良い』
『シュン、何かこいつ凄く偉そうなファミリアだな』
まぁ、実際のところ正体はリヴァイアサンだから、偉そうなのは仕方ないんだろうけど、それを知らないアクアから見れば偉そうに見えても仕方ないのかもな。まぁ、僕よりもアクアの方が正体を聞けば馴染みが有ると思うけど、何度も言うが教える気は本気でない。
あっ!!もしかして、ラウの行儀が以前に見た時よりも良いのはシヴァの前だからなのか?白も黒もシヴァを呼ぶ時は未だに様付けの敬語だしな。ファミリア同士なら威厳が伝わってもおかしくはないかもな。
〔『…………魔物が来た』〕
『まぁ、そうかもな。だが、シヴァの態度と能力は完全に比例してるからな。アクア、お喋りはここまでだ。とうやら、次の客が来たようだぞ。視認で7………いや、8だ。おっ!!どうやら1匹は新種だぞ』
『うぉっし、右側に固まっている兎6匹と新種は俺に任せろ。残りは任せた』
『了解だ』
………って、僕の担当は離れた位置にいる小さなスノーラビット1匹なんだな。そりゃ、確かに僕は紙装甲だし、今日は《短剣技》と《拳技》のスキルLvがメインで、メイン武器は使って無いのだけども、持ってない訳ではないので使う事は出来るんだぞ。だから、そんなに過保護にならなくても、もう少し宛にしてくれても戦えるんだけどな。
僕は、【ソル・ルナ】と【魔氷希】を両手に持ち、1匹だけ離れていた小さなスノーラビットを切り払う。
『くっ!!』
〔『主よ………』〕
〔『………情けない』〕
はいはい。白と黒の言う通りですよ。前言を撤回させて頂きますよ。
左右の2連撃では小さなスノーラビットすらも倒し切れなかった僕は、逆に背後から反撃を喰らいそうになるが、左ステップと【ソル・ルナ】で受け流し、反対に背後から拳でのカウンターでスノーラビットを葬る。
『流石に、ここまでとは………』
攻撃力の低い銃よりも使えないとは思って無かったよな。この高さまで登って来る間や、この前【サラベール】を目指して下っている時も1・2撃で削り切れない魔物は多々いたが、反撃までされたのは始めてだからな。
まぁ、銃の場合は中距離からの連射で魔物自体を近寄らせないし、数撃って倒していたからな。反撃は全く縁の無い話だったんだけど。
それにしても、この状況は無いよな。アキラ達に対して大きく出ていてなんだが、ソロだったらヤバかったかもな。もう少し慣れれば、まともに戦えるのだろうか?もしかして………
〔『…………武器の性能は問題無い』〕
〔『黒さん、お早いご指摘有り難うございます』〕
せめて、最後まで考えさせて欲しかったよな。まぁ、武器の事を疑ったのも確かなんだけど………やっぱり、問題はプレイヤー自身の技術なんだろうな。《短剣技》のアーツが使えれば、解決する可能性も有るけど、あくまでも【ソル・ルナ】や【魔氷希】は銃の分類だからな。アーツにまでは期待するのは酷だよな。
『うっし、こっちは終わりだ。シュンも大丈夫だったか?』
僕が、1匹を倒す間に新種を含めて7匹も倒したんだな。ここまでもそうだったが、かなりの無双だよな。1人だけ違うゲームをしてるんじゃないのか?
『まぁ、な。新種はどうだったんだ?』
さっき、ちょっと確認した新種の魔物の名前はスノーイベリコ。名前を聞くだけでも美味しそうなん魔物だよな。
『強さはイマイチだったけど、あの豚は多分レアポップする魔物だな。ドロップを確認するからちょっと待てよ………どうやらハズレだな。食材系ばっかりだ』
『食材系?何が有るんだ?』
スノーイベリコと言う名前のレアな魔物の食材系ドロップ………個人的には期待しか出来ないんだがな。
『気になるのか?スノーイベリコの脚肉2個とスノーイベリコの肩肉、あと謎なのがスノーイベリコの腸。脚肉や肩肉はともかく、腸は食用としても使い難いだろ』
いやいやいやいや、アクアは完全に間違ってるな。って言うか、それ絶対にアタリだろ。ドロップの方が完全に美味しいソーセージ作って下さいって語ってるからな。それに脚肉は2個有るなら他にも出来る物が有るぞ。
『シュン、かなり目が輝いているけど、欲しかったならやるぞ。俺には使う用途が無いからな』
『良いのか?それなら貰う。でも、僕としてもタダで貰うのは気が引けるからな………そうだ!!鞄の依頼2割引でどうだ?』
『それは、俺の方が良いのか?食材系だぞ?食べる以外に用途が無いんだぞ』
アクアは絶対に価値が分かってないな。まぁ、普段から料理をしてないと意外と分からないのかも知れないな。
『美味しく食べる。それが、1番大事だろ。アクアのお陰でクリスマスパーティーの料理が2品決まったからな。僕からすれば感謝しかないな。そうだ、12月25日【noir】のホームでパーティーするから予定を開けておいてくれ。ちなみに、アクアとジュネの不参加は認めないからな』
『おい、12月25日ってイベントの最終日だろ。そんな大事な日にパーティーするのか?また勝手に決めやがって………まぁ、いつも通り参加はするけど。勿論、ギルドの暇な仲間達も参加しても良いんだろ?』
いつも通り参加するのなら、わざわざ怒ったふりをしなくても良いんじゃないかな。
『その辺は大丈夫だ。抜かりなく会場は広いスペースを用意しておくからな。それくらいまでには依頼の鞄も用意出来ると思うしな』
会場には、試作品の実験で使う小さな体育館くらいの部屋、フレイ命名の武道館を使えば問題無いからな。立食形式になるが、その方がパーティーも色々な人と交流出来て盛り上がるだろうからな。
『了解だ。さぁ、どんどん上を目指すぞ』
『こっちも了解だ』
アクアの無双で予定よりも時間が掛かっていないが、ここから先がどうなっているのかも分からないからな。先を急ぐ方が良いだろうな。
『シュン、かなり登って来たと思うが、何か変わったか?』
スノーイベリコを倒してから2時間、魔物と遭遇しながらだが、かなり上までは登って来ているはずだ。だが、いっこうに周りの雰囲気も出現する魔物の種類も変わらない。
さらに、個人的に残念な事は、アクアの思った通りスノーイベリコはレアな魔物だったらしく、この2時間は1回も遭遇出来ていない。
『僕も何か変化した様に見えないな。白と黒は分かる?』
『うむ。主よ、先程からこの辺りは暖かい気配がするのじゃ』
『…………黒も』
暖かい気配ねぇ………僕には全然違いが分からないんだがな。
『ちなみに、どんな感じなんだ?』
『主の側にいるのと近い感じなのじゃ』
僕の側?ますます分からないよな。
『なら、答えは簡単だ。先に進めば良いだけだろ。俺はちょっとワクワクして来たぞ』
今の会話の何処にワクワクするポイントが有ったのか、聞いてみたい気もするが、あの笑顔のアクアに質問すると話が長くなりそうだから却下だな。
それに、《探索》スキル持ちの白達にもこの先が分からないのなら、僕は逆に不安しかなくなったんだが………
『うむ。その通りなのじゃ。前に進めば分かる事なのじゃ。主よりも話が分かるのじゃ』
〔『…………あの木の根本から何かが見てる』〕
何かが見てるねぇ………
〔『黒、どの辺りだ?』〕
能天気な1人と1匹のやり取りを無視して、黒は《探索》を続けてくれていたのか、流石だよな。
〔『…………左側の大きな木』〕
僕は身体を動かさず、出来るだけ自然に辺りを確認する。
いたっ!!アレだな。位置の確認は出来たが、ここからでは遠くてはっきりと姿が見えないよな。僕は、視線1ヵ所にを留める事なく周囲を見回し続ける。出来るだけ自然に………違和感なく………
〔『我にも確認出来たのだ。でも、アレは…………』〕
〔『シヴァ、僕には全く分からないんだが、何か分かったのか?』〕
〔『うむ………いや、何でも無いのだ。多分、我にも分からない事なのだ。分かったとしても、直接確認してみる方が早いのだ。シュン、どっちにしても少し警戒を強めた方が良いのだ』〕
まぁ、そうだよな。でも、警戒するにしても距離が有るからな。相手の速度しだいでは………
〔『逃げられるのじゃ。ワシを置いて話しを進めるのは酷いのじゃ』〕
お前がアクアとの話しに夢中になってたからなんだけどな。
『シュン、どうかしたのか?』
『いや、何でもないぞ。少し休んでから回復してから先に進もう』
勿論、お互いHPは全く減って無いが、迫真の演技の為に鞄から取り出したポーションを手渡す。そう言えば、ポーションを使うのって、かなり久しぶりだな。
〔『おい、アクア!!聞こえてるとは思わないが、念の為にパーティーチャットで話すぞ。それと、必要ないが今渡したポーションも飲んどけ。左側の大きな木の下に何かがいる。向こうもこっちを警戒してるみたいだからな。絶対に見るなよ。気付かれたら逃げられるかも知れない』〕
〔『レアか?新種か?』〕
〔『離れているから、そこまでは確認出来ないんだよな』〕
〔『それで、どうするんだ?俺はレアや新種なら絶対に倒したいぞ』〕
〔『思案中だ。アクアはレアや新種なら倒したいか………シヴァ達の反応からすると魔物とは少し違う気がするんだよな』〕
多分だが………な。
〔『白、黒、シヴァ、〈朧〉と〈速度増大〉を使うから、あそこにいるの捕まえれたり出来ないかな?』〕
そんな能力を持って無いのは分かっているし、ゲームバランス的に、ファミリアが何でも出来たら問題も有りそうだけど、ダメ元で聞いてみるくらいはしても良いだろうな。
〔『主よ、雪なら出来るかも知れないが、ワシらに捕まえるのは無理じゃ』〕
雪ちゃんなら出来るんだな………自分で聞いていてなんだが、良いのかな?
〔『うむ。捕まえる事は無理なのだ。だが、逃げられない様に3匹で囲い込むのは可能なのだ』〕
まぁ、捕まえれるとは思って無かったからな。囲い込みが出来るだけで良しとしないとな。
〔『じゃあ、3匹共頼めるかな』〕
僕は、隠れている何かに気付かれない様に、こっそりと3匹に〈朧〉と〈速度増大〉を掛ける。ついでに、僕とアクアにも〈速度増大〉だけは掛けておくか、逃げられた場合は跡を追うにしても必要になるし、仮に追わない場合でも無駄にはならないだろうからな。
3匹は、周囲りの風景に溶け込みながら、どんどん標的に近付いて行く。僕とアクアに出来る事は、隠れている何かの注意を引くくらいなんだよな。
それよりも、《見ない感じ》でも全く感じられないところをみると、ギリギリでスキルの効果範囲外なのか?今までの感覚としては範囲内だと思ったんだがな。まぁ、辺りは雪だらけなので微妙な感覚の違いかも知れないな。
〔『あ、主よ、大変なのじゃ。急いで来るのじゃ』〕
〔『…………ダッチュ』〕
〔『急ぐのだ』〕
『アクア、向こうで何か有ったみたいだ。急ぐぞ』
『お、おい、シュン、ま、待て、説明………』
いちいち説明してられるか、白やシヴァはともかく、黒の様子が尋常じゃないんたぞ。絶対に想定外の事が起きている証拠だ。黒が噛むくらいの出来事がな。
装備
武器
【ソル・ルナ】攻撃力100/攻撃力80〈特殊効果:可変/2弾同時発射/音声認識〉〈製作ボーナス:強度上昇・中〉
【魔氷牙・魔氷希】攻撃力110/攻撃力110〈特殊効果:可変/氷属性/凍結/魔銃/音声認識〉
【空気銃】攻撃力0〈特殊効果:風属性・バースト噴射〉×2丁
【火縄銃・短銃】攻撃力400〈特殊効果:なし〉
【アルファガン】攻撃力=魔力〈特殊効果:光属性/レイザー〉
【虹鯨(魔双銃剣ver.)】攻撃力500〈特殊効果:7属性〉
【白竜Lv93】攻撃力0/回復力283〈特殊効果:身体回復/光属性〉
【黒竜Lv92】攻撃力0/回復力282〈特殊効果:魔力回復/闇属性〉
防具
【ノワールシリーズ】防御力105/魔法防御力40
〈特殊効果+製作ボーナス:超耐火/耐水/回避上昇・大/速度上昇・極大/重量軽減・中/命中+10%/跳躍力+20%/着心地向上〉
アクセサリー
【ダテ眼鏡】防御力5〈特殊効果:なし〉
【ノワールの証】〈特殊効果:なし〉
天狐族Lv80
《錬想銃士》Lv24
《真魔銃》Lv23《操銃》Lv43《短剣技》Lv48《拳技》Lv15《緩急》Lv12《魔力支援》Lv12《付与術改》Lv31《付与練銃》Lv32《目で見るんじゃない感じるんだ》Lv51《家守護神》Lv68
サブ
《調合工匠》Lv33《上級鍛冶工匠》Lv8《上級革工匠》Lv7《木工工匠》Lv42《上級鞄工匠》Lv10《細工工匠》Lv46《錬金工匠》Lv45《銃工匠》Lv36《裁縫工匠》Lv16《機械工匠》Lv24《調理師》Lv27《造船工匠》Lv2《合成》Lv53《楽器製作》Lv5《バイリンガル》Lv15
SP 41
称号
〈もたざる者〉〈トラウマニア〉〈略奪愛?〉〈大商人〉〈大富豪〉〈摂理への反逆者〉〈初代MVP〉〈黒の職人さん〉〈創造主〉〈やや飼い主〉〈工匠〉〈呪われし者〉〈主演男優賞?〉〈食物連鎖の最下層〉〈パラサイト・キャリアー〉




