サラベール山脈 頂上1
『取り敢えず、レシピ集はそれで良いとしてだ。ギルマス、【noir】としては来月の公式イベントはどうするんだ?』
『おっ、もう12月の公式イベントの発表が有ったのか?』
最近の【シュバルツランド】の動向は全くチェックしてなかったからな。時期的に、そろそろ発表が有ってもおかしくないよな。
『発表と言うか、今日広場の掲示板に開催期間だけ掲載されてた。詳細は例の如く秘密だったけど、街の噂ではソロイベントではなくて、ペアかパーティーで攻略するイベントらしいぞ』
まぁ、そこは平常運転だよな。いつも準備期間が短くて困るけど、予め詳細を知らされるよりは安心出来るよな。これは、僕がOOOの運営に毒されつつあるからなのか?
それにしても、ソロかパーティー等の規模が噂されるのも珍しい事だよな。まぁ、あくまでも噂何だろうけどな。
『それで、期間は?』
『開催期間は12月10日~25日の約2週間だったはずだ』
『あ~、私、その期間は部活が忙しくて、ちょっと完全参加は無理かな。イベント内容にもよるんだけど』
アキラは、所属しているバスケ部がウインターカップの全国大会出場が決まっている。インターハイ予選は惜しくも都予選敗退で、今回は念願かなっての全国大会初出場なので気合いが入っても仕方ないよな。まぁ、この件については、本大会の開催地は東京なので、時間が合えば僕も純や蒼真を誘って応援に行きたいからな。
『まぁ、そこは内容を見てからでも良いんじゃないかな。多分、今月の終わりか来月の頭には正式発表が有るだろうし、フル参戦は無理でもスポット的な参加は出来るかも知れないからな。それに、期間的にクリスマス関係の単発系イベントの集まりの可能性も有るんじゃないか?夏のイベントみたいに…………』
自分で言っていてなんだが、思い出したくない事を思い出してしまったな。来年こ夏は肝試しイベントが無い事を、今から切実にお祈りしておきます。
『『『『クリスマス!!』』』』
僕の発言を遮る様に、サラを除く女性陣が一斉に似た様な反応を示す。はっきりとは目に見えている訳ではないけど、強烈な闘気と寒気を感じるんだが、僕の単なる思い過ごしなのだろうか…………まぁ、女の子はクリスマス等のイベント好きだから、やる気を出しても仕方のない事かも知れないけどな。
『それは、普通に有りそうだな。ギルマス、ギルドとして何かするのか?』
『シュンさん、少し良いですか?私は12月25日が日曜日なので、ギルドの皆さんと一緒にクリスマスパーティーがしたいです』
クリスマスパーティーか…………今年も、例年通りクリスマス当日とその前は、純や蒼真達と過ごすくらいしか予定はないからな。同じ時間を過ごすならOOOの中でも一緒だよな。どうせ、奴等にもゲームをする以外に予定は無いだろうから、巻き込んでも構わないよな。
………って言うか、基本的にイベントよりもゲーム命のあの2人が、何故あんなにもモテるんだ?やっぱり顔が大事なのか?十数年一緒にいるが謎なんだよな。
〔『主よ、主の良さは見た目ではないのじゃ。長く一緒にいる事で分かってくるのじゃ』〕
〔『…………心も大事』〕
2匹共に僕の事をフォローしてくれているのは分かるんだけど、微妙に凹むよな。でも、2匹のフォローをトゲトゲしく感じる僕が悪いのかも知れないけどな。
気を取り直して周りを確認すると、先程から強烈な闘気らしき物を放っている4人も、頻りに頷き合っているところを見るとクリスマスパーティー賛成派の様だな。この件については、カゲロウとブレットも反対する気は無さそうだな…………まぁ、正確に言うならば、反対出来そうにないと言うのが正しいのかも知れないがな。
『サラ、それ採用!!』
『あ、ありがとうございます。嬉しいです。皆さんも良いんですか?』
『当然や、サラ。ウチらも一応は女子やで、クリスマスは好きやから、反対するなんて有り得へんわ。なぁ、ヒナタ』
『はい。ですよね。ケイト』
『はいです。アキラ』
『うん。うん。私も賛成だよ。それで時間はどうするの?』
流れる様な出来事に、僕を含めた男性陣は一言も口を挟む事は出来なかった。まぁ、皆楽しそうにしているから、それを遮ってまで口を挟む気もないけどな。
『はい。時間は昼~夕方ぐらいでも良いですか?前日と当日の午前で準備出来ますし………』
小学生組の事を考えると、その辺りが妥当だろうな。まぁ、多少の延長有りにしておけば、高校生組の不満も無いだろうからな。
『そやな。時間は、それでええんちゃうか?皆も夜は個別な用が有るかも知れんしな。なぁ?』
生憎だが、僕の方を見て同意を求められても、僕自身に個別の予定等が有る訳無い。はっきり言って存在しない………のだが、フレイ達には有るのかも知れないな。
『あ、あぁ、それで良いんじゃないかな。どうせなら、クリスマスパーティーにギルド以外の知り合いも呼んでも良いんじゃないか?僕も新人達にもジュネを紹介したいからな。勿論、料理の方は僕が担当するから、人数が増えても準備の方では負担も少ないと思うし………サラ、どうかな?』
『はい。私も他のギルドの皆さんとも仲良くなりたいですし、呼んでも良いなら、呼びたい友達もいます』
『うん。それも良いよね。さっき、シュンが言っていたレシピ集の紹介も出来るし。あっ!!でもイベント最終日だから、クリスマスパーティーの参加者少ないかも………』
『アキラさん、その時はその時ですよ。イベントの内容次第って言うのが大きいんでしょうけど。最終日なら逆に盛り上がり終わっているかも知れませんよ』
まぁ、カゲロウの言うのも正解の1つなんだろうけど、最終日にイベントが盛り上がり終わってる可能性は、かなり低いだろうな。最後の最後に極悪なイベントが追加される可能性が高いのがOOOだからな。決して簡単にはイベントを終わらせてくれない。
でも、まぁ、参加者が少ないのは少し寂しいと思うし、ちょっと困るかな。この機会にサラとブレットの紹介もしたいからな………うん!?新人メンバー?
〔『主よ、もしかして肝心な事を忘れておったのではなかろうのう?』〕
〔『くっ!!その通りだよ。完全に忘れていたさ』〕
色々と有り過ぎて、僕が1人でクエストをしていた本当の理由が完全に抜けていたみたいだな。
『皆、すまない。クリスマスパーティーの計画で盛り上がっているところを悪いが、ケイトのクエストってどうなっているんだ?そろそろ終わる頃だと思うんだけが?』
もう少しで11月も終わりになる。僕が知らないだけで、ある程度の候補者、もしくは内定者が決まっていても、おかしくはないんだよな。
『はいです。あとで報告しようと思ってましたです。このままいくと候補者はクエスト報酬の記念品を3個獲得しそうな2人になりますです。1人は皆さんもご存知かも知れませんが、アメリカサーバーからやってきたゼスちゃんになりますです』
やはり、ゼニスか。アイツの加入クエストへの情熱が他と比べても半端じゃ無かったのは知っているが、あの手に入れるのが大変な記念品を3個か、到底僕には真似出来そうにないな。僕も過去に挑戦した事も有るが、1ヶ月で1個手に入れるのが限界だったからな。
まぁ、ゼニスの方はそんな気もしてたんだけど、ゼニスに負けないくらい頑張ったプレイヤーがいたのか?
『もう1人は、グレタフさんです。こちらもアメリカサーバーからやってきたプレイヤーになりますです』
『『『『グレタフ!?』』』』
【ペンタグラス】からやって来たグレタフって、あのグレタフか?って言うか、彼は【ハウンド】のギルドマスターだったはずだが………どうなってるんだ?ギルドは解散したのか?
『アカン、アカン。却下や、却下。それは、なんぼなんでもありえへんわ』
『そうだね。ゼニスくんが加入する予定なら、やっぱり私も反対かな』
おいおい、見た目が完全に女の子のゼニスを、普通にくん付けして呼んでいるが、まだ会った事のないメンバーが、初めて会った時に大きく動揺するんじゃないのかな?
〔『主よ、今はそれどころではないと思うのじゃ。男の娘くんの事は、一旦置いておくのじゃ』〕
まぁ、そうだよな。自分でも意外だが、僕は皆程慌ててないのかも知れないな。
〔『…………1回戦って情がわいた?』〕
〔『それはないと思うけど………』〕
それとも、もしかして有るのか?いや、流石の僕でもグレタフに対して情がわく事は絶対に無いな。
〔『シュン、我はグレタフと言う者を知らないのだが、皆に嫌われる様な者なのか?』〕
〔『そうだな。直接見てないと伝わり難いと思うけど、簡単に言うと、質の悪いお山の大将かな』〕
〔『うむむ。我には、その例えは分かり易い様で分かり難いのだ』〕
まぁ、他に言い表し様が無い最低な人物だからな。
『ケイトには、悪いと思うが俺も同じ意見だ』
フレイ、アキラに続いてカゲロウまでが反対の意見を述べたか。それにしても、カゲロウがケイトに反対するのは珍しいよな。
あの時あの場にいた僕以外の3人が一斉に反対か。まぁ、【ペンタグラス】での行為を見ているから仕方ない事だと思うし、反対するのは僕も十分に納得出来る話なのだが………僕には、どんな理由が有ったとしても、あのグレタフが街中のお手伝いクエストを頑張ってまで【noir】に入りたいとは、どうしても思えないんだよな。
〔『…………裏が有る?』〕
〔『うん。その可能性も有るかもな』〕
まぁ、本音を言うと別の可能性が高い気がするけどな。僕に《見破》スキルが有った頃なら詳細も分かったかも知れないけど、もう無いからな。ここまで執拗にゼニスを追って来る必要と言うか理由が有るのか?また、面倒な事に巻き込まれて悪目立ちするのはゴメンだぞ。
『まぁ、僕も同意見だけど、最初に決めたルールだから簡単に無下に拒否する事は出来ないかなとも思うな』
『シュン、自分、何を甘い事を言うてんねん。自分もあの場におったんやろ。ってか、自分がゼニスを庇ってグレタフ倒したんやんか。奴が改心するとでも思ってるんか?』
『それは、確かにごもっともな話だとは僕も思うんだけど、僕もあのグレタフが、仮に多少の改心していたとしても街のお手伝いクエストを頑張るとは思えないんだよね。【ハウンド】の仲間………いや、グレタフを語るなら、グレタフ風に言う手下の方がしっくりくるかな。その手下に、自分の代わりにやらせていると考えた方が、まだしっくりくるんだよな。例えば、素材回収系のクエストなら集める過程は分からないだろう?まぁ、冷静に考えると、そこまでして【noir】に入りたい理由も分からないんだけどな』
そう言うルールの盲点を許すつもりは全くないが、奴らはそう言うのが上手そうだからな。
『そやな。シュンの言う通りやわ。グレタフの名前聞いた瞬間に存在を完全否定したからな。そんな考えは浮かばんかったわ。確かに、奴が【noir】を恨みこそしても、加入したい理由が分からへんわ。すまん、ウチは少し熱くなり過ぎたわ』
『別に気にして無いから大丈夫だぞ。まぁ、強いて上げるとするなら、ゼニスに対する嫌がらせが濃厚かな?』
『それが、1番有りそうかもね。あっ!!他に有りそうなのは完全な別人説?とかかな』
なるほどな。アキラから言われるまで僕も気付かなかったが、それが1番有り得る話だよな。僕達の知っているグレタフが【シュバルツランド】にいるなら、この街で毎日クエストに勤しんでいるゼニスの方が先に気付いて、僕達に連絡の1つでも有りそうだからな。
『そやな。別人説は有るかも知れへんわ。ってか、それしか無いんちゃうか?』
『分かった。ギルマス、俺が残りの期間を使ってグレタフの調べる。【ペンタグラス】でも会ってて顔も分かるし、取り巻き達も何人かは見ているからな。本人だった場合、間違える事も無いからな。それに、どっちにしても最終的な候補者に対して密着して評価する予定だったから好都合だ。ゼニスの方は、ケイトお願い出来るか?』
『それはNoです。私がゼスちゃんを確認するのはフェアじゃなくなりますです』
まぁ、そうだな。ケイトが、今更私情を挟んで自分の知り合いに特別な評価をするとは全く思ってないが、それはあくまで僕達がケイトの人柄等を理解しているからだからな。他の参加者の目から見たらどう見えるかは、容易に想像出来るからな。
『ですので、ヒナタ、サラちゃん、ブレットくん、誰かお願い出来ませんですか?です』
『ケイト、私がやるよ。かなり馴染んではいるけどサラちゃん達は加入して間もないからね。まだ、ギルドに合っているのかを評価するのは少し荷が重いと思う』
まぁ、ヒナタ荷物してみれば、また少し目的の船旅から遠ざかる結果になったが、それも2・3日の話だろうからな。ヒナタの善意に甘えるのが正解かもな。
サラとブレットの見た目は僕達と変わらないけど、中身は普通に小学生だからな。サラとブレットを軽く見ている訳ではないが、他人を厳しく評価するのは難しいだろうな。まぁ、それを言うなら、中学生のヒナタとカゲロウや高校生の僕達も大して変わらないと思うけどな…………決して口には出さないけど。
『まぁ、難しく考えなくても最終的なフィーリングが合えば良いと思うからな。一緒にいて楽しそうに思えたなら合格で良いぞ』
『シュン、それは幾ら何でもアバウト過ぎると思うよ。今までからするとね』
『でも、このクエストの場合、最終的な候補に入っているプレイヤーが頑張れないって事はないと思うからな。それくらいアバウトな方が良いんじゃないか?それに、仮に何か有った時は僕達がフォローすれば済む話だからな』
『それもそやな。ギルマスのウチら3人が最終的に責任を果たせれば良い話やしな。それでええんちゃうか』
最終的な責任が何に当たるのかは分からないけど、概ねフレイの言う通りだと思うな。
会議と言う名の打ち合わせを終えた僕は、船を【サラベール】近郊の港町【ハーバー】に移動させる為に、サラベール山脈中腹に置き去りにしているエクスライトへの転移を終わらせている。
あのあとの会議は、特に目ぼしい話もなく滞りなく終わっている。敢えて1つ話題を上げるとするなら、カゲロウから出た話で、OOOでは全くと言って良いほどメリットが無いPKらしい者が出没した事くらいだろう。
そのPKらしい者の餌食となったプレイヤーは既に十数名に及ぶ。それも、遠距離からの弓でのソロプレイヤーへの一撃必殺でのPK行為の為、その犯人の姿を見たプレイヤーも居ないらしい。狙われるのが決まってソロプレイヤーの為、PKでは無くてソロプレイでしか現れないレア出没のボスかMOBではないかと言う話もあるらしい。分かっているのは、あくまでもソロプレイヤーを弓での一撃必殺で倒すと言う事。
僕も前者のPK説よりも、後者のレアボス説の方が信憑性が高いと思うんだよな。まぁ、討伐者も多数出ている様なので、その内真相も分かるだろうな。レアボスならば、僕自身も1回は目にしたいからな。
『主よ、何をボ~っとしておるのじゃ。既に船は港町の上空を過ぎておるのじゃ』
『えっ、マジか!?』
どうやら、目ぼしい話ではないと思っていたPKの噂に夢中になっていた様だな。もしかして、脳で考えるのとは裏腹に心の方は意外と気になっているのかも知れないな。
明日からのサラベール山脈登頂の為の準備が必要だから、さっさと船を停泊させて戻ろうかな。今日、目立ち過ぎる事をしたので外見対策も必要だからな。新しい街でゆっくりしている時間もないんだよな。まぁ、ゲート登録さえしておけば自由に来れるからな。暇をみて来れば良いだけなんだけどな。
『お~い、シュン、船にいるって聞いて来たんだが、いるの…………おい、何だ!?ここは!?』
『いるぞ。ひとまず落ち着け。ここは海の上の空の上だ。それで何か用か?』
何をそんなに慌てる事があるんだ?初めて見た訳でもあるまいしこの船が空を飛ぶのは経験済みだろう。
『これが、落ち着いていられる事か、一体ここは何処なんだ。目の前に見える雪山は何だ?雪山エリアとか俺は見た事無いぞ』
『あぁ、そっちの事か。ここは【サラベール】の近郊の港町近くの上空だ。ちょっとクエストで用が有って立ち寄っただけだ。まぁ、それは置いておくとして、アクアは何の用だ?僕を探してたみたいだが………コールじゃダメな話だったのか?』
『そんな簡単に置いとける事か。まぁ良い、この件は後程じっくりと聞かせて貰うとしてだ。俺の要件は依頼だ。別にコールでだめ押しだった訳ではないが、これは俺の誠意の問題だ』
僕は、後程じっくりと説明に付き合う気はさらさら無いんだけど。それと、依頼として正式な料金を払うのなら、僕とアクアの関係なら別に改まって誠意は要らないとも思うしな。
『分かった。船を港に着けるから少し待て』
この感じだと話が長くなりそうだからな。先に港に着ける方が賢いだろうな。
僕は、エクスライトを海に着水させてから、【ハーバー】の港の中に船を停泊させた。ある程度離れた位置に着水させてから近付いた為、特に目立つ事も無かったのは幸いだった。
『それで?』
『おう。俺のギルドメンバー用に倉庫直通機能付きの鞄を作ってくれ』
『急いでいないなら、それくらいなら良いぞ。店の方に注文別に発注書が有るから鞄の形状を書いておいてくれ。』
時間さえ有れば、1個造っておけば個人のリストからだけでなく、工房のメニューからも複製出来るからな。そんなに手間と掛からないだろう。最近は、【noir】のロゴが入った既製品ばかりが売れて、オリジナル鞄の依頼は少ないからな。久しぶりにやりがいがあるよな。
『いや、悪いがちょっと急ぎなんだ。それに数も…………』
おいおい、そこで口ごもるって、一体僕に何個の鞄を作らせる気だ?過去に万単位で作った経験は有るが、あれはかなり簡単な部類だぞ。
『それで、何個欲しいんだ?』
『あぁ、1人につきオリジナルを2個で合計100個だ』
100個か………まぁ、個人の発注数としては多い方だよな。うん!?待てよ、今何か不吉な事が聞こえた気がするが、聞き間違えただけだよな………
『ちょっと待て。アクア、お前今1人につきオリジナルを2個って言わなかったか?』
『そうだぞ。1人につきオリジナルを2個の合計100個だ。来月のイベント対策と噂のPK対策だ。だから、なるべく早く欲しいんだ。あっ、そう言えば、シュンはPKの噂聞いたか?』
何を以て、PK対策と言っているのかは皆目見当も付かないが、来月のイベント対策って言うのは、多分だけど倉庫直通の機能が欲しいのなら容量が必用なんだよな。
『PKの噂は聞いてるが、やっぱり今回は鞄の依頼を断らせて貰う。来月のイベントまでにオリジナルを100個は無理だ。今の時点で依頼は溜まってないが、ちょっと個人的な用で忙しいからな』
確かに、この依頼なら誠意を見せる必要は有ったかも知れないな。無駄になったけど………
『やっぱりか、急ぎは無理だよな………』
『かなりな。急ぎでなかったら、その依頼は聞くからギルドのメンバーと相談してくれ』
『分かった。それでOKだ。それは良いとして、シュンの個人的な用って何なんだ?俺達は幼馴染みにして大親友だろ、俺にも詳しく教えろよ』
下世話な心が丸出しのこの笑顔。アクア、何か大きな勘違いをしてないだろうか?期待に沿えなくて悪いが…………いや、それは違うな。僕には期待に沿える気も無いからな。
『別に大した事ではないぞ。そこの高い山見えてるだろ?アレの頂上もしくは最高到達点を目指す事だ。《短剣技》と《拳技》のLv上げも兼ねてな』
本当は、他にもギルドとしてやるべき事も有るが、ギルドメンバー以外には秘密だからな。それに、魔物の強さ的に短剣のみで戦えそうなのも大きなポイントだな。
『おい、個人的な用ってOOOの中の事だったのか?俺は、てっきりリアルの事だと思ってたぞ。来月は12月で、クリスマスも近いからな』
やっぱり、勘違いしてるな。それも盛大に………僕に毎年クリスマスの予定が無い事は、お前もよく知っている事だろうが…………そんな追い打ちは、いくら幼馴染みと言っても本当に悲しくなるぞ。
『まぁ、それはこの際どうでも良いか。シュン、俺にも山に登るのに1口噛ませろよ』
どうでも良い事で、あっさりと流すなら、改めて僕の心を抉るのだけは止めて欲しかったんだけど、アクアに対して今更言っても無駄だよな。多分、悪気は無いのだろう。まぁ、この場合は悪気が無い方が質が悪いのだけどな。
『断る!!って言っても無駄なんだろうから、別に付いてくるのは構わないが、ギルドの方も忙しいんだろ?そっちは良いのか?』
ついさっき、【双魔燈】の為の依頼を急かしていた張本人の口から出る発言とは、到底思えない自己中心的な発言なんだが、僕が間違っているのか?
〔『主よ、心配せずとも主は正常なのじゃ。主の友人が異常なのじゃ』〕
〔『…………結果的に主も異常?』〕
〔『2匹共、腕を上げたな。まさか、1回持ち上げてから落とされるとは思ってもみなかったぞ』〕
これなら1回目から落とされる方が、精神的には良かったんじゃなかろうか。
〔『主よ、待つのじゃ。違うのじゃ。誤解じゃ。ワシの言う事は本心なのじゃ』〕
〔『…………黒も』〕
2匹共が本心か、う~ん………この場合は、どう捉えて良いものか微妙だよな。白の意見を信じたいが、黒の意見を正しいと思う僕もいるから、迷うよな。
〔『ところで、今気付いたんだけど、シヴァは?』〕
〔『シヴァ様は、今はホームでお留守番なのじゃ』〕
〔『何で?』〕
〔『シヴァ様は、今日は疲れたらしいのじゃ。残りはギルドで虎猫の姉さん達のお手伝いをするそうなのじゃ』〕
あぁ、なるほどな。今日は既にシヴァ使ったからな。もう完全に出番は無いから、付いて来ても一緒だからな。疲れたと言われても仕方ないかな。まぁ、アキラ達と一緒にいるなら問題無いだろうな。
『忙しいけど、1日くらいなら何とかなるだろ。こんな楽しそうな事を逃すのは俺の主義に反する。それに、珍しい素材をゲット出来れば、鞄造りの足しにもなるだろ。ギルドの皆もダメとまでは言わないはずだ。きっとな』
『そうか、この辺は雪が無いから分からないが、雪の有る【サラベール】の山側周辺で一通り戦ってみて、魔物から採れる素材と自然素材は鞄には向いてないけど、良いのか?………まぁ、山の中腹より上は未開だから、鞄に向いてる素材が手に入る可能性は有るけどな』
『へぇ、そうなのか。それで、分かってる範囲内では何が出るんだ?』
『スノーラビットやスノーウルフ。あとは出現率の低いスノーマン、雪系がメインだ。氷系が得意で火系が弱点だから火系の武器なら比較的に戦い易い。まぁ、基本的にサーバータウン周辺だから魔物は弱いし、獲得出来る素材もランクが低いけどな』
『そっか、俺達には珍しくてもサーバータウン周辺で獲得出来る素材なら、知れてるよな』
まぁ、確かにランクが低い素材だが、他の素材と合わせる事で大化けする可能性は有るんだけどな。それは、今アキラやフレイが研究中なんだけど、今のところは秘密だな。
『そう言う事だ』
『だが、会ったことの無い魔物は魅力的だから、問題無いけどな』
『それなら良いけどな。あっ!!あと、1回に出てくる数が多いのと速度が速いからから、それなりに面倒だぞ。街で聞いた話では、一応海側が初心者向けで山側が上級者向けらしいからな。まぁ、僕で何とかなる程度だから、アクアは楽勝だと思うけどな』
ジュネに聞いた話だと、アクアは既に種族Lvが100になりカンストしているらしい。まぁ、学校と多少の睡眠時間以外は、ほぼ常にOOOにログインしているから出来る芸当らしいけど、流石にそれは真似出来そうにないよな。
『了解だ。じゃあ、待ち合わせは明日の夜、【サラベール】の山側入口で良いか?』
『僕は、それで良いけど。アクアは今日じゃなくて良いのか?忙しいんだろ?』
『俺は、【サラベール】へのゲート登録が無いからな。これからちょっと雪への慣らしも兼ねて、街まで登って来るよ。ギルドの事も有るから、本当にちょっとだけだがな。じゃ、明日な』
そう言い残してアクアは、颯爽と【ハーバー】の街に消えて行った。
まぁ、【ハーバー】から【サラベール】は少し距離が有るけど、場所が分かっているなら、アクアに問題は無いだろうな。
………となるとだ。僕は、このあとはどうしようか。まぁ、実際は改めて悩む必要も無いんだけどな。予定通り、仮のローブマントの製作とギルドの改築をすれば良いだけだからな。
装備
武器
【ソル・ルナ】攻撃力100/攻撃力80〈特殊効果:可変/2弾同時発射/音声認識〉〈製作ボーナス:強度上昇・中〉
【魔氷牙・魔氷希】攻撃力110/攻撃力110〈特殊効果:可変/氷属性/凍結/魔銃/音声認識〉
【空気銃】攻撃力0〈特殊効果:風属性・バースト噴射〉×2丁
【火縄銃・短銃】攻撃力400〈特殊効果:なし〉
【アルファガン】攻撃力=魔力〈特殊効果:光属性/レイザー〉
【虹鯨(魔双銃剣ver.)】攻撃力500〈特殊効果:7属性〉
【白竜Lv90】攻撃力0/回復力280〈特殊効果:身体回復/光属性〉
【黒竜Lv88】攻撃力0/回復力268〈特殊効果:魔力回復/闇属性〉
防具
【ノワールシリーズ】防御力105/魔法防御力40
〈特殊効果+製作ボーナス:超耐火/耐水/回避上昇・大/速度上昇・極大/重量軽減・中/命中+10%/跳躍力+20%/着心地向上〉
アクセサリー
【ダテ眼鏡】防御力5〈特殊効果:なし〉
【ノワールの証】〈特殊効果:なし〉
天狐族Lv79
《錬想銃士》Lv22
《真魔銃》Lv23《操銃》Lv43《短剣技》Lv44《拳技》Lv10《緩急》Lv9《魔力支援》Lv11《付与術改》Lv30《付与練銃》Lv31《目で見るんじゃない感じるんだ》Lv50《家守護神》Lv67
サブ
《調合工匠》Lv33《上級鍛冶工匠》Lv8《上級革工匠》Lv7《木工工匠》Lv42《上級鞄工匠》Lv10《細工工匠》Lv46《錬金工匠》Lv45《銃工匠》Lv36《裁縫工匠》Lv16《機械工匠》Lv24《調理師》Lv27《造船工匠》Lv2《合成》Lv53《楽器製作》Lv5《バイリンガル》Lv15
SP 38
称号
〈もたざる者〉〈トラウマニア〉〈略奪愛?〉〈大商人〉〈大富豪〉〈摂理への反逆者〉〈初代MVP〉〈黒の職人さん〉〈創造主〉〈やや飼い主〉〈工匠〉〈呪われし者〉〈主演男優賞?〉〈食物連鎖の最下層〉〈パラサイト・キャリアー〉




