サラベール山脈 麓(屍竜)
『ぜ、全員、こ、攻撃だ。ドラゴンゾンビを攻撃しろ!!急げ』
『うぉぉ~~喰らえ!!上級火属性魔法』
『こっちもだ。行くぞ!!中級風雷属性魔法』
誰かの言葉と共に、見た事もない色とりどりの様々な魔法がドラゴンゾンビに向けて飛んでいく。
しかし、放たれた魔法は1つ残らずドラゴンゾンビによって己の力として吸収されていく。一見、効果の有りそうな光属性の魔法までも吸収されているところをみると…………
『………やっぱりか』
《見ない感じ》で確認すると、《魔法吸収》と言う名のスキルを持っている事が確認出来た。まぁ、この場合は《魔法反射》スキルじゃ無くて良かったのかも知れないけどな。
ドラゴンゾンビの登場と共に、レイドリーダーのヘンデルが倒されたせいなのか、レイドバトルに対しての統率が取れて無い気がするな。もしかしたら、ヘンデルのところは2番手が育ってないのかも知れないな。
こう言う時こそ落ち着いて行動しないといけないと思うんだけど………まぁ、急に目の前にあんな化け物が現れたらパニックになるのも仕方ないと思うけどな。実際のところ、僕も少し離れた場所で全体を見る事が出来なかったら焦っていたのは確実だろう。目の前に巨大な骨の塊とか絶対に無理だからな。
『だ、ダメだ。魔法系は光属性まで全て吸収されるぞ。物理でなぐ…………』
『うぎゃぁ~~』
うわぁ~!!アレは酷いな。確実にトラウマ系の称号が贈呈されているだろう。御愁傷様です…………
魔法を放ったプレイヤーの1人は、皆へのアドバイスを最後まで言い切る事なくドラゴンゾンビに食べられてしまう。多分だが、物理で殴れ的な事が言いたかったんだと思うんだけどな。
食べられたプレイヤーの最後のアドバイスが、残された皆に届いたかどうかは分からないが、ヨーロッパのプレイヤー達も物理攻撃主体に変更している…………のだが、効率の方は、あまり良さそうでは無いな。
マザードラゴンとドラゴンゾンビの攻撃面での大きな違いは、範囲ブレス攻撃が無くなってプレイヤーの丸飲みする即死系?と思われる攻撃と体を構成している骨をランダムにブーメランの様に飛ばしてくる攻撃が増えたくらいかな。
骨のブーメランは、身体の一部分を自在に飛ばしてくるので、発動の予兆が分かりにくい。
回避は難しそうだが、小さい骨なら威力は高くなさそうだな。実際に《回復士》系のプレイヤーが直撃を喰らってもピンピンしてるからな。逆に、腕などを構成する部分の骨全体を直撃したプレイヤーは瀕死になっているところを見ると…………大きさや部位等に比例して威力が上昇するタイプの攻撃なのだろう。
まぁ、骨このブーメランは発動の予兆が分かりにくいので、回避の方は咄嗟の判断に期待するとして、注意するなら近距離攻撃の即死系?の丸飲みの方だが、こっちの方もドラゴンゾンビから一定の距離を保ち離れていれば大丈夫だろうな。
さて、問題は…………僕達が参戦するのか、しないのかだよな。書類配達のクエスト自体は、マザードラゴン討伐を終えたところで4/4に進んでいるのだが、このまま放置する選択肢は無いよな。
ただ…………放置する選択肢は無いとは思うのだが、ドラゴンゾンビの討伐に失敗して3/4からやり直しになるのは可哀想だがらな。まぁ、やり直せるなら失敗してクエスト終了よりはマシだけどな。
『シュン、どうするの?』
やっぱり、アキラも同じ様な事を思ってたみたいだな。
『どうするの?って言われてもな…………このレイドバトルにも参加する方が良さそうだろ?このまま帰るのも後味が悪いし…………ただ、どう戦ったら効果的なのかが全く分からないんだよな。取り敢えず、僕は離れて回復に回って様子を見ようかと思うけどな』
正直、魔法を吸収されて、物理が効きづらい相手に対して、ただでさえ攻撃力の低い僕が、どう戦って良いのかが分からない。シヴァが使えれば、一撃必殺&離脱と言う選択肢も有るのだろうけど、さっき使用したばかりなので次にシヴァが使用可能になるまで約1日掛かる。
あと、出来る事が有るとすれば、高い回避率を利用した囮くらいの物だろうけど、明らかにドラゴンゾンビは僕を目指して進んで来ているからな。
まぁ、多分と言うか………確実にヘイトを集め過ぎたからなんだろうけどな。流石に、それは遠慮したいよな。
『それでは、私とサラちゃんも回復や支援に回ります』
ヒナタがサラとアイコンタクトで自分達の担当を決めていく。サラもヒナタの発言に頷いているので問題は無いようだな。
『じゃあ、私は弓と扇で遊撃するよ』
僕達の防御力なら、ドラゴンゾンビに接近するのは致命的だからな。遊撃を選んだアキラの判断は正解だろうな。
『俺はアキラさんのフォローに行き…………あっ~~~!!ちょっと待って下さい。相手がゾンビなら逆に回復が効くんじゃないですか?』
『『『あっ~~~~!!』』』
『えっ!!な、何だ!?どう言う事だ!?僕にも分かる様に説明してくれ』
ブレッドを含めた4人は納得した様な顔をしているのだが、僕には全く伝わって来ないんだがな。
『シュン、普通のゲームならゾンビに回復魔法が効果的って言うのは一種のお約束なんだよ。ほら、向こうの人達も気付いたみたい。回復魔法でダメージ与えてるよ』
確かに、ヨーロッパのプレイヤー達もタンクを挟んで回復魔法が使えるプレイヤーを中心に遠距離で攻めている。物理攻撃よりもダメージの通りが良かったのか?前衛系のプレイヤーの方が援護に回っているよな。
『それって、回復アイテムでも効果が出るのか?』
『多分だけど、大丈夫だと思うよ。ゲームによっては蘇生系のアイテムで即死させれたりも出来るしね。あとは………OOOには無いけど聖水等の聖属性系とか』
蘇生系のアイテムで即死か…………確かに聖属性は無いけど、聖水みたいなアレなら効果有るかもな。まぁ、そんな不確かなアイテムよりも、まずは…………
〔『白、黒、出来ると思う?』〕
〔『主よ、結果は試してみる事でしか分からないのじゃ。ただし、少し時間が掛かると思うのじゃ』〕
〔『…………多分、大丈夫』〕
〔『そうか………』〕
結構、ギャンブル要素が強いよな。失敗したら………せっかく与えたダメージが、ふりだしに戻りかねないからな。まぁ、同じ試すならダメ元で早目に行動した方が、トータル的な被害は少なくて済むかな。
僕達が、そうこうしている間にも、また1人、2人とドラゴンゾンビの餌食になっている。
『それなら、僕が攻めに回るよ。ヒナタとサラは予定通り遠目からタンク達への支援や回復に回ってくれ。アキラとブレッドは、悪いけど僕の援護を頼めるかな?』
『それは、良いけど…………1人で大丈夫なの?』
『まぁ、やってみないと分からないけど………何とかするよ。じゃあ、戦闘後の打ち上げを楽しみにして頑張りましょうか。行くぞ!!』
まずは、【白竜】が効くのかどうかは試してみないとダメだよな。これに効果が無かったら、これからやる事全てが無意味になるからな。
僕は、ドラゴンゾンビに向けて遠目から【白竜】を射撃した。その結果は…………《吸収》スキルの方は全く効果が無かったのだが、通常の射撃の方は少しだけ、本当に少しだけだがダメージが有る事が確認出来た。これなら行けるかもな。
〔『アキラ、ブレッド、聞こえてる?』〕
〔『私は大丈夫だよ』〕
〔『俺も聞こえてるけど………今、パーティーチャットを使う必要有るんですか?』〕
ブレッドは、僕とアキラへの攻撃を受け流しながら、訝しげな表情を向けてくる。
ちなみに、一緒にいるアキラは弓で攻撃しながら、僕達へ向けられてくるドラゴンゾンビの攻撃を扇のアーツで相殺してくれている。
〔『ちょっと試してみたい事が有るんだが、周囲に聞かれると少し面倒な事になりそうだからな。それに、なにぶん初めての事だから、どれくらい準備に時間が掛かるかも分からないし、どんな結果になるかも分からない。だから、頼む。アキラとブレッド、少しの間で良いから僕を守ってくれ』〕
〔『分かったよ。シュンも無理しないでね』〕
いつもの事だが、こう言う時に理由を聞かれないのは助かるよな。
〔『…………まさか、俺がシュンに頼られるとは思わなかったです。ここは、俺達に任せて下さい。俺は死んでもドラゴンゾンビの攻撃をシュンまで通しません。その代わり、あとで説明して下さい』〕
正直に言うとブレッドに死なれても困るのだが…………ここは、ブレッドの心意気を尊重させて貰うとするかな。
〔『了解した。2人共任せたぞ』〕
僕は、防御を2人に任せて【白竜】のレアスキルを行使する為の準備に入る。
〔『白、それで、僕は具体的に何をしたら良いんだ?』〕
〔『主よ、簡単な事じゃ。HPとMPが全快した状態で意思を込めて射撃するだけじゃ。あとの事はワシに任せるのじゃ』〕
そんな単純な事だけなのか?HPもMPも、あと数秒程で全快になるからな。思っていたよりも準備に時間が掛からないんだな。もしかして、かなり便利に使えるんじゃないのか?
〔『ただしじゃ、消費するのはMPが全部とHPが半分じゃ』〕
すみません。現実は、そんなに甘くなかったです。消費が半端無い。これでは、滅多な事では使え無いな。
〔『主よ、そこは慣れじゃ。経験を積んで慣れれば消費も減るのじゃ』〕
慣れか…………まぁ、慣れれば消費が減る可能性が有る事が分かったのは朗報だな。今後、使う機会が有るかどうかは分からないけどな。
それよりも、重要な事は射撃を外せば、僕の方が瀕死でピンチになるって事なんだよな。MP全部を使うなら〈必射〉を同時に使えないと言う事か、外さない為にもギリギリまで近付く必要も有るな。HPも全快状態が条件の一部なら、一撃も喰らえないと言う事だな。こっちは、幸いな事に〈簡易結界〉は1回分有るので、気を付ければ何とかなるだろうな。
こう言う時に、シヴァが使えれば少しは楽になるんだが…………まぁ、無い物ねだりは止めておいて、覚悟を決めるとするかな。
〔『アキラ、ブレッド、準備完了だ。5秒前からカウントするから、あとはヨロシク頼むよ』〕
目の前にいる2人が、こちらを振り向かずパーティチャットも無く無言で頷いた。
〔『行くぞ。5……4……3……2……1……Go!!』〕
カウントダウン終了と共にタンク勢を一気に飛び越えてドラゴンゾンビとの距離を詰める。今ので20mくらいは稼げたが、近付くに連れて多彩な骨のブーメランが襲い掛かってくる。しかし、《付与術》と装備で強化された僕の速度には追いついて来ない。これなら…………零距離、もしくはそれに近いところまで行けるか?
僕が、若干の余裕を感じた時に変化は起きた。
『シュン、危ない!!』
僕に油断が全く無かったとは言わないが、その攻撃の発想は頭に無かったよな。僕の目の前にはドラゴンゾンビの頭部全てを使った骨のブーメランが大きな口を開けて襲い掛かって来た。丸飲み+骨ブーメランの合体攻撃。
ドラゴンゾンビの頭部が近付いてくるにつれて、走馬灯の様にスローに感じる。この作戦は、完全に失敗だったのだろうか?まぁ、1人でレイドボスに向かって行くとか、僕のキャラに合ってないよな。
だが…………それは、僕にドラゴンゾンビを攻撃して倒すと言う確固たる意志が有ったらの話だけどな。僕が今から行うのは【白竜】のトリガーを引いて、白の|《蘇生》《・・》スキルを発動するだけなので、今からでも十分に間に合う。
そして、本体部分に当てさえすれば良いだけだ。おあつらえ向きに、本体のメイン部分である頭部の方から迎えに来てくれると言うサービス付きだからな。このチャンスを逃す手は無いだろう…………と言うか逃したら終わりだよな。
何から何まで初めてづくしで、結果がどうなるのかは全く分からないのだけど。ここまで頑張ったんだ、悪い様にはならないだろうな。
〔『白、頼んだぞ』〕
僕は、ドラゴンゾンビの頭部に丸飲みされる瞬間に全ての魔力を込めて【白竜】のトリガーを引いた。
『スコーピオ、ご苦労様。助かったよ。いつも面倒を押し付けてお願いしてごめんね』
レオは、スコーピオから差し出されたマザードラゴンから回収してきた金色の鱗を受け取った。相変わらず、スコーピオの方は一切言葉を発しないし、表情にも変化が無い。
『それでは、遂に完成するのですか?』
『うん。これで逆鱗も9個目。このレシピに載っている素材は全部集まったからね。アクエリアス専用の魔霊器も完成するね』
『レオ、ありがとうございます』
『まぁ、アクエリアスの分は製作に少し時間が掛かると思うから、すぐに完成には至らないけどね。なるべく早く仕上げ…………おっと、どうやら向こうも終わったみたいだね。最後は意外だったけど………いや、そうでも無いのかな』
『…………レオは、彼が何をしたのか分かるのか?』
驚きの表情を隠しきれないタウラスが、謎を解明した様な表情のレオに問いかける。
レオは、一瞬か沈黙したのち、舐めていた棒付き飴の飴部分をバリボリと音を立てて噛み砕いてから答えた。
『うん。はっきりと全部を見てなかったから詳しい詳細までは分からないけど、大まかにならね。ドラゴンゾンビの最後は、彼が正確には彼の持つ魔獣器のスキル、《蘇生》のせいだね』
レオの発した聞き慣れない単語に3人は耳を疑っている。唯一、反応する事が出来たのは………
『そ、《蘇生》!?それは、まだ発見されてないはずでは?ピスケスからの報告にも無かったはずですよ。それに魔獣器?私達の持つ魔霊器とは違うのですか?』
レオに質問を返せたアクエリアスだけだった。
『うん。それは、アクエリアスの言う通りなんだけど、彼は秘匿してただけなんだろうね。あそこにいるプレイヤー達も驚いてはいるけど、彼の仲間達以外は《蘇生》には気付いてないみたいだけどね。それに、流石は彼の仲間達だけは有るよね。何人かは、彼が《蘇生》を使った事には気付いてるみたいだからね。それと最後の質問の答えだけど、彼らの持つ魔獣器は日本サーバーでキャラメイクしたプレイヤーのみが獲得出来る専用品。逆に、魔霊器はヨーロッパサーバー|専用品。当然、アメリカサーバーや中国サーバーにも似たような武器は存在するけど、今現在の獲得者はいないけどね。まぁ、僕としては、必要な素材が集まったから、クエストがいつ終わっても問題無かったんだけどね。せっかく、素材回収の為にクエストを起こして長引かせてたんだから、しっかりと元は取らないとね』
その言葉を聞いたレオ以外の普段は全く表情を変えないスコーピオを含む3人は、驚きの表情を隠しきれなかった。
その3人が驚いている対象には、遠くから見ていただけで全てを理解し、ほぼ全てのプレイヤーが知らないであろう情報まで持っていたレオ自身も含まれているのだが、当のレオ本人が知る事は無かった。
僕がトリガーを引いた瞬間、僕とドラゴンゾンビを中心に辺り一面を真っ白な光の雨がが覆い隠す。目が眩むくらいに眩しい光量を放っているのにも関わらず、僕の視界が失われる事は無い。まぁ、真っ白な光に覆い隠されているので、辺りは何も見えてないのと変わらないけどな。
その間、体感時間で1分ぐらいだったろうか。実際は、もっと短いのかもしれないけどな。
目の前が元に戻った時には、ドラゴンゾンビは既に半分以上の身体を消失している、誰が見てもはっきりと分かるぐらいな瀕死だった…………と言うか、致命傷を喰らっても生きてるんだな。その事が驚きだよ。
最後の力を振り絞り、僕に向けて爪を振り翳してくる。
こうなると、逆に尊敬出来るかもな。まぁ、僕としては、とあるアイテムのテストが出来るから丁度良かったんだけど…………
『ドラゴンゾンビ、これで終わりだ』
まぁ、このアイテムに効果が有ったらの話だけどな。効果が無かった場合は、ただ単に恥ずかしいだけの痛いヤツになるのだけど…………
僕は、ドラゴンゾンビに鞄から取り出したカゲロウ印のイオン水を振りかけた。その瞬間にドラゴンゾンビの残っていた身体は、カゲロウ印のイオン水が振りかかった場所から順次消失していく。
〔『うわっ~~~!!酷いな、これは…………』〕
〔『主よ、主が勝手にした事なのじゃ。この件に関しては、ワシらは全く関係無いのじゃ。寧ろ被害者なのじゃ』〕
その事は、十分に理解しているんだけど、カゲロウ印のイオン水が品質向上の性能しか無いのにも関わらず光属性、それも現時点で最高の極大の上昇効果を持っていたので、アキラの言う聖水の代わりになってダメージを与えられるのでは…………と思ったのだが、想像以上の結果だったな。
………と言うか、《蘇生》スキルよりも効果が有りそうに見えるのは、自分の目で消失の過程を確認出来たか、出来てないかの違いだけなのか?
自分でしでかした事だが、若干………いや、かなり引いているよな。まぁ、あとで、この結果だけは生産者であるカゲロウに伝えておこうか。本来、カゲロウが考えている用途とは全く違うから驚くとは思うけど、これを機に一般にも売り出したら、かなりの売り上げを上げる気がするからな。
『な、何が起きたんだ?おい、お前、一体何をしたんだ』
その言葉に振り返って見ると、多くの目が僕に向いているのが分かる。そして、1歩1歩確実に僕に近付いて来ているのも…………
今の出来事を最初から順を追って説明しても良いんだが、僕自身も完全に理解している訳では無いからな。分からない事まで仮説で補って説明するのは、面倒だよな。ここは、〈朧〉を使って逃げさせて貰おうかな。ゼニスの時にも経験が有るから、失敗する事も無いだろうからな。
〔『皆、聞こえてるかな?僕は、この場から〈朧〉を使って逃げようと思ってる。ホームで合流しよう』〕
一方的な業務連絡?的な伝言だけを入れて、この場所からの脱出作業に入る。まぁ、脱出作業と言っても〈朧〉を使って、それなりの演出をして逃げるだけなんだがな。
それにしても、色々有り過ぎて疲れ過ぎたよな。最初は単なる書類配達のクエストの為だったんだけどな。気付けばレイドバトルにまで発展してるんだからな。生半可な報酬では割りに合わないよな。クエスト達成時には、それ相応の報酬を吟味させて貰おうか。
あっ、そうだ!!取り敢えずは、ホームに着いたら紅茶を飲もう。そろそろ、前回仕込んだ分が良い感じで仕上がっているはずだからな。あとの事は、それからでも良いよな。
『おい、無視をするな。そこの黒一色のお前の事だ。何か言ったらどうな………あっ、おい、ちょ、ちょっと待て!!き、消えた!!消えたぞ。何処だ?何処へ行った?皆、探せ!!探すんだ』
悪いとは思うけどな。毎回、毎回、説明に付き合ってられないんだよ。時間は、かなり掛かると思うが自分達の手で検証と確認を頑張って貰いたいとこだよな。
僕が消えたあとで、虚しく響く探せの言葉だけが寂しく木霊していた。
『あ~!!良い薫りだ。これだよ。これ。マイホーム、マイソファー、マイティーカップ、そしてオリジナルの紅茶。やっぱり、僕にとってのOOOは、これが無かったら始まらないよ』
まさに至福の一杯だ。
ゲートを使ってホームに戻って来た僕は、何よりも先に紅茶を味わっている。まぁ、いつも通りなんだけどな。
『主よ、ワシらも同意するのじゃ』
『シュン、我は茶菓子を所望するのだ。今日は甘い物を希望するのだ』
『…………同意』
三者三様に紅茶で喜んでくれるのは嬉しいよな。
『まぁ、焦るなよ。茶菓子は、他の皆が戻って来てからだ』
紅茶の1杯くらいなら良いだろうけど、打ち上げをするなら、最低限レイドバトルに参加した全員が望ましいからな。まぁ、時間的に小学生組は少し厳しいかも知れないけど…………幸いな事に明日は休みだ。紅茶の1杯飲んで少し楽しむくらい遅くなっても許されるだろうからな。
『…………戻って来た』
『皆、おかえり。今日は、ありがとう。紅茶でも………』
『シュン!!そこに正座。あのあとが大変だったんだからね。私達が一緒に居たのを見てたプレイヤー達に囲まれて、質問攻めにあって………あっ!!取り敢えず、暖かい紅茶とお茶菓子4人分。やっと解放されたんだよ』
アキラの後に控えるヒナタ、ブレッド、サラも激しく同意して頷いている。
『………すみませんでした。はい。分かりました。すぐにご用意させて頂きます。少々お待ち下さい』
そこまでは、頭が回ってなかったよな。確かに、あの状況で僕だけが消えると、残っていたアキラ達に質問が集中するのが当然だよな。全ては僕の考えが至らなかった事で招いた結果だが、アキラ達に押し付ける形になったのは失敗だよな。かなり悪い事をしてしまったな。
でも正直、正座の時間が一瞬で終わったのは救いだな。本当に紅茶様には感謝しか有りません。現実でもOOOの中でも正座は痺れる。特にOOOの中では、麻痺のバッドステータスと言うおまけ付きだからな。これも慣れたら大丈夫の類いなんだろうけど…………僕には慣れる気がしないからな。
以前に、ケイトが日本の文化体験と称して、フレイ達に教わってOOOの中で正座体験をした事が有るのだが、5分くらいで足が痺れて10分間完治不可の麻痺のバッドステータスを受けてしまった事が有る。それが、判明して以降の簡単な罰として【noir】では正座が使われている。慣れていない者には辛い所業だからと言う理由で、フレイが発案して採用されている。まぁ、罰を喰らうのは大概が男組だがな。
お詫びとして素敵なお茶菓子を一緒に用意させて貰おうかな。
え~っと…………確か、果樹園に美味しそうな苺が出来てたから、それは使いたいよな。となると、ショートケーキ?いや、それでは普通過ぎて特別感が全く無いし同じ作るにしても楽しくないからな。
う~ん………そうだ!!
苺のコンポートタルトでも作るか。見た目の感じとしては、苺で作るタルトタタンってところだな。普通のタルトタタンはリンゴで作る物だが…………旨ければ、呼び方は気にしなくても良いよな。以前にテレビで見て美味しそうだと思ったからな。まぁ、作るのに少々時間が掛かるのが難点だが、現実と違って色々とショートカットも出来るし問題無いだろうな。
ついでに、紅茶もエクスライトの上で作った最新作を淹れてみるか、さっぱりとした風味が苺との相性がよさそうだからな。
『……………』
『シュンさん、遅いですね』
『そうだね。いつもなら紅茶だけは、すぐに出て来るのに…………私、ちょっと見てくるよ』
ちなみに、普段ならアキラもヒナタも紅茶が出てくるのに少し時間が掛かっても待てるだけの忍耐は有るのだが、今はレイドバトル2連戦とヨーロッパのプレイヤーからの質問攻めによって機嫌度が下がりに下がっている。さらに、駄目押しとして、目の前で3匹のファミリアが紅茶を美味しそうに飲むところを見させられて、キッチンからの美味しそうな匂いに耐えるという罰ゲームに近い所業を喰らって、いくら短時間とは言っても耐えるのは難しい事だろう。
『あっ、俺が行ってきますよ。アキラさんは、ゆっくり休んでて下さい』
それは、アキラとヒナタだけに限った事ではなく、同じ事を経験しているサラとブレッドも同様なのだが………むしろ、小学生の2人の方が良く耐えていると思う。
『シュン、手伝いに来ました。それで、今は何を作っているんですか?』
『おっ、ブレッドか、丁度良いところに来たな。今作っているのは新作スイーツだ。もう少しで完成するぞ。ブレッド、悪いんだが、そこに有るティーポットとティーカップを運んでくれるか?運び終わったら、マナさん達にも渡してくれると助かる』
『それは、良いんですが…………マナさん達の分を含めても数が多くないですか?』
『もう少しで戻って来るフレイ達の分も有るからな。ブレッド達には悪いんだが、さっきの出来事の説明は1回で終わらせたいし、僕以外の当事者の回答も必要になるからな。それと、どうせ皆が集まるのなら、ついでに会議も終わらせようと思ってな。ブレッド達は時間大丈夫か?』
皆が揃うのであれば、明日の会議を前倒しにしても問題無いだろう。
『俺とサラは大丈夫です。アキラさん達は分からないけど…………』
『アキラ達の事なら、気にしなくても大丈夫だぞ』
フレイ達にはメールで確認済だし、アキラとヒナタの今日のログアウト時間は聞いてて、まだまだ余裕が有る事も知っている。まぁ、予定の有る無しについては確認していなけど…………このあとで今後の予定の相談とドロップの確認は、するつもりだったからな。これを、一緒に纏めても問題ないだろう。
『それなら、分かりました。皆の我慢も限界に近いから急いで下さい』
『了解した』
装備
武器
【ソル・ルナ】攻撃力100/攻撃力80〈特殊効果:可変/2弾同時発射/音声認識〉〈製作ボーナス:強度上昇・中〉
【魔氷牙・魔氷希】攻撃力110/攻撃力110〈特殊効果:可変/氷属性/凍結/魔銃/音声認識〉
【空気銃】攻撃力0〈特殊効果:風属性・バースト噴射〉×2丁
【火縄銃・短銃】攻撃力400〈特殊効果:なし〉
【アルファガン】攻撃力=魔力〈特殊効果:光属性/レイザー〉
【虹鯨(魔双銃剣ver.)】攻撃力500〈特殊効果:7属性〉
【白竜Lv90】攻撃力0/回復力280〈特殊効果:身体回復/光属性〉
【黒竜Lv88】攻撃力0/回復力268〈特殊効果:魔力回復/闇属性〉
防具
【ノワールシリーズ】防御力105/魔法防御力40
〈特殊効果+製作ボーナス:超耐火/耐水/回避上昇・大/速度上昇・極大/重量軽減・中/命中+10%/跳躍力+20%/着心地向上〉
アクセサリー
【ダテ眼鏡】防御力5〈特殊効果:なし〉
【ノワールの証】〈特殊効果:なし〉
天狐族Lv79
《錬想銃士》Lv22
《真魔銃》Lv23《操銃》Lv43《短剣技》Lv44《拳技》Lv10《緩急》Lv9《魔力支援》Lv10《付与術改》Lv30《付与練銃》Lv31《目で見るんじゃない感じるんだ》Lv50《家守護神》Lv65
サブ
《調合工匠》Lv33《上級鍛冶工匠》Lv8《上級革工匠》Lv7《木工工匠》Lv42《上級鞄工匠》Lv10《細工工匠》Lv46《錬金工匠》Lv45《銃工匠》Lv36《裁縫工匠》Lv16《機械工匠》Lv24《調理師》Lv26《造船工匠》Lv2《合成》Lv53《楽器製作》Lv5《バイリンガル》Lv15
SP 38
称号
〈もたざる者〉〈トラウマニア〉〈略奪愛?〉〈大商人〉〈大富豪〉〈摂理への反逆者〉〈初代MVP〉〈黒の職人さん〉〈創造主〉〈やや飼い主〉〈工匠〉〈呪われし者〉〈主演男優賞?〉〈食物連鎖の最下層〉〈パラサイト・キャリアー〉




