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OOO ~Original Objective Online~ 称号に振りまわされる者  作者: 1048
第1部 第6章
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サラベール山脈 麓(ドラゴン)

『シュン、アレはヤバイ。ヤバイ奴です。俺の防御力だと紙と大差ないぞ』

まぁ、見た感じは、そうだと思うが…………多分、アレくらいの攻撃になると《付与術》を掛けまくって底上げした僕の防御力も紙と変わらない。しかも、ブレッドよりも確実に薄い事は確実だからな。まぁ、紙は紙なりにヒラリヒラリと回避させて貰うけどな。


『ブレッド、少し落ち着け。アレは必中攻撃では無さそうだから、喰らわなかったら大丈夫なタイプの攻撃だ。回避を優先して、なるべく攻撃の範囲外に出ていれば、簡単に喰らう事は無いと思う。爪の速度は若干遅目だし、ブレスは事前に僅かだが溜め時間(モーション)が有りそうだ。気を付けていれば直撃だけは避けられるだろう』

僕達の目に映っているのは、プレイヤーを蹂躙していく巨大な緑色のドラゴン。推定、全長12m………ビルの3~4階相当と言ったとこだな。まぁ、これくらいのサイズになるとOOO内なら大概の建物よりも高いよな。


そして、このドラゴン自体は大きさが大きさなだけに喫茶店を出た瞬間から見えていた。何処の世界から来た恐竜だと小一時間程、運営と話をしてみたいぐらい驚いてはいるのだが…………


ちなみに、このドラゴンは四足歩行タイプの様なので、白達の分類で現すならドラゴン種に相当する。いくら、ドラゴン種が竜種の下位種だと言っても、このマザードラゴンと白達が戦えば、笑い話にならないくらいの完敗になる気がするんだが、気のせいなのだろうか?


…………と言うか、このマザードラゴンは一体何処に隠れてたんだ?こんなのが街の近くにいたら、絶対に目立つと思うし、誰かが気付くはずだろう?まさか転移(ワープ)とか使えないよな。そこは頼むよ…………


ブレッドが言う様に、一目でマザードラゴンのヤバさは伝わってきている。僕達が確認出来たのは、たった20秒程の出来事だったが、マザードラゴンは、それだけの間に爪で2人、ブレスで3人、衝撃波で1人を亡き者(神殿送り)にしている。まぁ、ブレスが広範囲に吐き散らす系ではなく、直線系なのは救いかもな。その点だけは、以前に戦ったツインテールドラゴンよりはマシだと思うからな。あと、尻尾の長さから見ても尻尾の攻撃は驚異にならないだろうな。


マザードラゴンが足を移動する度に巻き起こる衝撃波は、気を付けておけば喰らう方が難しそうだから一旦置いておくとして………気を付けるポイントは、前足の爪と範囲攻撃ブレスぐらいか?いや、絶対に他にも有りそうだよな。2週間も負け続けるくらいだから、警戒を密にしておいても損は無いだろうな。


それにしても、これを相手にして2週間も挑み続けるとか、ヨーロッパのプレイヤーは一種の(マゾ)の集まりではなかろうか…………


『アキラ、皆への指示とかフォローを任せて良いか?僕は、前線を維持してくれているプレイヤーのサポートに回るから』

取り敢えず、前線に行く前に《付与術》だけは、皆に掛けておいた方が良さそうだよな。


『分かったよ。ヒナタとサラちゃんは、回避優先で遠距離から魔法で回復と魔法盾(マジックシールド)系の魔法をお願い。ブレッド君は、回復系のアイテムを使って前衛の回復と皆のフォローを………シュンの作った鞄なら鞄の共有部分が倉庫と繋がってるから中身は自由に使って、出し惜しみは無しだよ。勿論、ブレッド君も自分の命(回避)優先してね。私は遠距離アーツで攻撃していくから。残り時間は………50分を少し切っちゃったか。皆、最後にもう一度言うけど絶対に自分の命を優先だからね』


『『『はい』』』

皆、良い返事だな。やっぱり、僕とは違ってアキラが纏めると場が締まるな。


皆に〈守備力増大〉と〈速度増大〉と〈回避増大〉。そして、念の為に白のアーツ〈部分結界〉を掛けて………と、僕は前線へと駆け出した。






『〈攻撃力激減〉〈速度激減〉〈速度激減〉』

まず、前衛(ここ)の態勢を整えるところからだよな。


僕は、前線で指揮を取っている風なプレイヤー達に近付きながら、マザードラゴンを《付与術》で弱体化させる。これをしておかないと本当に全滅しかねないくらい、前衛の動きがぎこちなく感じるし、危うく思えるからな。


いかに、普段一緒にプレイする仲間内の前衛が頼りになっているのかが分かるよな。フレイ、カゲロウ………ついでにアクア、本当に感謝します。


『お~い!!そこの人達、ちょっと良いか?助っ人に来たんだが、ここのレイドに参加するのは初めてでな。このレイドバトルのリーダーは誰なんだ?教えてくれないか』

まぁ、多分だが…………見た目的にも威厳的にも、この筋骨粒々の巨漢部分アフロがリーダーなんだろうけどな。さらに言うなら、種族がダークエルフでガッチリした装備だから前衛系を統一しているプレイヤーなんだろうな。


『それは有難い。レイドリーダーは儂である。ギルド【グレーテル】のギルドマスター、ヘンデルだ。種族はダークエルフで、ジョブは《調教師》だ。45才独身のドイツとフランス人のハーフ。ちなみに、彼女は募集中。趣味は…………』

おいおい、ほっておくと何時までも話し続けそうなん気配がするんだが…………レイドバトルのリーダーは、僕の思っていた通りだったが、装備等の見掛けとは裏腹に後衛系とは予想外過ぎるぞ。


それに、ヨーロッパの人は、こんな緩い感じなのか?いや、違うな。周りのプレイヤー達も露骨に嫌な顔をしているからな。だが、嫌そうな顔をするぐらいなら止めてほしいんだがな。まぁ、グリム童話みたいな名前からして冗談を優先するプレイヤーなんだろうな。


…………と言うか、レイドバトルに勝てない理由って、これじゃないよな。レイドバトルのリーダーが変人と言うのが理由なら、今すぐに撤退させて貰うぞ。まぁ、流石にそれは考え過ぎかな。時間帯がランダムなら毎回同じメンバーが集まる事は無いだろうからな。


『悪い。そう言う自己紹介は、終わってからにしてくれ。僕は、シュン。回復と補助(サポート)メインのプレイヤーだ。レイドバトルの経験は2回程有る。指示をくれれば働くぞ』

本音を言うなら、今後会う予定の無いプレイヤーの細かい自己紹介まで聞く気は無いからな。それに、残念ながらと言うか、僕にオッサンの趣味を聞くと言った変な趣味は持ち合わせていないからな。


『……と料理と釣り…………分かったのである。では、シュン殿には、敵愾心(ヘイト)を管理している壁役(タンク)の回復とフォローをお願いしたい』

まだ、自己紹介を続けてたのか?いつまで続ける気なんだ。緊張感が無さ過ぎる気がするんだが…………ヘンデルの周りで苦い顔をしている皆さんに思わず同情したくなるな。


それと、確か…………タンクと言うのは壁役の事だったよな。まぁ、ざっと見る限り、前に行けば行くほど消耗が激しそうだから分かるのだけど…………ヘイトって何だ?


〔『主よ、ヘイトとは相手に攻撃したり挑発したりする事で、その相手に蓄積する敵愾心の事じゃ』〕


〔『………それが、有るのと無いのでは何か違いが有るのか?』〕


〔『それが有ると相手に狙われてしまうのじゃ。前衛系の者には割りと常識的な事じゃ』〕


〔『なるほどな。僕がいつも戦闘の後半になるにつれて狙われる確率が高くなっていたのは、そのヘイトって言うのが管理出来て無かったからなんだな』〕

そう言う事なら今まで疑問だった事が色々と納得出来るよな。


『了解だ』

この言葉には、ヘンデルへの返事の他にも白達の返事も含まれている。これぞ、一石二鳥と言うやつだな。


〔『白、黒、ヤバそうなプレイヤーから順次教えてくれ。まずは、回復を優先する』〕


〔『ワシも了解なのじゃ』〕


〔『…………左側のダークエルフ男』〕

アレか?確かに瀕死一歩手前ってところだな…………と言うか、あの状態でよく持ち堪えているよな。よっぽど個人スキルが高いのだろうな。


『そこのダークエルフ、回復行くぞ!!』

【白竜】と【黒竜】の連射でHPとMPを回復して、おまけに〈部分結界〉を放つ。これで、ブレスは無理だとしても爪の攻撃1回分は防げるだろうからな。


『おっ、おい、ちょ、ちょっと待て、焦るな。おっちゃんは味方だ。や、やめろ~~~…………うん!?か、回復してるのか?おい、兄ちゃん、一体どう言う事だ?説明しろ』

自称おっちゃんよ(まぁ、見た目からしておっちゃんだがな)、まず自分が焦るのを止めたらどうだ?それにしても、これって毎回説明しないといけない事なのだろうか?


〔『主よ、仕方が無いのじゃ』〕


〔『…………何事も諦めが肝心』〕

まぁ、色々と手遅れなので諦めてはいるんだが、戦闘中だけは勘弁して欲しいよな。


『その質問は却下だ。こちらは一切受け付ける気は無いし、答える気も無い。そう言う物だと理解して欲しい。回復は僕に任せて、皆さんは攻撃に集中してくれ。時間は残って無いぞ』

見知らぬダークエルフと喋りながらも、戦線を立て直す為に、回復と〈部分結界〉を射撃していく。


『うっ………兄ちゃん、分かった。恩に着る』






『すっげぇ~、すっげぇ~な、シュンは。何時も………くっ!!〈インパクト〉あんな感じなんですか?』

ブレッドが3人を庇う様に一足飛びに前に出て、マザードラゴンから飛んでくる衝撃波をアーツで弾き返す。衝撃波自体は爪やブレスよりも威力が少ない事も有り、難なく捌き切っている。逆にブレッドは、思っていたよりも衝撃波の威力が低くて拍子抜けと言った感じているが………流石に、それを顔に出す程の度胸は無さそうだ。


『前衛の皆様、回復行きます!!〈ヒールレイン〉。確かに、私達の回復が悲しく感じますよね』

その隙に、ブレッドのフォローを受けたサラが範囲回復魔法を放つ。長い間2人でパーティーを組んでいただけ有って、この辺りの連繋はスムーズだ。サラも回復後は同じ場所に留まらず、常に動いてマザードラゴンの攻撃に注意している。この様なプレイを《回復士》系のプレイヤーの間ではヒット&アウェイならぬヒール&アウェイ(辻ヒール)と呼んでいたりもする。


ちなみに、〈ヒールレイン〉は水属性の範囲回復魔法で、単体への回復量こそ【白竜】の性能には劣るが、広範囲を一気に回復出来るのでトータルでの回復量は勝っている。寧ろ、こう言うレイドバトルでは単体回復(その場しのぎ)しか出来ない【白竜】よりも重要になってくるので、実際は悲しく感じる程の事ではないのだが………《回復師》としてのプライド等を考慮すると分からない話では無いのだけども………


『まぁ、大体は………そうかな。アレで、本人は生産系のプレイヤー(職人)だと、〈紫電扇〉本気で思ってるからね………』


『まぁ、シュンさんですからね。〈風の加護〉いきます』


アキラの牽制兼遊撃の間に、ヒナタが準備していた範囲補助魔法を放つ。


ヒナタが放った〈風の加護〉は、βテスターの検証好きのプレイヤー達を持ってして《風魔法》唯一の長所と言わせた魔法だ。その効果としては、数回分(・・・)の〈ウインドシールド〉+攻撃への風属性の追加効果+風耐性付与+速度上昇。スキルLvとの兼ね合いで効果の継続時間や威力、〈ウインドシールド〉の回数等が変わってくるのでスキルLvが低い状態では効果は薄いし、やたらと詠唱に時間が掛かる欠点も有るが、それを踏まえても十分なお釣りが来るほどの至れり尽くせりの魔法だったりもする。


ちなみに、他の属性魔法にも〈○○の加護〉と言う様な魔法は存在している。その殆どが、似た様な効果を持っているのだが、速度上昇(・・・・)の身体的補助効果が得られるのは〈風の加護〉だけなので、唯一の長所と言われている理由でも有る。


『それもそうなんだけどね…………う~ん。そろそろ、お喋りは終わりにしようか。今から、パーティーを2つに分けるよ。ヒナタとブレッド君はマザードラゴンの左側に回って。私とサラちゃんは右側に行くから。正面は、このままシュンに任せておけば大丈夫だからね。もう一度念を押しておくけど、無茶したらダメだからね』

シュンを異常扱いしている4人だが、自分達も軽くお喋りをしながらレイドバトルを、戦えると言うのも異常だと言う事に気付く事は無かった。






一方その頃、【サラベール】近くの小高い丘の上………



獅子座(レオ)()魚座(ピスケス)から報告の有った日本サーバーのイレギュラーの片割れですか?』

ただひたすらに黙って戦場を眺めていた女が、ようやく口を開いた。


『だろうね。まぁ、ピスケスは()に接触した時はコードネームを名乗らず、マリアと名乗ってみたいだから僕達の存在は知らないと思うけどね。僕も報告を聞いて最初は半信半疑だったけど………確かに、彼は報告の通り特異だよ、水瓶座アクエリアス。どうやら2週間もクエストを進めずに【サラベール】に近付く彼を待っていたかいが有ったみたいだね』

岩に腰掛けて戦場を眺めて微笑むレオと呼ばれた少年が、棒付き飴を舐めながら右隣りから自分を見下ろして苦い顔をしているアクエリアスと呼んだ女性へ返事を返した。


『では、当初の予定通りに【ゾディアック】(こちら)の欠番………3か7として仲間に引き込むのですか?』


『う~ん………それは、どうだろうね。そんなに上手くいくのかな?牡牛座(タウラス)には説得出来る?』


『うむ。分かっていると思うが、俺には不向きな案件だ。逆に力ずくではどうだ?』

タウラスと呼ばれた御人は、交渉事には不向きな様だ。


『レオ、タウラスなら彼に勝てるのですか?』


『まぁ………この中でも武闘派のタウラスなら、やり方によっては勝てなくもないだろうね。僕には無理だけど…………正攻法で勝つには、今集まってないメンバーを含めてギルド幹部全員で襲わないと無理かな』


『そ、そんなにですか?』


『うん。僕の|《魔神眼》《スキル》で見る限りは、単純に突っ込んだら返り討ちに遇うのだけは補償出来るね。彼が本気で戦うかは分からないけどね』

流石に、この一言にはアクエリアスだけでなく、タウラスまでもが苦い顔をする。


『まぁ、スキル構成が特殊なのも有るけど、装備している物が異常だよね。向こうは、僕達よりもプレイキャリアが長いから仕方ない事だとも思うけどね。おっ!!やっと、マザードラゴンの残りHPも半分くらいななったね。そろそろ、場が動くはずだよ。蠍座(スコーピオ)、また例の素材の回収を頼めるかい?』


コクリと1回だけ頷いたスコーピオと呼ばれた全身を黒一色で纏め上げた細身で長身の男は、結局1度も喋る事無く3人を小高い丘に残して戦場へ向かった。







『そろそろ例の攻撃が来るぞ。警戒を密に、注意を払え………』

例の攻撃って何だ?何かしらの特殊な攻撃が来るのか?残りのHPが半分を切ったからか?


まぁ、爪とブレスと衝撃波だけなら、上手く戦略を立てれば2週間も倒せないって事は無いだろうからな。少し共闘しただけだけど、所見で予想していたよりもLvや技術が低く無いのも分かっているからな。


それにしても、誰1人としてヘンデルの言葉に耳を傾けた様子が無いのは何故だ?その情報を予め知っているからなのか…………それとも、信頼出来ないからか?まぁ、僕なら後者だけどな。


グォォォォォォォ~~~~~ン!!


『うぉっ!?』

マザードラゴンが雄叫びと共に、全方向(オールレンジ)に向けた衝撃波を繰り出した。さらには、色とりどりのベビードラゴンまでも産み落としている。


その衝撃波の一撃で、かなりの時間を費やして前衛に掛けた白の〈簡易結界〉と《付与術》が一瞬にしてパーになっている。勿論、僕に掛けていた分もだ。流石に全員とまではいかなかったみたいだが…………やっぱり、マザードラゴンも特殊な攻撃を持っていた様だな。


〔『…………仮にもレイドボス。当たり前』〕

まぁ、そうだよな。それに、衝撃波よりもベビードラゴンの方が面倒そうだな。


どれも一撃程度では倒せない様なので、産み落とされた1匹1匹は、そこそこの強さを持っている。これなら、2週間も負け続けていた理由も分かる気がするな。


マザードラゴンから産み落とされたベビードラゴンが、一斉にプレイヤーを襲い出している。一気に相手の手数が増えた事で、僕達の回復によって、ある程度の安全を保たれていた戦線が崩れ掛かっている。僕は戦局を分析しながら、近くにいるプレイヤーから〈簡易結界〉を掛け直していく。


〔『主よ、大絶賛大量増殖中なのだ』〕


〔『…………しばらく、止まる気配が無い』〕

確かに、そうだよな。能力面はともかく………数と言う面では、既にレイドバトル参加者(こちら側)を大きく上回っているからな。


〔『シュン、それだけでは無いのだ。マザードラゴンが回復しておるのだ』〕


〔『マジか!?』〕

シヴァの非情とも取れる発言に、僕は《見ない感じ》をフルに使ってマザードラゴンのステータスを確認する。


かなり予想を斜め上に進む展開だが、産み落とされたベビードラゴンの中には、回復魔法らしき物(多分、ベビードラゴン専用のアーツだよな)でマザードラゴンを回復させる青い色をした個体までいる。しかも、マザードラゴンは一向に産むのを止める気配が無い。


まぁ、救いなのは、ベビードラゴンを倒せばマザードラゴンの方にも若干だがダメージを与えられているところかな。でも、徐々にだがHPが回復している。つまり、与えるダメージよりも回復が上回っていると言う事だよな。


う~ん…………正直なところ、かなり面倒な攻撃だよな。今のところ、前衛の皆さんの頑張りで後衛まではベビードラゴンの攻撃が届いてないみたいだけど、このままだと時間の問題だろうな。まぁ、素材的には美味しそうな状況でも有るので、若干ワクワクしているのプレイヤーがいるも事実なんだけどな。まぁ、その内の1人は僕でも有るわけだし…………


〔『シュン、今こそ我の出番なのだ。ベビー共を瞬殺するのだ』〕

まぁ、確かに………シヴァを使えば、一気に戦局をひっくり返す事は可能だろうけど、急激に状況が変わる事は無いだろう。いずれ元通りのじり貧状態に戻るだろうからな。まずは、ベビードラゴンの増殖をどうにかしないとダメだろうな。


〔『シヴァ、少しだけ待ってくれ。ベビードラゴンの増殖を止めたら、存分に働いて貰うから』〕


〔『うむ。分かったのだ。シュン、約束なのだ』〕


『誰か、ベビードラゴンの増殖を止める方法を知らないか?』


回復をしながら周囲のプレイヤーに聞いて回る。このイベントを2週間も戦っているからには、攻略法を知っているプレイヤーがいてもおかしくないからな。


『尻尾だ。尻尾に強烈な一撃を入れてブッタ切れば、ベビードラゴン(赤ちゃん)の増殖は一時的に止まる。今、それが必要な事なのか?お前みたいな《銃士》なんかに出来る事が有るのか?』

なるほどな。ヨーロッパのプレイヤーはベビードラゴンを赤ちゃんと呼ぶのか…………郷にいれば郷に従えと言う事だし、僕も赤ちゃんと呼ばして貰おうかな。ディスられていた後半の方は受け流すとしようかな。もう慣れてるからな。


『…………それは、強烈な一撃じゃ無くても、ブッタ切れば赤ちゃんの増殖は止まるのか?』


『あぁぁん。お前が何を考えて何をするか分からんが、千切れればどっちでも結果は同じだろ…………って言うか、強烈な一撃以外でブッタ切る方法が有る分けないだろ』

それに、流石に2週間も戦っているだけあって、ある程度は情報が正確みたいだな。まぁ、プレイヤーのガラは、かなり悪そうだがな。


『おっさん、ついでにもう1つだけ良いか?マザードラゴンには弱点とか急所は無いのか?』

まぁ、《見ない感じ》でも反応が見られないからな。多分、無いのだと思うけどダメ元で確認はした方が良いだろうな。


『マザードラゴンの弱点は無い………』

やっぱり、そうだよな。そう都合良くは無いよな………


『………が、何処かに有る1枚だけ目立っている金色の鱗(逆鱗)を攻撃すれば弱体化するはずだ』

なるほどな。今の時点で弱点は無いが、こちらの行動で弱点を作る事は出来るんだな。これは初めてのパターンだよな………これからの参考にさせて貰おうか。それにしても、ヨーロッパのプレイヤー達は良く見付けたよな。


『アレか…………』

あの金色で目立つ鱗が逆鱗で弱点の起点なんだな。まぁ、あれだけ目立っているんだ、数回戦っていたら気付くかも知れないな。


〔『聞いてた通りだ。今から僕が何をするか分かるなよな』〕


〔『主は、シヴァ様と【アルファガン】を使うのじゃろう?』〕


〔『…………使う順番が逆』〕


〔『黒よ、ワシは順番通りに言ったのでは無いのじゃ。シヴァ様を前にしたのは、敬意を示したからじゃ』〕

まぁ、白達からすればシヴァに対して敬意も必要なのかも知れないが…………本人を前にして本音を喋ったら無意味じゃないかな?


〔『まぁ、そう言う事だ。シヴァ、準備は万端か?』〕


〔『我は、いつでもどこでも準備万端なのだ』〕

普段はアレだが、こう言う時は頼もしいよな。僕は、手持ちの武器を【アルファガン】に変えて、〈オール上昇〉の《付与術》を掛ける。


〔『じゃあ、行くぞ』〕


『まずは喰らえ!!〈リング・イン〉』

僕は、マザードラゴンの尻尾を目掛けて、【アルファガン】の〈リング・イン〉を放つ。最早、僕の中で定番になりつつある部位欠損の為の戦術だ。ダメージは低いのだが、確実にブッタ切る事は出来る。これは、アクアのトラウマを生んだ人体実験で証明済みだからな。


僕の予想通りに、【アルファガン】から放たれるレーザーは、太く短いマザードラゴンの尻尾をブッタ切る。


そして、地元のプレイヤーに教わった通りに赤ちゃんの増殖が止まる。ざっと見た感じ、かなり回復されてしまった様だな。折角、半分まで減らしていたマザードラゴンのHPが1割程回復しているからな。


『次は〈リング・アウト〉だ。シヴァ、頼むぞ』

続けて、両手に【虹鯨】を持って、マザードラゴンを中心に外に向かって〈リング・アウト〉を放つ。放たれた無数の弾幕が的確にベビードラゴンだけを捉えていく。


ちなみに、通常の〈リング・アウト〉は敵味方関係無しのランダムでの無差別攻撃なのだが、魔獣器で放った場合は少し違って魔獣器本体の意思任せになっている。これは、以前に【黒竜】と【白竜】を使って実験済みなので安心して使えるんだよな。


まぁ、【白竜】で使った時は、仲間用の範囲回復アーツになったんだけどな。


結果として、敵に対してのみ必中効果を得られる非常に便利なアーツに変わるのだが、今までは微妙に使いどころが無くて半ば封印状態になっていた。


シヴァの制限時間をギリギリいっぱい使って、数百匹いたベビードラゴンをほぼ駆逐する。残っている数匹も虫の息と言った感じで他のプレイヤーに倒されれようとしている。


流石はファミリアの王だよな。威力が異次元だ。


数百匹のベビードラゴンが倒された事でマザードラゴンのHPも残り2割程度まで削られている。


『な、なんだったんだ。アレは…………』


『…………アイツは、ま、魔王か』


『い、今がチャンスである。皆の者、一気に攻めるのである。こ、この2週間の借りを返すのであ~る』


ヘンデルにも、他のプレイヤーと同様に動揺の色は隠しきれていないのだが、そこは腐っていてもギルドマスターだよな。戦線を纏めて一気にマザードラゴンの討伐に掛かっている。


残り時間も十分有るし、僕は必要なさそうだな。少し離れてMPを回復とドロップでも確認させて貰おうかな。いくら僕には竜の力が有ると言っても、一連の攻撃での消耗は半端無いからな。


うん!?


今一瞬真っ黒な何かがマザードラゴンの前を横切らなかったか?早すぎて僕以外は誰も気付いてないみたいだけど…………それとも誰かの攻撃だったのか?知らないおっさんに教えて貰った逆鱗って言う金色の鱗も無くなってるからな。多分、後者だな。


『シュン、お疲れ様』


『お疲れ様です』


『ありがとう。アキラとサラもね。でも、良いのか?トドメを刺すのに参加しなくても…………』

トドメを刺すと経験値やドロップにボーナスが有って美味しいので、普通なら誰でも参加したいはずだが…………


『はい。最後は地元のプレイヤーに任せた方が良いと思いますし』

アキラ達の考えは、違った様だな。確かに、それは有るよな。これは、僕達のクエストでは無いからな。最後の〆(美味しいところ)まで持っていくのは違う気がするな。まぁ、本当の美味しい部分は僕の鞄の中にたんまりと眠っているのだけど…………


『それは、ブレッドとヒナタさんも同じみたいですね』


サラの言葉で、こっちに近付いてくるブレッドとヒナタを見付ける事が出来た。どうやら、ヒナタ達も僕達と同じ気持ちの様だな。まぁ、残り時間は離れて安全圏から回復支援しておけば良いだろう。僕達の本来の目的は、王の依頼だからな。





グォォ~~ン!!グォォォ~~~ン!!


どうやら、終わったみたいだな。あの赤ちゃん大増殖以外は、危険なところは無かった無かったかな。まぁ、あの赤ちゃん大増殖が大問題だったんだけど…………アレは確かに戦力と言うよりも人の数が必要だよな。僕の攻撃も前衛の壁役………タンク達がベビードラゴンを抑えてなかったら無理だったからな。僕の紙装甲なら蹂躙された事だろう。


『シュン、何か変じゃない?マザードラゴンは倒したけど…………ほら、あそこ、骨だけが残ってるよ。何かの特殊素材かイベント用のアイテムかな?』

アキラの言う通りで、骨だけが残るのは変だよな。普通なら、倒した時点で全てが光となって消える。骨等のオブジェクトが残っていた事は1度も無かったはずだ。

 

仮に、アレが特殊な素材なら、考えたくは無い事が今からアレを狙っての醜い争いが起こるんじゃないのか?まぁ、如何にもOOOの運営が、やりそうな事でも有るのが怖いのだけど。


だが、2週間も掛かったマザードラゴンの討伐クエストの終了に喜びに湧くヨーロッパのプレイヤー達は、誰1人として気付いていない。僕達が、それ(・・)に気付けたのは、単純に安全圏まで離れていたからだ。


『『危ない、後だ。離れろ!!』』

僕とアキラの言葉で、喜びに湧くヨーロッパのプレイヤー達が一斉に振り返る。


『『『『うわぁぁぁぁぁ~~~~~!?』』』』


そこに現れたのは…………さっきまでマザードラゴンだったモノの骨だけゾンビだった。


〔連続クエスト4/4(ファイナル)【レイドバトル・ドラゴンゾンビの討伐】が発動致しました〕


『『『『ぎゃぁぁぁぁ~~~!!』』』』


その緊急連絡が木霊するのと前に4人のプレイヤーが光となった。その中には…………【グレーテル】のギルマスも含まれていたのだが、誰1人として触れる者は居なかったらしい。


あぁ、なるほどな。このパターンも有ったんだよな。









装備

武器

【ソル・ルナ】攻撃力100/攻撃力80〈特殊効果:可変/2弾同時発射/音声認識〉〈製作ボーナス:強度上昇・中〉

【魔氷牙・魔氷希】攻撃力110/攻撃力110〈特殊効果:可変/氷属性/凍結/魔銃/音声認識〉

【空気銃】攻撃力0〈特殊効果:風属性・バースト噴射〉×2丁

【火縄銃・短銃】攻撃力400〈特殊効果:なし〉

【アルファガン】攻撃力=魔力〈特殊効果:光属性/レイザー〉

【虹鯨(魔双銃剣ver.)】攻撃力500〈特殊効果:7属性〉

【白竜Lv84】攻撃力0/回復力264〈特殊効果:身体回復/光属性〉

【黒竜Lv84】攻撃力0/回復力264〈特殊効果:魔力回復/闇属性〉

防具

【ノワールシリーズ】防御力105/魔法防御力40

〈特殊効果+製作ボーナス:超耐火/耐水/回避上昇・大/速度上昇・極大/重量軽減・中/命中+10%/跳躍力+20%/着心地向上〉

アクセサリー

【ダテ眼鏡】防御力5〈特殊効果:なし〉

【ノワールの証】〈特殊効果:なし〉



天狐族Lv74

《錬想銃士》Lv18

《真魔銃》Lv21《操銃》Lv41《短剣技》Lv43《拳技》Lv9《緩急》Lv6《魔力支援》Lv6《付与術改》Lv28《付与練銃》Lv29《目で見るんじゃない感じるんだ》Lv48《家守護神》Lv64


サブ

《調合工匠》Lv33《上級鍛冶工匠》Lv8《上級革工匠》Lv7《木工工匠》Lv42《上級鞄工匠》Lv10《細工工匠》Lv46《錬金工匠》Lv45《銃工匠》Lv36《裁縫工匠》Lv16《機械工匠》Lv24《調理師》Lv26《造船工匠》Lv2《合成》Lv53《楽器製作》Lv5《バイリンガル》Lv14


SP 23


称号

〈もたざる者〉〈トラウマニア〉〈略奪愛?〉〈大商人〉〈大富豪〉〈摂理への反逆者〉〈初代MVP〉〈黒の職人さん〉〈創造主〉〈やや飼い主〉〈工匠〉〈呪われし者〉〈主演男優賞?〉〈食物連鎖の最下層〉〈パラサイト・キャリアー〉

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