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OOO ~Original Objective Online~ 称号に振りまわされる者  作者: 1048
第1部 第1章
6/65

第1回公式イベント 2

翌日は朝からログインしているのだが、アキラが急に午前中が部活になったので、昨日の《木工》の続きをしていく。木材以外にも部分的に金属や革を使って持ちやすさを追及したり、重さや大きさを調整していく。


午前中いっぱいを使って、やっとそれらしい試作品が出来たな。まぁ、試作品なの速攻で倉庫行きなんだけどな。一回ログアウトしてお昼にするかな。



アキラが、ログインして来たのは午後2時前だった。


『急に部活になってごめんね』


『学校の事だから仕方ないよ。それに連絡貰ってたから大丈夫だよ』

僕は部活に入ってないが、アキラはバスケ部に入っていて、1年唯一のレギュラーらしいから、仕方がないだろうな。


身長も高くてモデルみたいにスレンダーで女子にモテる。僕から見てもカッコイイからな。確実に僕よりは………


『そろそろ行こうか?アキラは部活で疲れてるだろうし、明日は学校も有るし、5時頃までの3時間くらいにしようか』


『うん。ありがとう。そうしようか。ダイス振るね』

…………5が出た。アキラが初めて6より下を出したな。普通の事なのだが驚くよな。


・分岐点


課題とかは無いようだ。もう一度振って貰い、次は10が出た。やっぱり流石ですな。そして、今度は低難度の方には進まずに中難度に進んで行く。


・ツインヘッドスネークを10体討伐


いきなり難問だな。全く出現箇所が分からない……


『見た事の無い魔物だから、行った事が無い場所の付近かな?数の討伐だからレアMOBとかでは無いと思うんだけど………』

なるほどな、その可能性が高いかな…………


『取り敢えず、行った事の無い深緑の街【ヴェール】に行ってみる?最悪はゲート登録が出来たら良いし』


『そうだね……ダメだったらサイトで探そうか、誰かに聞いても良いし』

北の森の奥を目指していく。僕も、アキラも森は中間くらいまでしか入った事が無い。未知の場所はワクワクと同時に恐怖心もあるよな。


2人で《探索》スキルをフル活用して森の中をを進んで行く。ついでに素材の採集も忘れない。中間くらいで昨日お世話になったベリツリーも出てきたので美味しく頂きました。ご馳走さまです。


ドロップ素材のベリツリーの樹木は、今日の朝《木工》で使ってみた結果、なかなか質の良い素材だった。まぁ、試作の為に素材は多い方が良いからな。


そこそこ歩いたと思うのだが全く街の形が見えない。道が続いているので方向は合っているはずなのだが、さっきから魔物も少しづつ弱くなってきているしな。


OOOでも街に近い方が魔物の強さが弱くなる。まぁ、これはどのゲームでも定番なんだろうけどな。街の近くで強MOBが出ると街が潰れそうだしな。


『あれ?シュン、何か水の流れる音がしない?』

本当だな。しかも、音はどんどん大きくなる。


やがて、森が開けてくると、そこには………


『これは………』

言葉が続かない。


『綺麗………』

アキラも同じ様だな。


大きな滝がそこには有った。森の緑と滝の青、それを繋ぐように2本の虹が交差している。なんだか涼しさも感じてくる。滝の向かい側には探していた街【ヴェール】が有った。街は置いといて、2人で滝に近付いて行く……


『きゃっ!!』

滝から魔物が飛び出してきた。


『大丈夫?視認で5……6、空飛ぶ青い蛇?』

両方頭で尻尾が無い。見た目からするとツインヘッドスネークか?見た目で分かり易いのは有り難いな。


『慌てずに体勢を立て直そう』

既にアキラには〈防御力上昇〉を掛けている。


『もう大丈夫。ありがとう。水系かな?援護お願い』

アキラは《扇》を出しアーツを使っていく。魔物のHPは低いようで1撃、2撃で倒せるのだが、どんどん湧き出てくる。どう見ても倒す数より出てくる数が上回っているよな


しかも、厄介な事に僕が出会った魔物では、初めて魔法を使ってきた。〈魔法防御力上昇〉を初めて使わさて貰おうか。


『〈アイスストーム〉』


『『えっ!?』』

一瞬、瞬きをしたか?しないか?くらいの間に大きな滝の半分と、全ての蛇が凍りついていた。


『シュンくん、無事?』


『ジュ、ジュネ!?』

振り返るとジュネがいた。あなたは一体どんな威力の魔法使うんですか?アキラも僕も、すぐには現実に戻ってこれない。



『………ジュネ、ありがとう。魔法とんでもないな』

何とか戻ってこれた僕、まだ現実に戻れないアキラ。しれっとした態度の姉。


『取り敢えず、街行こ』

そうだな。街で休憩したいし、いろいろ聞きたい事も出来たからな。




少し時間が立ち、アキラが現実に戻ってきた。滝はまだ凍っている。


『ジュネは1人なのか?』

ジュネは、首を横に振る。


『パーティー組まず、6人』

アキラは分からないようだが双子の僕には伝わった。そんな考え方は思いつかなかったな。


『6人バラバラの課題を協力しながらクリアしてるのか?確かに、それなら個人の進みは悪いが協力出来るし、複数の課題をいろいろ攻略も出来るか………意外に効率的かもな。って事は、もしかして高難度?』

ジュネは話を聞きながら首を振る、今度は横じゃなく縦に。アキラも今ので分かったようだ。


1番遅いプレイヤーに合わせて進むと数人は課題が被る可能性が高い。パーティーを組んでいないと言う事は、報酬が必ず貰えるので揉める事も無いだろうな。


ずいぶんと頭の良いプレイヤーがいるな。


『メンバーはこの前の人たち?』

ジュネは頷く。身内に対しては、もう少し言葉で話して欲しいと思うのだが。家では、もう少し話してるよね。


『どんな課題が出たの?』


『討伐、ツリー系4種』

ツリー系は4種類もいたのか?僕は2種類しか見た事ない。探すのが難しいのだろうな。討伐の数は1種類1体で良いようだ。残りは1種類らしい。


『シュンくん達は?』


『僕らは、ツインヘッドスネークの討伐だったんだけど………やっぱり、さっきの魔物だったみたいだ』

ドロップで名前を知る。数は十分だったらしくタブレットにはダイスが表示されている。


『滝に見とれてたから魔物に気付かなかったよ。助けてくれてありがとう』

アキラが頭を下げている。OOOでは他パーティーの戦闘に割り込んでも良い事が無い。討伐してもドロップも経験を得る事が出来ないので、危険を冒すメリットが薄い。


例外的に数パーティーで組むレイド戦闘も有るらしいが、正規版では全く発生した事がないらしい。


『気にしない、装備は見直した方が良い』

ジュネはそう言い残して仲間のところに向かって行った。


『装備ねぇ……』

装備を買うお金は腐る程に有るの。なんとなくだが、あのお金をこれ以上個人で使う気にならなかった。残ったお金はギルドのお金として銀行に預けている。


それに、次の装備はオリジナルを製作すると2人で決めているからな。まぁ、中には依頼品も有るのだけどな。当然、代金は狩りや依頼で稼いでいる。


『イベント後は、装備の製作に集中かな?』


『うん。イベント中に出来るだけ自然素材やドロップ素材集めようか?そろそろ店舗もオープンしたいからな』

良い装備を作りたい。ジュネにお礼もしたいな。僕の製作しなくてはいけない物リストに杖が増えた。


次の出目は9、相変わらず好調な相方です。


・湖で魚を5匹とれ


『???』

また、あやふやな課題が出たと感じて、顔が険しくなる。と取り敢えずは【ヴェール】をゲート登録して【ソルジェンテ】から湖を目指す。


『ここで釣りしなくちゃダメなのかな?』


『とれって課題だからな……人や魔物から盗む?のもあ有りかも。う~ん……魚系の魔物っているのか?そもそも魚って食材限定なのか?』

本当にあやふやすぎるかな。


『まずは、湖の側で狩りしよ。レクトパスには気を配ろうね』

まぁ、今日は時間も無いからな。それにしても、リザード系が多いな。レイクリザードやリザードマン等、この前はいなかった魔物もいるぞ。リザードマンは武器を使ってくる魔物でドロップには武器も含まれている。


まぁ、剣や槍、斧を使える人が【noir】には、いないので結局解体して素材行きになるのだが、狩り易いので文句は無い。


『やっぱり釣りなのかな?』

釣りとなると新たに《釣果》スキルを取得するか、釣り竿を作らなければならない。今しか使わないスキルの取得は気が進まないよな。《木工》で竿を作るか?



『あっ!!分かった。アキラ、今の見た?あそこ飛んでる鳥系の魔物が急降下して魚捕ったのを………』


『見てなかったけど………じゃあ、魚捕った魔物から横取りしてもいいのかな?』

アキラは装備を弓に変える。僕も《短銃》の〈必射〉アーツで魚を捕った魔物を狙い撃つ。シェルバードやキラーホーク等の鳥系の魔物は素早いが、HPは低い。攻撃を当てさえ出来れば、ただのカモ(経験値)だ。


〈ウインドカッター〉で魔物の退路を断つ。アキラが放つ《弓》の〈ツーウェイ〉(2本の矢の同時射ち)も効いている。1本回避されても、もう1本が当たるのは便利なアーツだとよな。


お互いに集中し過ぎていて、いつ課題をクリアしたのに気付きませんでした。本日は24マスで終了だな。


『ダイスだけ振っておかないかな?考える時間有った方が良いと思うし』

それは良い案だと思う。魚をとると言う課題には、かなり参ったからな。ダイスを振って貰うと4が出る。


・2時間休み


『丁度、良かったね』

ここで、すごろく系の休みとはツイてない。いや、待て。ログアウトを決めると休みが出るとか逆にツイているのかもな。


まぁ、そんな時も有るのな。アキラも4出すし、たまには休息も必要だと言う事だ。取り敢えず、もうログアウト。




晩御飯を家族の分作る。今日こメニューはカレー、好きなように食べて下さいと書き置きも残しておくか。明日の朝も食べたい為、かなり多めに作った。1人で早めに食事を済ませて再びログインする。今日こそは完成させたい。


朝作った試作品を解体して、今日獲得した素材にも下処理をしていく。リザードマンからのドロップ装備は解体して素材にする。


さて、いよいよ本番である。


「気に入ってくれたら良いな」

そんな独り言が出るほど、気持ちを込めてている。




【北白星・弓】攻撃力58〈特殊効果:飛距離延長〉〈製作ボーナス:攻撃力+5%/命中+15%〉


【南白星・矢筒】防御力5〈特殊効果:矢速上昇・小〉〈製作ボーナス:容量拡張・小/重量軽減〉


※セットボーナス:MP回復速度上昇・中




セットボーナスとか付いてるし。純白な弓と矢筒、単純に綺麗、アキラに似合いそうだな。あとは各種の状態異常矢の作成かな。まぁ、これは銃弾で経験済みだし、大丈夫だろ。


《錬金》と《鍛治》を絡めて麻痺矢、毒矢、凍結矢を各30本作作成する。まだ石化は銃弾でも作れてない、早めに作りたい状態異常だのな。複数のスキルを使い製作している為だろうか、弓も矢もメニューからは同じモノが作れないのが残念なところだ。1回1回手作業になるからな。



次は、ジュネの杖を試作していく番だな。特殊効果は素材依存だが製作ボーナスは製作者が選べる。素材やスキルLvで選べる範囲は変わるが……何が良いのか?悩みどころだな。構想的には杖の両端に違う属性魔力効果を上げる宝石類を使って2属性の武器………なんだけど。ジュネ6属性使うんだよな。悩むよな。今日はログアウトして話してみるか。小腹も減ったのでカレーでも食べようかな。少し食べても朝食分は大丈夫だからな。




しかし、カレーは無かった。


「何故?」


「今まで、蒼真がいた」

ありがとうお姉ちゃん、全てが分かったよ。


「純は、ちゃんと食べれたのか?」


「美味しかった、ご馳走さま」

満足してもらって良かった。紅茶を2人分入れる


「OOOの話しなんだが、純は杖しか使わないの?あと好きな属性ってあるのか?」

ストレートに聞こう、絶対にバレる事はない。


「武器は、杖だけ、物理はしない。属性は、氷、火を使う事が多い」


「6属性全て使うんだよな?」


「使う、魔物のに合わせる」

なるほどな。火と氷の2属性武器なら見た目も良いかも。木製じゃ無くても、昨日とれた水晶を使えば透明な杖が出来そうだ。


「純、ルビー持ってたら売ってくれないかな?」


「使わないから、良いよ」


「ありがとう。助かるよ」




平日は、アキラが部活でログイン時間が作り難いらしく、僕はもっぱら生産活動に準じている。


既にルビーは売って貰っているが、杖の部分に満足がいく物が出来ないので、絶壁に通って採掘ばかりしている。採掘で宝石類が出やすくなるボーナスが付くと言う理由で《細工》も取得している。


既に生産スキルの方がメインになっているのではなかろうか?生産系が楽しいから僕に向いているのだろう。ゴリゴリ以外は………


イベントの方は、高難度をクリアしたパーティーが、ちらほら出始めたようだ。当然、攻略組の皆さんだが、仕事や学校は大丈夫か?って心配になる。回数だけならイベント4日目で6回という強者もいる。1回もクリア出来てないプレイヤーが多いのも事実だが……


今日もかなりの量、宝石類を採掘して工房に戻る。《細工》を取得した事でルビーも少し掘り出せている。杖の真ん中部分は握りやすくする為に、細く丈夫にする作業が難しい。《錬金》と《鍛治》の技術を駆使しているので、なかなか上手くいかない。


ちなみに、練習する為の鉄塊や合金は、自分で鋳造出来るようになっている。流石にフレイさんみたいに楽勝とはいかないがな。フレイさんの方は《鍛治》スキルを進化させ《鍛治職人》になり、更に高Lvまで鍛えている。


最近、よく絶壁で会うので情報交換もしている。まぁ、情報交換と言っても僕が一方的に貰ってるだけどな。




4日間頑張っていたが、スキルLvが低く上手くいかないので今回は妥協する事にする。明日は土曜で休みなので昼過ぎからイベント参加が決まっている。午前中はアキラが部活だ。イベント期間も残り半分、もう1回くらいはクリアしたい。


まずは、ベースは合金製で上が青、下が赤。《細工》と《錬金》スキルを使い青の方には水晶を氷のようなデザインにしていく。赤の方には水晶を火のようなデザインにする。水晶は透き通っている為、下の合金部分の色が際立つ事になる。出来上がったベースの青側にアクアマリンの加工石、赤側にルビーの加工石を嵌め込む………



【アイス&ファイア】攻撃力10/魔法攻撃力40/魔法防御力40〈特殊効果:火属性+20%/氷属性+20%〉〈製作ボーナス:MP回復速度上昇・中/重量軽減〉



アキラの純白の装備に劣らない美しい物を作ってしまった。それになんか新しい称号が増えてるし。



new 称号

〈自然の摂理に逆らう者〉

自然の摂理に逆った変わり者への称号

取得条件/自然界ではありえない事をする



名前は格好良いが嬉しくない称号が増えた……なんか素敵な称号は無いのか?ついでに思い出したが、そろそろトラウマの称号も何とかしなければ。


まぁ、2人の装備も出来たし明日にでも渡す事にするか。自分用も欲しいが、銃の作成に関するスキルが分からない。情報系サイトでも載ってない。まぁ、銃の情報自体が少ないので

仕方ないけどな。たまに載ってても使えないとか銃引退しますって書かれてるのが多いし。


それなので、ローブマントを作る事にする。【黒の職人さん】から見た目を変えたい。目立ちのは嫌だからな。


自分用なのでサイズや好みには困らない。今ある素材の中で、良い皮素材を合皮にしていく。内側には肌触りの良さそうな素材を選ぶ。生地が出来ればあとは速い。全身を覆えるサイズと動きやすさ、色が重要。ケモミミ用のフードは絶対に忘れない。



【ノワールローブ・ローブマント】防御力15/魔法防御力10〈特殊効果:回避上昇・中〉〈製作ボーナス:速度上昇・中/重量軽減〉



黒いローブマントが出来た。自分の防具にはノワールを必ず付けようと決めた。多分だが、同じテイストで他の防具も作ったらセットボーナスが付くのではないかと思っているからだ。明日の為に、そろそろログアウトしなければな。





翌日、昼過ぎにログインしてジュネに杖を渡す。ありがとうの一言だけだったが、弟の僕には喜んでいるのが伝わった。あまり高性能ではないと思うのだが、今の杖より性能が良いらしく、直ぐに装備していた。


ホームに戻り、紅茶を飲みながらアキラのログインを待つ。弓等は既に準備している。喜んでくれたら良いな。


『お待たせ、シュン装備変えた?』


『ローブマントだけ作ってみた。それと、これは今までのお礼。露店の時の報酬って、結局は僕のしたい事でもあったから。受け取って貰えたら嬉しいかな』

弓のセットを渡す。全て純白で統一されている。


『えっ、あっ、えっ~』

そんなに驚かなくても……まぁ、《短剣》でも最近メインにしている《扇》でも無いけどな。


『ありがとう。真っ白な弓だね、作ったの?綺麗だね。とっても嬉しいよ』

手に取り弓を構えたり感触を確かめているようだ。


『あれ?ボーナスおかしくない?えっ!?セットボーナス?』


『弓と矢筒を似たようなデザインにして名前に共通性を持たせたら付いちゃった』


『付いちゃったって………そんなのも出来るんだ。生産系って凄過ぎだよね』


『まぁ、今日は武器のテストも兼ねてゆっくり進めようか』

タブレットをアキラに手渡す。2時間休みは既に終わっている。ダイスは6。2マス進んで分岐点。


『どっちに進む?やっぱり中難度かな』

悩むところである……多分だがあと1回しかクリア出来ないだろう。平日はアキラが忙しいし、それなら答えは……


『中難度の方が良いかな、2人で高難度は危険な気がする』


・ダイスを1が出るまで振り出目の合計数の魔物を倒す


まさに僕向きの課題ではなかろうか。


『ここは任せて』

ダイスを振る2、もう一度振る2、もう一度……2、いじめですか?もう一度………1


『やっと出た。2が3回続いた時は心が折れそうだったな』


『合計数7はかなり少ないよ。これで試し射ちも出来るね』

その心遣いが胸に沁みるな。ありがとう。


魔物の強さに指定がないので近場でボアを狩る。弓の試し射ちも兼ねているので、僕が前衛を受け持つ。アキラから放たれる矢は白い筋を残して、ボアの貫き息の根を次々と止めて行く。


はい、前衛の僕に出番がありませんでした。


『凄い。凄い。弓も凄いんだけど、腰に装備する矢筒が使いやすい。シュン本当にありがとう』

その一言で満足です。こちらこそありがとう。


『複数のスキル合わせて作ってるから、ちょっと自信は有ったんだ。メニューから作れないワンオフだよ』

アキラは《木工》スキルだけでは、無かったんだと驚いている。さぁ、次行ってみよ。アキラの振るダイスは7、現在41マス。


・湖の南側で大雨蛙の討伐


見るのも嫌って顔してますよ。アキラさん。


『アキラは蛙が苦手みたいだね。僕が前衛するから《弓》でサポートお願い』


ゲートで【ソルジェンテ】に飛び、湖の南側に回る。青蛙、赤蛙には出会ったが大雨蛙は見当たらない。ってか青蛙と赤蛙ですら1mくらいはある。大雨蛙ってどれくらいデカイの?あまりデカイのは僕も見たくないんだけど………


蛙系を討伐して探す。全く見当たらない……


『プチッ!!』


アキラの足下でプチッと音がする、足を上げると……


『きゃぁぁぁ~』

顔を真っ青にしてアキラが抱きついてくる。そこには小さな蛙の死体があった……解説の方は控えさせて頂きたい。


ただ一言、安らかにお眠り下さい。決して僕達を恨まないでね。


『こいつか、全然大きくないな』

ドロップを入手したので、確認するとこの小さな蛙が大雨蛙らしい。討伐課題なのに、これで良いのか?と思ってしまう。たまたま見付けれたが、これは知っていても見付けるのには時間が掛かりそうだ。


ちなみに、まだアキラに抱きつかれたままだ。ここはどうすれば正解なのだろうか?




『アキラ……そろそろ大丈夫か?』

僕の精神にも限界は有る。理性にもだが………


『……………』

抱きついている状態に気付いたらしく、パッと離れてタブレットでダイスを振る。無かった事にしたいようだ。僕の方にも異論はないからな。5が出ている。


・合金の作成


また楽なの出たな。素材は有るので工房に行くだけ。


『ホームに戻ってお茶にしよ』

アキラを誘いホームに戻る。


ホームでアキラに紅茶を出して、合金作成の為に工房に入る。少し時間を作る為に鉄塊や銅塊もついでに作った。


『合金出来たよ。落ち着いた?かな』

アキラの顔色が戻っているのを確認出来てホッとする。


『………紅茶ありがと』

照れていたのか?小さな声だった。タブレットを渡す。ダイスは気分とは裏腹に2度目の10。


・木系の魔物からドロップ素材を2種類回収


【ヴェール】から行くのが近いかな。滝も有るし近付き過ぎなければ良い気分転換になるだろうな。


『今日は、この課題で終わろうか?明日は何時にする?』


『うん、そうしよう。明日も昼過ぎでお願い』

了解。ゲートで【ヴェール】に飛ぶ。


相変わらず滝は美しいな。暫く癒されてから森の中に入る。木系で知ってるのは、ベリツリーとウッドワーム。2種類とも中間くらいで出現する。素材的にも精神的にも上手いベリツリーの方が出てきて欲しい。


『ワームの方が出てきたね、どうする?』


『戦いたくないよね……ちょっと蔦の部分がね』

ウッドワームの蔦は触手になっている。


当然、お約束になる可能性が…………なった。でもなるならアキラだろう。何故に僕?


『シュンごめんね。大丈夫?近寄れないから《弓》で攻撃するよ』


『〈ウインドカッター〉アキラ内密に頼みたい』

《風魔法》で蔦を切断しながらお願いします。切実に。


『分かってる、本当にごめんね』

アキラも本当なら自分が犠牲者になるのが、お約束だと分かっているらしい。レクトパスでもなってたし………


『〈ウインドカッター〉ありがとう』

切断するよりも、絡み付く蔦の方が多い。


『アキラ、素材は諦めて焼こう。お願い』

アキラは《弓》の〈フレイムアロー〉を使い燃やしていく。火属性はかなり効果的だ。簡単に蔦を燃やしきる。


『助かった。ありがとう』

本当に感謝する。蔦の無いウッドワームはカモでしかなかった。遠距離からチクチク削って終らせる。燃やしたこともありドロップは1種類しか回収出来なかったが、素材として炭が回収出来た。これも一応はドロップ素材に分類されるようだ。


そして、タブレットにダイスが表示されていた。


取り敢えず、何時もの様にダイスを振ってログアウトする。2人とも今日は精神が持たなかった。最後にトドメを喰らったし……


・木系の魔物からドロップ素材を3種類回収


ダイスは5、課題は同じモノだった……微妙に数増えてるし。もう無理です。




翌日ログイン後は、【シュバルツランド】側から森を目指す。《探索》スキルでウッドワームだけは見逃さないようにする。今日はベリツリーの方が簡単に見付かって行く。3体まとめて出現したので一気にドロップが揃った。さっさと森を出たい為、ダイスを振り3を出す。


あまり関係ない事だが、一通り出目が揃ったよな。


・首長亀の討伐


この前探して見付からなかった魔物か……今日は見付かれば良いけど。


『やっぱり川?』


『うん……私はそこしか知らないかな』

それなら仕方ない、最悪はLv上げだと思えば良い。このイベントの移動距離って半端なく多いなと思う。まぁ、とんでもない魔物が出るよりマシなんだけど。ゲートでホームに移動して川を目指す。道ながら自然素材の回収は忘れない。周りは珍しく人がいなかった。


『珍しく静かだね』


『いつもなら採掘音が響いてるよな』

魔物を探して歩きまわる、取り敢えず亀系を探さなければならない。亀系を狩っていれば、出てくるしか出現条件が分からないのは微妙にツラいのだが、運良く亀の群れを見つける事が出来た。草亀やライトタートル等のバージョンアップで追加された魔物達がいるな。


狩る、狩る、狩る。


『やっぱり出ないね』


『出ないな、1回休憩するか?』

紅茶の入った水筒を取り出す。


『そうだね。シュンは採掘でもする?』

最近めっきり採掘にハマっている事がバレているらしい。《細工》のお陰で良い鉱物や宝石類出るようになったから楽しくてな。


『どの辺が良さそう?』

アキラの勘は宛になる。今日も銅鉱石、鉄鉱石がいっぱい採れる。ハズレなし。僕だけなら少なくとも半分は石になるだろう。


『シュン、首長亀が出て来た。掘り出した鉱石食べてる』

僕が掘り出した鉱石が少し減っている。出現条件は鉱石をエサにするも有るのか?


しかも2体いるんですけど。ってかキリンより首が長くないですか?リーチがヤバそうだな。


『取り敢えずは離れて遠距離からだな。アキラ〈紫雷扇〉でお願い』

雷属性は最近大活躍している。氷属性と雷属性が他の属性より優れていると言う情報は正しいようだ。結局、僕の攻撃は足止めにしかならなかった。


『《扇》って便利だよな。でも他に使ってる人を見たことないよね』


『《扇》って攻撃力が低いから、メインには向いてないからね。使ってもサブで遠距離くらいだし、このフレイさんに特注で作って貰った【緋扇】は、扇を畳んだ時にナイフになるから使いやすいんだよ』

武器が良いのは分かるけど、アキラの使い方が上手いって言うのも有ると思う。


『雷属性以外にも使える?』


『今は水属性の〈蒼水扇〉と風属性の〈翠風扇〉が使えるよ、10Lv上がる毎に属性アーツ覚えているから、多分Lv上がれば6属性使えるかも。威力は変わらなそうだけど』

そう言いながらアキラはダイスを振る。


『じゃあ、属性を補助する装備あった方が良いかもね』

7がでる。


・回復アイテム8種集める


楽なのが出たな。街で買えば直ぐに集まる……はずだったのだが、アイテムの売り切れが続出している。5種類しか集まらずホームの倉庫で在庫を探していたが、2種類しかなかった。計7種、1種類足りない。作るかプレイヤーから買うか迷っていた。《調合》はまともに使った事が無いからな。プレイヤーから買う方法はイベント中は難しいかもしれないな。同じ課題が複数有るから。取り敢えず、いつも通り紅茶を飲もうとして2人分淹れる。


『シュン、課題クリアしたみたい。紅茶にMP回復3%付いてる』

確認してみた。確かにクリアしていた。これはかなり盲点だったな。《料理》アイテムも回復アイテムになる可能性が有る。他にも応用が利くかもしれない。


紅茶を飲みながらダイスを振る……6


・77マスおめでとう もう一度ダイスを振る


すごろくで1番嬉しいの出たね。進む系……9。次は何かな?


・料理アイテム5種食べる


ゲーム内で大食い課題って……どうなのかな?まぁ、休憩でお茶してたから、お茶菓子食べれば終わると思うし、僕らには丁度良い課題だったけど。


すぐにクリアとなって、ダイスを振る。次のダイスの目は4。


・新たにダイスを振って出た目×3のプレイヤーと物々交換をする。


とんでもなく面倒な課題が出たな。ダイスで出目を決める、数が少ない方が良い時は僕の出番だ。


自身満々にダイスを振る……


『マジか!?』

ここで初めて4がでる。運が悪い………悪過ぎる。


『別れて課題をクリアしよう、アキラはアクア達3人とジュネに、僕は工房まわって8人集めるよ』

2人で別れてホームをでる。まずは斜め向こう側のネイルさんのギルドを目指す。


『すいません。シュンです、誰かいませんか?』


『おや、シュンさんじゃないですか、どうされました?ギルマスは今日はログインしてませんよ』

彼は【プレパレート】のサブマスでドワーフのロン・ブー。


『ロンさん、こんにちは。今イベントで物々交換が課題で出たので、誰か交換してくれる人を探してまして。良かったら何人かお願い出来ませんか?』


『かまいませんよ、他ならぬシュンさんの頼みですからね。ギルドに今、他に4人いますから呼んできますね』

しばらくたってロンさんが4人を連れてくる。


『皆と話した結果ですが、ギルマスと同じ性能の鞄は5人分有りませんか?有れば、それと最近《調合》出来たアイテム値段分と交換しますよ』


『在庫は有りませんが、すぐ作れますので暫くお待ちください』

ホームに戻り工房でメニューから鞄を作る。メニューから作れる事の有り難さを思い出す。最近は《木工》等で手作業ばかりしてたからな。


『お待たせしました。どうぞ』

鞄を渡す………が相手のアイテムを受け取れない。タブレットには価値が合いません。鞄を減らすか、アイテムを増やして下さいと表示される。


『すいません。言いにくいのですが………価値が合わないそうです』

タブレットを見せる。相手も納得してアイテムを増やしてくれる。結果、アイテムは当初の倍になった。相手側が喜んでいるから良いが……この課題は意外に難しのかもしれない。


アキラに今起こった事をメールで伝えて次を目指す。次はフレイさんに鉱石を渡して、塊類を貰う。今までに何回もお願いている事なので一瞬で終わった。代金を渡せ無い分、何時もよりも数が減ってしまったが、仕方ないな。


『こっちはジュネのところで6人と物々交換終わったところだけど………課題クリアしたみたいだね。ホームで待ってて』

アキラからコールが入る。ジュネの仲間たちとの交渉が速く纏まった見たいだ。何を交換したんだろう?


『おかえり、早かったね』


『ジュネ達もこの課題あったみたいで、同じアイテムを6人で交換して済ませたみたいで、簡単に終わったよ』

なるほどね。そんな抜け道が有ったのか、確かにそれなら価値が同じアイテムになる。このイベントの課題は発想力の差がマジマジとでる気がする。


・5時間休み


ダイスを振って7が出た結果だ。あと3マスだが今日のクリアは無理になった。


『アキラは明日も部活だったよね』

アキラが頷いて答える。


『じゃあ、次の土曜までは、僕だけで進めておくよ。進行状況は毎日学校で報告するね。取り敢えず、中難度の報酬は素材で良いかな』

中難度の報酬は低難度と内容が同じなのは情報サイトから知っていた。ただ貰える量が低難度より多くなる。およそ2倍。高難度はそれまでの内容によってパーティー毎に変わるらしい。


『うん。ごめんね、無理はしないでね』

アキラは高難度の報酬にちょっと欲しいものが、出来たらしいからな。相棒としては少しは手伝いたいからな。


『大丈夫だよ。ただ、あまり進んでなくても怒らないでね』





翌日はログイン後にダイスで4を出して、中難度をクリアする。ぴったりゴールのマスに止まらなくてもゴール出来るのは嬉しい仕様だった。報酬は予定通りレア素材を選ぶ。低難度とは違い5個もあった。これでイベント後には8個も貰える。何が貰えるか今から楽しみだ。



さあ、次はいよいよ高難度150マス先のゴールを目指す。まぁ、30マス目までは、中難度と同じなので少しは安心出来るけどな。はてさて1人でどこまで行けるのか………5日間は頑張ってみようか。






装備

武器

【デルタシーク】攻撃力30〈特殊効果:なし〉×2丁

【ハンドガン】攻撃力15〈特殊効果:なし〉×2丁

【銃弾Lv2】攻撃力+10〈特殊効果:なし〉

防具

【ゴーグル】防御力3〈特殊効果:命中補正・微〉

【レザーブレスト】防御力15〈特殊効果:なし〉

【冒険者の服】防御力10〈特殊効果:なし〉

【メタルバングル】攻撃力+5/防御力+15〈特殊効果:なし〉〈製作ボーナス:軽量化〉

【レザーブーツ】防御力5〈特殊効果:なし〉

【ノワールローブ】防御力15/魔法防御力10〈特殊効果:回避上昇・中〉〈製作ボーナス:速度上昇・中/重量軽減〉

アクセサリー

【ウルフダブルホルスター】防御力5〈特殊効果:速度上昇・微〉〈製作ボーナス:リロード短縮・小〉

【左狼脚ホルスター】防御力2〈特殊効果:回避上昇・微〉〈製作ボーナス:リロード短縮・小〉

【右狼脚ホルスター】防御力2〈特殊効果:回避上昇・微〉〈製作ボーナス:リロード短縮・小〉



《銃士》Lv48

《短銃》Lv56《拳》Lv21《速度強化》Lv40《回避強化》Lv36《風魔法》Lv39《魔力回復補助》Lv41《付与魔法》Lv38《付与銃》Lv11《錬金》Lv13《探索》Lv48


サブ

《調合》Lv12《鍛冶》Lv15《家事》Lv29《革職人》Lv34《木工》Lv12《料理》Lv8《鞄職人》Lv40《細工》Lv9


SP 34


称号

〈もたざる者〉〈改めてトラウマを得た者〉〈略奪愛?〉〈大商人〉〈大富豪〉〈自然の摂理に逆らう者〉

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