サラベール山脈 中腹(湖)
『じゃあ、行ってみるか。エクスライト発進!!』
こう言うの1度やってみたかったんだよな。普段、仲間がいる時は恥ずかしくて出来ないから、1人の時くらいは羽目を外したい。
『主よ、やる気を出しているところ悪いのじゃが、船は海を進むものでは、なかったのかの?』
今いる場所は、海の遥か上空。海よりも空の青が、はっきりと分かるくらいのな。
『まぁ、色々と時間のロスが多かったからな。【サラベール】を目指すくらいは、時間短縮したいからな』
実際のところ【サラベール】は【ガリンペイロ】同様に海にも川にも面していない場所に有るからな。まぁ、ヨーロッパのサーバータウンなので、近くに行けば港町くらいは有ると思うんだが…………どのみち、近くまでしか船で行けないのなら空を飛んでショートカットしても問題無いだろう。
それに、周りには誰もいないので、誰かに見られる心配も無いからな。気楽に進めるなら利用しない手は無いだろう。仮に見られたとしても相手は魔物。倒してしまえば、そこからバレる事は無いだろう。まぁ、空の魔物を簡単に倒せるかは、別の話だがな。
【サラベール】を地図で見るなら、近くに湖らしき物が有る。地図で見るだけでは、地形全体を把握出来ないので、確かな事は言えないのだけど………ここまで飛んで行く事が出来れば、大幅なショートカットになるからな。
『…………黒は賛成』
これで、2票か。シヴァの様子を見る限りは、反対しなさそうだな。
『それに、たまには空も気持ち良いだろ?』
『それは、そうなのじゃが…………ワシらからすると今更なのじゃ』
船なのに、海を進むよりも空を飛ぶ方が早い事に納得がいかない様だな。まぁ、白達の好きな釣りは出来ないし、空を飛ぶ行為自体は、普段から空を飛んでいる白からすると珍しくも無いのだろうけどな。
それに、改良前は空を飛ぶのと言うのは、あくまでもオプション扱いで緊急時しか使わなかったから、分かる気もするんだけどな。まぁ、それと、これは話が別だ。
今は、帆のサイズが大きくなった事とマストが強化された事で、高い高度でも風を掴む事が出来ているので、出ている速度が今までの比では無いだろう。
当然だが、それを維持出来るのは、竜の力のお陰でも有るのだからな。竜の力が無かった場合は、魔力の高いジュネでも1時間は飛ばす事は出来ないだろうな。まぁ、ジュネなら、何かしらの裏技から持ち出しても不思議では無いけどな。
『我も気に入ったのだ。風が気持ち良いのだ』
僕の肩に乗る白と黒は分かるのだが、甲板の上でプカプカと宙に浮かんでいるシヴァが、何故浮いているエクスライトの速度と一緒に進むのか、かなり気になるところでは有るんだよな。まぁ、1匹だけ、取り残されるよりは良いと思うけど…………不思議では有る。
ちなみに、エクスライトの修理が終わってから行われた進水式(2回目)は、海上で行われている。ここだけは、ヒナタの拘りが強くて、僕も空を飛びますとは言い出せなかったからな。
まぁ、今やっているのが空の進水式………この場合は進空式になるのか?と思えば良いだろう。
『うぉ~~~!!高いな』
今いる場所は、見渡す限り、山、山、山。しかも頂上を確認出来ないくらい高い山が聳え立っている。頂上を見る事が出来ないので正確な高さは分からないが、今現在の船の位置が標高4,000mぐらいので。少なく見積もっても倍の8,000mは有るだろうな。ヘタをすると大台の10,000m越えも有り得そうだよな。
船旅なら5日の行程を、空を飛んで2日に短縮して辿り着いたこの場所は、山の中腹の上空。
今飛んでいる高度が、高さ的には限界の様で、これ以上の高さ………頂上の方には、今のエクスライトでは届かない。多分、〈浮遊〉アーツの限界なんだろうな。白達は、まだ上空へと飛べる様だが、浮遊装置と【空気銃】の僕も、ここが高さ的には限界の様だからな。
【ペンタグラス】のイベントで登った山も高かったのだが………ここは、その比ではない。あの山は平地に単体でポツンと有った若干寂しい山なのだが、この山は複数で存在している。まぁ、見える範囲全てが山の白銀世界なので、どちらかと言うと山脈と言うのが相応しいのかも知れないな。
現実世界の地図で言うと、この辺りならアルプス山脈が有る位置だからな。有りと言えば有りだが…………わざわざ、こんな大きな山脈を作る必要が有ったのか?
山脈を作るところまでは否定しないが、ヨーロッパのプレイヤータウンを、わざわざ山脈の途中に作る必要は無かったのじゃないのか?まぁ、山脈の途中と言っても、ほぼ麓と言っても良いくらいの高さなので、雪も少ないから普通の街と変わらないのかも知れないがな。
まぁ、取り敢えずは、下に降りるのが先だろうな。なるべく目立たない場所で、船が有っても違和感の無い水場が理想だな。
僕らが降り立った位置は、山脈の中腹に位置する湖の畔。中腹と言っても山の真ん中よりも下に位置している。何と言っても、この場所からも頂上は見えないからな。僕らの目的地である【サラベール】の街よりは、遥か上部に位置しているのだが…………一体、頂上には何が有るんだろうな。と言うか頂上は有るのだろうか?
当然、地図を見ただけでは全く分からなかった事だが、水面は厚い氷で覆われていおり着水出来無かったので深い雪の上に着陸している。現実世界の季節的には、そろそろ冬と言っても良いので、こんな高い山の中に有る湖なら凍っていても仕方無いと思うが、ファンタジーの世界なんだから、現実では有り得ない年中凍らない湖とか年中真夏の設定の山でも良かったのではなかろうか。フィールドの設定が現実世界に近過ぎるんだよな。
ちなみに、この湖の大きさは推定河口湖くらいの大きさで、降り立った位置から全てを見渡す事は出来ないが、僕が降り立った位置からは、だいたいの部分を把握する程度の事は可能になっている。
こんな場所の近くに、サーバータウンを作られたヨーロッパのプレイヤー達に若干の同情を覚えなくもないよな。まぁ、ゲームとしては色々な街が有った方が、楽しくて面白いのは分かるんだけどな。
『主よ、そんな事よりも………さ、寒いのじゃ。震えるじゃ。あ、温かい紅茶が欲しいのじゃ』
『そうなのか?我は、まだまだ平気なのだが』
まぁ、深海は雪山以上に寒いらしいからな。海で過ごしていたシヴァが寒さに強くても不思議では無いが…………僕は、ただの人間だからな。
『まぁ、ここは、白に賛成だな。だが、それよりも1回ホームに戻ろうか』
僕も、先程から寒さを耐えるのに限界を感じているからな。
『…………賛成』
白達では無いが、この寒さの中、【サラベール】の街まで約10kmの山道を下る気にはならない。走って下れば、すぐなのかも知れないが、寒さ対策だけでも必要だろうな。魔物が出てきても、この手がかじかんだ状態だと、まともに銃を扱える気がしないからな。
まぁ、メインタウンの近くなので、強過ぎる魔物が出るとは思えないが、こう言う土地なら毛皮系の素材や新種の薬草や木材は期待出来るので、アキラは確定として他にも空いているメンバーを誘ってパーティで【サラベール】を目指しても良いかも知れないな。まぁ、まずは防寒具作りが先なんだけど…………
『た、ただいま』
『おかえり…………あれ!?シュン、なんか寒そうだね。顔色悪いよ。暖かい紅茶でも飲む?』
『助かります。えっと………5つ頼めるかな?』
『5つだね。ちょっと待っててね』
僕が淹れるならともかく、アキラに頼むのだから好みの事まで、どうこう言う気は全く無い。勿論、他の4匹にも言わせる気も無いがな。まぁ、ほっておいても、僕好みの紅茶は出てくるだろけどな。アキラと好みが似ているのは助かるよな。
『主よ、防寒具も大事じゃが、スキルの進化も必要なのじゃ』
『確かに、必要かもな』
そろそろ、スキルを進化させるには十分なSPは貯まっている。この機会に進化させても問題無いだろうな…………と言うか、雪山では何が有るか分からないが、率先して進化させておくべきだと思う。アキラが紅茶を淹れ終わるまでに、まだ時間も掛かりそうだから、ちょうど良いだろうな。
え~っと、上限まで成長しているのは、《拳》《速度強化》《回避強化》《魔力回復補助》の4つで、対するSPは48か。
まずは、《拳》からだな。《拳》には、MPを大きく消費して攻撃に属性を載せる《魔拳》や連続攻撃を重視する|《拳兼破》《ケンケンパ》等が有るが、今まで同様に銃剣を装備した《短剣技》のサポート的に使うなら、単純に上位進化の《拳技》が良いだろう。使い方が今までと変わらないのも大きいが、SPの消費の面でも他の半分の10SPで済むからな。
それに、《拳技》と言うくらいだからな。アーツを覚える可能性が捨てきれないんだよな。まぁ、《拳》系でアーツを覚えた話は聞かないので、期待値は低いのだけど………
《魔力回復補助》は進化先が1つしか無いので、サクッと《魔力支援》に進化する。回復に掛かる時間が《魔力回復補助》よりも短縮される効果が有るのだが、竜の力を持つ僕には意味の無いのかも知れないよな。まぁ、いざと言う時に必要だったりするので、チェンジしたりはしないけどな。
そして、問題は《速度強化》と《回避強化》なんだよな。この2種は、各々単独で《迅速》と《脱兎》に進化する事も出来るが、2つで1つのスキルへ進化させる事も出来る。多分、これが、身体強化系の複合スキルになるんだろうな。
まぁ、レアなスキルを選ぶ方が僕らしいよな。と言う事で…………
『《緩急》に進化っと』
このスキルは、速度が早くなったり回避率が上昇するだけでなく、急停止が可能になった。急転回では無く急停止。
今までは、上昇した速度を維持して高速での移動しか出来なかったので、それなりの距離が無いと止まる事は出来なかったが、急停止が可能になった事で、どんな速度を出していても停止出来る。
これで、より多くのフェイントが出来ると言う事だよな。牽制や遊撃とかには便利そうだ。速度を上昇しての回避がメインスタイルの僕には、かなり嬉しい仕様だな。
さらには、実際の速度よりも遅く見せる事も可能になる。他人から見たら簡易的な残像みたいな感じかな?これを上手く使えば、滅多な事でダメージを喰らわないだろうな。まぁ、こっちの方は、魔物戦用よりもPVP用の能力かも知れないがな。
2つのスキルを1つのスキルにしたので、装備スキル枠が1つ空いているんだが、僕の場合は戦闘系のスキルが余って無いんだよな。まぁ、取り敢えずは《家守護神》でもセットしておくかな。新しくスキルが見付かるまでの代用品として…………
『シュン、お待たせ。それで………何が有ったの?』
まぁ、あれだけ寒そうにしていたら気になるよな。
『紅茶、ありがとう。目的地の近くが、ちょっとした雪山でな………寒さに耐えれなくて戻ってきた』
あ~!!温まる。芯から温まると言うのは、この事だな。
『じゃあ、もう【サラベール】には着いたんだ。どんな街だったの?』
『いや、まだ着いてないんだよ………』
『うん!?じゃあ、寄り道中?何か気になる物でも有ったの?』
『気になる物と言うか…………最短距離で【サラベール】を目指してるんだが、雪山を下らないと辿り着かないんだよ』
『???』
全く、伝わって無いよな。まぁ、この説明で伝わる訳も無いのだが…………普通の山は先に登らないと下る事は出来ないからな。
『主よ、それでは全く伝わらないのじゃ』
それは、僕も分かっているんだが…………さっきまで寒いところに居たせいか、まだ頭が上手く回らないんだよな。
『ワシらの目指しておる【サラベール】は、山の中に有るのじゃ。それで?ワシらは、エクスライトで空を飛んで近付いたのじゃが、1番近くに有った水場が山の中腹に有る湖じゃったのじゃ。ワシらは、そこに降りたのじゃが、そこは雪山なので………』
『…………寒過ぎる』
『…………と言う事じゃ。黒よ、ワシが1番言いたかったセリフを取らないで欲しいのじゃ』
『あ~、そう言う事か。エクスライトって言うのは、ライトニングの改良型だよね。ヒナタから聞いてるよ。それで、雪山は今の装備では耐えれそうも無い感じ?』
『そうだな。直線距離で約5kmくらいの山道だから無理すれば行けない事もないと思うけど………魔物に遭遇したら、手がかじかんで銃が扱え無いんだよな。せめて、手袋か体温調節可能の特殊効果が付いた装備がいるな。あの場所がサーバータウンのヨーロッパのプレイヤーは凄いよな』
良し、握力は戻ってきたな。やっぱり紅茶は偉大だな。
『そんなに寒いんだ。じゃあ、暫くは《裁縫》かな?私も手伝おうか?』
僕から頼もうと思っていたからな。手間が省けたな。相変わらず勘が良いよな。
『頼める?それと、雪山の攻略だから………』
『協力者が必要なんだね。雪山だと毛皮系の素材も手に入りそうだから、私は行っても良いよ。でも、そうなると………あと2・3人は必要?』
流石は、相棒だな。全てを言わなくても伝わる。はっきり言って、かなり楽だ。まぁ、それなりに長い間一緒にいるから出来るんだろうけどな。
『うん。いた方が良いかな』
『それなら、ブレッド君とサラちゃんを連れて行く?』
なるほどな。本当ならケイトとカゲロウを連れて行きたいところだが、ケイトはイベント中だからな。カゲロウも手伝いたいんだろうからな。
『2人の予定が空いてれば、そうするかな』
まぁ、この機会にブレッドとサラとの距離を少し縮めても良いかも知れないよな。アキラとパーティを組んだ事は無いんだろうからな。
『私は、空いてますよ』
『私も、ご一緒して良いですか?』
その2つの声に反応して振り返ると、そこには造船所から戻って来たサラとヒナタがいた。話の内容を理解しているところを見ると、一体いつから居たのかは気になるところでは有るが…………
『おう。勿論、良いぞ。ヒナタも手伝ってくれると助かるからな』
ちょっと回復系のプレイヤーが多い気もするが、僕も前に出れば、戦闘面は大丈夫だろうな。と言うか、サラの《泥魔法》は雪山で使うとどうなるんだろうな?雪崩とかにはならないよな…………ちょっと洒落にならないくらい怖いから使用は避けようかな。
『ありがとうございます。それで、エクスライトの調子はどうですか?』
『良い感じだな。海を進むのも良かったが、空を飛ぶのは更に良かったぞ。マストが風をグッと掴む感じだな。速度が今までと段違いだ』
『そうですか。それは、良かったです』
ヒナタも満足そうだな。【サラベール】に着いたら1回他の皆を乗せて空を飛んでも良いかも知れないよな。特にサラは船の改良を手伝ってくれたのに船に乗って進んだ事が無いからな。
ちなみに、サラは2回目の進水式の時は、個人的な用事が有ってログインが出来ていない。
『シュン、ブレッド君に連絡取れたよ。明後日ってなら大丈夫みたい』
早いな。今のやり取りの間にコールで予定を押さえた様だな。まぁ、明後日なら土曜日なので、ゆっくりと攻略も出来るだろう。ヒナタとサラも明後日で問題無いらしいからな。
『あっ!!でも、サラちゃんとブレッド君は船のゲート使えるの?』
『それは、大丈夫だ。エクスライトはホーム扱いにしてあるからな。ホーム間のゲート移動はギルドメンバーなら可能だからな。アキラも塔のゲートは使えただろ?』
『そうなんだ…………エクスライトってホームだったんだね。そう言えば、塔のゲートは使えたかも』
『まぁ、造船所と同じでギルドホームの別館扱いだけどな』
アキラとサラは若干引き気味か?色々と便利な設定なんだがな。
〔『主よ、この場合は引いてないヒナタ嬢の方が異常なのじゃ』〕
〔『それは、ヒナタには早い段階でエクスライトがギルドホームに設定してある事がバレていただけだ』〕
まぁ、色々と整備している時に気付いたんだろうけどな。異常と言われれば異常なのかも知れないな。
『簡易の防具は、僕達が準備するから、それ以外の準備は各々で頼むな』
さて、温かい雪山下山の為に準備しますかね。
動き易さを考えると、もう1枚身に付けるよりは、このままの防具で体温を調節出来る方が良いんだろうな。腕輪でも作って特殊効果つけようかな。まぁ、明後日までに間に合うかどうか微妙だからな…………アキラには別のアプローチを頼もうかな。
『僕は、腕輪とかに特殊効果付ける系で攻めてみるから、アキラは、防寒具系で対策進めてくれる?』
『了解。防寒具は、どんなのが良い?』
『ローブやコート系かマフラーや手袋とかの小物系?とかどう』
『確かに、マフラーとローブは温かそうで良いかもね。ちょっと試してみるね』
ちょっとモゴモゴして動き憎そうな気もするが、動き易さよりも寒さ対策の重要性が上回るからな。
『お願いします』
あとは、アキラに任せておけば、良いものが出来上がるだろう。僕も負けてられないよな。
問題は腕輪の素材だが、何にしようかな?基本は、金属製か木製かの2択だよな。まぁ、両方作ってみて考えるかな。
『シュンさん、ちょっと良いですか?』
『どうかしたのか?』
『アキラさんとフレイさんには相談済なんですが、ホームに《執筆》の工房を作っても良いですか?』
『あぁ、別に良いぞ。空いてるスペースを使って適当に設置してくれて構わないぞ。場所が足りなかったら工房のサイズ大きく出来るから言ってくれ。それから、アキラかフレイの許可が有れば、僕の許可が無くても自由に設備を設置や拡張してくれて良いからな。中級までの工房なら街の工房から設置出来るし、お金はギルドの口座から使えば良いからな。まぁ、工房以外の施設は神殿になるから僕達しか設置出来ないけどな』
『ありがとうございます』
『それにしても、サラは《執筆》を取得したんだな。それで、どう言うスキルなんだ?』
取得していない生産系の事は、詳しく知らないからな。
『えっとですね。《執筆》は、自ら紙を作って魔導書等の製作をするスキルです。作れる書物は自分の魔法スキルに依存しちゃうみたいなんですけどね』
『へ~!!格好良いな。頑張れよ』
魔導書が作れるなら、Lvが上がったり進化させたりすると【スキルの書】や【アーツの書】も作れるかも知れないな。まぁ、紙を作るとか始めるなら、簡単に出来る物では無いのだろうけど、十分に魅力的なスキルだな。
『はい。ありがとうございます』
その言葉と同時に、勢いよく頭を下げて颯爽と工房を出ていくサラ。多分、工房の設置に行ったんだろうな。
そう言えば、フレイの話だと、急に工房が…………
『きゃ、何!?何これ!?シュン?』
あぁ、これの事か、ちょっとした地震だな。
工房全体がグラグラと揺れて《執筆》用の設備がニョキニョキと音を立てて下から出てくる。確かに、知らなかったらビビるよな。そこにいるアキラみたいに。
『アキラ、慌てなくても大丈夫だぞ。サラが《執筆》の工房を追加しただけだから』
『えっ!?設備の追加って、こんな感じなの?シュンは、知ってたの?』
『あぁ、フレイから聞いた事が有ったからな。まぁ、体験するのは初めてだけどな。これは、2度は経験したくない感じだよな』
『だね。私も2度は遠慮したい感じかな』
これは、ギルドのルールとして増やすべきだな。次の会議の項目に上げておこう。
【対温の腕輪】防御力10〈特殊効果:耐土〉〈製作ボーナス:体温上昇〉
【耐温の腕輪】防御力15〈特殊効果:耐氷〉〈製作ボーナス:適温維持〉
う~ん、残っていた素材で製作した木製の【対温の腕輪】は軽いが、付ける事の出来た製作ボーナスが微妙だな。反対に銀を使った合金製の腕輪は重いが、製作ボーナスの方は素敵なんだよな。
試行錯誤の上、2種類の腕輪を作ってみたが、どちらも一長一短と言った感じだよな。
『皆は、どう思う?』
『主よ、主の場合じゃと木製が良いのじゃ』
『…………銀製』
『どっちもどっち。我みたいに何も身に付け無いのが正解なのだ』
…………見事に3つの意見に別れたな。1つは却下するとしても、このままだと相談した意味が無いんだよな。まぁ、僕自身も迷っている事だから、気持ちは分かるのだけど。
こうなると…………両方とも、それなりの数を作って好きな方を使って貰うしかないかな。最悪はアキラの作っている防寒具も有るから、なんとかなるだろう。
『一応、白と黒の分も作る予定だけど………いる?よな』
2匹共、寒がっていたからな。銃の姿の時は無理だと思うが、竜の姿の時用に身に付けれそうな物が有っても良いよな。まぁ、腕輪が首輪になりそうだけど。
『主よ、ありがとうなのじゃ』
『…………助かる』
まぁ、各々が、薦めてきた方を用意しておけば良いだろうな。
『じゃあ、そろそろ出発するね。皆、寒さ対策は大丈夫?うん。大丈夫そうだね。一応、シュンが作った腕輪も鞄の中に持っててね。アレは、温度調節が出来る貴重品だからね』
【サラベール】を目指して山を下山する為に、ヒナタとサラが選んだ寒さ対策は、アキラのローブだ。まぁ、僕の腕輪の性能がダメだった訳ではなく、他の装備の兼ね合いから上から羽織れるローブが向いていただけだけどな。
ちなみに、今回のパーティで前衛を任せるブレッドは、銀製の腕輪を選んでいる。今まで装備していた物よりも防御力が高いらしく、かなり気に入ってくれたみたいだからな。
『それと、今回のパーティーリーダーは…………そうだ!!ヒナタやってみる?』
『私がですか?』
『そうだな。ヒナタが、やってみても良いんじゃないか?今回、僕は前衛に回るし、今回のパーティーメンバーの戦力なら、アキラには遊撃を任せたいからな。それに、後衛から全体を把握するプレイヤーが必要だからな』
『分かりました。やってみますね。ブレッド君とサラちゃんもヨロシクお願いしますね。それでは、隊列ですが、前衛をブレッド君とシュンさん、サラちゃんとアキラが中衛。後衛を私が受け持ちます』
大体僕の思った通りの配置だよな。まぁ、僕ならアキラを後衛に配置するが…………そこは、アキラも分かってるみたいだな。僕を見て目で合図してくるくらいだからな。任せておいても大丈夫だろう。
〔『シヴァ、念の為に後衛がピンチになりそうなら教えてくれ。白と黒は、例の如く《探索》ヨロシク』〕
『まずは、この辺りで少し狩りでもしましょうか。この隊列と皆さんのスキルの把握の為にも』
装備
武器
【ソル・ルナ】攻撃力100/攻撃力80〈特殊効果:可変/2弾同時発射/音声認識〉〈製作ボーナス:強度上昇・中〉
【魔氷牙・魔氷希】攻撃力110/攻撃力110〈特殊効果:可変/氷属性/凍結/魔銃/音声認識〉
【空気銃】攻撃力0〈特殊効果:風属性・バースト噴射〉×2丁
【火縄銃・短銃】攻撃力400〈特殊効果:なし〉
【アルファガン】攻撃力=魔力〈特殊効果:光属性/レイザー〉
【虹鯨(魔双銃剣ver.)】攻撃力500〈特殊効果:7属性〉
【白竜Lv82】攻撃力0/回復力262〈特殊効果:身体回復/光属性〉
【黒竜Lv82】攻撃力0/回復力262〈特殊効果:魔力回復/闇属性〉
防具
【ノワールシリーズ】防御力105/魔法防御力40
〈特殊効果+製作ボーナス:超耐火/耐水/回避上昇・大/速度上昇・極大/重量軽減・中/命中+10%/跳躍力+20%/着心地向上〉
アクセサリー
【ダテ眼鏡】防御力5〈特殊効果:なし〉
【ノワールの証】〈特殊効果:なし〉
天狐族Lv71
《錬想銃士》Lv14
《真魔銃》Lv18《操銃》Lv38《短剣技》Lv41《拳技》Lv2《緩急》Lv2《魔力支援》Lv2《付与術改》Lv21《付与練銃》Lv22《目で見るんじゃない感じるんだ》Lv46《家守護神》Lv62
サブ
《調合工匠》Lv33《上級鍛冶工匠》Lv8《上級革工匠》Lv7《木工工匠》Lv42《上級鞄工匠》Lv10《細工工匠》Lv46《錬金工匠》Lv45《銃工匠》Lv36《裁縫工匠》Lv16《機械工匠》Lv24《調理師》Lv26《造船工匠》Lv2《合成》Lv53《楽器製作》Lv5《バイリンガル》Lv10
SP 12
称号
〈もたざる者〉〈トラウマニア〉〈略奪愛?〉〈大商人〉〈大富豪〉〈摂理への反逆者〉〈初代MVP〉〈黒の職人さん〉〈創造主〉〈やや飼い主〉〈工匠〉〈呪われし者〉〈主演男優賞?〉〈食物連鎖の最下層〉〈パラサイト・キャリアー〉




