半身の半身 1
あのドタバタの新人加入劇から1週間が経過しているが、ホームの方では、相変わらずバタバタとした日常が続いているらしい。この調子が、ケイトのクエストで加入する予定の仲間にも続く様なら、それ以降の加入については真剣に考えないといけないかもな。
実際に、あのあとの数時間は大変だった…………
色々な事を説明する度に、サラとブレッドの理解を越えてフリーズしたからだ。その都度、中断と言う名の休憩を取らざる得ない状況に追い込まれた。まぁ、船を持っているギルドは有っても、その船が空に浮く、ましてや空中を軽々と移動出来るとは誰も思わないからな。改めて【noir】の特異性をまじまじと感じさせられたよな。
当然、あの日だけで、全ての説明を終える事は出来ずに、今日に至っている。
僕を騙していた…………隠し事をしていた事への責任を感じている教育係の2人以外のメンバーも、説明やサポートを率先的に協力してくれているので、僕は船旅を続けられている。
僕が、船旅を続けている間に【シュバルツランド】では、ケイトの新人加入クエストと10月の終り~11月初頭を利用しての公式イベント、ハロWinも同時開催されている。
このイベント期間中は、【シュバルツランド】周辺に出現する魔物全てが、ハロウィン仕様になっていて、イベント限定のアイテムやハロウィン装備をドロップしてくれるイベントらしい。
楽しそうなイベントだと思うが、【noir】としては、ケイトのクエスト期間と被っているのでクエストの方を優先している。まぁ、このイベントの特性上、狩りに行くだけで参加出来るので、暇を見付けて各々が個人的に楽しむらしい。イベントの報酬が珍しい素材系なら、皆のやる気も違うんだろうけど…………残念ながら、今回ドロップする素材系は普段と変わらない物らしいからな。
アクアやジュネのギルドは、イベントのランキング上位を目指して日々研鑽している様だ。数を狩る勝負なので魔法を使うジュネ達の方がイベントを有利に進めているらしい。その為、食事の度に僕はアクアから愚痴を聞かされている。
皆が頑張ってくれている期間を使って、僕が目指しているのは、ヨーロッパのサーバータウン【サラベール】。この一週間の間に、既にアフリカ大陸的な【ガリンペイロ】には到達している。
地図で見るなら、今は【ガリンペイロ】と【サラベール】の中間くらいだろうか。地図通りなら2~3日程で、最寄りの港町には着きそうだよな。まぁ、近くに港町が有ればの話だけど…………
少し前に寄った【ガリンペイロ】は、大陸のほぼ真ん中、若干、東よりに位置してるのかな。近くに、港街は勿論、【アクアパレス】みたいに水路や川も無いので、最短距離にあたる岸に船を着けて徒歩で目指す事になった。
たまたま、僕の通ったルートには小さな街すら無かったので、ログアウトする事すら出来ずに、一気に【ガリンペイロ】を目指さなければならなかった。
まぁ、【空気銃】を使って、ところどころでショートカットさせて貰ったから、思っていたよりも時間は掛からなかったんだけどな。
そうやって、辿り着いた【ガリンペイロ】の街自体は、今までに見た街とは完全に別物だった。大きな縦穴の底に街が有ったので、遠目からは全く確認する事が出来ず、近距離まで近付く事によって存在を見付ける事が出来た。
驚くべきは、大穴の底に有る街にも関わらず、どう言う方法でかは分からないが、街の下の方まで太陽の光が届いており、かなり明るく暖かい街になっている。
街の側面には、大きな鉱洞ダンジョンが複数隣接していて、殆どの露店や店舗が、その鉱洞の恩恵を受けた採掘関係の店で構成されている。
フレイにとっては、天国なんだろうな。惜しむべきは、船が近くに無いので【ガリンペイロ】をゲート登録をさせてやれない事だけどな。
まぁ、その代わりと言っては何だが、お土産だけはガッツリ買わせて貰っている。珍しい鉱石や金属加工のレシピ、更に【ガリンペイロ】には、他の街には存在しない武器のレシピまで存在した。まぁ、ここまで来るのが大変なので、その恩恵くらいは有っても良いだろうな。
流石に銃のレシピまでは無かったが、《鍜冶》スキルのLvが不足している僕には、読む事の出来ない武器のレシピも有ったので喜んでくれる事だろう。他にもフレイの喜びそうな物が色々と有ったしな。
ただ、この【ガリンペイロ】を見て1番驚いた事は別に有る。大穴の内側の壁沿いに螺旋階段が下まで続いており、それを下らないと街に入れない仕様になっていた事だった。その数、合計1,192段。語呂合わせが1192になっているのは、偶然なのだろうか?機会が有れば、王様に歴史を聞いてみたいよな。
機会が有ればと言うのは、今回の訪問で王様に会うことが出来ていないからだ。まぁ、預かったていた書類は、大臣に渡しているので問題は無いんだけど、少し残念だよな。
【ガリンペイロ】も、【アクアパレス】とは違った意味で存在感が強く忘れる事は出来ないだろう。
『主よ、ここは、全く釣れないのじゃ』
『釣りには、そう言う時も有るからかな』
って言うか、釣りは釣れない時の方が圧倒的に多い。この前の白と黒が釣れ過ぎていただけなんだよな。ひたすら、魚が釣れるのを待つ僕の忍耐を見て欲しい。こう言う耐える時間も含めてが、釣りなんだぞ。
『そうは言うがの、既に2時間じゃ。黒も、飽きておるのじゃ』
黒もって事は、白もって事だよな。まぁ、確かに2時間も釣れなかったら、そろそろ、潮時なのかも知らないけど…………そうだな。今日は、早めに切り上げて生産でもしようかな。
『…………主の、かかってる』
『マジか!?』
つ、遂に、僕の時代が来たのか?
苦節、数週間。数回開催された1人と2匹の釣り勝負は…………良いところ無しで全敗!!
全く釣れてないと言う事は無いが、白と黒よりも先に釣れた事は無い。その僕に、ようやく初勝利が見えてきたのか。
『主よ、期待してはダメなのじゃ。きっとウォージャムなのじゃ』
ま、まさかな。2度は無いよな。ここでは必要無いですよ。今度こそ、本当に信じてるぞ。切実に…………な。
『…………秋刀魚』
『白、残念だったな。今度こそ、僕の勝ちの様だな』
秋刀魚か、リアルでは少し時期が過ぎた感じはするけど、今年の秋は食べ損ねたからな。美味しい焼き魚になって貰おうかな。付け合わせに大根おろしとすだちを添えれば、ご馳走に早変わりだ。
秋刀魚を釣り上げようとした瞬間、リールから糸が一気に出ていく。
『えっ!?何?』
糸が出続けているのでバレては無いはずだが、さっきまでの引きとは全然違っている。一体どう言う事だ?
その時、遠くの方で小さな魚影が跳ねた。
『…………鰹』
今、黒は鰹って言ったのか?と言う事は、僕の竿にかかった秋刀魚が泳がせ釣りの餌になったって事なのか?
そんな事を考えていると僕の目の前を鰹の群れが横切っていく。
それにしても、秋刀魚が鰹にランクアップするとはな。嬉しい誤算だ。
『白、黒、鰹って魚は、刺身でも旨いし、タタキでも旨いんだぞ。絶対に釣り上げるからな。楽しみにしとけよ』
今までの釣果がチャラになるくらいの獲物だからな。絶対に逃してなるものか。
少しずつ、少しずつだが、糸が巻き上がっていく。小さく見えた魚影も徐々に大きくなってきて、はっきりと確認出来ている。
もう少しだな。
残り40m………35m………30m………
『……………早く逃がす』
『えっ!?何で!?ここまで来て、逃がしてたまるか!!』
リールを巻く手が一気に加速していく。どんな理由が有ろうとも釣り上げてみせる。
残りは、既に20mを切っている。
『主よ、黒の言う通りにするのじゃ。急いで釣竿を捨てるのじゃ』
うん!?黒だけじゃなくて、白までが焦り出したな。何か有るのか?
『……………もう遅い。手遅れ』
10m………
『だから、何が!?』
2匹が、一体何の事を話しているのか分からない。まぁ、そんな事よりも…………
『鰹GETだ!!』
念願の大物だな。そして、祝!!初勝利。
さて、どうやって食べようかな。さっきも、話したが刺身にタタキ、あっ!!竜田揚げや煮付けでも良いよな。ヤバイな。想像しただけで、めっちゃくちゃお腹が減ってきたぞ。
『………………食べられるのは』
おっ!!何かリクエストでも有るのか?
『うむ。ワシらじゃ』
白の言葉ともに、船の周りの海の色が暗くなっていく。
『はっ!?どう言う事だ?』
『主よ、食物連鎖なのじゃ』
ますます、意味がわからない。分かる様に説明して欲し…………
『あっ!!』
白、黒、すまない。たった今、全て理解出来たよ。
さ僕が、理解したのとほぼ同時に、僕達は船ごと海面から現れた巨大な鯨に飲み込まれた。
『…………う、ぅん、ここは?』
僕が気が付いた場所は、何度も見慣れた神殿の天井ではなく、薄暗い洞窟?らしき場所の中だった。
何が起きた?思い出せ、思い出せ…………
『えっと、確か…………』
船で移動中の恒例になっている釣りをしていて、秋刀魚を釣ろうとしたら、鰹を釣り上げて、その直後に下から現れた鯨に…………
そうだ!!パクッて食べられたんだよな。死んだのか!?違うな。それなら、死に戻りで神殿になるはずだよな?ステータスを見ても、死んだ回数は変わって無いからな。
『うん!?』
新しい称号が増えているぞ。またか、こんな称号なら増えて欲しくなかったけどな。
new称号
〈食物連鎖の最下層〉
自らの身体を食べられた者への称号
取得条件/何かに食べられる
………かなり不本意な称号だよな。
って言うか、僕並に変わった称号を持つプレイヤーっているんだろうか?ちょっと気になるところだよな。
そうだ!!白と黒は?
『白、黒、何処だ?無事なのか?』
辺りを見渡しても、声を掛けても、白と黒らしき姿は見付けられない。《心話》も出来ない。はぐれたのか?いや、はぐれただけなら良いんだが、2匹共無事なんだろうな…………
そう言えば、一緒に食べられたはずの船も無いよな。
船の方は、残害すら見付からないので無事の可能性が高いはずだよな。むしろ、白達も船と一緒なんじゃないのか?それなら少しは安心出来るのか?
そう言えば、あの船が無かったら…………僕は、ゲートによる転移どころか、この場所からログアウトすら出来ないんじゃないのか?
う~ん、もしかして、思ったよりもヤバイ状況なのかも…………
時間が経つ事で、徐々に冷静になってくるが、状況は一向に好転しない。まぁ、この場所から動いて無いので、好転しようがないんだけどな。
少しは余計な事を考えるくらい脳も動いてきた様だな。そろそろ、動くか?問題は、どっちに進むかなんだよな。
この場所自体が、かなり広かったので最初は気付かなかったが、良く見ると洞窟?の壁が、動いている。多分、この洞窟?みたいな場所は、鯨の腹の中なんだろうけど…………片方は出口で、もう片方は胃になるんだろな。間違えて胃の方向に進むと、せっかく生き残ったのに胃液で溶けて死ぬ可能性が有るからな。
いや、待てよ。船………ましてや、白と黒が残っているなら置いて出ると言う選択肢は無いからな。先に胃の方向に進んだ方が効率は良いのかも知れないな。出口に向かって、白と黒と再会出来なかったり、舟が無かった場合は逆方向に戻る可能性も有るからな。
冷静になるにつれて、様々な事が理解出来てきている。この場所では、コールや《心話》等の通信系は使えないし、鞄の共有機能も切れている。多分、隔離された特殊なエリアなんだろうな。
それと、かなり酷い仕様だと思うが、魔法を全く使う事が出来ない。《付与術》を使ってみたが、全く効果が無かったからな。ここに来たのが《魔術師》等の魔法メインのプレイヤーだったら、詰んでるんじゃないか。まぁ、死に戻りと言う選択が出来るだけ僕よりもマシだと思うけどな。
さてと、風の流れからすると、出口の反対側は………こっちか?こう言う時は、見えなくても感じる事の出来る《見ない感じ》は便利なんだよな。
暗くて先が見えないので辺りや足下を確認しながら、少しずつ進んで行く。こう言う時には、先を見る事の出来る《探索》系のスキルが無い事が悔やまれるよな。まぁ、さっきの事も有るからな。五十歩百歩かも知れないけど…………
『うぉっと!?マジか!?』
少し進んだところで液体系の魔物とウォージャムに出くわした。しかも、先制攻撃のオマケ付きだ。
ここは、鯨の中?のはずだよな。その中にも魔物が出現するのか?それとも、僕が感じているのが間違いで鯨の中では無いのか?
【雷光風】による射撃で、一気にウォージャムを狩る。わざわざ、こんな場所でトラウマの相手を出してくるのがOOOの運営の意地悪なところだよな。
もう1匹の出現した液体系の魔物は見た事が無かったが、倒せるLvだったのが救いだな。倒した魔物達がドロップしたアイテムで、今までの疑惑が確信に変る。
手に入れたのは、鯨の血と鯨髭。鯨の血は液体系のアイテムで、スリップダメージ無効の効果が有るらしい生産系の素材だな。
鯨髭は、竜髭の類似素材でランク的には1つか2つ下の素材の様だ。まぁ、それでも十分レア素材だ。あのイベント報酬の竜髭が特殊過ぎるんだよな。
『やっぱり、ここは鯨の中なんだよな』
それと、今の戦闘で、もう1つ分かった事が有る。手元に【白竜】と【黒竜】は無いのだが、竜の力の効果が発揮されている。つまり、装備状態が継続中。と言う事は2匹は無事と言う事だな。《心話》も使えなかったので不安だったのだが…………取り敢えずは、一安心と言ったところだな。
そのあとも、魔物を倒しながら奥へと進んで行く。進むにつれて徐々に道も細く、魔物の数も増え、一層に暗くなっていくのだが……………かなり先に小さな灯りらしきものが見えた。
うん!?今、灯りらしきものが動いたのか?
魔物以外にも何かいる?それとも…………逸る心を押さえながら、1歩1歩慎重に歩みを進める。
灯りを見付けてから、どれくらい歩いて、どれくらいの魔物を狩ったのだろうか?ようやく灯りの元へ辿り着いた。灯りの場所には2つ小さな影と話声が…………
『…………と言う事じゃ』
聞き慣れた声に、聞き慣れた語尾。
『白、黒なのか?無事なのか?』
『おぉ、主なのかの?ワシは大丈夫じゃ。主は、無事じゃったか?』
まだ、はっきりとした姿は見えないが、白だと分かり安堵の心が広がっていく。まぁ、僕と再会出来た白も同様みたいだがな。
『僕は、大丈夫だ。黒はどうだ?』
『主よ、ここにおるのは黒では無いのじゃ。この方は、雨鯨のシヴァルヴァーニ・バジェーナ様じゃ。この光鯨の主様でもあるのじゃ』
『はっ!?えっ!!じゃあ、黒は?』
色々と理解が追い付かなくなっているし、聞きたい事も多々有るのだが、それよりも黒の安否が先だ。
『黒は、大丈夫なのじゃ。もう少し先で船と一緒におるのじゃ。船も無傷なのじゃ』
それは、2重の意味で安心したな。黒と船の無事が分かったので、僕の緊張も解れていく。
これで、最悪はゲートから転移して脱出する事が出来るからな。それにしても、僕が振り落とされて気絶する様な衝撃でも無傷とは、かなり丈夫な作りになっている様だな。改めて、普段から整備してくれているヒナタに感謝だな。
『ところで、白は、その雨鯨さんと何をしてたんだ?』
名前の方は長過ぎて1回で覚えるのは無理だったが、かろうじで雨鯨のフレーズだけは聞き逃さなかったからな。
『主よ、雨鯨のシヴァルヴァーニ・バジェーナ様じゃ。この方は、ファミリアの三大王の一角で、海の統治者にして海の偉大なる父。別名、海王や海神とも呼ばれておるお方なのじゃ』
『はい!?』
ちょっと待て!!リヴァイアサン、ポセイドン?だと…………ゲームを、殆どやらない僕でも知ってるくらい有名な幻獣とか神の類いだったはずだ。それとファミリアの三大王とか言ってたよな。何で、そんな有名で偉大な方が、こんな薄暗い鯨の、しかも、腹の中にいるんだ。
『我の名前は無駄に長いから、シヴァでよいぞ』
白と共に近付いてくれた事で、2匹の姿を確認する事が出来た。
う~ん、なんて言うかな。長い格式張った名前とは裏腹に、かなりフレンドリーな王様みたいだな。
それと、シヴァ様は鯨なのに、白と同様に空中に浮かんでいる。幾ら王様と言っても、鯨が空を飛ぶのは有りなのだろうか?それに、雨鯨の名前の由来か?シヴァ様は身体の周りにドーナツ状の雨のエフェクトを纏っている。
『主よ、勘違いして失礼な事を色々と思っておる様じゃが、シヴァ様は大きさを自由に変える事が出来るのじゃ。本来のお姿は今の約100倍と言ったところじゃ。それに、ファミリアの王じゃぞ。ワシに出来る事が出来ないはずが無いのじゃ』
確かに、仮にも王を名乗る者が、下位の者よりも性能が低い訳は無いよな。
でも、100倍と言う事は、この鯨………確か、光鯨と言ったか?よりは小さいよな。まぁ、僕達から見るとかなり大きい事には違いないけどな。
『それで?』
『シヴァ様は、探し物が有るらしいのじゃ』
『探し物?鯨の腹の中に有るの物なのか?』
『うむ。この場所は…………』
『ここからは、我自らが説明しよう。ここは、我の大事にしておるペットの光鯨のアートの中だ』
身体の巨大さからは、想像も出来ない名前をしている。多分、工芸との読み方繋がりなんだろうけど。突っ込むのは、止めておこうか。
まぁ、ネーミングセンスに関しては、人の事は言えないんだが…………センスは皆無だと思う。
『お主達は、アーちゃんの食事時間に、偶然巻き込まれたのだ。その点は、すまなかったと思う。全員が無事だったのだから、まぁ、許せ』
まぁ、何かのイベントの1種だと思うし、船と白達が無事なら怒る事でも無いからな。
ちなみに、白達や船が無事で無かったのなら、いくら偉大な王と言えど許していない。戦って勝てないにしても、間違いなく渾身の一撃くらいは入れさせて貰っているだろう。仮に、それで死んでも後悔は無いからな。
『それは、僕の運が悪かったと思う事にしますので大丈夫です。シヴァ様、それで、探し物と言うのは?具体的に………』
半分は、本当の事だからな。それに、あまり黒を待たせるのも可哀想だからな。少し巻き目でシヴァ様の要件を済ませるしかないよな。
『うむ。我は、我の半身の半身を探しておるのだ』
『半身の半身………ですか?』
『そうだ。永らく我の半身を深海の神殿で管理しておったのだが、数百年前の聖戦で半分に砕けてしまったのだ。それを、神殿の奥に大切に奉っておったのだが、ちょっとした事からアーちゃんのお腹に入ってしまったのだ』
ちょっとした事ねぇ…………きっと、アーちゃんが間違って食べたんだろうな。管理の仕方を疑ってしまうな。
『なるほど、それで、姿を小さくてして自ら探しに来たと言う事ですか?』
『その通りだ』
王様自らが、探しに来ると言う事は、ちょっとした事の理由は、シヴァ様自身に有るのかも知れないな。
『主よ、お願いが有るのじゃ』
多分、探すのを手伝いたいと言う事だろうな。
『良いぞ。奥に用が有るのは僕達もだからな』
まぁ、わざわざ、聞く必要も感じる必要もないくらいには、付き合いが長いからな。
『かたじけない。恩に着る』
まぁ、船を見付けるついでだからな。
アーちゃんの中は、相変わらず一本道なので程無くして船まで辿り着く事が出来た。シヴァ様が一緒に居たからか?船までの道程は、さっきまでウジャウジャ出てきていた魔物が一切出てこなかったので、白の情報よりも早く着くことが出来ている。流石は、リヴァイアサンの威厳だな。味方なら恩恵が半端じゃない。
ちなみに、白の《探索》スキルで、足下や先が分かるのも楽に進めた大きな理由の1つだ。先が分かるの事へのアドバンテージの大きさを感じているからな。
白の言う通りで黒と船は全くの無傷。船は、柔らかい場所に引っ掛かって止まっており、胃まで届いていなかったのが無傷の理由だろうな。
再会した時の黒は、普段と違って感情を剥き出して僕に抱き付いてきたのが印象的だった。あの時の黒の顔は、生涯忘れる事は無いだろう。
ちょっと待てよ…………って言う事は、気絶していた僕が1番ダメージが大きかったのか?それは、それでショックだよな。竜の力のお陰で気付いた時には全快していたが、食べられた時には気絶するくらい強烈なダメージが有ったんだろうな。絶対に思い出したく無いけどな。
『ここにも、何も無いようだな。白、黒、何か有ったか?』
シヴァ様に半身の形状を聞いたのだが、神々しい物だの一点張りで、あまり的を得ない答えしか返ってこないからな。探し物の捜索は難航している。
『…………何も無い』
『ワシにも、見付からぬのじゃ』
『我の方もだ』
そうか…………これ以上、奥に進むなら胃液ゾーンに入るんだよな。まぁ、そこが怪しいポイントでも有るんだけどな。動物なら、食べたあとは消化と排出が待っている。胃で見付からなかった場合は…………考えるのも嫌だからな。
『じゃあ、覚悟を決めて進んでるか』
船を動かない様に固定して、更に奥へと進んで行く。
暫くして胃に辿り着いたのだが、そこで僕達を待っていたのは、全てを溶かしてしまいそうな強烈な胃酸の海と一瞬でも気を抜くと気絶してしまいそうな悪臭の霧。僕達と一緒に食べられたであろう魚は、もう跡形も残っていない様だな。
僕も、白達も、船も、ここまで来てなくて本当に良かったと思う。
『おぉ!?我の半身の反応が有るのだ。ここから近いぞ』
おいおい、ここを進むのか?正気の沙汰では無いぞ。
僕は、鞄から適当な素材を取り出して、酸の海に放り投げてみる。放り投げられた素材は、胃液に触れる前に蒸発していった。おいおい、本当にシャレにならないぞ。触れる事は勿論、近付き過ぎる事も出来ないみたいだな。
『あそこだ。あそこで光っておるのが、我の半身の半身だ』
シヴァ様が尾ビレで指す方向には、微かに光り輝く物が酸の海の中に有る島らしき物に刺さっている様に見える。確かに、あの輝きは見ようによっては神々しく感じるかも知れないな。
それよりも、この酸の海の中で無事に存在している方が不思議だよな。かなりとんでもない代物の様だな。
『どうしますか?』
答えは、分かっているのだが、聞かずにはいられないからな。
『主よ、主の見せ場なのじゃ』
『…………頑張る』
想像通りの回答を有り難う。まぁ、やっぱり、そうなるんだよな。薄々感じていたよ。
僕は、装備を【空気銃】に持ち変えて、ゆっくりと空中を進んで行く。酸の海は、僕が近付くと、ところどころが波の様に盛り上がって僕を襲ってくる。
『これは、ヤバイな』
なかなか、近付け無いぞ。勢いに任せて捨て身で突っ込むか?最悪、鞄の中にさえ入れる事が出来れば死に戻りを経験しても、ゲートを使って、ここに転移して来れるからな。
『黒よ、今じゃ。《結界》を張るのじゃ』
僕の側を飛んでいた2匹の竜が、《結界》スキルを展開する。
『おい!!それは、何だ?』
《結界》スキル?だと、いつの間に使える様になったんだ?
『主よ、説明はあとなのじゃ』
それと同時に、僕を襲っていた酸の波を遮断していく。あまりの酸の威力に結界は3秒程度しか形を保てていないが、白と黒が交互に《結界》を展開する事で、僕の進む道をキープしてくれている。まぁ、遮断出来ているのは酸の波だけで、悪臭の方は全く遮断出来て無いんだがな。ここで、そんな贅沢を言うのは間違っているだろうな。
ここまで、2匹にお膳立てされたら、必ず手に入れて戻るしかないよな。
もう少し、もう少しだ。
『よし!!OKだ。白、黒、逃げるぞ』
一刻も早く、この場を離れたいからな。
刺さっていた物を引き抜き、一気にその場を離れようとした時に、それは………起きた。
引き抜いたと同時に視界が揺れる。酸の海の激しさが急激に増している。同時に水位も上がってきている気がするな。
いや、違うぞ!!揺れているのは、視界では無くて、アーちゃんの方か?
『お主達、アーちゃんが元の大きさに戻る。すぐに逃げるのだ』
『『『えっ!?』』』
僕達が、シヴァ様の言葉の意味を理解するのは脱出した後の事だった。
装備
武器
【雷光風・魔双銃】攻撃力80〈特殊効果:風雷属性〉
【ソル・ルナ】攻撃力100/攻撃力80〈特殊効果:可変/2弾同時発射/音声認識〉〈製作ボーナス:強度上昇・中〉
【魔氷牙・魔氷希】攻撃力110/攻撃力110〈特殊効果:可変/氷属性/凍結/魔銃/音声認識〉
【空気銃】攻撃力0〈特殊効果:風属性・バースト噴射〉×2丁
【火縄銃・短銃】攻撃力400〈特殊効果:なし〉
【アルファガン】攻撃力=魔力〈特殊効果:光属性/レイザー〉
【白竜Lv70】攻撃力0/回復力240〈特殊効果:身体回復/光属性〉
【黒竜Lv70】攻撃力0/回復力240〈特殊効果:魔力回復/闇属性〉
防具
【ノワールシリーズ】防御力105/魔法防御力40
〈特殊効果+製作ボーナス:超耐火/耐水/回避上昇・大/速度上昇・極大/重量軽減・中/命中+10%/跳躍力+20%/着心地向上〉
アクセサリー
【ダテ眼鏡】防御力5〈特殊効果:なし〉
【ノワールの証】〈特殊効果:なし〉
天狐族Lv64
《錬想銃士》Lv4
《真魔銃》Lv11《操銃》Lv32《短剣技》Lv34《拳》Lv55《速度強化》Lv100※上限《回避強化》Lv100※上限《魔力回復補助》Lv100※上限《付与術改》Lv11《付与練銃》Lv12《目で見るんじゃない感じるんだ》Lv37
サブ
《調合工匠》Lv28《上級鍛冶工匠》Lv6《上級革工匠》Lv6《木工工匠》Lv34《上級鞄工匠》Lv8《細工工匠》Lv46《錬金工匠》Lv45《銃工匠》Lv36《裁縫工匠》Lv15《機械工匠》Lv21《調理師》Lv24《造船》Lv17《家守護神》Lv56《合成》Lv50《楽器製作》Lv5《バイリンガル》Lv8
SP 13
称号
〈もたざる者〉〈トラウマニア〉〈略奪愛?〉〈大商人〉〈大富豪〉〈摂理への反逆者〉〈初代MVP〉〈黒の職人さん〉〈創造主〉〈やや飼い主〉〈工匠〉〈呪われし者〉〈主演男優賞?〉〈食物連鎖の最下層〉




