サラブレッド
『やっと、捕まえれました。シュン、俺の勝ちだ』
肩を叩かれて、振り返ると見覚えの有る青髪エルフが、そこにいた。
『何で!?どうして!?』
…………全く理解出来ない。落ち着け、落ち着け、僕。
さっきまでは、僕の周りに鬼どころか誰も居なかったはずだ。少なくとも、Y字路で確認した時には、人影は見当たらなかったよな。ここまでは、間違い無いな。
次は、僕が来た方向だが…………鬼は何人か追い掛けて来ていたが、その方向は僕が直接確認しながタイムアップを向かえようとしていたので、その方向から捕まる、まして背後から肩を叩かれる事は絶対に無いはずだ。
そうなると…………さっきの鬼みたいに上からか!?いや、それも違うな。上も念入りに確認したからな。絶対に近付ける範囲の上に緑一色の人影は居なかった。
ブレッドの勝ち誇った顔を見るのは、ちょっと悔しいな。鬼ごっこのルール上、負けても仕方が無い思っていたが、実際に負けるとなるとやっぱり悔しいよな。
『まだ、分からない?じゃあ、ヒントだ。シュンは、何回この場所を通ったと思う?』
何回通った?この場所は、大通りに繋がる左の路地と路地裏の中心部に向かう右の路地。僕が進んで来た路地も路地裏にしては十分な広さが有る。
それに、この辺りの路地は全体的に見通しが良いので、鬼側にとっては隠れる場所が少ないから、それなりに通ったと思うけど…………5・6回くらいか?
『5回か6回だと思うけど………』
『残念。俺が知っているだけでも今通ったので、9回目だ』
9回!?そんなに通ってたのか?って言うか、ブレッドは全部見ていたのか?
『そして、シュンは、ここを通る時は常に右、左、右、背後の順に確認して右の路地を進んでいる。最後だけは、何故か?上も確認してたけどな。この事は分かる?』
そう言われてみれば、無意識の内に右、左、右、背後の順に確認していたかも知れないな。
左は、路地自体が短かいし、大通りにも繋がっているので大通りでの待ち伏せを警戒して進路としての選択しから除外している。背後は、常に何人かの鬼が追い掛けてきているので、来た道を戻るのって言うのも自殺行為になりかねないからな。必然的に、逃げ道の多い右に進んでいたかもな知れないな。
それに、あの時、上を確認したのは絶対に壁を蹴って移動してきた鬼の影響だよな。それにしても…………
『ブレッド、降参だ。あの時、何が有ったか教えてくれないか?』
隠れられる場所は無かったと思うし、追い付かれると言うのも考え難いんだよな。
『シュンが、Y字路を通る時に決まり事が有ったのは、さっき話した通りなんだ』
そこまでは、何とか理解出来るんだよな。
『俺は、鬼ごっこ開始直後から建物の上で、シュンを見ながら行動パターンを探っていた。そしたら、この場所だけが僅かに隙を見せている気がした。それで、この場所をシュンが再び通るのに賭けて待ってたんだ』
開始直後からと言う事は、ゲームの最初は見る事に徹して捨ててたのか?1人しか勝者がいない状況では、かなり大胆な采配だよな。
『でも、あそこには隠れる事の出来る場所は無かっただろう?』
『路地には、隠れる場所は無いから、この先の大通りで待っていたんだ。ここの確認だけは、何回見ても目視で1回だけと甘めだったから』
大通りで待っていた?終了前に撹乱を兼ねて広場の方に一旦離れたから、再び通るかどうかも分からないのにか?
それに、あの場所には自信が有ったから、確認は甘めだったのかも知れないけど…………確認した時に残り時間は、3秒くらいだったよな。
『それでも3秒で、ここまで来るにはギリギリじゃないのか?』
その辺りの確認だけは、慎重にしているからな。
『うん。間に合うかどうかは、賭けだったよ。でも、ずっと見てたから、大きな賭けに出ないとシュンを捕まえれないと感じた。それと、俺に《速度強化》スキルと《条件反射》スキルの複合スキルが無かったり、最後に上を確認してくれなければ間に合わなかったと思う。その点は運が良かった』
最後に上を確認したのが裏目に出たのか。でも、直前に壁を蹴って移動するの見てるからな。確認するなと言うのも無理な話だよな。さっきまでの15分間は疑心暗鬼全開たったからな。
それにしても身体強化系にも複合スキルが有ったんだな。《速度強化》と《回避強化》にも有るのか?ちょっと気になるな。早めに、SPを貯めなければならないな。
『そうか…………完全に僕の敗けだな。皆も待っていると思うし、広場に戻ろうか』
『お疲れ様っす。頑張ってくれた黒の職人さんと勝者の方に、今一度大きな拍手を!!』
チャリさんの一言で、広場に現れた僕達2人に温かい拍手と冷めたブーイングが木霊している。
ちょっと空気が重くないか?どちらかと言うと、若干ブーイングの方が多い気がするな。多分、第2~4ゲームに参加しようとしていたプレイヤー達だよな。まぁ、事前に決めているルールだから仕方無いんだけど。
『凄いブーイングの量っすね。まだ、参加出来て無かった皆さん、納得がいかなったっすか?』
『最後、あまりにも簡単に捕まり過ぎだぞ』
『『『『そ~だ!!そ~だ!!…………』』』』』
誰かから放たれた無責任な一言で、一気にブーイングの勢い強くなっていく。直前に多少の変更は有ったが、ルールは皆に公平だからな。それに、最後は完全にブレッドの作戦が上をいっているからな。
『八百長じゃないのか?』
えっ!?それを疑うの?
『『『『出来レース、出来レース…………』』』』
しかも、会場を巻き込んでの出来レースコール。
僕の疲労感が伝わってないのか?体力的には、疲れて無い様に見えるが、精神的にかなり疲れているんだぞ。まぁ、最後の最後、時間切れ寸前に捕まるとか演出と感じるのも分かるんだが………それでもな。
『出来レースや八百長では、全く無いんすけどね。う~ん。この調子では、収まりがつきそうも無いっすからね。皆さんは、どうしたいっすか?』
『え、延長戦だ』
『『『『『おぉぉぉぉぉ~~!!』』』』』
『それも良いっすね。観客の皆さんも盛り上がっているみたいですし、カゲロウくん、特別ルールの延長戦どうっすか?』
司会としては、会場を盛り上げたり、静めたり、雰囲気をコントロールする為には正しい選択だと思うけど…………チャリさん、僕の意見は無視ですか?カゲロウも指で小さくOKとかしないで下さい。
『責任者から了承が出ましたので、延長戦を行うっす!!』
『『『『『うぉぉぉぉぉ~~!!』』』』』
会場全体を巻き込んでいたブーイングが一気に歓声へと変わる。こうなったら、僕に拒否する権利は有っても、認められないんだろうな。まぁ、もともと4回やる予定だったから予定通りと思えば良いんだけど…………後半になる程、鬼も色々な事に馴れてきて捕まえ易くなるだけだと思うよな。
『それでは、延長戦のルールを発表するっす。参加出来なかった残り3ゲームの参加者全員で15分限りの1ゲーム。延長戦と言う事も有るっすから、黒の職人さんにも全力を尽くして貰うつもりっす。黒の職人さんには、使用禁止にしていた装備の使用を認めるっすよ。その他のルールは、鬼ごっこと同じっす。30分後にゲームを開始するので、皆さん準備よろしくっす』
今、打合せ無しで延長戦のルールを発表したよな。しかも、追加ルール付きで、チャリさんのオリジナルルールか?
それに、使用禁止の装備って白と黒の事だよな。あの2丁が使えるなら絶対に敗けは無いぞ。チャリさんは、【白竜】と【黒竜】がファミリアだと言うのは知らないはずだよな。それなのに、全力を出す為にって…………咄嗟に思い付いたにしては出来過ぎて無いか?
まさか、ここまでが、カゲロウのシナリオだったのか?
いや、流石に考え過ぎだよな。でも、もし、そうだとするなら…………一体何処から何処までがシナリオだったんだろうな。
カゲロウから【白竜】と【黒竜】を渡されて全力を出せる様になった僕は、捕まるどころか殆どの鬼に出会う事なく移動して、仕方なく出会った鬼も全て倒すと言う圧倒的な実力差で延長戦を終了させた。
第1ゲームとのあまりの違いに、再度、第1ゲームの八百長を疑うプレイヤーもいたが、第1ゲームの敗者達と全てを監視していた【サイク=リング】のメンバーによって、チャリさんの解説だけでは伝わりきらなかった生のゲーム内容や僕の動きが伝えられた事で、ブーイングや八百長疑惑は一気に沈黙した。
まぁ、敗者が認めたら、それ以上の追及は難しいよな。
『うわっ!?何!?』
閉会式等を終えて、ギルドホームに入った僕とブレッドを待っていたのは、アキラとフレイと新しく【noir】のメンバーになったのであろうサラ。そして、土下座をしていて全く微動だにしないカゲロウ、ヒナタ、ケイト。
『ギルマス、すまなかった』
『マスター、ごめんなさいです』
『シュンさん、すみませんでした』
この3人には、一体何が有ったんだろう?
『……………』
暫く思いあたる事を考えてみたが、3人に謝られる事なんか思い付かないよな。カゲロウ単独なら鬼ごっこだと思うんだがな。
ある程度、反応出来ている僕は良いが、隣にいるブレッドには、僕以上に状況が伝わって無いようだな。
〔『主よ、取り敢えず、土下座を止めさせてはどうかのう』〕
『あっ!!訳を聞く前に土下座止めてソファーに座ってて、新人達の歓迎を兼ねて紅茶でも淹れるから』
ちょっと、動揺して考え過ぎてたみたいだな。
アキラとフレイが止めないと言う事は、かなりの事件なんだろうな。僕自身を落ち着かせる為にも、まずは紅茶を淹れよう。それと、ついでに、とっておきを出させて貰おうかな。
ケイトに頼んでいた、とっておきを回収する為に外に出ると、隣の畑に、1週間前には、まだ小さかった紅茶の木が完全に収穫出来る様になっている。僕がいない間にカゲロウが水やり等の世話をしてくれてたんだろうな。せっかくだから、この新茶葉を使わせて貰おうかな。
普通なら発酵や乾燥させないと茶葉としては使えないが、ここはOOOの中だからな。調理用の簡易の発酵機や乾燥機もキッチンについている。まぁ、最初からついているのではなくて、増設して有るのだが、今まで料理に使う機会が無かったから、ちょっと使うのが楽しみだよな。
茶葉の新芽だけを採取して、早速試してみるか。
乾燥させて、もみ混んで発酵させて、もう1度乾燥させる。工程をこなす度に茶葉の良い薫りがしてくる。細かく分けると他にも工程は有るのだが、これ以上は素人には無理だからな。茶葉から紅茶を作ってみたくて勉強してて良かったよな。また1つ夢が叶った。
そうだ。あとで、機械に頼らずに茶葉を加工してみようか。どうせ、明日から暫くの間、船での移動が待っているからな。船で茶葉を乾燥させようかな。
皆に、自家製茶葉を使った紅茶を配り終えて、やっと落ち着いて話をする雰囲気になる。本来なら新人達の歓迎会や自己紹介が先だと思うが、カゲロウ達3人のテンションが普通じゃないからな。先に状況の改善を試みた方が良いだろうな。
〔『と言う事でだ。白と黒は、暫く静かにしててくれよな。あとで、自己紹介の時間を取るから、自分達の自己紹介を考えていてくれ。大人しくしていたら、あとで紅茶と茶菓子のセットを出すぞ』〕
〔『…………了解』〕
〔『了解なのじゃ』〕
『味は、どうだ?自家製の紅茶なんだがな』
個人的には市販の茶葉よりも、薫りが強く出ていて美味しいと思うんだがな。
『うん。紅茶は、今日も美味しいよ。シュン、そろそろ、カゲロウ達の話を聞いて上げたら?』
まぁ、そうなんだが…………いざ、話を聞くにしても何から聞いて良いのか分からないからな。
『ギルマス、今日は、本当にすまなかった』
『それなんだがな。さっきから、ずっと考えてたんだが3人に謝られる理由が思い当たらないんだよな』
幾ら考えても、分からないものは分からないからな。当人達に聞くしかないんだよな。
『本当に分からないのか?今日のクエストの事なんだ』
『???』
鬼ごっこ?ますます、分からないぞ。カゲロウのクエストで3人に謝られる理由が無いんだけど。カゲロウは別としてだが…………
『何から説明したら良いか分からないが………俺達は、このクエストでクリアする者が出るとは、思って無かったんだ』
『はっ!?』
『本当に想定外の出来事だったんだ。新人プレイヤー達に、どんなにハンデを与えても、新人プレイヤー達が、どんなに束になってもギルマスが捕まるとは思って無かったんだ』
余計に分からなくなってきたな。鬼ごっこのルールでは、最初に捕まえたプレイヤーが加入するはずだったよな。
確かに、ケイトやヒナタのクエストやカゲロウ達が加わった以前のクエストとは、加入条件が異なっているとは感じていたが、カゲロウが一生懸命考えたクエストだから、反対する気は無かったんたが…………何か、間違ってたのか?
『シュンさん、本当にすみませんでした。カゲロウが考えた事になっている鬼ごっこは、本当は、私達3人で考えたクエストでなんです。本当は、クリアするプレイヤーを加入させるのでは無くて、どんな状況になっても臨機応変に状況に対処する力と内面を見るクエストだったんです』
『そうなのです。採点していたのは、カゲロウだけでは有りませんです。ヒナタと私も隠れて採点に加わってましたです』
なるほどな。それで、ゲーム開始直前にルール追加が有ったり、《探索》スキルの使用禁止にしたのにも関わらず位置を中継するとか矛盾した行動に出たんだな。僕が1ヶ所に留まっていたら、全く審査出来ないからな。
『すまんな。それ、実はウチらも、知ってたんやわ。ウチとアキラも裏で審査員してたんや。だから、同罪なんや』
『ごめんね。シュンに秘密にする事を言い出したのは、私なんだ』
なるほどな。僕以外は、最初から全部知ってたんだな。逆に、その方が納得がいく。どおりで誰も何も言わなかったはずだよな。
〔『白と黒も、全部知ってたんだろ?』〕
〔『主よ、すまなかったのじゃ。当初の予定では、事前に主にも説明する予定だったのじゃが、【ペンタグラス】の件が有ったからのう。主には、秘密にする事になったのじゃ。主は、人を騙すのには決定的に向いて無いのじゃ』〕
〔『…………不向き』〕
〔『なるほどな。そう言う事か………』〕
まぁ、あの時は、周りが僕を知らないプレイヤーばかりだったからな。ゼニスを騙す為にも、過剰な演出に拘ったからな。多少、調子に乗り過ぎたところも有ったからな。あれを見ていたカゲロウ達が警戒しても仕方無いよな。
それに、今回は、僕の事を少しは知っているプレイヤーが多いからな。確かに、事前に全部知っていたら、僕の大根演技ではバレた可能性が高い。全ての行動にリアリティーは無くなるからな。
実際に、鬼ごっこ中は、ちょっとカゲロウの事を根に持ってたから、反骨心で頑張れたって言う面も有るからな。それが無かったら、諦めると言う選択肢を真っ先に実行してたかも知れないんだよな。
簡単に言うなら、敵を欺くには味方からなんだろうな。
って言うか、白と黒を使用禁止にされた段階で、かなり限界だったんだぞ。僕が捕まると思って無かったとか、ちょっと僕の評価が高くなり過ぎてないかな。第1ゲームを最後の方まで逃げ切れたのは、鬼が【水鉄砲】を警戒してくれたのと、鬼同士がお互いを警戒して足を引っ張りあってたからだ。そう言う、ちょっとした運が良かっただけで僕の実力では無い。
『ギルマスにも、細かいルールが決まった段階で説明しようかと思ってたんだが…………』
『事前に全部知らせていたら、僕の演技力が信用出来なかったんだろ。今、白達に聞いた。むしろ、その方が有り難かったな。事前に知っていたら、序盤から本気で鬼達に【水鉄砲】を撃てなくて、平等じゃない気がするからな』
どの鬼にも、ある程度のチャンスを与えようとしていたかも知れないからな。捕まる事は無かったかも知れないが、リアリティーに欠ける。
白達と聞いて、サラとブレッドが不思議そうな顔をしているが、今は無視だ。あとで、分かる事だからな。
『【サイク=リング】は、何処まで知ってたんだ?延長戦の事は、事前に打合せしてたんだろ?』
僕の事は、もう良いが、チャリさん達に迷惑を掛けていたら、話は別だからな。
『やっぱり、延長戦の件はバレてたか。正直に言うと、ギルマスの言う通りだ。万が一の場合用に延長戦の打合せはしてあった。それと、チャリさん達には、今話した事は教えてないから普通に鬼ごっこがクエストだと思っているはずだぞ』
『シュン、本当にごめんね。私を含めて皆を許して下さい』
『納得がいったからな。全然、気にしなくて良いぞ。って言うか、最初から怒ってないからな。真実も皆が言わなかったら、僕自身は分かってないからな。それよりもだ。紅茶の味はどう?皆の意見を聞かせて欲しい』
僕にとっては、理由が分かった鬼ごっこの事よりも、自家製茶葉の味の方が大事だからな。
『とっても、シュンらしいんだけど。たまには、怒っても良いんだからね』
本当に怒る理由が無いだけなんだがな。
『あの~、お取り込み中に、すいません。俺の合格は?どうなるんですか?』
『クエストの内容が分かっても、合格が取り消される事は無いぞ。多分だが、ブレッドは僕を捕まえきれて無くても作戦だけで合格だったんだろ?カゲロウ』
僕自身が作戦を聞いて見事だと思ったからな。これで、合格じゃなかったら誰も合格にならないだろうな。
『あぁ、そうだぞ。ブレッドくんは合格だ。戦略とそれを実行する能力は十分に評価出来ているし、その他の行動も良かったからな』
ブレッドは安堵の表情を見せているな。僕達が話している間、不安だったんだろうな。
『僕としては、もう1人合格にしても良いプレイヤーがいたんだが…………』
あの壁移動は衝撃的だったからな。もう少し我慢してタイミングを見計らっていたら、僕は確実に捕まえられていたはずだからな。
『ギルマスが言っているのは、壁移動をしていたプレイヤーの事だろう?』
『そうだ。やっぱり、合格なのか?』
『Noです。あのプレイヤーは、失格になったあとで街やNPCの皆さんに迷惑を掛けていましたです。あのプレイヤーを合格させるのはNo Thank youです』
確かに、それが事実なら最初から【noir】には縁が無かったかもな。
それにしても、気になったプレイヤーは、失格後まで審査していたんだな。この感じだと、クエスト中に見掛けなかったアキラ達も隠れて失格者側の審査してたかも知れないよな。
どおりで、【サイク=リング】のプレイヤーにクエスト進行の助っ人を頼む程に、人に困ってたはずだよな。
このクエストは僕が知らないだけで、かなり大掛かりなクエストだったみたいだな。表向きの体裁は、鬼ごっことしているが、裏でやっていた内容は、以前のクエストの面接に近いものが有るよな。
『じゃあ、話も終わったみたいだし、新人の歓迎会と自己紹介をしようか。まずは、新人2人から』
『俺から、いきむす』
あっ!!噛んだな。他の皆も同時に反応している。ブレッド自身も自覚が有るのだろうな。顔が真っ赤になっている。
『これからは、同じギルドの仲間になるんだ。緊張しなくても良いんだぞ。ここはギルマスを始め、皆が良い人ばかりだからな』
早速、先輩としての自覚が芽生えた様だな。それでこそ、ギルドメンバーを増やしたかいが有ると言うものだ。
『はい。俺は、ブレッド。エルフの|《準騎士》《セカンドナイト》です。生産系は《調合》です。よろしくお願いします』
カゲロウが選んだ新人が《調合》持ちなのは、丁度良かった。教育係はカゲロウに決定だな。まぁ、そう言うのも知ってて合格にしたかも知れないがな。
『私は、サラと言います。朝のクエストで評価されて【noir】に入る事が出来ました』
サラは、ヒナタのクエストで、周りが【noir】のマークや黒の職人さんをモチーフに取り入れた【noir】に媚びたお面を作っていく中で、ただ1人流される事無くひょっとこのお面を彫り上げたらしい。僕も見せて貰ったが、1枚の板を彫っているのにも関わらず、彫った跡が分からないくらい丁寧な仕上げがして有った。小学4年生が作ったのだから、末恐ろしいよな。
ヒナタとアキラの2人だけだが、満場一致でサラの合格が決まっている。まぁ、アレを見せられて反対意見は出ないけどな。個人的にも1つ欲しいくらいだからな。
敢えて、僕が評価するなら、出来上がったお面では無く、周りに流されずに彫りたい物を彫り上げたところだけどな。
『ケイトさんと同じ|《回復師》《ヒーラーツー》です。習得している生産系は《木工》です。私とブレッドは、以前から、ケイトさんに色々とお世話になっておりました。【noir】に入れて本当に良かったです。皆さん、ヨロシクお願いします』
2人が自己紹介を終えたところで、誰からともなく拍手が巻き起こる。それと同時に、アキラが【ノワールの証】を2人に配る。サラが10番で、ブレッドが11番だ。
ちなみに、雪ちゃんの次の9番は、ウルちゃんに渡されている。
『今、配ったのが、ギルドメンバーの証だからな。それが有れば、ホームの施設は自由に使える。個人用の倉庫と共通の倉庫の件は、あとで教育係に聞いてくれ。オリジナルの鞄は加入祝いでプレゼントするから、あとでデザイン等をリクエストしてくれて良いからな』
【ノワールの証】の説明をして、僕達も順番に自己紹介をしていく。2人が、ずっと入りたかった【noir】のメンバーの事は、わざわざ自己紹介しなくても知っていたみたいだがな。
ちなみに、ハーフマラソンの時に、僕に気付かなかったのは普段と格好が違い過ぎたかららしい。
『あの~、すみません。1つ良いですか?』
『どうかした?分からない事でも有ったの?』
『はい。皆さんは、全員で6人ですよね。私とブレッドを入れても8人だと思うのですが、【ノワールの証】の番号が…………他にもギルドメンバーがいるのですか?』
普通は気付くよな。まぁ、説明しようと思っていた事だから丁度良かったけどな。
『【noir】は秘密にしている事が、他のギルドよりも多くてな。アキラは、マナさん達を。白と黒は、雪ちゃん達を呼んできてくれるかな?』
『了解なのじゃ。黒は、ウル殿を頼むのじゃ』
白と黒と呼ばれた銃が喋りだし竜の姿になり飛び去って行くのを見ていた2人は、目を点にして口をポカーンと空けている。
まだまだ、この辺りは序の口なのだが………2匹が戻って来るまでに、正気には戻らないだろうな。
暫くして、マナさん達を連れたアキラが戻ってきた。サラとブレッドも、店舗を受け持っている2人の顔は見知っていたので、正気に戻っている。少し驚いていたが、白達の衝撃程では無かった様だ。
『………………連れて来た』
『『えっ!!』』
2人は、急にリビングに現れた魔物に身構えている。
『驚かないで下さいです。彼女はウルちゃんと言って、私と召喚獣契約を結んだケンタウルスさんになりますです』
『ηβεΨξζ』
『ヨロシクって言ってるぞ。【noir】では生産系スキルの取得は必須だが、《バイリンガル》スキルも必須だからな。SPが余ってたら早めに習得してくれよな。詳しくは、ケイトに聞いてくれ』
『わ、分かりました』
サラの方が、先に正気に戻ったな。やっぱり、女の子の方が肝が座っているよな。
『主よ、お待たせなのじゃ。雪よ、自己紹介するのじゃ』
『雪は、幽霊の雪だよ。仲良くしてね』
あっ!!ダメだ。今度は、完全にフリーズしているな。見た目は、僕らと変わらないが中身は、小学生だからな。処理が追い付かなくても仕方無いからな。
『雪ちゃん、新作の紅茶とシュンのお土産食べる?勿論、白ちゃんと黒ちゃん、ウルちゃんの分も用意してあるから。ゆっくりしててね』
暫くの間、戻って来ないだろうからな。ゆっくりティータイムだ。
『シュン、アキラ、ありがとなの』
今は、色々有り過ぎてフリーズしているが、雪ちゃんに慣れたら癒される事間違い無しだ。雪ちゃんは、【noir】の無敵のアイドルで皆の妹だからな。
『じゃあ、今の内に今後の話をしておくか。カゲロウがブレッド、ヒナタがサラの教育係だ。まぁ、教育係と言ってもギルド内で分からない事を教えたり、一緒に狩りに行ったりするだけだからな。別段、普段と変える必要無いぞ。自分で納得出来る行動をしてくれたら良いからな。それでも、困った時は僕ら3人を頼ってくれて良いからな。それと、これは、クエストお疲れ様のプレゼントだ。ヒナタには、以前にリクエストされていた指環だ』
船の工房で、時間を掛けて頑張ったから結構良いものが出来たんだよな。僕は、アキラにした様に指に填めてあげる。
【雷天の指環】魔法防御力10〈特殊効果:雷属性無効〉〈製作ボーナス:速度上昇・中〉
『ありがとうございます。大切にします』
少しだけ、顔を赤くして喜んでくれている。作ったかいが有ったな。
『カゲロウには、僕が頼んでケイトに用意してもらった。特製の自然乾燥させた家畜の糞だ』
『か、家畜の糞!?まさか、クエストの仕返しか?』
まぁ、名前だけ聞いたら引くよな。
『違う、違う。MP回復薬を作る為だ。ポーションを作る為の薬草に家畜の糞を肥料として使えば、MPポーション用の薬草になるらしい』
『えっ!!そんな単純な事だったのか!?』
単純な事だけど、条件が揃うのが難しいからな。
『僕も聞いた時は、驚いたからな。それから、カゲロウ用に作っていたアクセサリーだ。ケイトとフレイの分も指環出来てるからな。今日は、陰からお疲れ様っ事でプレゼントだ』
【銀狼の誓い】防御力25〈特殊効果:光属性〉〈製作ボーナス:防御力上昇・中〉《成長進化》
『ギルマス、これって…………』
『気付いたか?ヒナタと同じでファミリアの卵を《合成》してある。それは、遅くなったが僕達3人からだ。成長したら見せてくれよな』
ブローチ型の形状で、何処にでも装備出来る様に工夫されている。早速、盾に装備しているところを見ると喜んでくれたのかな。
ちなみに、盾に装備しても魔獣器になる事はない。あくまでも盾とは別の装備だ。
【火月の指環】魔法防御力10〈特殊効果:火属性無効〉〈製作ボーナス:攻撃力上昇・中〉
【土星の指環】魔法防御力10〈特殊効果:土属性無効〉〈製作ボーナス:魔法攻撃力上昇・中〉
『ありがとな。ウチは一生大切にするで』
『私も一生大切にしますです』
2人にもヒナタと同様に指環を填めていく。填められている2人は恥ずかしそうに喜んでいるが、僕の方は4人目ともなると、かなり馴れてきたよな。これが、良い事か悪い事なのかは、分からないがな。
『シュン、私の分は?』
アキラが、振り向いて物欲しそうな目でこちらを見ている。なにかしら与えますか?普通のゲームなら、こんな文章がスクロールしてそうだよな。
この流れでプレゼントを、渡していくなら、絶対にアキラの分も必要になる。失敗したな。疲れて過ぎていて、完全に失念してたぞ。忘れてましたでは、通じそうもない雰囲気だよな…………
仕方が無い…………
『アキラの分は、大絶賛製作中だ。楽しみにしててくれ』
これで、大丈夫だろう。
『うん。楽しみにしてるね』
おい、白と黒とフレイ、そんな冷たい目で僕を見ないで欲しいな。せっかく、アキラは全く気付いて無いのだから。これは、僕の命に関わる事なんだぞ。
幸い、船での移動は時間だけは一杯有るからな。じっくりと良い物を作らせて貰おうかな。
装備
武器
【雷光風・魔双銃】攻撃力80〈特殊効果:風雷属性〉
【ソル・ルナ】攻撃力100/攻撃力80〈特殊効果:可変/2弾同時発射/音声認識〉〈製作ボーナス:強度上昇・中〉
【魔氷牙・魔氷希】攻撃力110/攻撃力110〈特殊効果:可変/氷属性/凍結/魔銃/音声認識〉
【空気銃】攻撃力0〈特殊効果:風属性・バースト噴射〉×2丁
【火縄銃・短銃】攻撃力400〈特殊効果:なし〉
【アルファガン】攻撃力=魔力〈特殊効果:光属性/レイザー〉
【白竜Lv68】攻撃力0/回復力218〈特殊効果:身体回復/光属性〉
【黒竜Lv68】攻撃力0/回復力218〈特殊効果:魔力回復/闇属性〉
防具
【ノワールシリーズ】防御力105/魔法防御力40
〈特殊効果+製作ボーナス:超耐火/耐水/回避上昇・大/速度上昇・極大/重量軽減・中/命中+10%/跳躍力+20%/着心地向上〉
アクセサリー
【ダテ眼鏡】防御力5〈特殊効果:なし〉
【ノワールの証】〈特殊効果:なし〉
天狐族Lv63
《錬想銃士》Lv2
《真魔銃》Lv8《操銃》Lv30《短剣技》Lv33《拳》Lv54《速度強化》Lv100※上限《回避強化》Lv100※上限《魔力回復補助》Lv100※上限《付与術改》Lv11《付与練銃》Lv12《目で見るんじゃない感じるんだ》Lv35
サブ
《調合工匠》Lv28《上級鍛冶工匠》Lv6《上級革工匠》Lv6《木工工匠》Lv34《上級鞄工匠》Lv8《細工工匠》Lv46《錬金工匠》Lv45《銃工匠》Lv36《裁縫工匠》Lv15《機械工匠》Lv21《調理師》Lv24《造船》Lv17《家守護神》Lv56《合成》Lv50《楽器製作》Lv5《バイリンガル》Lv8
SP 9
称号
〈もたざる者〉〈トラウマニア〉〈略奪愛?〉〈大商人〉〈大富豪〉〈摂理への反逆者〉〈初代MVP〉〈黒の職人さん〉〈創造主〉〈やや飼い主〉〈工匠〉〈呪われし者〉〈主演男優賞?〉




