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OOO ~Original Objective Online~ 称号に振りまわされる者  作者: 1048
第1部 第5章
49/65

1人旅 3

〔それではいきます。Ready Go!!〕


『『おらっ!!〈マッドスペース〉』』

おっ!!これって、確かサラが使ってた《泥魔法》だよな。《水魔法》と《土魔法》の複合上級魔法。それを複数人が使えるとはな。


【ハウンド】のメンバーってガラが悪い感じだが、名ばかり先行のギルドでは無いのかもな。


『ふははっ!!ゼニス、お前達は、時間切れまでソコで遊んでいるんだな。行くぞ』


『『『『『お~~~!!』』』』』

グレタフには、妙な統率力が有るのか?【ハウンド】のメンバーの士気が上がっているよな。それとも、単なる恐怖政治よる独裁か?


【ハウンド】のメンバーが、スタートと同時に《泥魔法》を放ち、辺り一帯を瞬く間に底なし沼の様にしていく。その隙にグレタフ一行は、ゼニスに勝ち誇った感じで進んで行ったな。


どうやら、事前に打ち合わせでもして魔法を準備してたみたいだな。


周りを確認してみると、アクア達や一部のスタートダッシュを決めたプレイヤーは免れたみたいだな。やっぱり、最初から狙いはゼニスとそのパートナーの僕だけか?まぁ、残念ながら、無意味なんだけどな。


『やられた。シュン、アタシが〈フライイーグル〉(イグル)を使う。離れてて』


『ゼニス、慌てるな。まだその時じゃない。大丈夫だ…………行くぞ』

僕は、右手の【黒竜】で地面を沼に変えた魔法を《相殺》する。身内以外で何が起こったか分かるプレイヤーはいないだろうな。


まぁ、僕達の敵は【ハウンド】だけだからな。支援系のギルドとしては、ついでに他のプレイヤーは助けても良いよな。


『シュン、何をしたんだ?魔法が消えたぞ』


『今は、そんな事よりも前を追うぞ。走れ、走りながら〈ランドウルフ〉に乗れ。それと出来るだけMPは温存しておけ』

僕は、走りながらゼニスに指示を出していく。沼が消えた事で呆然と立ち尽くしていた他のプレイヤーも我に返った様だな。


イベントなので、街の広場にモニターが設置されているはずだが、普段と同様にローブマントで姿を隠しているので、多少はハデな事をやっても大丈夫だろうな。それに、ここはアメリカサーバーだ。黒の職人さんを知るプレイヤーは、いないだろうからな。


速度に自信の有る僕とは違い、ゼニスでは《付与術》の恩恵が有っても走るだけで前に追い付くのは無理だ。速度のステータスが普通よりも少し低いからな。


まぁ、ゼニスには《調教士》系の固有スキルの《調教》スキルが有るから、そう言う不利も覆すだろうけどな。


《調教》スキルは、倒した魔物を仲間として契約する事が出来る。同時に契約出来るのは《調教士》では3匹だが、《訓練士》になっているゼニスは4匹まで契約する事が可能だ。それを越える契約をする時は、どれか1匹との悲しい別れが待っている。


契約中の使役魔物(サポーター)は常にミニチュア化して契約者の側にいる。魔力を込める事で通常のサイズに戻す事が可能だ。


《召喚》と間違えられる事が多いスキルだが、《召喚》と違い契約した魔物が成長すると言う大きな利点が有る。ただ、《召喚》とは違い倒されたら2度と使えない事や通常のサイズに戻している間はMPを消費が続くと言う欠点も有る。


《召喚》にも、契約出来る魔物数の制限が《調教》よりも多い事や召喚した魔物が倒された場合は、一定時間で再召喚可能と言う利点が有る。当然、1度結んだ契約の解除は永遠に出来ないと言う大き過ぎる欠点も有るけどな。


まぁ、僕も最近まで知らなかったんだが、ケイトが《召喚》を取得した事で知る機会を得た。


ちなみに、昨日教えて貰った事だが、ゼニスは空を飛ぶ事が可能なフライイーグルのイグル、フィールド高速移動用のランドウルフのランド、戦闘特化型のアルマジロンのジロンの3匹と契約している。契約枠を1つ残しているみたいだが、この3匹だけでも十分に万能だよな。あえて言うなら、回復系の魔物が欲しいくらいだな。


さっき、イグルを使おうとしたのは、人なら3人くらいは余裕で運ぶ事が出来きるからだ。まぁ、こんな序盤から切り札を切らせる訳には、いかないので止めたけどな。


『分かった。〈ランドウルフ〉(ランド)お願い』

アーツ名と同時にランドウルフが大きくなる。ミニチュアの時は可愛いが、大きくなると目が少し怖いな。


ランドウルフは、アメリカサーバーエリア限定のレアMOBらしい。速度が速い為に逃げられる事が多く、倒すのには苦労したらしい。速度の普通のゼニスが、どうやって倒したかが気になるけどな。


『そのまま、付いてきて』


『シュンは、乗らないのか?』


『大丈夫だ。僕は、少し前を走りながら【ハウンド】からの妨害やトラップを潰す。トラップ系は先行しているアキラ達も見付けたら破壊してくれるはずだ。だから、ゼニスは後方を注意しながら僕の後ろに付いて来てくれ』

アキラは《探索》系有るし、簡単なトラップは更に前を走っているアクアとカゲロウは体を張って潰してくれるはずだ。それと………


〔『白は前方、黒は後方の注意を頼む』〕

この保険を掛けておけば大丈夫だろう。僕が最も信頼出来る保険だからな。


〔『了解じゃ』〕


〔『…………任せる』〕




コースにはチェックポイントの他に、難所と呼ばれる場所が3ヶ所用意されている。事前にゼニスからレクチャーされているのだが………


『本当に暗いな………』

最初の難所は森。【ヴェール】付近の森とは違い、光が殆んど入ってこないので暗く鬱蒼としている。聞いてはいたが想像以上だよな。


生えている木の質も違いそうだ。採取してみたいが、こればかりは後日だな。


『気を付けて、この先は魔物が出る』


『魔物だけじゃないぞ………左右に3人ずつ隠れているぞ。【ハウンド】が3チームか?《必射》《曲射》《吸収》』

相変わらず《必射》《曲射》のコンボは動きや視界の制限される森では便利だな。外れる事が無いのが大きいよな。


〔『主よ、ワシの《吸収》も褒めるのじゃ』〕


〔『言わなくても感謝は伝わってるだろ?』〕


やっぱり、隠れているのは【ハウンド】のメンバーだったな。《吸収》のダメージが出た事で《見ない感じ》が発動している。ここで倒しても良いが、先を行くグレタフに追い付く為には、道なりに走らず最短距離(ショートカット)で走りたいからな。ここは………


『すまないが、ドーム、レナ、ここは任せて良いか?』


『任せておけ。そうだな………報酬は、後で紅茶でも頼む』


『お茶菓子も付けてね』


『了解だ。ゼニス、こっちだ』

まだ、自家製茶葉は出来てないが、持っている範囲で最高の物を提供しよう。


僕は、道なりには走らず森を最短距離で横切って行く。あまりの暗さで足元がおぼつかない。白達が《探索》を持ってなければ、やろうとは思わなかった作戦だな。


『シュン?』

流石に、日本語が分からなくても、今ので何か気付いたか?


『大丈夫だ。それよりも、森の中は自分の足で走った方が早そうだぞ』

僕も武器を剣銃に持ち変える。最短ルートを走りきるには蔦が邪魔だからな。走りながら〈リング・アウト〉を駆使して道を作る。


『分かった』

僕の後ろを追うゼニスは鞭を使い、僕達の進行を邪魔してきそうな範囲にいる蛇型の魔物を木の上から叩き落としている。中・近距離用の武器か、威力は高く無いが攻撃範囲が魅力的だな。


『ゼニス、ナイスだ。その調子で5m先の左の木の上も頼む』

僕が、その木の横を走り幅跳び抜ける頃には、魔物は木の下に叩き付けられている。


この蛇型の魔物はショートスネークと言って、雑魚MOBの様だが攻撃に混乱系の毒を仕込んでいるらしいので、ゼニスの攻撃で狩ってくれるのは助かるな。


蔦を切る〈リング・アウト〉に巻き混んでも良いのだが、これは、ゼニスのレースだからな。本人が何もせずに終わるのはゼニスの今後の為にも良く無いだろうな。まぁ、ゼニスの出番は別に用意して有るんだけどな。





『シュン、もうすぐ森を抜けるぞ』


『この感じなら森を抜けたところで先頭が見える。ゼニスは森を抜けたら、もう1度ランドに乗れ』

コースの地図は、予め頭に入れて有る。僕らが通って来た場所に人の進入した後が無いからな。かなり追い付けているはずだ。


『よし、抜けた。Wow!!本当に先頭(グレタフ)達がいた』

森を抜けると、一気に光が差し込んでくる。今までが暗かった分だけ余計に明るさの差を感じるな。最初に森を抜けたはずの僕よりも、後にいたゼニスの方が先にグレタフを確認出来た様だな。


『バカな!?何故、ゼニスお前がここにいる。沼はどうした?部下共は何をしてるんだ』


『沼は光になって消え、お仲間は光になって神殿(死に戻り)じゃないのか?』

僕は、普段なら絶対にしない挑発を繰り返す。


『何だと!?くそっ!!お前達は足止めをしろ』

また、部下任せか………自分で向かってくれば相手になるんだがな。今度は最初に《泥魔法》を使ったプレイヤー達を含めて4人か。


『おかえり、シュン。少し遅いんじゃ無いのか?』


『アクア、悪いな。スタートで少しだけ出遅れた。まぁ、まだレースは序盤だ。まだまだこれからだろう?』

まだスタートから15分も経っていない。残りは十分に有る。


『違いない。それと、ここは任せて前を追え。ドーム達も後ろから来てるからな。合流して後から追う』

コールを使ったのか?ドーム達の状況も伝わっているみたいだな。それにしても、既にプレイヤー6人も倒してたんだな。流石だよな。


アクアとカゲロウが【ハウンド】のメンバーを牽制してくれた事も有り、すんなりと横を通過できる。残りの【ハウンド】は、グレタフを含めて4人か。こっちにもアキラ達が残っているから戦力的には五分五分だな。





『シュン、あの崖を登ったらチェックポイントだ』

2番目の難所に到着だな。開始から20分、良いペースだな。ただ、崖の高さが想像以上だよな。上が見えないとか完全に無しだろ。まさか、素手で登るって事は無いよね?


絶対に、そんな技術持ってる方が稀だぞ。


『ここは、どうやって登るんだ?』


『普通は、崖の上から垂れているロープを選んで使う。アタシの場合は………お願い〈フライイーグル〉(イグル)。シュン、乗って』

なるほどな。ここの攻略方法は考えて有ったんだな。ここだけは任せてと言われていたので深くは考えて無かったが、正解だった様だな。


〔『…………伏兵』〕


〔『主よ、背後(うしろ)の方で隠れておるのじゃ』〕

そんな事をするのは【ハウンド】くらいだろうな………ゼニスが上に飛び立ったら、魔法か遠距離攻撃で撃ち落とすつもりだな。


『いや、ゼニスは崖の下付近にいるアキラとフレイを回収して、上に行ってくれ。僕は自力で登る』


『えっ!!』


『大丈夫だから、早く行け』


『わ、分かった。上で待ってるから』

俄には信じられない様だが、僕を信じてゼニスは一気にアキラ達のところに飛んで行った。




『おい、そこの2人。隠れているのは分かってるから出て来いよ。ゼニスを狙ってるだろ?落とさせる訳にはいかないからな』

うん!?伏兵のギルドは【グライセ】?か、【ハウンド】のメンバーじゃ無さそうだな。


『フッ!!バレていたか。何故バレたか気になるところが、グレタフ様からの依頼だ。ここで死んでもらうぞ』

ゼニスを先に行かせても焦って無いところを見ると、僕かゼニスどちらかに対する時間稼ぎが目的か?スキル構成が戦闘向きじゃ無いしな。


それとも、そのスキルの組み合わせで何か必殺のコンボでも有るのか?


それに【ハウンド】メンバー以外にも雇っているプレイヤー、もしくは傘下のギルドメンバーがレースに参加しているのか。グレタフに余裕が有るのは、この策のせいか?


ちょっと面倒だな。でも、早めに分かって良かったかもな。色々と対策が出来るからな。


〔『主よ、ゼニス達が、上に着いたのじゃ』〕


〔『了解』〕


『(ゼニスを)あまり待たせるのも悪いからな。さっさと終わらせて貰うぞ』

僕は両手の銃を【空気銃】に持ち変える。


『『かかって来い』』

【グライセ】の2人は僕の動作を見て攻撃に備えている。カウンター系スキルみたいだな………やっぱり、目的は時間稼ぎだったか。目的は、お互い様だったみたいだな。


まぁ、そんなに身構えているところ悪いが、僕は全く相手にする気が無いんだよな。


『じゃあな。お疲れ様です』

僕は【グライセ】の2人をその場に残して、【空気銃】で一気に空を翔る。


あまりに、予想外の行動だったのか?2人は追撃どころか言葉すら放てないで僕の方を見ているな。《見破》スキルが有れば、残された2人が何を思って僕を見ているいるのかを確認出来て面白かったのに、残念だな。






『ゼニス、お待たせ。先に進むぞ』

アキラ達がいないな。先に行ったか?


『シュン!?今、空飛んでなかった?』


『全部ゴールした後だ。チェックポイントは何処だ?』

まぁ、見られているよな。モニターでも見ていたプレイヤーもいるだろうな。まぁ、街に着いたらローブマントを外して、暫くはアメリカサーバーに来なかったら大丈夫かな。


『あ、あそこ』

ゼニスが、指差す方向に小屋が有る。チェックポイントでイベント用のアイテムを受け取れれば、あとはゴールを目指すだけだな。時間も半分以上有るからクリアだけなら余裕が有るな。




『良く来たわね。あなた方は6番目よ。これを持っていきなさい』

簡単に渡してくるけど、これって…………


『マジか!?ゼニス知ってたか?』


『ううん。不正防止の為にレース毎に違うアイテムだから』

僕の聞きたかった事は、そう言う事じゃ無いんだがな。いや、そう言う言葉が出てくるなら知らなかった可能性が高いな。


渡されたアイテムは、ただの大きなガラス玉だ。ただし、大きさが50cmも有るのにも関わらず、鞄に入れる事が出来ないアイテムになっている。完全に想定外だな。ゴールするのも怪しくなって来たぞ。


『急ぐぞ。ゼニスは、このガラス玉を持ってランドに乗れ』

イグルで一気に山道を下りたいところだが、イグルの速度なら明らかに自分達で走った方が速いからな。


『シュンは?』


『僕は、走る。《付与術》のドーピングだ。ゼニス、一気に行くぞ。途中出てくる魔物は無視だ』

僕に〈速度上昇特大〉〈回避上昇特大〉を掛ける、ゼニスとイグルには〈防御力上昇特大〉〈魔法防御力上昇特大〉〈速度上昇特大〉を掛けて走りだす。


状況が悪いよな。かなり急がなくてはダメだな。グレタフなら3番目の難所で罠を仕掛けるからな。先に着ければ良いが、遅くとも同時には着いてたい。


『何これ!?アタシの体じゃないみたい』

通常の《付与魔法》にも馴れてないのに《付与術》の合体魔法を受けたら、そんなものかも知れないよな。僕みたいに常に使ってる方が少数だろうからな。




2人と1匹は、出てくる魔物を全くお構い無しに山道を下って行く。ゼニスが言うには、滅多に出会えないレアMOBもいたらしいが今は構っていられない。そして、なるべくならその情報は秘密にして欲しかったよな。戻ってでも倒したくなる衝動に駆られるからな。まぁ、あとから来る予定のアクア達にプレゼントだと思おうかな。


一気に駆け下りた山道の途中で、アキラ達を含めて3チームをごぼう抜きしている。残すは………


『シュン、見えた。最後の難所と………グレタフ達』

なんとか最後の難所までに追い付けたな。


最後の難所は渓谷だ。渓谷の幅は20mくらいか?深さの方は全く分からない。まぁ、落ちたら速攻で神殿行きだろうな。


相手は4人。部下がグレタフだけを先に逃がしていたら少し面倒だったが、このタイプは最後に自分の手でトドメを刺しに来ると思っていたよ。それだけは期待を裏切らなかったな。


しかも、ご丁寧に橋の向こう側で待っているとか…………罠を仕掛けてますよと言っているのと変わらないよな。やっぱり見掛け通り賢く無いようだな。


〔『ゼニス、多分、グレタフ達なら渓谷に架かっている橋にトラップか何かを仕掛けるはずだ。だから、渓谷の側まで着いたらイグルで向こう側に飛べ。合図は出す。そしてゴールを目指せ。さっきの《付与術》が、ゴールまで効果有るはずだ』〕


〔『えっ!!それはダメだ。2人でゴールしないと………』〕


〔『ゼニス、クエスト報酬欲しいから誘ってきたんだよな。ゼニスは今出来る事をやれ。【ハウンド】を見返してやれ。《訓練士》の凄さを、不遇職の強さを、ソロ(ボッチ)の力を見せてやれ。これがゼニスの仕事だ。グレタフ達は僕に任せろ。2度と偉そうな態度が取れない様に悪夢(ナイトメア)を見せてやる。これが僕の仕事だ』〕

返事は無いが伝わった様だな。ゼニスの瞳の奥底に堅い意志を感じるからな。それに、僕がグレタフより先にゴールに着くよりもゼニスが着く方が、色々な意味で効果的だろうからな。


『グレタフ、追い付いたぞ』


『思ったよりも速かったな。ここまで来るとは大したものだな。だが、渓谷(ここ)がお前達の墓場だ』


【ハウンド】(お前達)のだろう?』


『こざかしいヤツだ。ここまで来れたら相手をしてやろう』


〔『ゼニス、僕が《付与術》をグレタフ達に射撃したらイグルで飛べ。僕らに報酬の遠征権と勝利の笑顔を見せてくれよ』〕


〔『分かった。楽しみにしてて』〕


『分かった。そこで待ってろ。〈速度減少激減〉今だ。行け、ゼニス』

ゼニスはイグルを使って一気に渓谷を越えてゴールを目指して行く。


『な、何だ?これは…………か、体がまともに動かない、待て、ゼニス』


『減少系の《付与魔法》だ』

橋を1歩1歩歩いて行く。僕が1歩近付く毎に【ハウンド】(4人)の顔がニヤけてくる。


だが、半分を過ぎた頃からニヤけた顔が、徐々に真剣な顔に戻っていく。これは《見破》が無くても4人の心の中が分かるよな。


きっと、『何故!?渓谷の下に落ちない』だ。


まぁ、絶対に落ちるはずが無いんだがな。僕は橋の上を歩いている様に見えるだけで実際は浮遊装置付きのローブマントとブーツを使って空中を歩いているので、橋には一切負荷が掛かってないからな。万が一の保険として【空気銃】も持っているし、渓谷の下まで落ちる事は無いだろう。


動揺を隠せていない【ハウンド】の面々には、見破る事は不可能だろうな。


〔『主よ、《付与術》が解除されそうなのじゃ』〕


〔『そうなのか?都合が良いな』〕

どのみち戦う時には解除するつもりだったからな。手間が省けたが、状態異常を解除出来るプレイヤーを最後まで残していたのは、腐ってもギルドマスターって事かな。


『おい、着いたぞ。相手をして貰おうか?なんだったら、その4人同時でも良いぞ』

右手に【黒竜】、左手に【アルファガン】を持つ。


『このグレタフを舐めるのも、いい加減にしろよ。クソ《銃士》1対1(タイマン)だ。いいな、お前達も手を出すな』

大手ギルドの有名ギルマスが|《銃士》《ザコ》相手に4人では戦え無いんだろうな。


『見た目と違って潔いな。先制は譲るぞ。お前が攻撃したら開戦だ』


『どこまでも虚仮にしおって、舐めるな|《銃士》《ザコ》が〈サンダーブレイク〉』

速度重視の《雷魔法》を放ってくる。喰らえばスリップダメージのオマケ付きだ。喰らえばだがな。


天狐族の固有スキル《吸尾》で経験値へと変える。始めて使ってみたが、発動のタイミングがシビアだな。


発動中は、他のアーツが使えないし、MPも消費し続ける。僕も竜の力が無かったら使わないかな。竜の力と併用すれば永遠に経験値が稼げそうだな。


『き、消えただと……』

周りに残された3人も驚いているよな。


『魔法は効かないぞ。打撃で来いよ。打撃で、得意なんだろ?』


『お前は何者だ?』

何者………何て答えたら良いのかな?名前は名乗りたく無いしな。嘘をつくと最終的な計画(プラン)に差し支えるしな。


『黒の職人だ』

これなら、モニターで見ているプレイヤーにも正体がバレる事は無いだろうな。


『ク、クロノ・ショック・ニームだと?』

なんか、黒の職人の発音が微妙だった気もするが………いや、それ以前に《バイリンガル》で変換されて無いんじゃないのか?それとも、翻訳プログラムが固有名詞と判断したのか?


まぁ、2度と会う事は無いだろうし、ワザワザ訂正する必要も無いよな。


『さあ、続きをやろうぜ。ゼニスをイジメていた分を纏めて返させて貰うぞ』


『ぐっ、何をボケッとしてる、お前達も手伝え』

よし、ここまでは予想通りだな。


グレタフが斧の二刀流で、そのパートナーが槍で攻めてくる。


…………4・5・6・7連繋か、なかなか鋭い連繋が取れてるよな。ギルマスがわざわざイベントのパートナーとして選ぶだけは有るって事だよな。後ろの2人も、タイミングを合わせて魔法で援護している。


【黒竜】で《相殺》したり、《吸尾》で経験値にしたり、《付与術》使って無かったら全部回避する事は出来なかったかもな。


まぁ、ビークィーンの範囲攻撃程では無いけどな。アレだけは本当に運が良くないと回避出来ないからな。


『お前達、さっさと仕止めてしまえ』

かなりイライラしてるよな。そろそろ良いタイミングか?


さりげなく左手の【アルファガン】の引き金を引くが………当然、何も起こらない。あと、数秒はだが………


………3………後衛から放たれる魔法を《吸尾》で捌く。


………2………槍での攻撃を回避しながら、みぞおちに《拳》を叩き込む。失敗した。綺麗に回避した事で反射的に手が出てしまったな。全く殴る予定では無かったんだがな。


………1………グレタフの攻撃を回避して一定の間合いを取る。これぐらい離れれば大丈夫か?


………0【アルファガン】の銃口からレーザーが、放たれるタイミングに合わせてグレタフの左腕に銃口を向ける。放たれたレーザーは一瞬で、白い影と千切れた左腕だけを残して消え去った。


『『『うぎゃ~~~』』』


『お、俺の腕が…………ま、待て、お前達、何処に行く』


グレタフ以外の3人が、グレタフを残して一斉に逃げ出して行く。


まぁ、アレを見たら仕方無いかな。僕とアクアも始めて見た時は冷静でいられなかったからな。


冷静に確認したらダメージ自体は低いんだけど、グレタフ自身に魅力が無いなら置いてきぼり(ぼっち)にされるよな。トカゲのしっぽ切りみたいに…………


『さあ、そろそろ終わらせて貰おうか?』

モニターで見ている人がいたら、僕が悪魔に見えるんだろうな。


全身を真っ黒に覆われた謎の人物が、空を飛んで、魔法を消して、腕をぶち切る。何処の世界から来た悪魔だって感じだよな。


『ま、待て。何が望みだ?金か?レアアイテムか?それとも権力か?何が欲しい?何でも好きな物を出す』

本当に情けないな。それでも大手ギルドのマスターか?モニターで中継されている事も忘れているみたいだし、救いようが無いな。


〔『…………不意討ち』〕


〔『主よ、小僧がアーツを溜めているのじゃ』〕


〔『2匹共、サンキュ。う~ん、向こうの策に乗ってみるかな、その方が精神的なダメージが大きそうだし』〕


『望みか…………そうだな。ギルド全体で2度と他のプレイヤーに迷惑をかけるな。僕の望みは、それだけだ』


〔『主よ、小僧の準備が終わった様じゃ』〕


『わ、分かった。おま……あなたの言う通りにする。だから、ここは見逃してくれ』

見るからに情けないが、これは演技なんだよな。OOOでギルマスやるよりも役者の方が向いてそうだな。


『約束は守れよ。2度は無いからな』


僕が(ゴール)を目指して振り向いた瞬間、


『死ね、〈奥義(ファイナルアーツ)フレイムロード〉』


僕を目掛けて極大の火柱が襲う。一瞬で辺りを巻き込んで火柱が炎の塊へと変わっていく。





『ふははっははっ。やった、やってやったぞ。勝負は強い者が勝つんじゃない最後で勝った者が強いんだ。つまりは、俺様の勝ちだ。ふははっはは…………うん!?』


だんだん炎が小さくなるにつれ、炎の中から黒い物体が見えてくる。


『グレタフ、2度は無いと言ったよな』


『な、何故だ!?今のは《戦斧》の奥義なんだぞ。それが、どうして………《銃士》のお前が無傷なんだ』


『単純に実力の差だ』

本当は竜の力の恩恵だ。嘘は言って無いし、本当の事を言っても分からないだろうからな。まぁ、教える気も無いけどな。心を根こそぎ折るには十分だろうな。


『嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だぁ。俺様が《銃士》なんぞに…………』


『まぁ、後悔は神殿でしてくれ。じゃあな』

【火縄銃】と【ソル・ルナ】に持ち変えて、呆然としているグレタフに近付き〈セブンスター〉を〈零距離射撃〉で放つ。【火縄銃】は弾を1発しか打てないので、2発分がミスになったが威力としては十分だった。既に、この場にグレタフはいないからな。





『お疲れ。久しぶりにシュンが怒ってるところを見たから、何かするとは思っていたが…………ここまでとはな』

いつのまにか、アクア達が追い付いて来たみたいだな。


うわっ!!もう制限時間残って無いな。かなり長い時間戦ってたみたいだな。ここにいる皆もクリアは無理そうだな。


『おう。皆、迷惑をかけてすまない。そして、手伝ってくれてありがとう』

いつから見てたんだろうな?いや、何処(・・)まで見てたんだろうな?か


『それで………シュンは無事なの?』


『アキラも心配かけたな。僕は、ほぼ無傷だぞ。あっ!!アクア、待て橋に乗る………


『うわぁぁぁぁぁ~~~~』


…………あぁ、遅かったか』


アクアは、グレタフの置き土産である橋のトラップに引っ掛かり、橋と一緒に渓谷の底へ落ちていく。1人だけ先に街に戻ったな。あとで、神殿まで迎えにいこうかな。そう言えば、レースの前に説教するって言ってたよな。どうせ、冗談半分で大した説教じゃないけど、甘んじて受ける事にするか…………


それにしても、トラウマの称号持ちの運命は恐ろしいな。1番最初に渡ったと言うのも有るが、いや、むしろ1番最初に称号の所持者が渡ろうとするところが恐ろしいよな。トラウマの称号は確実に呪われていると思う。その原因を作った事だけは素直に謝りたい。


今のでも絶対に称号は進化してるはずだからな。アクアの称号が、どう進化してるのかも知りたいよな。


『…………シュン、今のは何や?』


『グレタフの置き土産だ。僕を引っ掛けるはずだったが、僕は………こんな感じに引っ掛からなかったから、トラップが残ったままになってたな。確か、向こうにも橋が有るから、そっちから戻ろうか』

僕は、説明しながら来た時の様に空中を歩き反対側へと渡る。皆も始めは驚いていたが、僕が変わった事をするのは今更だった様で、すぐに馴れていた。



さて、ゼニスはどうなったかな?タイミング的には新記録も狙えると思うけどな。こればかりは《見ない感じ》でも感じる事は出来ないからな。










装備

武器

【雷光風・魔双銃】攻撃力80〈特殊効果:風雷属性〉

【ソル・ルナ】攻撃力100/攻撃力80〈特殊効果:可変/2弾同時発射/音声認識〉〈製作ボーナス:強度上昇・中〉

【魔氷牙・魔氷希】攻撃力110/攻撃力110〈特殊効果:可変/氷属性/凍結/魔銃/音声認識〉

【空気銃】攻撃力0〈特殊効果:風属性・バースト噴射〉×2丁

【火縄銃・短銃】攻撃力400〈特殊効果:なし〉

【アルファガン】攻撃力=魔力〈特殊効果:光属性/レイザー〉

【白竜Lv63】攻撃力0/回復力213〈特殊効果:身体回復/光属性〉

【黒竜Lv63】攻撃力0/回復力213〈特殊効果:魔力回復/闇属性〉

防具

【ノワールシリーズ】防御力105/魔法防御力40

〈特殊効果+製作ボーナス:超耐火/耐水/回避上昇・大/速度上昇・極大/重量軽減・中/命中+10%/跳躍力+20%/着心地向上〉

アクセサリー

【ダテ眼鏡】防御力5〈特殊効果:なし〉

【ノワールの証】〈特殊効果:なし〉



天狐族Lv61

《双銃士》Lv80※上限

《真魔銃》Lv5《操銃》Lv26《短剣技》Lv29《拳》Lv52《速度強化》Lv100※上限《回避強化》Lv100※上限《魔力回復補助》Lv100※上限《付与術改》Lv6《付与練銃》Lv7《目で見るんじゃない感じるんだ》Lv30


サブ

《調合工匠》Lv28《上級鍛冶工匠》Lv3《上級革工匠》Lv6《木工工匠》Lv34《上級鞄工匠》Lv8《細工工匠》Lv42《錬金工匠》Lv40《銃工匠》Lv36《裁縫工匠》Lv15《機械工匠》Lv19《調理師》Lv20《造船》Lv17《家守護神》Lv53《合成》Lv48《楽器製作》Lv5《バイリンガル》Lv6


SP 13


称号

〈もたざる者〉〈トラウマニア〉〈略奪愛?〉〈大商人〉〈大富豪〉〈摂理への反逆者〉〈初代MVP〉〈黒の職人さん〉〈創造主〉〈やや飼い主〉〈工匠〉〈呪われし者〉

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