1人旅 1
『主よ、いつも変わらず良い湯じゃ』
『そうだな~。最高だよな』
時間が有れば毎日入っていた露天風呂。これに暫く入れないのは辛いよな。
『………豪華客船』
豪華客船か、船に付けるのも悪く無いが………流石にそこまでやるとヒナタに怒られる気がする。
『それは無理だな。暫く戻って来ないからな。白も、黒も楽しんでおけよ』
『………留守番してたい』
鞄を使えば戻って来れるが、頻繁に戻られても困るからな。覚えて無いなら、わざわざ思い出させなくてもいいよな。
『今回はダメだ。何が有るか分からないからな』
この入浴後には、船で旅立つ。王様から頼まれた最後の依頼、各国への書類配達を達成する為だ。既に僕の戦闘の要になっている白と黒がいないと言うのは無理な話だな。
まぁ、建前なんだがな。実際は、久しぶりのソロ活動と白地図を埋める………いや、違うな。僕自身が色々な物を見たいだけだし。可能で有るなら、それを白と黒とも共有したいからな。
目的の場所は5つ。アメリカサーバーのメインタウン【ペンタグラス】、ヨーロッパサーバーのメインタウン【サラベール】、それと【チメリア】、【ガリンペイロ】、【アクアパレス】。
この5つに【シュバルツランド】を加えた6つの街が神殿と城を持つ国家になるらしい。まぁ、これ以外にも国家を中心にした複数の街や国家とは別に独立した街が無数に有るはずなんだがな。
姿形は違うが、地図上におく国家の位置関係は、現実の世界における大陸の位置に酷似している。
本当に形が違うので正確な事は分からないけど、【シュバルツランド】を日本の位置とするならば、サーバータウンの【ペンタグラス】【サラベール】は、そのまま北アメリカとヨーロッパ。【チメリア】はアジア大陸、【ガリンペイロ】はアフリカ大陸、【アクアパレス】は南アメリカ大陸にあたる。
もしかするとだが、サーバーのメインタウンになっていない街の数的にも、いずれ国家にはサーバーが置かれるのかも知れないよな。どんどんプレイヤーの人数も増えているし、色々な国で参加を望む声が有るとニュースで言ってたからな。
まぁ、メインタウン以外でもホームを持つ事が可能だし、ダンジョンも増えているから参加するプレイヤーが増えてもエリアが狭いとかの問題出そうも無いな。
『主よ、何処から目指すのじゃ』
位置的に1番近い国家は【チメリア】だが、海から国家までの位置が離れ過ぎている。近隣の港街が分からないので後にまわした方が良いだろうな。僕の持っている地図は、海岸線のみの白地図なので地形までは分からない。どうせ全部回るのなら効率も大事にしたいところだが………
『そうだな………位置的に【ペンタグラス】からだろうな』
5つの国家で唯一海に面しているのが大きいな。最初に選ぶなら効率も大事だが船で行き易い方が良いだろう。勿論、2番目に近いって言うのも有るけどな。
『どれくらい掛かるのじゃ?』
『さぁ、どれくらいだろうな。連続なら1~2日………ログイン出来る時間から考えると3~4日ってところか』
OOOが現実の世界の6分の1とは言え、日本からアメリカと考えれば、これくらいは掛かるはずだ。
『………長い』
『まぁ、少しな。せっかくなんだから海を楽しんでくれよ。それに、新しい発見が有るかも知れないだろ?魔物とか、魚とか』
『………魚は魅力』
『そうか。それなら釣りでもするか?黒用に釣竿を作るぞ。釣り上げた魚は、その場で料理するぞ』
『主よ、ワシも欲しいのじゃ』
『OKだ。それは任せろ』
これで、2匹の興味と同時に食材までゲットだな。更には船上の見張りまで………これは良い感じだよな。
釣竿も3本有れば良いかな。せっかく広い海に出るのだ、僕も一緒に釣りしたい。こう言う時の仲間外れは嫌だからな。
『主よ、釣れたかのう?』
『くっ、まだだ。少し静かにしてろ、魚が逃げる』
今は【ポルト】から船で旅立って2日目。昨日はログイン時間が多目に取れた事も有り、【ペンタグラス】までの行程を半分以上消化出来ている。昨日、白と黒の2匹が釣りをして大漁だった為、今日は僕を含めて1人と2匹による釣り大会を開催しているのだが…………
『………また釣れた。入れ食い』
くそっ!!何故だ。何故、僕の竿には1匹もかからない。それどころか餌すら食べられた形跡が無いのは、おかし過ぎるだろ。釣りを始めて1時間も経つのにも拘わらずだ。
ちなみに、船は持ち運べる動力機に魔力をつぎ込み、遠隔から自動操縦しているので、移動時間の無駄にはなっていない。確実に目的地に近付いているはずだ。
白と黒の竿は、釣り始めた時から上げ下げを繰り返している。釣り上げた魚も既に2桁、種類も多い。同じ場所で、同じエサで、同じ性能の竿を使っているのに………一体僕と何が違うんだよ。
『………才能』
『黒よ、流石に言い過ぎじゃ。主よ、多分今日もツキが無いだけじゃ』
白よ、それも言い過ぎだと思うぞ。そりゃあ、普段からツキは無い事は自覚しているが、人に言われると色々と考えさせられて凹むんだよな。
『見てろよ。絶対に逆転するからな』
釣り大会は数釣り勝負では無く大きさ勝負の為、今からでも逆転可能では有る。
数釣り勝負だったら確実に完敗だったよな。と言う事は、大きさ勝負を選んだ僕には、まだツキが有るはずだ。それに罰ゲームはともかく、1匹も釣れない坊主だけは御遠慮願いたい。
………1時間後。(釣り開始より2時間)
白と黒の勢いは、止まらない。
………更に1時間後。(釣り開始より3時間)
白と黒の勢いは止まった。魚が釣れ過ぎて飽きたからだけど………
………更に約1時間後(釣り開始より約4時間)
まもなく終了。
『来た。来た。来た~~~ヒット。白、黒、悪い無いな。この引きは絶対大物、これで僕の逆転だ』
やっぱりツキは僕に有ったな。制限時間ギリギリ、最後の最後で来るとは、なかなかドラマチックだな。今日のOOOの運営は話が分かっているの様だ。たまには僕が主役の日が有っても良いはずだからな。
『主よ、釣り上げるまでが勝負なのじゃ』
『………黒の負けは無い』
現在の1位は50㎝オーバーの鯛?らしき物を釣り上げた黒、2位は僅差で48cmの白、僕は3位と言うなの最下位。
確かに、僕が逆転しても黒の負けだけは無い。余裕が有る様に感じたのはその為か?逆に白は気が気ではない様子だな。
この前の飛行勝負で負けてるからな。ここは主人としての威厳を見せ付けるチャンスだからな。是が非でも勝ちたいところだ。
『もう少しだ。覚悟しておけよ、白』
海面まで、あと3m、これはデカイぞ。
2m、勝ったな。
1m、優勝だ。
0………
『どうだ!?………ぎゃ~~~』
『………時間切れ。主の負け』
『れ、冷静にそんな事言ってる場合か』
釣り上げたのは2mを超す大物、かなり衝撃的な光景だ。
ここで釣り上げたのが魚だったならば、僕の優勝は確定だったろう。でも、実際に釣り上がったのは…………人魚。いや、魚人?いや、それも違うな………なんと呼べば言いのか微妙だ。
簡単に言えば、人間の様な足が付いた大きな魚なんだが、どう見ても分類としては魔物なんだよな。
『今回は大きさ勝負だよな?』
『うむ。魚の大きさ勝負じゃ』
『なぁ、白、黒、これってギリギリ魚じゃないか?』
釣り竿を手放し、両手に2丁の剣銃を持つ。最悪、足を断って誤魔化せたりしないかな?
『………ギリギリ魔物』
ギリギリ魔物って、白が言うなら断固否定するが中立の立場に有る黒に言われると否定のしようが無い。
『主よ、先ずは倒すのが先決じゃ』
それに賛成だな。先ずは新種との戦闘恒例のステータスチェック。名前は………
『ウォージャムか………』
名前まで否定されているなら、もう本当に諦めるしかないよな。
名前でショックを受けたがステータスは、更に衝撃的だった。このウォージャムには性別までが有り、コイツはメスらしい。メスと言う事はオスもいるって事だよな。あまり想像したくないところだが………
それに、どの能力も非常に高いし、クラーゴンと同じ技も使用可能なのだが、1番目立って驚いたのは地上で生息不可と言う項目だよな。
どうやら戦闘をするまでも無く、釣り上げた時点で勝負は付いていたらしいな。
僕の不戦勝と言う方向で………現にウォージャムは、エラ呼吸が出来ずにもがき苦しんでいるからな。獲得したドロップにもウォージャムの魚肉や魚卵が有るし、やっぱり性質的にも魚だろ?
『………諦める』
ぐっ、黒に心を読まれた上に事実上のトドメを刺されたな。
それにしても、地上で生息不可と言う事は、水中オンリーの魔物って事だよな。って事は、水中ないし海中の世界も存在するって事だよな、イベントの池の底に近い………どうりで潜る事の出来る《潜水》系のアーツやスキルが有る訳だな。
海中の世界とか、楽しそうでは有るがウォージャムクラスの魔物が、ウヨウヨしているのならソロでは難しいな。まぁ、魔物が複数いたらパーティーでも怪しいけど………それくらいのステータス差が有る。
どっちにしろ、海中を楽しんだり戦闘するなら自由に動くスキルかアーツが無いと無理だけどな。
『………捌く?』
『いや、魚肉は得たけど………アレを食べる気にはなれないんだが………アクアかカゲロウにお土産にするとかどうだ?』
ドロップ素材として得たウォージャムの魚肉は魚肉と言う名前だけで、見た目は足が無くなったウォージャム。知らない人から見れば大きな魚なのだろうけど、さっきまであの姿を確認している僕からすると恐怖でしかない。
アレを回避できるなら、幼馴染みと友達を売ろう。
『主よ、ここで罰ゲームの時間じゃ』
ちょっと待て、今のタイミングでか?罰ゲームの内容が1つしか思い浮かばないんだが。
『…………お刺身、魚卵乗せで』
追い討ちともとれる非常な生食宣言。ここでウォージャムの魚肉を刺身で食べると、現実の世界でも2度と刺身を食べれなくなる気がするのだが………気のせいだろうか?
いや、百歩譲って刺身は食べたとしても魚卵はアウトだ。
『主よ、頑張るのじゃ。美味かも知れないのじゃ』
もう2度と絶対に白と黒と勝負はしない。
カゲロウがヒナタに怒られながら甲板に設置した簡易キッチンで、手早くウォージャムを解体していく。意外に捌くと美味しそうな白身の刺身にしか見えないんだな。脂も乗っているし…………これが普通に魚の魔物なら食べれるんだが、あの人間っぽい足のイメージが残ってるからな。
ちなみに、足の方は真っ先に捌いて処分している。アレを食べるのは人として絶対に無理だからな。
『主よ、アーンなのじゃ』
もう覚悟を決めるしかないか、サヨナラ僕の倫理観。
『……………』
目を瞑って、ウォージャムの刺身にウォージャムの魚卵を乗せて咀嚼する。
『…………美味?』
『………残念ながら、美味い。今までに食べた魚の中で、ぶっちぎりで1番かも知れないぐらい。残念ながらな………』
いや、確かに深海魚とか不細工な魚が美味しいって言うのは知ってたけど、何か釈然としないよな。
『白達も食べてみるか?』
残っている刺身を白と黒にも食べさせてやる。2匹共に最初は恐る恐ると言った感じだったが、一口目以降は手が止まらない様だな。
まぁ、僕もウォージャムの姿を知らなかったら、箸を止めるのは無理だったろうな。それくらい美味しい。
そして、姿を知っていたからトラウマ称号も成長したんだろうな………
称号成長
〈トラウマニア〉
与えられるトラウマだけでは飽きたらず様々なトラウマを自ら集めだした者への称号/成長称号☆
まだ気持ちの整理が出来ないぐらい動揺しているので称号が成長するのも仕方ないと思うが、説明文を何とかして欲しいな。決して僕は、自ら集めだしてはいない。ソコだけは確実に否定させて貰いたいよな………って言うか、トラウマ称号の存在を知っている人に今の称号見せたらどんなリアクションを見せるんだろう?少し気になるところでも有るよな。
『主よ、今日はあの小島に停泊させてはどうじゃ?』
『そうだな。念の為にマーキングもしたいし、時間的にも良いかもな』
船にもゲートを搭載しているので、何時でもログアウトは可能だが、ログアウト時には錨を降ろして動かない様に固定しておかないと、ログアウト中に船が勝手に流されて漂流してしまう。その為、海には停泊用?だと思われる無数の小島が散らばって存在している。
これは、【カーペントリ】のメンバーが既にやってしまった事で、情報サイトにも特記事項として載せている有名な出来事だ。気軽にログアウトして、次にログインした時には見た事の無い場所にいたらしい。何とか戻って来れたが、かなりの時間を費やしたみたいだ。
ちなみに、この小島は周囲10mも無い、本当に小さな島で、停泊もしくは上陸すると地図上に新しく表記される。この事を便宜上マーキングと【カーペントリ】が命名している。まぁ、次に同じ場所に来る為の目印にもなるから便利なんだけどな。
また、この場所に来る必要が有るかどうかは別だが、ウォージャムの生態は気になるからな。海の中の世界が有るなら、ウォージャムが釣れたこの辺りが有力候補だと思うからな。
どっちにしろ、今日はログアウトだ。このペースなら明日中か明後日の早い内には【ペンタグラス】に着きそうだな。
それにしても、いよいよアメリカサーバーかぁ、楽しみだな。
『主よ、アソコじゃ。アソコに街が見えるのじゃ』
白が指す方向には高い城壁に囲まれた街が見える。【シュバルツランド】の中世ヨーロッパ風の街並みとは違い、かなりゴツく感じられる。
『本当だな。僕にも見えたぞ』
地図の位置的に、多分アソコが【ペンタグラス】だろうな。1日8時間以上3日間連続でログイン、ここまで長かったよな。
『………その前にお客さん』
『えっ!?』
『主よ、2時の方向に魔物じゃ………数は4。シーリザードじゃ』
『OKだ。僕も確認出来た』
ここまで戦闘と言える戦闘が無かったからな。有ったのは、思い出したくも無いウォージャムとの出会いくらいだからな。
まぁ、スキルを成長させる為にも少しはLvも上げておきたいし、【ペンタグラス】に着くまでに新しく思い付いた戦闘方法のテストもしたかったから丁度良かったかもな。魔物も【ポルト】周辺海域に出るシーリザード。弱くも、強くも無いのだが、僕の通常攻撃1発では到底倒せない。テストとしては手頃なところだろうな。
魔物は、まだこっちに気付いて無いな。それなら………
『白、黒、今回は手出し無用だ』
2匹をその場に残し………ってか、まだ刺身を食べてるんだな。まぁ、今回は使わないから良いんだけど………少しは協力体制を見せて欲しい。
『いくぞ〈リング・イン〉×2』
また、2丁の剣銃を手に取り〈リング・イン〉を同時に放つ。
ここまでなら今までと変わらない。テストしたかったのは、ここからだ。2丁の剣銃が手から離れたと同時に【雷光風】を手に取る。
『いくぞ〈奥義セブンスター〉』
〈リング・イン〉〈奥義セブンスター〉を喰らった各々の魔物は光となって消えていく。不意打ちと先制攻撃のボーナスか?アーツを使っても1撃では倒せないと思っていたんだがな。
それにしても、出来たな………思っていた通りだ。これで戦略の幅が広がるぞ。
今までは、出来なかった事だが浮遊装置の効果で〈リング・イン〉を解除しなくても、他の銃を持ちアーツや攻撃する事が出来る。更に〈リング・イン〉後に戻って来た2丁の剣銃は、僕の手に戻る事無く所定の位置に収まってくれた。
浮遊装置って最高だな。
『………残りが来る』
魔物を倒した事で残った1匹のシーリザードが、こっちに向かって海面を走って来る。
海の魔物の多くが所持している《海面歩行》や《海面移動》等の移動系スキル。船が無くても自由に動けるのは羨ましいよな。
なるべく船の上で争いたくない僕は、2丁の【空気銃】に持ち変えて、シーリザード目掛けて一気に飛ぶ。加速や減速に慣れていないので距離感が狂い、一瞬でシーリザードを追い越してしまったが、逆に背後を取る事に成功したな。
右手の【空気銃】を【火縄銃】に持ち変えて………ズドン。
『うわぁ………』
〈零距離射撃〉が発動していないにも関わらず、初期の頃【ハンドガン】で放った〈零距離射撃〉並みの威力を叩き出している。
まぁ、アーツを使って無いので1撃で今回は倒すには至らなかったみたいだな。残念な様な、そうで無い様な………
まぁ、次だ。
次は【空気銃】を戦闘で使った場合のテスト。対魔物や対プレイヤーに効果が有るのか知っておきたい。あっ!!結果としては、さっき【火縄銃】で倒せなくて良かったかもな。
空中でバランスを取り、再び僕を目指して移動してくるシーリザードを左手の【空気銃】狙い撃つ。
『………うぉっと』
撃たれたシーリザードに何の変化も無く、畑での事件の再現の様に僕だけが飛ばせれていく。
まぁ、今回はローブマントとブーツに浮遊装置を付けているお陰で空中でバランスを保つ事だけは成功したけどな。
『それなら…………うっ、これもダメか』
もう一度【空気銃】2丁に持ち変えて右手を前方、左手を後方に構えて両方を同時に射撃してみるが、全く変化は無い。僕自身を飛ばされない様に背後を固定すると、もしかしたら………と思ったがダメな様だな。
何度も試してみるが、出来たのは威力を弱めた逆方向に弱めた分の速度で移動するくらいだ。
残念だが、魔物には効果が無いみたいだな。威力は無くても、ぶっ飛ばすくらいは出来ると思っていたんだが………本当に残念だ。
ある程度、必要なテストも出来たので船に戻り【雷光風】の射撃でトドメを刺す。
HPは無傷だがMPの残りは0に近い、魔物を4匹倒すのにこれではコストが悪すぎる。今回の戦闘での1番の収穫は戦闘法のテストでは無く、空中戦は白と黒が無いと満足に戦えそうもない事が分かった事だな。アーツの消費よりも【空気銃】2丁の連続使用のMP消費が思っていたよりもデカ過ぎるからな。
うん!?って事は【空気銃】は分類的には魔銃になるのか?それにしては製作に必要な素材が簡単に集まる物ばかりだよな。まぁ、僕的には嬉しい限りだけどな。
『主よ、何処に船を着けるのじゃ?』
『普通は港じゃ無いのか?』
『主よ、港は目立つと思うのじゃが、本当に良いのかのう』
なるほどな、そう言う事か………確かに目立つのは頂けないな。いや、待てよ。アメリカと日本じゃ時差が有るからな。日本の夜中はアメリカの朝だよな。って言う事は、あまりプレイヤーいないんじゃ無いのか?
『多分、大丈夫だ。堂々と港に入港するぞ』
目立つと言っても、悪い事をしてる訳では無いからな。それに、街の外にライトニングを停泊させる方が目立つ気がするぞ。どうみても港に停泊している船よりも立派だからな。
『………人いっぱい』
うぉ、確かに人が多いな………全員がプレイヤーなのか?
今気付いたんだが、皆英語で会話してるよな………僕は書けたり読んだりは出来るが全く話せないぞ。
『主よ、大丈夫なのじゃ。ここでも
『………《バイリンガル》』
《バイリ………黒よ、ワシのセリフを取るのは止めるのじゃ』
白は色々と解説したがるが、最近は白よりも詳しい黒に解説任せている。今回は久しぶりの解説チャンスだったのに黒に横取りされたな。僕は、どっちに教えて貰っても問題無いけどな。
『《バイリンガル》は魔物以外にも効果が有るのか?』
『主よ、言語リストの上の方には英語も有るのじゃ』
めっちゃ上に有るんだな。あの時は、リストからケンタウルスを探すのでいっぱいいっぱいだったから気付かなかったな。
まぁ、Lvも上がってるから選べる言語も増えてるし。丁度良かったな。
ちなみに《バイリンガル》スキルのLvアップは、その言葉を使う事だ。その為、ウルちゃんと1番話をしているケイトは既にLv10を越えていたりもしている。アメリカサーバーに来たついでに《バイリンガル》スキルを少し鍛えても良いかもな。会話するだけだし。
英語をリストから選択すると、今まで英語で聞こえていた会話が慣れ親しんだ日本語で聞こえてくる。若干辿々しいところも有るが十分機能を果たしているよな。
やっぱり港に集まっていた人々はプレイヤーの様だな。こっちを見て色々と話している。そんなに船が珍しいのか?それとも、まだ《造船》スキルが解放されて無いのか?
まぁ、何時までも考えていても仕方がないし……まずは上陸だな。
『ほいっ。【ペンタグラス】到着』
僕は甲板からジャンプ1つで港へと降り立つ。
〔運営よりプレイヤーの皆様へご連絡させて頂きます。只今、あるプレイヤー様がアメリカサーバー【ペンタグラス】到着されました。これにより【ポルト】【ペンタグラス】間の定期船運航が解禁となります。所要時間は24時間、1日各3便就航されます。ログアウト中も時間は換算されますので是非ご利用下さい。以上、運営からの連絡でした〕
24時間、しかもログアウト中に移動可能とは、めっちゃ楽だな。僕は3日間は何だったんだろうな。せめて頑張った僕に何か労いの言葉とか、特典とか無いのか?運営さん。
〔『…………主、お疲れ様』〕
〔『主よ、お疲れ様なのじゃ』〕
2匹の言葉が胸に沁みるよな。これだよ、これ、今後はこれを参考にして欲しい。本当に頼むよ、運営さん。
〔『主よ、これからどうするのじゃ?』〕
〔『まずは、当初の目的通り書類配達だな。定期船の運航が始まったから、【ペンタグラス】に書類を届けるのは最後だと思うけどな。それとゲートの登録、その後は露店や街を見て回ってからログアウトかな』〕
〔『了解じゃ』〕
あの中心部が【ペンタグラス】の城か?デカイと言うよりも高いな、簡単には近付けない様になっているのは【シュバルツランド】の城と変わらないが、方法が違うな。
まぁ、近付いて行けば入る方法も分かるだろうな。普段は入れなくても、今はイベント進行中だからな。
それにしても、やけに僕の方を見る人が多くないか?港はともかく、街の中なら僕は普通の1プレイヤーだろ。白と黒も銃の姿になっているし、何時もの全身を覆うローブマント姿だ。目立つ箇所が無いはずだ。
〔『………多分アレ』〕
黒が言う方向を見ると全身をローブに覆われた人物のブロンズ像が、広場の噴水の前に立っている。かなり大きいので遠くから見ても目立っている。この街のシンボルか何かだろうか?
〔『主よ、あの像のコスプレと思われているのではないかのう?』〕
僕もそう思ったが、それならこの格好は逆に目立つよな。でもローブマントを外すと浮いている銃が目立つからな…………まぁ、街中なら銃が必要になる事も無いか。それに、どうせ城にいくなら武装解除も必要になるだろうし。
僕は路地裏に入りローブマントと銃を鞄に詰め込み、また大通りに戻る。ローブマントを外した事で目立たなくなったのか、人の視線を感じなくなった。今後、この街に来るなら気を付ける必要があるよな。
もしかすると、港で目立っていたのもこの格好のせいか?
『クロノ・ショック・ニーム』
この像のモデルは、過去に街を危機から救った英雄か。フラッと街にやって来て問題を解決すると、いつの間にか消えていたらしい。今や伝説級の英雄…………僕の外見と似ているとは全く迷惑な話だな。
何故、わざわざローブ姿で顔も分からない感じで像を作る。英雄なら英雄らしく剣や鎧を装備したブロンズ像を作って欲しいものだ。コスプレに間違われる身にもなって貰いたいよな。
城の周りを1周してみたが、城に入る道が無い。まぁ、城の周りを堀が囲っている為、城に渡れないと言うのが正しいのだけどな。
〔『主よ、尾行されておるのじゃ』〕
〔『みたいだな。僕も気付いてる………取り敢えずは、無視だ』〕
城まで一気に飛べば片付く問題なのだが、場所的に目立つし、尾行者に見られるし、侵入するみたいな事はしたくないからな。
さて、どうしようかな?
『兄ちゃん、困ってるのか?アタシが手伝ってやろうか?勿論、タダじゃ無いけどな』
注意はしていたのだが、絡まれてしまったな………本当にどうしようかな?
装備
武器
【雷光風・魔双銃】攻撃力80〈特殊効果:風雷属性〉
【ソル・ルナ】攻撃力100/攻撃力80〈特殊効果:可変/2弾同時発射/音声認識〉〈製作ボーナス:強度上昇・中〉
【魔氷牙・魔氷希】攻撃力110/攻撃力110〈特殊効果:可変/氷属性/凍結/魔銃/音声認識〉
【空気銃】攻撃力0〈特殊効果:風属性・バースト噴射〉×2丁
【火縄銃・短銃】攻撃力400〈特殊効果:なし〉
【アルファガン】攻撃力=魔力〈特殊効果:光属性/レイザー〉
【白竜Lv60】攻撃力0/回復力210〈特殊効果:身体回復/光属性〉
【黒竜Lv60】攻撃力0/回復力210〈特殊効果:魔力回復/闇属性〉
防具
【ノワールシリーズ】防御力105/魔法防御力40
〈特殊効果+製作ボーナス:超耐火/耐水/回避上昇・大/速度上昇・極大/重量軽減・中/命中+10%/跳躍力+20%/着心地向上〉
アクセサリー
【ダテ眼鏡】防御力5〈特殊効果:なし〉
【ノワールの証】〈特殊効果:なし〉
天狐族Lv60
《双銃士》Lv79
《真魔銃》Lv3《操銃》Lv24《短剣技》Lv26《拳》Lv50《速度強化》Lv100※上限《回避強化》Lv100※上限《魔力回復補助》Lv100※上限《付与術改》Lv3《付与練銃》Lv3《目で見るんじゃない感じるんだ》Lv26
newアーツ
〈吸尾〉消費MP 100
アーツや魔法を吸収して自らの力に変える
習得条件/天弧族Lv60
サブ
《調合工匠》Lv28《上級鍛冶工匠》Lv3《上級革工匠》Lv6《木工工匠》Lv34《上級鞄工匠》Lv8《細工工匠》Lv42《錬金工匠》Lv40《銃工匠》Lv36《裁縫工匠》Lv15《機械工匠》Lv19《調理師》Lv20《造船》Lv17《家守護神》Lv52《合成》Lv48《楽器製作》Lv5《バイリンガル》Lv3
SP 9
称号
〈もたざる者〉〈トラウマニア〉〈略奪愛?〉〈大商人〉〈大富豪〉〈摂理への反逆者〉〈初代MVP〉〈黒の職人さん〉〈創造主〉〈やや飼い主〉〈工匠〉〈呪われし者〉




