珍客? 2
『それで、魔物は何処にいるんだ?こっちか?』
カタログで見てい通り広い場所だな。
『マスター、そっちでは有りませんです。牛舎の方では無くてあっちの馬房の方にいますです』
牛舎?馬房?えっ!?牧場ってそんなに広いのか?
僕は、放牧の出来る牧草地と家畜を休ませる場所が有るだけだと思っていたんだが………設備の増築はしたが1回も来てなかったからな、この件が片付いたら見てみる必要が有るかな。思っていたよりも何倍もに広そうだ。
『マスター、あそこです。あそこに居ますです』
視認で1か…………これだったらケイト1人でも大丈夫だったんじゃないのか?
『了解だ、いくぞ。《回避上………………ちょっと待てケイト、これは僕の見間違いか?あの魔物、この馬房って言うんだったか?の中で大人しくしているように見えるんだが…………気のせいか?』
ケイトの指差す方向には確かに魔物はいる。これは《見ない感じ》でも感じているので間違い無いだろう。しかし、明らかにこちらに敵意は示していない。寧ろ友好的にすら感じるんだが………そもそも、魔物が街の中、ましてや個人のエリアに入れると言った話は聞いた事が無いぞ…………何か妙だな。
『はいです。見間違いでは無いですよです』
それに、徐々に近付いて見て分かったのだが…………勿論、警戒は怠っていない。
『………もしかしてケンタウルスか?』
記憶に新しいケンさんやウルちゃんとの出合いが思い出される。
『δθοιγΨρηζ』
『はいです。私では何と言っているのか分かりませんです』
確かに、これはプレイヤーには分からなかったな………ってかケンタウルスならケンタウルスだと教えて欲しかったぞ。まぁ、ケンタウルスも魔物には違いないのだが、ケンさん達との出合いのお陰で、魔物と言う認識は出来きないんだよな。
『主よ、大変なのじゃ。このケンタウルス、ケン殿の娘じゃ』
『いやいやいやいやいや、流石にそれは騙されないぞ。だって、このケンタウルスはケンさんよりも大きいぞ。有り得ないって』
あの時のウルちゃんは、ケンさんよりも2周りは小さかったはずだ。このケンタウルスは小さく見積もってもケンさんと同じか、それ以上だ。
『主よ、自分でステータスを確認してみるのじゃ』
『だから、確認してみるまでも………………』
開いた口が塞がらないと言うのは、この事か?普段僕に驚かされている皆の気持ちが少し分かったな。それにステータスの中には気になるスキルも幾つか存在している。
…………って言うか、あれからそんなに時間も経って無いよな。OOOの時間で換算しても3ヶ月は経って無い筈だ。
『σψωδιζοξφ』
『主よ、理解出来た様じゃな。この体の大きさは成長期なんだそうじゃ。ケン殿の娘が言うには、あの時の恩返しをしたいそうじゃ。出来ることなら【noir】において欲しいそうじゃ』
成長期って言葉で理解したくないが、あの小さく可愛かったウルちゃんが、こんなに逞しく成長するなんて感慨深いものが有るよな。この感じだと、あの一連のイベントは、まだ終わって無かったのかも知れないな。
まぁ、色々と確認したいところも有るのだがその前に…………
『ケイトはウルちゃんと分かってたのか?』
これだけは、先に確認しておく必要が有るよな。
『Noです。馬房を掃除しながら、牧場の規模を確認してましたら、急にケンタウルスさんが飛び込んで来ましたです…………』
本当にビックリしましたですと続けているが、既に僕の耳には入っていない。
『白、黒、取り敢えずウルちゃんとの会話を何とか出来ないか?通訳してくれても良いんだが、出来るなら直接話しをしてみたいんだが』
これからどうするのかを決めるにしても、直接話が出来た方が良いだろうからな。
『……………《バイリンガル》スキル』
《バイリンガル》?
『主よ、《調教士》【テイマー】や《召喚士》【サモナー】には、ほぼ必須スキルなのじゃ。それを取得すれば直接喋る事も可能なはずじゃ』
………と言われてもな身近に、そのジョブのプレイヤーいないし、OOOはスキルが多過ぎて全て把握するのは不可能に近いからな。
消費SPは10、初期から取得出来る事や《調教士》《召喚士》のほぼ必須スキルと言う事を考えたら消費SPが少々高目の設定なのかも知れないな。まぁ、SPは残っているし、取得しておけば何かと便利そうだから取得するのは問題ないが…………取得しただけで、全ての会話が分かればスキルLvを上げる行為は必要ない様な気がするんだが………はたして、そんなに甘い物なんだろうか?
『Oh~!!マスター、本当に言葉が分かりますです。ウルちゃん、私はケイトと言います。覚えていますか?です。会うのは2度目なんですよです』
このスキル取得で聞き取る事が出来るのは、間違って無いみたいだな。これならアクアの魔獣器ラウの言葉も理解出来るかも知れないな。ケイトに少しだけ出遅れたが僕も《バイリンガル》を取得する。
なるほど《バイリンガル》は、こう言う風になっているんだな。
《バイリンガル》は、1Lv毎に選択した1言語理解出来る様になっている。つまり多くの魔物や召喚獣?の言葉を理解するにはスキルLvを上げる必要が有るようだな。これならスキルLvを上げずに利用する事は出来なさそうだな。
『名前ケイトって言うんだね、勿論覚えてるよ。あの時は本当に有り難う。言葉が通じるって良いね、やっとお礼が言えたよ』
『僕はシュンだ』
『うん。シュンも有り難う』
『ウルちゃん、始めに少し聞いて良いかな?』
ウルちゃんが頷くのを確認して、
『ケンさんは元気にしてるのか?ウルちゃんが【noir】………ここに居る事は知っているのか?』
せっかくクィーンから解放されて奇跡的に一緒に暮らせる様になったのに、また離れ離れにさせるのは問題が有るんじゃないのか?
『主よ、それは………』
『大丈夫、パパは元気にしてるよ。これはウルの意思。それとケンタウルス族の成人の儀って感じ』
白の言葉を遮る様にウルちゃんが割り込んできた。白が言いかけた事も気になるのだが、今は………
『成人の儀?』
聞き慣れないフレーズだよな、人間で言う成人式か?
『そう。成人の儀、ケンタウルス族は大人になると家族の元を旅立って、自分で新しい仲間を見付けないとダメって掟が有るの。ウルの場合は色々事情が有って遅くなっちゃったけど。年齢的に言って、かなり前に成人の儀終わってるんだよね。ウル、召喚獣でも家畜でも何でもするからお願い!!』
その色々な事情が分かる僕らとしては、何とも言えない感じだな。と言う事は、ウルちゃんは成人の儀でケンさんのもとを旅立って、新しい仲間として僕らを選んだって事になるのかな?
ただ召喚獣と言われても【noir】には《召喚士》はおろか、《召喚》スキルの取得者も居ない。上位の魔物種であるケンタウルスを家畜にするのは論外だよな………って言うか、ウルちゃんは家畜の意味が分かっているのだろうか?
『マスター、私が世話をしますです。《召喚》や《調教》スキルも取得しますです。お願いしますです』
スキルの取得は自由だし、仲間が《召喚》使うのも見てみたいかもな。それに僕は仲間のやりたい事を否定する気は無い。そもそも否定なら、真っ先に僕がされるべきと言う自覚は有からな。
『まぁ、牧場長のケイトが、言うなら別に良いぞ。ただし、その馬房からは出てギルドホームに住んでくれ。ホームの部屋は、まだまだ余っているし露天風呂も有るからな』
実家でも広大な牧場を営んでいるケイトに任せておけば、悪いようにはならないだろうからな。ウルちゃんと召喚獣契約もするだろうし。
そもそも牧場内の出来事は牧場長のケイトに決定権が有る。同じ様に畑はカゲロウ、造船所はヒナタ、僕を含む3人のマスターはギルドホーム。まぁ、施設の増設は僕しかしてないんだけどな……………自由にしてくれても大丈夫なんだがな。
取り敢えず、こっちは片付いたよな。残るは、雪ちゃんか……………アキラは進化したって言っていたが、雪ちゃんの進化した姿が想像出来ない。
あっちもあっちで大変そうなんだよな。
慌ててリビングに戻った僕を待っていたのは、全く想像すらしていなかった事態だった…………
『……………………』
『主よ、固まっている場合では無いのじゃ』
そうは言われてもだな、この状況を理解するのに時間が欲しいのは僕だけでは無いだろう………
『…………シュン、分かる?』
『この声………そっちがアキラなのか?』
僕は、声を発したアキラの方に向き直る………って事は反対の………
『こっちのアキラは、もしかして雪ちゃんなのか?』
一瞬、《忍者》にジョブチェンジしたアキラの分身かとも思ったんだがな。
『大正解なの』
そう言って雪ちゃんは変身を解き、何時もの………皆の知っている雪ちゃんの姿に戻る。まぁ、これを変身と言って良いのかは分からないのだが…………
リビングで僕を待っていた2人のアキラは、寸分変わらずにアキラだった。それなりに付き合いの長い僕でさえ、声以外に違いを見出だす事が出来なかった。何故なら、僕やフレイの作った世界に1つだけの装備さえも完璧に同じなのだから…………
『すまん、2人共。僕の頭ではキャパがオーバーしたようなんだが、順を追ってゆっくり説明してくれるか?』
『うん。私も分かっている事は、シュンとあまり変わらないと思うんだけど………私が雪ちゃんにおやつを持って行った時には、もう私の姿だったんだ。最初は私も夢とかも疑ったんだけど…………』
アキラも、まだ半信半疑と言った様子だ。
『主と虎猫の姉さんよ、これは雪の努力の結果なのじゃ』
雪ちゃんではなく、白が自信満々に答えた。
いつの間にか然り気無く、僕から離れて雪ちゃんの頭の上に陣取っている。まぁ、普段アキラよりも雪ちゃんと一緒に居る時間の長い白が理由を知っていてもおかしくないよな。
『白は知っていたのか?』
雪ちゃんに直接聞いても良かったのだが、雪ちゃんは何時もの様にニコニコ笑っているだけで答える素振りすら見せていない。
『当たり前なのじゃ。ワシは雪と何時も一緒におるからのう。雪が、かなり前にワシと黒に主や虎猫の姉さん達と一緒に冒険がしたいと言い出したのじゃ』
『…………特訓』
白と黒にそう言われて、雪ちゃんの方を振り替えると恥ずかしそうに俯いている。
それについては確かに身に覚えは有る。雪ちゃんがギルドに入ってからは、街の外への冒険は勿論、街の中へ連れて出る事すら殆ど無い。たまに買い物等に連れて行く事は有っても、周囲にバレてパニックになるのを怖れて短時間に留めている。
雪ちゃんのスキル構成なら、バレる可能性は低いと分かっているのだが、僕の《見ない感じ》みたいに変わったスキルも存在するから、万が一を怖れていた。雪ちゃんを晒し者にしたく無かったからこそなのだが、まだ幼い雪ちゃんに対しては結果的に苦しめていたのかも知れないよな。
『そうだったのか?』
『そうなの。雪も、あの時みたいに一緒に………』
あの時と言うのは、夏の肝試しイベントの時だよな。僕とフレイと途中から一緒になった雪ちゃんの3人で走った、怖かったけど楽しかった、あの夏の一時…………
『…………相談されて一緒に特訓』
『そうなのじゃ。ワシと黒と雪とで、雪も一緒に冒険出来る様に特訓したのじゃ。幸いな事にこのホームは広いからのう』
特訓する場所には、困らなかったと言う事か………
『その通りなのじゃ』
白と黒が言うには、雪ちゃんのこの変身は《複写》【コピー】というレアスキルらしい。全てを欺く為のスキルで〈朧〉等のアーツとは違い、姿だけでなくステータスをも欺ける。これには《見ない感じ》も完全に欺かれたからな。触れば分かったのだろうけど、生憎そんな勇気は持ち合わせて無いからな。
そして、もっとも大きな違いは欺くだけでなく《複写》によって変身した物と同じ能力が使える事だろう。簡単に言えば即席の分身とでも言えば分かりやすいのかな。
ただし、この強力なスキルには、当然制限やリスクも有る。制限と言うのは最後に左手(利き手とは逆の手)で触った物にしか《複写》出来ない事と自分のスキルLvよりも強い物への《複写》では《複写》していられる時間が大幅に短縮されるらしい。日常生活を含めて考えると、常に強い物を記憶しておく事が難しい様だ。
そして、リスクと言うのは《複写》解除後30分は次の《複写》が出来ず、その間にHPとMP以外の元になるステータスよりも上昇していたステータス分が減少する。これはマイナス以下になっても適用されるらしい。使い方によっては切り札以上の切り札になるレアスキルの為に非常に重いリスクだな。
さっきのアキラの《複写》は、実際のところ制限時間的にはギリギリだったらしい。僕に見せる為だったとは言え、よくやるよな………従ってアキラを《複写》していた今の雪ちゃんのステータスは、ほぼマイナスを記録しており、かなり厳しい状態になっている。
と言うか………よくこのスキルを覚えさせようと思ったよな。強力なスキルでは有るが、普通のプレイヤーには使いづらい気がする。自分よりも強い物を《複写》するのはリスクが高いので、必然的に自分よりも弱い物への《複写》が増えるだろう。しかし、実際のところは、わざわざ自分よりも弱い物に《複写》する必要は無い様な気がする。
雪ちゃんが進化、と言うよりは成長した事も有り、他にも《憑依》《悪寒》等の幽霊特有のスキルも習得していた。これも白と黒との特訓の賜物なのだろうな。僕達に隠れて特訓していた事には頭が下がる。
《憑依》では、以前に僕が作ったクマのぬいぐるみを媒体に自在に動いて見せてくれた。この《憑依》スキルの対象は人形型だけでなく無機物なら全てが対象になる。まだスキルLvが低い為に大きな物は無理らしいが、今のLvでも50立方cm位なら可能な様だ。
《悪寒》は、ステータス減少の効果が有るスキルで、減少系の《付与魔法》と似たような効果を得られるらしい。僕の《付与術》とは違い、範囲に効果が有る様なので《付与陣》と言った感じだろう。
今までから出来た《浮遊》や壁や地面の通り抜けを含めると十分な戦力になるはずだ。あくまで戦力だけを見るならだが…………
『雪ちゃんも一緒に闘えるのは分かったんだが、雪ちゃんのHPはどうなるんだ?ステータス見ても0のままだよな…………』
『主よ、雪もファミリアじゃ。扱いはワシらと同じなのじゃ』
『いや、ちょっと待って。以前に白から魔獣器の扱いは聞いた事が有るが、普通のファミリアの扱いは聞いてなかったと思うんだが………』
『……………言って無い』
『そうじゃったか?最近は物忘れが酷くてのう。魔獣器以外のファミリアには主達と同じ様にHPが有るのじゃ。これが0になれば、また石に………いやファミリアの卵の状態に戻るのじゃ』
ちなみにファミリアの卵の状態に戻っても時間を掛ければファミリアに戻す事が可能らしい。成長したスキルのLvやステータスはそのままだが、元に戻すには時間が掛かる為、戦闘で見殺しにする主人は少ないだろうな…………
『だから、最初から0の雪ちゃんの場合はどうなるんだ?』
『う~~む、雪はHPは0じゃが攻撃を喰らう事が無いからのう、倒される事は無いと思うのじゃ』
つまりは、特殊過ぎて分からないって事だよな………
確かに雪ちゃんは攻撃を受け流すと言うか、通過させる事が出来る、ほぼ無敵の状態だからな。不要な心配だったかも知れないが。
『……………個人契約が必要』
『黒ちゃん、それってどういう事?』
『おう、忘れるとこだったのじゃ。雪の主人は、今現在はギルド【noir】になっておるのじゃが、冒険の為に街の外へ連れて出る場合は個人と再契約が必要になるのじゃ』
そのルールが有るなら、雪ちゃん自身が【noir】と再契約した時点で、どのみち街の外へ出れなかったって事じゃ無いのか?
〔『主よ、それは野暮と言うものじゃ』〕
急に心話を使って話してきたが、僕自身も思っていた事なのでスルーさせて貰うが。
『それなら私が雪ちゃんと契約するよ。私はファミリア持ちじゃ無いし、確か1人につき1回だけなんだよね?』
『魔獣器を作る以外は、そうなるのかな。本当に良いのか?僕が契約しても良いんだぞ』
元はと言えば僕が連れてきたんだからな、責任は有るだろう。
『大丈夫だよ。雪ちゃんも私で良いかな?』
アキラの質問に、雪ちゃんは嬉しそうに頷く。それと同時にステータスに表示されている主人の名前が【noir】からアキラへと変わっていく。ファミリアの再々契約が行われた瞬間だ。
『アキラ、有り難う。雪、もっともっと頑張るの』
やっぱり素直で可愛いよな。白も見習って欲しいものだな。
『そうだ。アキラ、今SPって余裕有るか?10有ったら良いんだけど』
『生産系が伸びてるから、今は余裕が有るかな。どうかしたの?』
『もし、良かったら《バイリンガル》スキルを取得して、言語選択でケンタウルスを選んでおいて欲しいかな。後悔はしないと思うから』
『???よく分からないけど、取得しとくね』
最初から言葉が通じれば、驚くのも最小限でおさまるだろうな。
さて、色々とトラブルが有ったがアキラの装備製作の続きをする前に《機械製作》の成長からだな。経験値の入らない状態は無駄になるからな。上位の《機械職人》スキルに成長させる。
〔おめでとうございます。ただいまのスキル成長で、シュン様は10個の生産系スキルを職人クラスに成長させる事を達成致しましたので、称号〈工匠〉を贈呈させて頂きます。つきましては、全ての職人クラスの生産系スキルの名称が工匠に変更されます。工匠クラスの生産系スキルでの製作品には今まで以上のボーナスが付きますのでご確認下さい。本当におめでとうございました。以上、運営からお知らせでした〕
new称号
〈工匠〉
多くの生産スキルを学んだ者への称号
取得条件/10個の生産スキルを職人クラスまで成長させる
スキルの成長と共に運営からの音声案内がくる。いつもの連絡と違い、僕だけにしか聞こえて無かったようだな。いまいち理解出来てないんだが、称号の欄には〈工匠〉が増えているし、スキル名の職人の部分が工匠に変わっている。
スキルの成長度合いや経験等は変わって無い。結果的にボーナスが増えるだけの様なので得した気がするな。まぁ、ボーナス内容の箇所が複数の???になっていて《見ない感じ》でも分からないのが気になるところだが、何か作ってみたら違いが分かるよな。ちょっとワクワクしてきたな。
先ずは、扇の【八重桜】を合体させる弓からだ。
【折り畳み式試作ショートボウ】攻撃力70〈特殊効果:可変/音声認識〉〈製作ボーナス:強度上昇・中/重量軽減・中〉
リツの試作弓を参考に、アキラに合わせて製作してみたのだが、形状が長弓とショートボウって言うところ以外に大きな違いは無い…………と思っていたのだが、製作された弓に小さく匠の文字と僕の名前が刻まれている。
当然、僕自身が入れる訳ではないので、自動で刻まれる仕様の様だ。これ、かなり嫌なんですけど…………今まで以上の製作ボーナスってこれなのか?
これはボーナスと言う名前の新手のイジメだと思うぞ。運営さん、そこのところはどう思ってるんですか?1回マジで問い詰めたくなるよな。
『主よ、違うのじゃ。ボーナス内容の1つが開放されておるのじゃ』
白に言われて確認してみると、さっきまでは???ばかりのボーナス内容が1つだけ表示されている。
『増殖?だと………』
増殖と言うボーナスが開放されているが、武器自体のステータスには変化が無い。
『…………倉庫』
倉庫!?おいおい、それってまさか?
黒の言う通りに倉庫の在庫を確認すると、僕が手に持っている【折り畳み式試作ショートボウ】と同じ物が存在していた。鞄を通して取り出してみると、全く同じ弓が右手と左手に存在している。しかも、素材は1セット分しか減っていない。さっき、雪ちゃんの《複写》スキルを見ているだけに、俄には信じれないのだが現実の様だな。
と言う事はだ。多分、工匠ボーナスが何種類有るのかは分からないが、その何種類かのボーナスの中からランダムで選ばれるって事になるのか?増殖の能力だけでも凄いのだが、これクラスのボーナスが他にも有るんだよな。流石にヤバイ気がして、テンションの上昇が止まらない。何か他にも試してみたいよな。
適当に《機械製作》でネジやナット等を作っていく。在庫の補充を兼ねて、ボーナスの確認がしたかったからだ。思っていた通り新たに成長促進と倍化のボーナスが発現した。やはりランダムだったな、何が起こるか分からないって言うのが楽しいな。
成長促進は製作する事によって獲得出来る経験値の上昇らしい。これは製作物に付く効果では無く、製作者自身に付くボーナスの様だ。
倍化は製作物に付くボーナスで、特殊効果と製作ボーナスが2倍になる様だ。属性等の特殊効果によっては、倍になっても意味の無い物も有るのだが、かなり嬉しいボーナスだよな。
かなりの量を作ったが新たに発現したのは、この2種類だった。まぁ、殆んどの製作物に増殖のボーナスが発動したみたいで在庫の量が大変な事になっている。僕が凄いと思って気に入っている増殖なのだが、工匠ボーナスとしては最低クラスなのかも知れないな。
工匠ボーナスで一頻りの時間を楽しんだので、次はいよいよリツとアキラの弓の本番だな。僕がバタバタしている間にリツからメールの返事も着ている。メールには、お任せしますの6文字しか書いてなかったのだが、任された限りは頑張らして貰おうかな。用意していた部品を使って組み立て、微調整、製作ボーナスの選択を行っていく。
普段、製作ボーナスは装備に合わせて僕が選んでいるが、依頼者に頼まれて付ける場合も有る。今回の場合は後者だ。まぁ、ボーナスは素材に依存するので理想通りにいかない場合も有るんだがな。
いつもの事だが、事前に試作しているので2回目は楽だよな。名前はリツから頼まれていた………
【星天弓】攻撃力120〈特殊効果:可変/音声認識〉〈製作ボーナス:強度上昇・中/重量軽減・大/速度上昇・中〉※呪
名前の元ネタは、他のゲームに出てきた弓らしいのだが、あまりゲームをしない僕には分からない事だ。試作品よりも良い素材を使った事と《細工》による後加工のお陰で、威力や見た目もかなり素敵になっているのだが…………気になる点が1点有るよな。多分、祝と見間違えただけだと思うのだが………
『……………良い事だけとは限らない』
はい。調子に乗りました。すいません。思い過ごしでした。心の底辺から謝ります。僕のテンションはマイナスまで急降下だ。
何故、ランダムボーナスの段階で、この可能性に全く気付かなかった事で、数分前テンションが上がりまくっていた僕を恨みたくなるな。
工匠ボーナスによって、新しくもたらされたのは呪。通常、呪系の装備は、隠しステータスによって装備してみるまでは効果が分からない、ただし1度でも装備すればステータスに呪が表示される仕様になっている…………らしいのだが、僕は《見ない感じ》によって呪の存在だけでなく、その効果までが筒抜けになっている。それが幸せかどうかと言うのは別問題なんだがな…………
今回【星天弓】の場合は、攻撃力は2倍になるが装備を外しても1回死ぬまで解けない混乱。
本当に危険極まりないな。
って言うか、僕自身は呪装備を見たの初めてだよな。1回知らずに装備してしまったガイアの話を聞いた事が有るだけだったからな。その時は混乱は無かったみたいだが、ダメージ3倍の効果が有ったらしい。勿論、ダメージ3倍と言うのは与えるダメージではなく、受けるダメージの方だが。
これは性能的には申し分無いのだが、絶対に商品にしてはならない。直接呪われたプレイヤーを見てみたいと言う邪な考えも浮かばなくは無いのだがな。アクアならともかく女の子のリツを実験台には出来ないよな。
『あれっ!?………』
そう言えば、さっき見た製作ボーナスの中に………同じ弓を作り直して、工匠にランクアップした事で新しく付ける事が出来る様になった製作ボーナスを確認する。ちなみに今回作り直した弓は、幸いな事に呪われる事は無かった。
『……やっぱり有ったな』
この効果を付ければ、面白い事が出来るかもな。
装備
武器
【雷光風・魔双銃】攻撃力80〈特殊効果:風雷属性〉
【ソル・ルナ】攻撃力100/攻撃力80〈特殊効果:可変/2弾同時発射/音声認識〉〈製作ボーナス:強度上昇・中〉
【魔氷牙・魔氷希】攻撃力110/攻撃力110〈特殊効果:可変/氷属性/凍結/魔銃/音声認識〉
【白竜Lv54】攻撃力0/回復力194〈特殊効果:身体回復/光属性〉
【黒竜Lv54】攻撃力0/回復力194〈特殊効果:魔力回復/闇属性〉
防具
【ノワールシリーズ】防御力105/魔法防御力40
〈特殊効果+製作ボーナス:超耐火/耐水/回避上昇・大/速度上昇・極大/重量軽減・中/命中+10%/跳躍力+20%/着心地向上〉
アクセサリー
【ダテ眼鏡】防御力5〈特殊効果:なし〉
【ノワールホルスターズ】防御力20〈特殊効果:速度上昇・大〉〈製作ボーナス:武器修復・中〉
【ノワールの証】〈特殊効果:なし〉
天狐族Lv57
《双銃士》Lv75
《魔銃》Lv74《操銃》Lv19《短剣技》Lv24《拳》Lv45《速度強化》Lv98《回避強化》Lv98《魔力回復補助》Lv99《付与術》Lv69《付与銃》Lv74《目で見るんじゃない感じるんだ》Lv21
サブ
《調合工匠》Lv28《鍛冶工匠》Lv50※上限《上級革工匠》Lv6《木工工匠》Lv34《上級鞄工匠》Lv8《細工工匠》Lv42《錬金工匠》Lv39《銃工匠》Lv28《裁縫工匠》Lv15《機械工匠》Lv12《調理師》Lv3《造船》Lv15《家守護神》Lv39《合成》Lv42《楽器製作》Lv5《バイリンガル》Lv2
SP 29
new称号
〈呪われし者〉
呪われた装備を作り、人の運命を変える者への称号
取得条件/呪われた装備を作る
称号
〈もたざる者〉〈トラウマプレゼンター〉〈略奪愛?〉〈大商人〉〈大富豪〉〈摂理への反逆者〉〈初代MVP〉〈黒の職人さん〉〈創造主〉〈やや飼い主〉〈工匠〉〈呪われし者〉




