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OOO ~Original Objective Online~ 称号に振りまわされる者  作者: 1048
第1部 第1章
4/65

バージョンアップ

翌日の昼休み、純がアキラこと水無(みずなし) (あきら)を連れて僕と蒼真の教室にやってきた。


「一応初めまして……になるのかな」

どうやら照れているみたいだな。現実で会う晶はOOOのアキラと殆んど同じだったので、すぐにアキラだと分かった。


あえて、違うところを指摘するなら、髪の色とケモミミとしっぽが無いくらいだか。僕よりも少し背が高くショートヘアが良く似合っているよな。


「そうなるかな。でも、どうしたんだ?急に……」


「駿くんたちは、2週間後にあるバージョンアップの情報もう見た?」

そう言われて、蒼真が慌てて携帯で情報系のサイトをチェックしだす。


「これはマジか?かなり大変な事にならないか?特に最後の2つが……」

何か変わった事でも有るのだろうか?


「一応、公式発表だからね、やっぱり蒼真くんもそう思った?」

僕も蒼真の携帯を見せてもらう。



・湖畔の街【ソルジェンテ】が湖の西に追加

・新緑の街【ヴェール】が森の北に追加

・ギルドの作成可能

・個人工房の作成可能

・ホームにゲート機能追加

・ログインしてから21日目以上のプレイヤーは初期支給品の使用停止

・バージョンアップ後に第1回公式イベント開始



おっ!!街が増えるんだな。初期支給品の方は【布製の服】と【ハンドガン】が1丁だったかな。まぁ、新しく買えば良いかな。少しは、お金にも余裕が出来てきてるからな。


そんな事よりも、やっぱり僕には新しい街の方が魅力的だよな。そう言えば………


「今さらなんだが、最初の街って何て言うんだ?」


「城塞の街【シュバルツランド】。晶、多分、駿は事の重大さが分かってないから、教えてやれ」

確かに分かって無いのだが、蒼真に言われるのは微妙に嫌だな。


「駿くんは《鞄製作》取得してるよね?」

なるほどな。皆が何を言いたいか予測がついたな。


「初日から参加のプレイヤーは、バージョンアップ直後から初期支給品が使えなくなるって事か、それって本当に鞄まで使えなくなるのか?幾ら何でも、流石にそれは無いだろう」


「甘いぞ、駿。いや、待て。真相は実際にログインしてみれば分かるか……」

結局、今日ログインしてみれば全てが分かると言う事で話が纏まり、昼休みは解散になる。


まぁ、どっちにしても早めに準備しておくな越した事は無いだろうな。何しろバージョンアップの期間は中間テスト期間と丸かぶりだからな。



僕がログインしてみると、アクアやアキラの予想通りでNPCの露店では鞄の売り切れが続出している。聞くところによると次回の入荷も未定らしい……


『う~ん………』

運営は相当意地悪のようだな。銃の方は売り切れていないと絶対の自信が有ったが、服が売り切れてなくて本当に良かったよな。


僕は、露店で必要な【ハンドガン】1丁と【冒険者の服】を買って工房へと移動する。露店周辺のプレイヤーの多さに耐えれなかったからだ。



【冒険者の服】防御力10〈特殊効果:なし〉



『うわっ!!』

《革製作》の工房前には、人だかりが出来ている。おいおい、これって露店周辺よりも多いんじゃ無いのか?


多分だが、鞄をプレイヤーから直接買う為なんだよな………


しかし、工房内にいる殆んどが《革製作》の職人の為、鞄を作る事が出来無い。これの為に新しくスキルを取得した者もいるみたいだが、更に多くのプレイヤーに囲まれている。僕の事もバレたら囲まれるのか?


取り敢えずは、一旦この場から逃げた方が良さそうだな………


今日から暫くは《調合》《鍛冶》《錬金》の工房に寄って銃弾の補充と強化に重点を置いた方が良さそうだな。


アキラには、工房の現状と暫くは《革製作》の工房には行かないとメールで伝えておくか。


最初に立ち寄った《調合》の工房で、ネイルさんに何時もの依頼とお金を渡し立ち去ろうとすると………


『シュン君、君は鞄作れたよね?僕も依頼したいのだけど、良いかな?』

もう、ネイルさん達《調合》の職人にもある程度の状況は伝わっているらしいな。


『今の工房の状況で新しい鞄を作るのは難しいんですよ。手持ちに有る、試作に作った鞄なら譲れるんですが………』

あの中で作業するのは勇気がいるからな。


『シュン君、これは、僕が使っている初期の鞄より高性能だぞ』

今は、もっと良いものが作れると伝えて、状況が落ち着いたら良い鞄を作ると約束する。


『シュン君、これは依頼料だ』

おいおい、さっき渡した20,000フォルムが返ってきたぞ。この鞄って、そんなに価値が有るのか?


『ネイルさん、流石にこれは貰いすぎですよ』


『いや、この性能なら適正価格だよ。転売が始まっている鞄は10倍くらいの価格になってるんだから』

えっ!?マジで?


『本当は、揉め事を無くす為にも適正価格で取り引きするべきなんだけどね』

それは僕もそう思うな。あと《鞄製作》の職人は数が少ないからバレないように気をつけてともアドバイスを受けた。


ネイルさんと知り合えた僕は幸運なのかも知れないな。





次は、《鍛冶》の工房だ。初めてログインした直後以来、久しぶりにフレイさんに会えた。


『お久しぶりですね』


『シュン君、久しぶりやね。《鍛冶》は頑張ってるかい』


『すみません。銃弾が作れない《鍛冶》は保留中で、銃弾を作れる《錬金》に切り替えました』

せっかく良くしてくれたのに申し訳無いよな。


『自分、《銃士》やったんか。それはスキル違いやったな』

本当にそうだよ。スキルを取得する時に、もう少し詳しい説明が有っても良いよな。


『それなので《鍛冶》は採掘で使用して、作業を工房の職人に依頼して、鉄塊や銅塊、合金を作って貰ってるんです』


『なら、次からはウチに頼み。お代はまけへんけどエエもんは作るで』


『ええんですか?』

本当に嬉しい言葉だった。フレイさんの関西弁がうつるくらい。製作してくれる事もだが、それ以上にフレイさんとの関係が切れなかった事にだけどな。


『シュン君、関西弁うつっとるで。勿論ええよ』


『では、これでお願いします』

依頼料と素材と一緒に渡す。さっきのお金があるので、余裕で払えた。ネイルさんに感謝だな。


『ところで、シュン君の鞄はオリジナルかい?良かったらウチにも職人さん、紹介して貰われへんやろか』

素材を出す時に鞄を見られたらしいな。流石は関西人だな、目の付け所が違う。


『実は、この鞄は僕が作ってるんです。今は工房に人が多くいるので手持ちの試作品なら渡せますよ』

フレイさんだけに聞こえる声で伝える。


『シュン君自体が職人やったんか。自分いったい幾つ生産系取得しとるんよ。それで、その試作品見せてもろうてかまへん?』

小声で他の人に聞こえないように話してくれる。試作品の鞄をフレイさんに渡す。


『自分凄いな、この鞄露店の売りもんより性能高いで』

自分の製作物を褒められるのは、僕自身を褒められるよりも嬉しいな。努力が認められた気がするから。


『さっきの依頼料は返すわ。この鞄が依頼料や』

そう言って渡したお金を返してくる。さっきも同じような事があって20,000フォルムで渡してるからと説明して、差額の15,000フォルムはフレイさんに返却する。


『自分、本当に気持ちええな。ますます気に入ったわ。じゃあ、その分は依頼を頑張らしてもらうわ』

はっきり言って、フレイさんの方が遥かに気持ち良いと思う。


『出来たらコールするからな』

そう言い残しフレイさんは工房の奥で作業を始めた。





《鍜冶》の工房を後にした僕は《錬金》の工房を目指す予定だったのだが、予定を変えて《革製作》の工房を目指す事にした。


鞄の価格が崩壊して争いが起きているのは、《鞄製作》スキル取得者の1人としては嫌な気分だからな。


移動途中にコールを使って手伝って貰らえる様にアキラにお願いする。さっきのメールを読み終わって、丁度僕にコールしようとしていたところだったらしく。すぐOKの返事をくれた。




『シュンお待たせ』

思ったよりも早い到着だな。急がしてしまったかな?


『来てくれてありがとう。助かるよ』


『お互い様だからね。私は何をしたら良いの?』

本当に良い子だな。


『生産品って1回作ったアイテムなら、素材があればメニューから作れるので、まずはある程度の品質のサンプルを1つ作る。そして、それを大量生産して露店で売ろうと思う。出来るだけ数を作って多くの人に渡るようにしたいんだ。だから1つ分の素材を持って来た人に1つ20,000フォルムで、素材を4つ分持ってくれたら半額で売ろうと思う。それでアキラには、売り子をして欲しいんだ。お礼は僕に出来る範囲で何でもするから』


『うん、分かった。シュンの依頼を請けるよ。その代わり、お礼の方は覚悟しててよ』

アキラに頼んだのは早まったかも知れないな。まぁ、知り合い少ないから仕方ないけどな……


『最初の分の素材はどうするの?』


『手持ち分の素材が、かなり有るからそれを使って、足りなくなったらアクアとジュネに頼もうと思ってる』


『じゃあ、取り敢えずは、露店分稼ぐのが目標?』


『手持ちが42,000フォルムだから3個くらい売れたら露店をレンタルかな』

2人で人混みを掻き分けて工房に入る。外も中もかなりの人になっているな。


『私の手持ちが80,000フォルム有るから、すぐにでも借りれるよ?今の状況下ならすぐに回収できそうだし』


『じゃあ、お願いできるかな?必ず元金は返すから。目標は2時間後に開店。それまでにサンプルを作るから、露店の方はお願いします』

40,000フォルムをアキラに渡して、僕は鞄の製作に取り掛かった。


現在は、午後8時。10時から1時間限定で開店する事を決めて、アキラは露店レンタルの為に神殿に向かう。僕はアクアとジュネにヘルプのメールを入れる。


僕はリザードの合皮を使ってサンプル作りを始める。形は、初期鞄の形状に近い物にするが、持ち易さには拘りが有るけどな。当然、転売は不可にする。転売可にすると混乱を増やすだけだからな。


Lvの低いプレイヤー用にボア製の鞄も作る。高Lvプレイヤーには売らない。って言うか買えないように制限をかける予定だ。


鞣し作業や形状が簡単な為、直ぐに4パターンの鞄を作り上げる事が出来た。出来た鞄こ中から出来の良い2種類をサンプルにしようかな。



【冒険者の鞄】転売不可

〈特殊効果:重量軽減/自動回収・ドロップ素材〉〈製作ボーナス:容量拡張・中〉

ショルダーバッグタイプ


【初心者の鞄】転売不可/プレイ時間15時間以内の者しか買う事が出来ない

〈特殊効果:重量軽減/自動回収・ドロップ素材〉〈製作ボーナス:容量拡張・小〉

ショルダーバッグタイプ



この2つが良いかな。


タイミング良くアキラが露店の場所と準備が出来た事を言いに来たので今出来たばかりのサンプルを渡す。お互いに露店での注意事項を確認して別れる。


『さぁ、ここからが勝負だな』

僕は鞄の複製に入っていく。





露店を始めたとたんに、プレイヤーがかなり集まってきていた。現在は午後9時30分


『本日開店します【冒険者の鞄店】です。冒険者の鞄は、1個、素材1セット持参で20,000フォルム、4セット持参で10,000フォルム。この鞄は転売不可アイテムです。申し訳有りませんが、お金だけの販売は致しません。本日は10時~11時まで限定。明日から1週間限定で8時~10時。サンプルはこちらにご用意してますので品質をご確認下さい。数多くご用意したいと思いますが、数には限りもございますのでご了承下さい』

アキラが店頭で説明していく。素材を持っているプレイヤーは既に列を作っている。その列を仕切るのはアクアだ。


『初心者用鞄、値段は半額、内容は冒険者の鞄とほぼ同じ』

ジュネが初心者の鞄を説明していく。


当然、看板にも大きく書いてある。内容を確認しなおして、街を出るプレイヤーも多く見られる。既に列は20人を越えている様だ。



メニューから全ての素材を鞄に変えていく、スキルLvが低いので多少の失敗は有るが、合計で100個以上は出来ている。


取り敢えず1回納品に行くか。急いで露店の場所を目指す【ローブマント】のフード部分を深く被り顔を隠してから工房を出る。


露店の情報が出回っているのか?工房の周りの人はかなり減ってきているよな。


露店を出している広場には、かなりのプレイヤーがいた。それに露店にはかなりの列が出来ていな。50人は越えているよな。


アキラに近付くと50人から一斉にブーイングを受ける。どうやら割り込みと間違えられたようだな。アキラが鞄を作っている職人だと説明してくれて、やっとブーイングが止んだ。


あんまり酷いと軽くトラウマものだぞ。


『アキラ、予定より少し早いけど開店しよう』

アキラが頷き、


『【冒険者の鞄店】開店します』

お客の上級プレイヤー達は事情が分かっている者が多いようだ。皆、提示している数よりも少し多めに素材を置いていく。凄い勢いで列が捌けていき、多くのプレイヤーにありがとうと言われた。


残り7つのところで列が捌け終わり、本日の閉店時間が過ぎる。


『本日は、ありがとうございました。明日もよろしくお願いします』

明日は素材持って買いに来るからと声をかけて広場から去っていくプレイヤー達。初日でこれなら明日以降が怖いよな。


『アキラ、アクア、ジュネ、ありがとう助かった。今日は本当にお疲れ様。僕は、これから皮を鞣してから少し鞄を作ってログアウトするから、今日は先にログアウトしてくれ。詳しくは、明日昼休み教室で相談したい。依頼料とかは全部終わってからで頼む。おやすみ』

3人に説明してお互いを労う。3人と別れて僕は、すぐに工房に戻った。




工房の周りは、また人だかりが出来ている。僕は中に入り工房で皮の鞣し作業を始める。素材は今日売った分を3倍以上作れるくらい集まっている。初期のプレイヤーが150,000人くらいなので、鞄の絶対数には全然足りないよな。明日、皆に相談しようか。


1時間程度作業を続けて、今日は工房の中でログアウトする。工房の外で絡まれるのは嫌だからな。




翌日の昼休み、教室で4人で弁当を食べていた。


「駿くん達、お弁当の中身同じなんだね?」

アキラの質問に蒼真家の事情と3人分の弁当は僕が作っている事を伝える。その隣で2人は、今日も美味いと言いながら食べていた。まぁ、何時もの事なんだがな。弁当を作らないなら、せめて自分達で説明して欲しいよな。


羨ましそうな瞳で見ていた晶が、


「報酬決めた。お弁当」

と言いだした。


「それは却下だ。お弁当くらいは、報酬関係無しに作るからそれは無しだ」

晶は一瞬かなり沈み、今は喜んでいるようだ。そんなに食べたいなら幾らでも作るぞ。3つ作るのも4つ作るのも変わらないからな。


「じゃあ、明日作ってくるな。それと3人に相談なんだが、人でを増やしたい。テスト期間の3日前までに、鞄をかなりの量を作り上げるには絶対数が全然足りないから」

バージョンアップの6日前までは露店をする。そこから3日間はテスト勉強、その後2日間はテスト期間になる為、今日を含めた1週間しか時間がない。幸い蒼真以外は、勉強の方は問題無いみたいなのでギリギリまで時間が取れて助かったな。


「駿ならそうすると思ったから、ドームとレナに連絡済だ。今日から手伝ってくれる」

流石は幼なじみだな、話しが早くて助かるよ。


「パーティー女の子5人、声かけて有る、大丈夫」

純もありがとう。


「じゃあ、晶は工房で皮の鞣し作業を手伝って。純と蒼真の方は露店を仕切って貰いたい。売り子5人くらいに増やしてどんどん売ろう。それから1人信頼できる人……この中だとドームが良いかな?素材と鞄の運搬をして欲しい。昨日試した結果、作るだけなら1時間で1,500個くらいは作れると思う。だから1日3,000個くらいかな?土日とか頑張っても60,000個くらいが限界だと思う。他にも職人はいるし、市販品を買ったプレイヤー達もいるから結構な数は行き渡ると思う。今出来ているストックが500個くらい、200個売れたら素材を運搬してきて欲しい」

と大幅な構成を告げる、3人と他にも細かく相談して昼休みは解散した。





それから平日の4日間は地獄のような忙しさだった。かなり情報が知れ渡っている為、製造が追い付いていないのだ。


本当に申し訳ない事だが、毎日品切れで終了している。買えない人達からは不満が出ているが、迷惑行為やマナーの悪い人達には売り子さんをしてくれている仲間達が絶対に売らないと公言しているので、まだ争い事は起きていない。


一部のプレイヤー達は僕の外見から【黒の職人さん】と呼ばれているらしい。皆のお陰で素性は内緒になっているのが有り難いな。


作っては売り、作っては売りの繰返しで、アキラも僕も《革製作》は既にカンストして、更には進化させた《革職人》も既にLv30を越えている。僕に至っては《鞄製作》も《鞄職人》に進化済である。


お互いスキルが進化した事でかなりの効率化が出来た。製造量も倍以上になっていて、売った鞄も既に20,000個を越えているが、まだまだ列が途切れる事がない。素材はストック分だけで40,000個は作れる状態にある。露店も倍の大きさで同時に3ヵ所で売れるのモノを借りなおした。


売り上げの方は既に3億フォルムを越えている。その為、比較的に大きなホームも買っている。鞄だけでは在庫を保管できなくなったからだ。ついでに倉庫も増設して有る。


バージョンアップ後には各種工房設備と店舗も増設予定だ。手伝ってくれているアキラ以外の人には報酬を支払ってある。1人に10,000,000フォルム、最初は皆断っていたが売り上げを話して、半ば強引に受け取って貰っている。


二番煎じで同じような鞄を作って売り始めたプレイヤーも出始めたが、どれも品質と効率が悪く、あまり売れていないみたいだ。まぁ、鞄が無くなるよりは遥かにマシなので、それなりの数は売れているみたいだけどな。



今は明日以降の、分かり易く言えば土日の為に、アキラと鞄を作り続けている。


ちなみに、アキラの報酬は、バージョンアップ後に2人で〈工房〉兼〈店舗〉兼〈ギルド〉の開設をすると言う事になっている。僕としては寧ろ大歓迎だったので断る理由も無かったんだけどな。



土日は、今日まで以上に忙しくなると言うのが皆の予測だ。買いたくても時間の合わなかったプレイヤー達もいるからだ。その為、明日と明後日は午前中2時間、午後から4時間、露店を開く予定にしているので、かなりの量の仕込みをしている。


取り敢えず、明日は学校も休みだし、テスト前と言う事でアキラの部活も無いので10,000個のストックを目指している。メニューから鞄は作れるが、鞣し作業は手作業なので2人で一生懸命頑張っている。午前1時を過ぎたところでお互いに限界が来たようだな。目標には若干届かなかったが、かなりストックできたな。


『アキラ、お疲れ様。今日はもう上がろうか』


『そだね。じゃあ、おやすみ』


『うん、おやすみ』

そう言って2人でログアウトする。



翌日は午前10時の開店の為、早めの8時にログインする。工房を目指す途中に広場に寄ると既に列が出来ているみたいだ。今日も修羅場の予感がしてくる。時間いっぱい鞄を仕込もうかな。。


『おはよう』

既にアキラがいた。早くないかい?僕も人の事は言えないが……


『おはようアキラ、早いな』


『早く目が覚めたからね。でも私もさっきログインしたとこだよ』

そのわりには、鞣し作業を終えたリザードの皮が沢山ある。


『シュン今日も頑張ろう』

例の如く、2人で鞣し作業、合皮作業を進める。1時間くらいで……


『開店早めていいか?』

とアクアから連絡が入り、アキラにも確認して開店を早める事に。アクアが言うには既に広場は地獄だそうだ。それを聞いた僕らは、作業のピッチを1段階上げた。


トラブルが起きたのは閉店間際の午後5時過ぎ。閉店間際と言う事も有り、僕らも久しぶりに露店で売り子をしていた時だった。



一部のプレイヤーが、


『なぜ列が終わるまで、鞄を売らない?こっちは何時間待たされたと思うんだ』

とクレームをつけだしたのだ。当然、今日も作った在庫は殆ど売れているし、閉店後には工房で製作作業が待っている。


『【冒険者の鞄】は、プレイヤー製作の品ですので在庫には限りがございます。誠に申し訳ございませんが、明日またお越し下さい』


『ふざけるな』

僕達の対応が気に入らなかったのか、周りの無関係なプレイヤーを巻き込んで暴れ始めた。


『おい、やめろ、無関係な客を巻き込むな。そこの5人、やるんなら僕が相手をしてやる。勝てれば試作品の鞄をやるぞ』

1対5のPVPの申請をする。これでは、まるで|プレイヤーVSパーティー《PVP》だな。


まぁ、こちらには勝つつもりは全くないが。仲間内にメールでこの後、僕がする行動内容等を送る。手出し無用。客の安全を優先。と最後に記して。


『やってやる』

5人は意気込んで参戦して来る。


一瞬で隔離された空間が出来る……




PVP Go fight!!


PVPが始まったのだが、相手の5人はあいつ《銃士》だよと笑っている。


僕はその隙に〈速度上昇〉〈攻撃力上昇〉の《付与魔法》を使って、1番最初に暴れ始めた大剣を持ったプレイヤーに接近する。そして………一撃〈零距離射撃〉と〈急所撃ち〉を同時に発動する。大剣を持ったプレイヤーが一瞬で吹き飛び、頭上に戦闘不能と表示されていた。


『『『『『はっ!?』』』』』

残りの4人も、見守っていた客達も何が起こったか分からないと言った表情だ。予め、僕から説明を受けていた仲間達だけは、納得は出来なくても内容は分かっていたけどな。


『僕は、これ以上攻撃をしない。後は好きにしてくれて良いぞ』

そう言いって4丁の銃を地面に置く。


残りの4人は、それで皆我に返ったようだ。4人は一斉にアーツを僕目掛けて発動する。勿論、耐えきれる力など有る訳もない………


You lost!!




隔離された空間から順番に戻され行く……


『これが約束の賞品だ。持っていけ』

5個の試作品もとい不良品の鞄を投げ渡す。



【冒険者の鞄】転売不可・1ヶ月着脱不能

〈特殊効果:自動回収・ドロップ素材〉〈製作ボーナス:容量拡張・中〉

ショルダーバッグタイプ



『くっ!!弱いヤツは最初からそうしてろ』

鞄を受け取り、逃げるように去って行く。捨て台詞とか初めて聞いたな。ちょっと面白いな。



『皆さん、大変ご迷惑をお掛けしました。当【冒険者の鞄店】は、明日が営業最終日です。素材も充分に集まりました。今から、かなりの量を製作させて頂きます。なお明日は、今までご購入頂きましたお客様には申し訳ございませんが、お金のみでの販売にさせて頂きます。明日の営業は午後1時からになります。明日のご来店も心よりお待ちしております』

大声で広場の多くの人に伝える。その裏では仲間内にホームに来て、全部話すからとメールを送っていた。




ホームには、既に店舗を手伝ってくれていた10人がいた。


『お待たせしました。それと今日は大人げない行為をしてしまった。すみませんでした。それで、何から聞きたい?』

そう言い質問が出るのを待つ。


『じゃあ、俺が代表して聞くぞ』

アクアが目線で皆に了承をとっていく。


『取り敢えず2つ、1つは何故、鞄を渡したか?もう1つは、あのアーツはなんだ?』

皆がうんうんと頷いている。やっぱりアーツは気になるよね。


『鞄の件だが、あれは呪いのアイテムみたいな物だ。実際に呪われては無いんだけど、重量軽減の効果も付いてないし、1ヶ月着脱不能が付いている』

皆、唖然としている。


『1番聞きたいだろうアーツの件だが、あれは〈零距離射撃〉と〈急所撃ち〉の同時発動なんだ………』

正式稼働の初日にあった事を全て話していく、偶々覚えたアーツの性能や死んでろくでもない称号を経た事も全て話した。


これがレクトパスを道連れにしたアーツで有る事も……


『まぁ、単純に【デルタシーク】と【銃弾】の攻撃力40に〈零距離射撃〉の10倍と〈急所撃ち〉の1.5倍と《付与魔法》〈攻撃力上昇〉の30%アップに多分クリティカルが出てるから……1,560くらいダメージが出てると思う。以上です』

と話しを終わる。



暫く続いていた沈黙をアクアが破る。


『シュン、本気でやれば全員倒せたんじゃないか?』


『無理無理、あれは不意討ちか魔物相手にしか通じないぞ』

そもそも、あの原因を作ったプレイヤー以外と戦う気が全く無かったからな。


全員、呪いの鞄の刑に処す事が出来たしな。


『それと、このホームなんだけど、バージョンアップ終わったら〈ギルド〉兼〈工房〉兼〈店舗〉兼〈倉庫〉にします。昨日、このホーム近くの5区画買いました。アキラと一緒に初心者から生産者まで【全てを支援するギルド】をやる事になりました。ギルド名は未定、募集中』


『それと追加報酬でお金渡そうと思ったけど、皆受け取らなそうだから、2人でプレゼントを用意しました。鞄を作りまくったお陰でスキルも進化したので、性能の良い鞄を皆の好みで作りました。新しく容量拡張・大と透明化機能が追加されてるから、使って試してみてね』

アキラ以外は、誰も何も言わなくなった。


『規格外、過ぎる』

ジュネに突っ込まれた。誠にもって不本意だ。


『まぁ、最終日も頑張ろう。皆、お願いします』


最終日は忙しいだけで大きな問題はなかった。最終的に90,000個以上の鞄が売れて、所持金が15億以上になっていた。確かに規格外かもな…………







装備

武器

【デルタシーク】攻撃力30〈特殊効果:なし〉×2丁

【銃弾Lv2】攻撃力+10〈特殊効果:なし〉

【ハンドガン】攻撃力15〈特殊効果:なし〉×2丁

【銃弾Lv1】攻撃力+5〈特殊効果:なし〉

防具

【ゴーグル】防御力3〈特殊効果:命中補正・微〉

【レザーブレスト】防御力15〈特殊効果:なし〉

【冒険者の服】防御力10〈特殊効果:なし〉

【レザーバングル】防御力8〈特殊効果:なし〉

【レザーブーツ】防御力5〈特殊効果:なし〉

【ローブマント】防御力10〈特殊効果:なし〉

アクセサリー

【ウルフダブルホルスター】防御力5〈特殊効果:速度上昇・微〉〈製作ボーナス:リロード短縮・小〉

【左狼脚ホルスター】防御力2〈特殊効果:回避上昇・微〉〈製作ボーナス:リロード短縮・小〉

【右狼脚ホルスター】防御力2〈特殊効果:回避上昇・微〉〈製作ボーナス:リロード短縮・小〉



《銃士》Lv38

《短銃》Lv43《速度強化》Lv28《回避強化》Lv26《風魔法》Lv31《魔力回復補助》Lv30《付与魔法》Lv29《鞄職人》Lv38《錬金》Lv9《探索》Lv39《家事》Lv22


サブ

《調合》Lv8《鍛冶》Lv6《革職人》Lv32


SP 43



称号

〈もたざる者〉〈改めてトラウマを得た者〉〈略奪愛?〉


new称号

〈大商人〉

商売で1億フォルム稼いだ者への称号

取得条件/商売で1億フォルム稼ぐ


〈大富豪〉

10億フォルムを手にした者への称号

取得条件/10億フォルムを手にする

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