第3回公式イベント 3
ヒナタ達の出番まで、そんなに時間が残ってないからな。取り敢えず、今からでも出来るのは《機械製作》Lv上げだな。使ってみて便利だったので造船所と船のゲートにも音声認識装置を付与していく。タッチパネルの操作が要らないのは本当に便利だからな。
それと、メールでギルドメンバー全員に音声認識装置の件を連絡して………そうだな。ガイアやアクア達にも安く売り込もうかな。生産系の店舗も運営している為、ホームを持っている知り合いは多い。
良い小銭稼ぎにはなるだろう。それに、音声認識装置の付与はスキルLv上げ的にも美味しいからな。なにしろ、銃に付与した分を含めて4つでLvが2も上がってるからな。
誰かに先を越されるくらいなら、その前に美味しく頂きたいところだな。むしろ、こっちの方がメインって感じかな。お金の方は余ってるからな…………
『主よ、そんな事よりもじゃ。成長限界迄到達しているスキルが有るのじゃ』
『えっ!?』
それは、気付かなかったな。確かに《双銃》と《料理》が上限まで成長している。《双銃》はメインスキルだから、《機械製作》をする前に進化させておくか。
えっ~と………何々、《料理》は《調理師》に進化出来るのか、これは全く問題が無いな。進化先も1つしかないのでサクッと進化させる。
次は《双銃》なのだが、進化先のスキル名が《???》になっていて情報が見えない。少し困ったよな。派生先や進化先が他に無いので《???》進化させるのは決定しているのだが、事前に分からないのが少し怖い。
『えぇ~い、成るがままよ………』
僕は《???》への進化を選択する。
進化して得られたスキルは《操銃》?…………読みは同じなのに漢字だけが変わったのか、変換のミスって事はないだろうけど…………文字だけを見るなら銃を操るスキル?《見破》で見ても大した差が無いような気がするよな。それとも、何か変わった能力でも有るんだろうか?
まぁ、今まで通り銃の2丁持ちは出来るみたいだから問題無いんだけど。きっとスキルLvが上がってアーツを覚えたりすれば判明するよな。
『………黒も新しいスキル』
『おっ!!そうなのか、黒も《吸収》出来るようになったんだな、これは便利になったな』
これで戦略の幅が広がるな、魔法を使う魔物も怖く無くないな。
『…………違う。《相殺》黒専用』
『えっ!?白と同じで《吸収》じゃないのか?』
最初に覚えたスキルが《探索》で同じだったので今回も同じだと思ってたんだが………黒専用って事はユニークスキルになるのかな?
『………黒と白は違う。一緒にするのは失礼』
『うっ!!本当そうだよな。黒ごめんな』
色が違うだけで同じ形状だったからな。いつの間にか一緒にしてたんだな………性格も全く違うのにも関わらず、確かに失礼だったかもな。
『………次、気を付けて』
『分かった。ありがとな。それで《相殺》はどう言うスキルのなるんだ?』
黒が言う《相殺》スキルの能力は、相手が発動した魔法の消費MPの2倍を消費して魔法を消滅させる事が出来るらしい。感覚的にはシリーズボーナス:魔反の劣化版って感じだな。しかも、思っていた通り【黒竜】固有のユニークスキルらしい。
………って言うか、この場合は魔反の性能の方が凄すぎるよな。
かなり特殊な能力の様だからな。取得出来るプレイヤーが多くいたら、魔法を使うプレイヤーは確実に減るんだろうな。まぁ、消費MPが多いので使い勝手は悪いんだがな。黒に固有のユニークスキルが有るって事は、白にも有るのかな?
あっ!!また白と黒を一緒にしてるよな。慣れってのは怖いな。これは、早く直さなきゃダメだな。
しかし、今は………
『主よ、《機械製作》じゃが、適当なアイテムに音声認識装置を付けていけばLvアップも早いのではないかの』
そう。それが優先だ。鞄を改良する為に《機械製作》の成長が必要だ。
『なるほどな………それも有りかも知れないよな』
適当なアイテムでLv上げが出来るなら、浮遊装置の製作、更にはスキル進化が格段に早くなるよな。
事前に音声認識装置を付けたアイテムを用意しておけば、喋るだけで回復アイテム等が使える事になる。これが有れば緊急時に一手間が省ける。なかなか良い案じゃないか、白。
『…………ちょっと危険?』
『黒よ、どこが危険なのじゃ?』
僕も気になったのだが、白の方が反応が早かったな。だが、音声認識装置に危険性って有るのかな?
『…………音声認識が入力だから?』
うん!?音声認識が入力だから?って、どう言う意味だ?
『なるほどのう。そう言う事じゃったか。流石は、黒じゃ………主よ、音声認識装置は音声に反応するだけ、誰でも使える可能性が有るのじゃ』
誰でも使える可能性…………どう言う事だ?それって良い事だろ便利で、別に悪い事では無いんじゃないのかな。僕が考え込んでいると………
『…………今日の主、勘が鈍い、鈍感?』
久しぶりに言われたが………僕は、そんなに鈍いんだろうか?どうやら黒は、まだちょっと機嫌が悪いのかな。
『…………盗まれる?可能性が有る』
『なるほど、そう言う事か。確かにそれは不味いよな』
勿論、黒が言っている盗まれる可能性と言うのは、実際に音声認識装置を付けたアイテムがスリや盗難等な遇う可能性の事では無くて、音声入力を使って他人にアイテムが使われる可能性の事だ。
まぁ、他のプレイヤーが音声でアイテムを使える事を知るはずも無いのだが、勝手にアイテムを使われる可能性が有るのは不味い。偶々、偶然で反応してしまう事も有るからな。
特に僕の今までの出来事を考えると…………な。その確率は格段に跳ね上がる事だろう。
現状は、アイテムに音声認識装置を付ける事は諦めるか。今後改善する方法が出てくる事に期待だな。その為にも、時間一杯まで《機械製作》で各種ギアを作り続けた。
『アキラ、お待たせ。それと、場所取りありがとな』
アキラもヒナタ達の応援に行く予定だったので、場所取りを頼んでいた。ちなみに、アキラだけに頼んでいる訳では無くて、ギルドメンバーで持ち回りで場所取りをする予定になっている。今回が偶々アキラの番だっただけだ。
『うん。でも、あまり良い場所じゃ無くてゴメンね』
『この人数だからな。場所取れてるだけ凄いぞ。ありがとな』
広場に特設されている巨大モニターの周辺は、既に人、人、人で埋まっていた。本当に場所が取れているだけ凄いと思う。
ちなみに、モニターは広場の東西南北に1ヶ所ずつ、計4ヶ所設置されており。複数の競技が好きなように楽しめる用になっている。
『えっと、ヒナタとカゲロウが出る競技は採取系の棒倒しで、フレイが採掘系の牙戦だったよな。ヒナタ達の棒倒しは、ともかくフレイの牙戦は騎馬が牙になっているのが気になるな。確か個人戦だったし…………』
ヒナタ達の方が早く始まるのだが、棒倒しの競技中に時間差でフレイの牙戦も始まる。
『う~ん。そうでもないみたいだよ、アレ見てみて』
アキラが指差す方向には、ルールと参加者の名前が掲載されている掲示板が有った。
参加者は結構多く、やはりと言うか生産系のプレイヤーが目立っている。オークション参加組もちらほら見受けられる。知り合いの中では【カーペントリ】のトウリョウ達も参加しているみたいだ。
『………あぁ、そうみたいだな』
確かに、自然素材が採取出来る競技には違いないが………ようやくペアの理由が分かった。
棒倒しルール
2人1組で巨大な大木を2人用のノコギリを使用して斬り倒すスピード競技です
2人用のノコギリは必ず持った状態で行動して下さい。ノコギリを手から離すと失格にります
木を切る行為以外には魔法の使用可能です
報酬は順位報酬以外にも、特別報酬としてイベント中に獲得した自然素材が贈られます
持ち手が両端に有る2人用のノコギリを使うからペア競技なんだな。あのノコギリってテレビでも見たこと有るが、林業用のかなり職人仕様じゃなかったか?木を切るのに向いているなら採取用にフレイに頼んで作って貰おうかな。
あのノコギリで2人の呼吸を合わせるのは難しそうだな。まぁ、怪力のプレイヤーなら1人でも使えるかも知れないが、今回のルール上は不可能だ。双子で有り、なおかつ息の有ったヒナタとカゲロウには向いてそうな競技だと思う。
子供の頃に公園の砂場で遊んだ山くずし?だったかなに近い競技内容だな。まぁ、勝利条件だけは真逆だがな。
『でも、あのエリアは悪意が無いか?』
『やっぱり、シュンもそう思った?』
競技内容だけなら普通なのだが、ムカデ競争同様でエリアが異常だと思う。各チーム毎に大きな砂山が用意されており、その頂上に目標となる大木が有る…………んだが、その大木の周りにはサソリ型やトカゲ型のMOBが複数徘徊している。
イベント用の魔物なのかな?今までに見た事が無い。これは、対処に困りそうだな。初見の魔物の意外な一撃で一気にピンチになる事は、これまでにも多々ある。
だが、そんな事よりも、この競技のポイントは魔法の使い処かも知れないな。木を切る事に魔法は使えないと言うルールだが、逆に言うとそれ以外には魔法が使える。魔物相手や、それと………
『うん。だが、そろそろ始まるようだぞ。後は2人を信じて待つとしようか』
『ヒナタ、大丈夫か?多分ギルマス達も見てるけど緊張してないか?』
弟の俺から見ると若干緊張している様に見えるぞ。
『今、シュンさんの事は関係ないでしょ。それにカゲロウの方こそ、大丈夫なの?』
あれ、緊張をほぐそうとしたんだが逆効果だったか?
『俺は平気だ。それで作戦はどうする?』
現在は専用のエリアに転送されて、各チーム毎に別れてのブリーフィングタイムになっている。基本的には、どうやって目標の大木に辿り着くかと魔物に邪魔されず早く木を切るかの2点がポイントになるだろう。
『う~ん、そうだね。最初は様子見しようかなと思ってる。多分あの砂山が1番ポイントになると思うから、焦ったら………ね。どう?』
俺は開幕ダッシュの方が楽しいと思うけど、ヒナタの考えも分からなくは無い………か。
確かに、アレは歩き難そうだ。MOBにしても行動パターンが読めないのに無理するのは悪手だな。まず、ここは慎重な姉の意見を尊重しようか。
『俺も、それで良いぞ。後衛は任せた、前衛は任せろ』
素早く作戦を決めた俺達は、イベントの開始を待つ。
〔只今より、棒倒しを開始します。皆様、準備は宜しいですか?それでは3・2・1・レディーゴー!!〕
公式のアナウンスが会場全体、そしてモニターの周辺に響き渡る、イベントの開始だ。
『ヒナタ達、何か有ったのかな?全く動かないみたいだけど………』
『………多分、様子を見てるんだろうな。砂山が危険と感じたんじゃないかな』
他のチームは一斉に砂山へと向かっているのだが、ヒナタとカゲロウ、その他にも数チームだけは左右を見渡して他のチームを見ているようだ。
いきなり、このエリアを見せられたら僕もそうするだろうな。現に突撃を試みた一部のプレイヤー達が早々にリタイアしている。一体何を考えてブリーフィングタイムを過ごしたんだろうな、冷静さが欠けている。
ヒナタと2人で他のチームを見ていると、目立つのは砂山の流砂に足をとられて進めなくなるプレイヤーや魔物の対処に困惑しているプレイヤーが目立っている。それと……
『驚いたな………』
『うん。あの大木も魔物なんだね』
運良く砂山の上部付近に辿り着いたプレイヤーが、砂山から延びてきた大木の根に攻撃されて砂の中に引きづり込まれリタイアに追い込まれている。
『どうする?そろそろ行かないと勝負にならないぞ』
『大丈夫。私が《流水魔法》で流砂を濡らし固めて道を作るから。カゲロウは援護して』
冷静に対処方を考えてたんだな。移動に魔法を使うのか、俺には考え付かなかったぞ。だったら、俺は魔物狩りとヒナタの援護担当だな。
『任せておけ』
俺は。装備していた剣と盾を鞄しまい。右手にフレイ製の【ハルバード】を装備する。普段ギルマス達との6人パーティーなら盾役に徹しているが、ケイトとヒナタとの3人パーティーなら、これでも前衛なんだ。Lvは高くないが状況に応じて複数種の武器も使えるようになっている。
俺は。ヒナタが《流水魔法》で固めた道を先行して、道の周辺にいる魔物を蹴散らして行く。足場さえ安定すれば魔物自体は大した強さでも無い、気を付けるのは………
『〈スラッシュ〉』
サソリ型のMOBスコルピの遠目からの毒攻撃くらいだ。これは、槍の遠距離アーツで対処可能だがな。
『ヒナタ、今の内だ。頂上まで一気に行くぞ』
『分かった。〈ウォータスライド〉』
ヒナタが放った《流水魔法》は道を作る為に固めた場所以外を流水で押し流していく。スコルピやトカゲ型のMOBサンドリザードを巻き込んで。威力的に倒す事は出来ていないが、魔物達は砂山の下まで流されているので時間稼ぎには効果的だろう。
『それ凄いぞ』
『カゲロウ、足元』
『うぉっと、危ね。サンキュ』
直前まで俺がいた場所には、大木の根が突き出て木で出来た生け花の様になっている。これは、ちょっとの油断も出来ないぞ。
『〈アイスブレイク〉足元凍らせたから今の内に切ろ』
いつの間に《氷魔法》を取得してたんだ?俺は助かったから文句は無いが、ブリーフィングの時に教えて欲しかったぞ。
『分かった。行くぞ』
『あそこ見て、シュン。ヒナタ達が頂上まで辿り着いたよ。1番じゃないかな』
『いや、あそこ45番のチーム………アレは、ジュネのギルドメンバー達かな?既に切り始めて終わりそうだぞ』
モニターの右上部分に写し出されているチームを指差す。リタイヤしたチームが増えて、残っているチームの映像が徐々に拡大されている。
『あの攻略方法は、ジュネの仲間っぽいね』
『そうだな』
あのチームは開始直後に《氷魔法》で砂山全体+魔物を全て凍らせるのと同時に《土魔法》で岩の階段を作って登っている。ダントツで1位候補筆頭だろうな。しかし、まだ上位は十分狙えるぞ。頑張れヒナタ、カゲロウ。
『切り始めるぞ。ヒナタは俺の背後を、俺はヒナタの背後を確認しながら切るぞ』
背後からの不意討ちだけは御免願いたい。
『分かった。せ~の!!』
ヒナタの掛け声でノコギリを引き始めるが、メチャクチャ固い。本当に木なのか?と思ってしまう。
タイミングを合わせて切り進めるが、鞄の中には木ぐずや木片ばかりがドロップされている。
『ギルマスの《付与術》が欲しくなるな』
やっぱり結構有り難かったんだな、アレ。
『《付与術》………あっ!!そうか。〈アイスブレイク〉』
ヒナタが急に大木の幹を凍らせ始めた。
『どうした?』
『この魔法は凍らせると同時に強度の減少効果も有るから』
なるほどな、疑似的な《付与術》って事か。おっ!!確かに刃が進むぞ、これはかなりナイスだぞ。
暫く切り進めていたのだが、残り3分の1位に差し掛かった時に下まで流されていた魔物達が一斉に群れをなして襲い掛かって来た。やっぱり先に倒しておけば良かったか?
大木から一旦離れてアーツや通常攻撃で応戦するのだが、ヒナタの方が狙われている。俺もレジーアさんに貰った〈請け負う〉で大半を庇っているのだが………防戦一方で魔法の詠唱が追い付いてない。
『このままでは埒が明かないぞ』
俺以上にヒナタの方が限界が近そうだ。
『でも…………』
普段は冷静で頼りになる姉なんだが、パニックになると一転してダメダメになるんだよな。
とは言っても、急に打開策が思い付く訳でも無いしな。それならいっその事………
『ヒナタ、回復魔法だけ詠唱破棄で唱えてろ。一気に斬り倒すぞ』
これは、はっきり言って賭けだ。今の状況なら逃げ切る方に賭けた方が幾分かマシだろう。俺は、ヒナタの周りの魔物に〈スラッシュ〉を繰り出して弾き飛ばしながら、ノコギリを持つ手に力を込める。
『………うん。分かった』
俺達は、全力で大木に向かって駆け出した。
『あっ!!あ~~ぁ。ヒナタ達リタイアになっちゃった』
もう少しで切り倒せそうな時に、スコルピから受けていた毒のスリップダメージで回復が追い付かず形勢が逆転し、一気にカゲロウがリタイアに追い込まれてしまった。
『うん、惜しかったな。もう少しだったんだがな』
本当にもう少しだったと思う、何かが少しだけ足りなかったんだろうな。
『でも、出会った頃に比べると成長したよね』
出会いはストーキング行為だったからな。それから考えると頑張ってるんだけどな。それに、あと少し何か………ふとした切っ掛けでも有れば、もう一皮剥ける気がする。
『そうだよな。なぁ、アキラ、ギルドの事なんだが、やっぱりフレイにもギルドマスターになって貰って、新規のプレイヤーからメンバー増やそうか?』
フレイも既に《大商人》の称号は獲得済みなので条件的には、既に条件だけはクリアしている。
『急にどうしたの?』
『うん。僕もアキラと【noir】作って、フレイに加入して貰って、カゲロウ達3人の後輩の面倒を見たりして成長出来たと思うんだよな。そろそろ、カゲロウ達も後輩を育てても良い頃かなって思ってな』
ギルドの先輩、マスター………いや、違うな。友達として手助けしてあげたい。人に教える事で成長出来る事も有るはずだ。
もっと言えば、今回のリタイアは考える経験の少なさが大きな理由だと思う。突発的な出来事、アクシデントに弱いからだと思った。つまり、その原因の一端は僕らに有ると思うんだよな。
『………なるほど、それも有りかな。イベント後に皆と相談してからになると思うけど、私は賛成かな』
アキラにも何か思うところは有ったようだな。
『まぁ、そうだよな。僕は先にフレイの応援の場所取りに行くから、ヒナタ達の事はお願い』
いくら、僕達がギルドマスターと言ってもこの議題は勝手に決める訳にはいかないよな。今は、既に始まっているフレイの応援が優先だ。
僕達は、牙戦を途中から観戦したのでフレイが何処にいたのかすら確認出来なかった。それで牙戦終わりのフレイを探して【noir】のホームに連れてきた。
既に、ルールは確認済みなのだが、アレは牙戦と言うよりも牙狩りって方が正しい気がするよな。どのみち実際に参加した当人に聞くのが早いんだろうな。
『途中からしか見れなかったが、フレイはイベントどうだったんだ?それと応援遅れてごめんな』
『応援は、まぁ、しゃ~ないわな。イベントなんやけど…………
牙戦が、こない難儀やったとはな。競技が始まる前は素材狩り放題の単純なルールだと思ってたんやけどな。蓋を開けてみれば全然想像と違ったんや。ウチが転送されたエリアは森林エリアやってんけど、これがまた視界が悪くて、魔物の発見がしにくくて、かなり辛かったわ。
牙戦ルール
制限時間3時間以内で牙を持つ魔物を狩れるだけ狩って下さい。
牙を持つ魔物には、それぞれポイントが与えられています。
最終的にポイントが多いプレイヤー上位20名に報酬が出ます。
この競技も特別報酬としてイベント中に牙を持つ魔物から獲得した素材をプレゼント致します。
辛かった理由は、大きく別けて2つ有るんやけどなな。
1つが牙を持つ魔物の数が他の魔物よりも圧倒的に少ない事や、そやから探すのに苦労したんやわ。普通イベントなら専用の魔物を、ぎょうさん用意しといてもええんとちゃうか、ウチみたいに《探索》系のスキル持ってないプレイヤーには本当に辛いで………
もう1つは牙を持つ魔物が思ってたよりも強い癖にポイントが低い事やな。
最初に出会った象系のMOBのブルーエレファントは、皮膚が硬くて刀が通らへんねん。武器を三節棍に変えて打撃系のアーツ連発で倒したんやが、獲得したポイントは、あんなデカイ体しとる癖に2ポイントやし、期待していたドロップ素材も手に入らんかったし踏んだり蹴ったりやったな。
2番目に出会ったトラ系のMOBのサーベルタイガーは素早くて、なかなか攻撃が当たらなかったんや。三節棍に刀のアーツも絡めてなんとか倒したんやけどな。これもポイントが1ポイントと低かったんやわ。このポイントの基準はどないなっとるか知りたいわ。
1時間戦って牙を持つ魔物に2匹にしか会えないとか無いで。その時点で普通のMOBは、もう軽く3桁は倒しとるんやけどな。普通のMOBからはドロップ貰えないんが痛いわ、これってウチの運が悪いんか?シュン、この運の悪さは自分並ちゃうんか?でもシュンはまだマシや、いつも最後に美味しい所を持って行くからな。
まぁ、いつまでも心の中で愚痴が言うとっても仕方ないから、時間いっぱい楽しんだれと思ってLv上げメインに切り替えたんや。
そして、ウチは2振りの刀を握り直し魔物の方へ駆け、刀の範囲アーツ〈風刃〉で雑魚MOBを蹴散らしていったんや。
一体それから何体のMOB狩ったか分からんわ。お陰でLvもぎょうさん上がったで。3匹目の牙を持つ魔物、竜系のMOBロックドラゴンに出会ったのはサーベルタイガーに出会ってから1時間ぐらい後やったんと違うか?そこからはお気楽モードから一転して死闘や。
ロックドラゴンのブレスや爪を紙一重で回避して刀の連続攻撃で削り捲って、とどめとして全力で放った〈抜刀酒咲き〉を、しれっと尻尾で弾き返してくるから、驚いてたらブレスをモロに喰らってもうてな。回復アイテムも使いきってたからな、そうなると足掻く手段も無いし…………結果はアウトやったんやわ。
まぁ、ロックドラゴンが岩系のMOBでも有ったから、連続攻撃中に素材だけは採掘出来たんや。手に入ったんは竜の素材、ウチ待望の竜の素材やで。爪に牙に鱗、数は多くないけど貴重やわ。
まぁ、そう言うことや。最後の最後は若干マシやったわ。
…………と言う風な具合や。結局は最後まで残れずに途中リタイアしたんやけどな。素材取り放題に釣られてもうたな。世の中、そう簡単に上手い話は無いわな。まぁ、今回のイベントもそれなりに楽しめたんやけどな』
フレイは、自分のプレイ内容を身振り手振りに戦利品を加えて教えてくれた。戦闘の部分等で若干話を盛ってそうだが、聞いていた僕らも話に引き込まれてたからな。これは、もう1つの物語って感じだよな、そして話してくれたフレイのクオリティーも高かったんだと思う。
それにしても、今回のイベントは1つとしてまともな競技が無い気がするんだが………こうなると明日に控えているアキラとケイトの出場競技も厳しい内容かも知れないな。確か…………スタンプラリー?これもペア競技だったよな。体育祭っぽく無くて他の競技と比べると難度は低そうだが、果たしてどうだろうな…………
『それで、カゲロウ達はどうやったんや?』
『俺達もリタイアしました』
カゲロウが代表して悔しそうにフレイの質問に答えている。まぁ、かなり惜しかっただけに余計に悔しいんだろうな。
『そうなんか。それで楽しめたんか?』
『本当に悔しいんですけど、2人共楽しめたと思います』
今度はヒナタがカゲロウに確認して答える。
『それなら良かったな。イベントは楽しんでなんぼやろ』
僕もフレイの言う通りだと思う。だが、僕はあのハーフマラソンを本当に楽しめるのだろうか…………不安になるな。
おっ!!早速メールの返信が来てるな。アクアとネイルさんからもか、2人共に設置希望と………アクアは実際に試しているから分かるんだが、ネイルさんからも早々と依頼が来るとは思わなかったな。
まぁ、設置自体は素材も有るから直ぐに設置出来るんだけどな。
『主よ、【noir】の工房から、他のギルドにも設置出来るのかのう?』
『多分、大丈夫だろ。造船所にも付与出来たからな、一応依頼として請けているからな………ほらな』
思っていた通り音声認識装置の設置可能リストに【双魔燈】と【プレパレート】のギルドホームが増えている。
早速設置を終えて、設置が完了した事をメールで連絡する。Lvの上がりも良くて気分的には上々だ。もう少しで浮遊装置も作れそうだな。浮遊装置の事とその使用法を考えただけでワクワクしてくる。
装備
武器
【雷光風・魔双銃】攻撃力80〈特殊効果:風雷属性〉
【ソル・ルナ】攻撃力100/攻撃力80〈特殊効果:可変/2弾同時発射/音声認識〉〈製作ボーナス:強度上昇・中〉
【白竜Lv34】攻撃力0/回復力164〈特殊効果:身体回復/光属性〉
【黒竜Lv33】攻撃力0/回復力163〈特殊効果:魔力回復/闇属性〉
防具
【ノワールシリーズ】防御力105/魔法防御力40
〈特殊効果+製作ボーナス:超耐火/耐水/回避上昇・大/速度上昇・極大/重量軽減・中/命中+10%/跳躍力+20%/着心地向上〉
アクセサリー
【ダテ眼鏡】防御力5〈特殊効果:なし〉
【ノワールホルスターズ】防御力20〈特殊効果:速度上昇・大〉〈製作ボーナス:武器修復・中〉
【ノワールの証】〈特殊効果:なし〉
天狐族Lv41
《双銃士》Lv65
《魔銃》Lv64《操銃》Lv1《短剣技》Lv11《拳》Lv37《速度強化》Lv90《回避強化》Lv91《魔力回復補助》Lv90《付与術》Lv59《付与銃》Lv66《見破》Lv96
サブ
《調合職人》Lv24《鍛冶職人》Lv40《上級革職人》Lv4《木工職人》Lv30《上級鞄職人》Lv5《細工職人》Lv32《錬金職人》Lv30《銃職人》Lv28《裁縫職人》Lv12《機械製作》Lv23《調理師》Lv1《造船》Lv15《家守護神》Lv23《合成》Lv28《楽器製作》Lv5
SP 68
称号
〈もたざる者〉〈トラウマプレゼンター〉〈略奪愛?〉〈大商人〉〈大富豪〉〈自然の摂理に逆らう者〉〈初代MVP〉〈黒の職人さん〉〈創造主〉〈やや飼い主〉




