王の依頼 1
『皆、お待たせ。やっぱり、私が最後になったみたいだね』
それも予定通りと言った感じで、最後にアキラがログインしてくる。平日なので部活の有るアキラが最後になるのは仕方ないだろう。カゲロウやヒナタも部活をしているみたいだが、アキラみたいに遅くまでかかる事は無いらしい。
『大丈夫だ。まだ、大臣が来るまでに時間あるからな。まぁ、時間まで紅茶でも飲むか?ゆっくりしなよ』
何時ものように紅茶を差し出す。
『ありがとう。でも、大臣さんが来るのは緊張するよね』
ヒナタとケイトも緊張しているとアキラに同意している。どうやら緊張してないのは1回会って話をしている、僕とカゲロウ、それに人見知りをしなさそうなフレイってとこかな。
『あっ、そうだ。皆、城に行くのだから武器の持ち込みは多分だけど出来ないと思うんだよね』
大臣が来たら、王様に会う事に同意してそのまま向かう予定にしている。その為の準備をしておく必要が有るだろう。
『だから、武器は倉庫に置いて行こうと思うんだ』
『まぁ、城に行くんやから、それは仕方無いやろな………でも何で倉庫なんや?リビングか工房でもええやん』
『僕も、白と黒は置いて行く予定なんだが………倉庫なら、いざと言うときに取り出せる様にしたんだよな』
『『『『『はい!?』』』』です』
まぁ、これだけでは普通伝わらないよな………
『これ、最近作った僕の鞄なんだが……』
適当なアイテムを使って鞄の共有化の特殊効果を見せると、各々に驚いた表情を見せる。まぁ、入れた鞄と違う鞄から取り出せたら驚くよな。更に倉庫のアイテムも取り出せる事も確認して貰う。
念の為に、鞄は皆の分も用意してる………一時はクリスマスプレゼントにと思っていたのだが、今回必要に迫られて早めに御披露目する事にした………が、タイミング的に少し失敗だったのかもな。まぁ、披露しかたらには渡すんだがな。
『何の素材使ったんや?レア素材やろ?流石に、これは貰えへんで?』
『素材は在庫も有る分で作ってるぞ。実はスキルが《上級鞄職人》に進化したんだよね。その恩恵で付けれる特殊効果も増えてるんだよ』
『そうか、シュンも上級になったんやな、それなら納得や。ウチも《上級鍛冶職人》に進化してるからな』
同じ上級に進化させているフレイやヒナタには伝わった様だな。僕は、様々な生産系を取得している為、1つ1つの成長が遅いが、フレイやヒナタは集中的に専門分野を成長させている為、僕よりも早く上級に進化している。
他の皆に、どう言えば伝わるか分からないが上級と、それまでとでは全く能力が変わる。
当然、付けれる特殊効果や性能も違うのだが、それ以上に1つ1つの仕事が綺麗になると言えば良いのかな。《鞄製作》で言えば継ぎ目や縫い目が見えなくなったりするだけなのだが、《鍛冶》や《木工》になると今まではレアなドロップ武器にしか付いて無かったエフェクト効果も付けれる様にもなり、見た目が炎や氷を纏った武器とかも可能らしい。まぁ、全部が全部に付けれる様になるわけでは無いんだがな。それでも付けれた生産品は格好良いと思うし、憧れる。
『分かった。取り敢えずや、今回は何が有るか分からんから、鞄は有り難く受け取っとくわ。しかし、や、お礼は必ずさせて貰うで』
覚えといてやと念を推される。まぁ、これはフレイのポリシーだから仕方ないだろうな。
フレイ曰くタダより高いものは無いらしい。他の皆もフレイと同様に念を推してきた………鞄に関しては大した手間もかかって無いので別に気にしなくても良いんだがな。
『雪は、またお留守番………してるね』
唐突に話始めた雪ちゃん。自分で話して自分で納得し、残念そうな顔をする雪ちゃんを見て、僕はアキラの方を見て頷く。
『今回は一緒に来ても大丈夫かな。ただし、私の言うことは守る事と私の側は離れない事、そして会話には《心話》を使う事。約束出来るかな?』
『うん。アキラ、シュンありがとう』
一気に嬉しそうな顔をする雪ちゃん。まぁ、雪ちゃんは僕ら以外には見えないから大丈夫だろうな。
〔『マスター、中は外見以上ですねです』〕
僕らは、大臣に案内されて【シュバルツランド城】の中を王の間へと案内されている。
正門から城に至る道もかなり広い庭園になっていたのだが、中は更に広くなっているようだ。これは、明らかに見た目よりも広くてデカイ。認識的にはダンジョンと言っても過言では無いくらいだよな。これが、もしダンジョンだったら確実に迷うだろうな………考えるだけでも嫌になる広さだ。
街から城に行くには専用の道が存在していた。道は、ずっと街に存在していたようだが認識阻害?と言うのか、普通に見ても分からない様になっていた。体感的には《朧》を使われた様な感じだな。ただ、1度でも認識してしまえば自由に通れる様になるらしい。しかし、城に入る為には許可が必要になるのは変わらないらしく、いくら道を知っていて通る事が出来ても城には入れない仕様だそうだ。この事は、道ながら大臣さんに教えて貰った。
〔『そうだな豪華絢爛って感じだよな、ただ人が全く居ないってのは変だよな』〕
ケイトの言う通りで城の中には貴重な絵画や高価な品が飾られている。中には触る事は出来ないがレアな武器や防具もあるにも関わらず、この規模の城に警備兵等が全く居ないのは変だ。
〔『シュン、ちょっと違うかな。ここ人が全く居ない訳では無さそうだよ。さっきから《探索》スキルに人の反応は有るからね。全く姿は見えないんだけどね』〕
どうやら、上手く隠れているようだな。もしかして罠なのか?
こうなってくると武器類の持ち込みが、意外にも可能だった事に疑問が生まれてくる。事前に大臣さんに確認したのだが武器の持ち込みは可能だった。勿論振り回す事や許可無く抜く事は禁止されたが、それは当然な処置だろうな。
〔『そうなのか?それなら暫くは、このパーティーチチャットを維持だな。それと念の為、警戒は密に』〕
カゲロウが大臣さんに聞こえないように会話する為に、パーティーチャットを使い始めたのだが、正解だったかもな。
アキラだけに《探索》を使わせて僕らが何もしてない訳では無い。僕は、鞄を通して倉庫から取り出した白と黒に〈朧〉を使って姿を隠した状態で、分岐点の先を確認して貰いながら城の中のマッピングに集中している。こんなにも広い城だからな。逃げる方法のキープは必至だろう。カゲロウとフレイは、何時でも武器を抜ける状態で、何が起きても迅速に対応出来る様に位置取りしている。ケイトとヒナタは詠唱を済ませ魔法を待機状態で維持している。維持にもMPが消費される為、かなり大変だと思う。ちなみにケイトが回復魔法でヒナタが攻撃魔法だ。
『お待たせいたしました。この中が我が王のシュヴルツ3世が居られる場所です。どうぞお入り下さい』
そう言って大臣さんは、僕らよりも一歩前に出て大扉を開ける。大臣さん自らが扉を開ける姿に違和感を感じつつも、会釈して中に入って行く…………が玉座には誰も居ない。やはり騙されたのか?一瞬で僕達の警戒レベルは上昇する。
『えっ~と、すみません。大臣さん誰もいらっしゃらないようなのですが………』
心は身構えても態度は平静を装っている。
『いえいえ、ちゃんとここにおりますよ』
そう言って大臣さんは、座りなれた感じで玉座に腰掛ける。玉座に腰掛けると同時に、身に付けていたものが王様のそれに変化する。
『『『『『『…………』』』』』』
『まだ、お分かりになりなりませんか?私が皆様をこの城にお呼びしたシュヴルツ3世と申します』
『えっ!?大臣さんですよね、確かカイロさんと言う名前だったのでは?』
とっさの事で全く理解が追い付かない。大臣さんが王様?そんなバカな事が…………
それに、王様自らが【noir】のホームに護衛も付けずに、足を運ぶなんて信じられない。こんな事になるなら、予めカイロさんのステータスの確認はしておけば良かったよな。
『カイロは本名ですよ。シュヴルツ=カイロディアン=エルロと申します。それでは立ち話も何ですからね、お食事でもしながらでいかがですか?』
大臣さんもとい王様が指をパチンと鳴らすと何処かに隠れていた?侍女達が現れて、大広間へと案内される。
『ここは、また一段と凄いぞ』
『カゲロウ、少しお行儀が悪いよ』
案内された大広間で、珍しい物を物色するような感じで隅々歩き回っているカゲロウにヒナタが注意を促す。流石は、お姉ちゃんだなと思う。僕の姉にも是非とも見習って貰いたいものだ。
『大丈夫ですよ。料理が来るまでに暫く時間が掛かる事ですし、ご自由に見て貰って結構ですよ』
『申し訳ございません。それで、僕らをここに呼んだ件についてお聞きしても宜しいでしょうか?』
ぐぅ~~~~~~
『そうですね……………具体的なお話は食事後にしましょうか』
王様が喋り出すと同時に鳴った、カゲロウのお腹の虫を聞いて、先に食事を済ませようと提案してきた。どうやら、王様に気を使わせてしまったようだな。
それにしても、OOOの世界でもお腹って鳴るんだな。普段は自分達で料理する為、ホームには食べ物が常備されているので完全な空腹になる前には食事をしている。それなので、お腹の虫を聞いた瞬間、カゲロウ以外は誰もお腹の虫だと理解が出来なかった。一体何処までリアルに作り込まれているんだろうな。
ちなみに、空腹になる前に食事をする理由は機嫌度の低下を防ぐ為だ。噂では、イライラで人に八つ当たりをしてケンカになり、パーティーやギルドの解散にまで発展したプレイヤーもいるらしい。まぁ、あくまで人の噂なのだが。
出て来た料理は、フランス料理のフルコースに似ていた。前菜からデザートまで、全て美味しく頂いた。
本来なら赤か白のワインが合うのだろうが、僕らが未成年だと言う事で山葡萄のジュースにして貰っている。多分、王様が気を使ってくれたのだろうな。酸味が利いているのと、少し炭酸系だったので喉越しも最高だった。
コースには、変わった料理も出て来たのでシェフにレシピを教えて貰っている。ついでにと言うか珍しい調味料も頂いてしまった。
ここまでもてなされると疑って悪かったかなとも思ってしまうな。そのお礼にと言うか食後のティータイムには僕の持つ最高のブレンド紅茶を淹れさせて貰った。
これは、市販されている茶葉を僕の好みで《合成》して作っている。トウリョウ達には《合成》の無駄使いと言われたが、僕にとってはかなり有意義な使い方だと思っている、スキルLvも上がるからな。この紅茶は、王様も気に入ってくれたようなので、少し茶葉を置いて帰ろうと思う。こんな時でも紅茶の普及だけは絶対に忘れない。ちなみに、食事が始まった時点でパーティーチャットは切っている。料理に変な物は入って無かったので、これ以上は疑う必要は無いだろうと早々にフレイが判断したからだ。
今回、王様との交渉は僕が受け持つ事になっているのは、以前話をしているので他の皆より慣れていると言うのが大きな理由だ。まぁ、以前に僕が話した時の王様の肩書きは、大臣だったのだけどな………僕的には王様との交渉は、かなり荷が重いと感じているんだよな。
『では、そろそろ、皆様をお呼びした件について、お話しさせて頂きましょうかな。実はクラーゴンを倒して頂いた皆様に御依頼が御座いまして………』
僕が目で返事をして、続きを促す。
『はい。1つ目は、本当に情けないお話しなのですが、我が国はクラーゴン討伐に多大な戦力を使い果たしました。既に、城を見てお気付きかも知れませんが、現在城には兵士の数が少ないのは、優先順序が高い物事からこなしている為です。その為に国の細々とした依頼にまで対応出来ない状況で御座います。その辺りでご協力頂きたいのです』
なるほどな…………城の中に兵士が居なかったのは、最低限の防備以外の兵士は街に出て依頼をこなしているって事だな。
これは、普段から街のクエストや依頼は受けているので問題ないだろう。それに他のプレイヤー達もクエストをこなしているだろうしな。問題は、この王様は1つ目はと言ったよな………まだ他にも有るのか?
『この件は、普段の延長上の事なので、出来る範囲ではお手伝いさせて頂きます』
『ありがとうございます。2つ目は、森の街【ヴェール】の事はご存知かと思いますが、その街の畑を荒らす魔物の討伐を依頼したいのです』
『畑を荒らす魔物?具体的にはどう言った魔物ですか?』
やはり、2つ目が有ったか。それにしても、これくらいの事なら兵士数人で何とかなりそうなのだが…………食料関係は国としても優先順序が高そうだしな。
『姿を見る事も叶わず、兵士達では対処出来なかったのです。分かっているのは馬の様な足跡しか………』
もしかして、この前のヤツか?もしヤツなら討伐は速すぎて無理だと思うぞ…………
〔『主よ、ワシもこの前の人馬一体だが怪しいと思うのじゃ』〕
〔『………黒も』〕
やっぱりそうだと思うよな………
『心当たりは有りますが、これは御約束出来ませんね。以前に逃げられた経験が有りますし…………まぁ、善処はしてみますが………』
ケイトが、僕の目をじっと見つめて来たので、その場で断る事に失敗してしまった。あとで説明しなくてはならないかな。
『それでも十分ですよ。最後は、我が国には現在船が無く、他国との交流が出来ていません。他国に書類等も運搬出来ておりません。無理を承知でお願い申し上げますが【noir】の船をお売り頂く…………』
『すみませんが、それはお断りします』
少し喰気味に答える。もう3つ目だぞ。王様と言えど流石に図々しくないか?ちょっとカチンときたぞ。
『シュンさん、少し良いですか?』
ヒナタが会話に割って入って来た。
『どうかしたのか?』
『王様、船をお譲りする事は出来ませんが、時間はかかりますが新たに船を作る事か、書類を運搬する事は可能です。それでは駄目でしょうか?』
船を譲って欲しいと言われてカチンと来ていたせいか、新たに《造船》で作る選択肢は無かったな。ヒナタを見習って、もう少し冷静にならなけらばな………
『本当に申し訳無い。改めて【noir】に船を依頼させて貰いたい。同時に書類の運搬もお願いします。勿論、全ての依頼に相応の報酬を、支払させて貰います』
さぁ、ここからが問題の交渉だな………言ってみれば、今までは前座だからな。
『例えば、報酬には、どう言った物が有りますか?』
『そうですね………色々有りますよ。どんな物が欲しいですかね?』
『では、1つだけ………可能なら、街の各工房を広くして頂けませんか?僕らに特に影響は無いのですが、街の工房に人が溢れていて困っている人も出てるみたいなんです。今は、まだ大きな問題にはなってないんですが、こう言う事は、なってからでは遅いと思うんですよね。残りは、今欲しい物が思い付かないので依頼達成後に適当な物を選ばせて頂きたいのですが………』
これだけを選ばせて貰えるなら、他は何でも良いだろう。事前に僕の考えは皆に相談している。僕以上に、この案はフレイやアキラにも支持されたのが良かったよな。まぁ、他の皆に反対された訳でも無いんだけどね。
『街の工房ですか………分かりました。ただ、これは今回の依頼の報酬としてでは無く、街、いや、この国の改善策として実施させて貰います。報酬の方は、後程侍女にリストでも作らせましょうかね』
『えっ!?』
僕は、思わず声に出してしまったが他の皆も驚いているようだ。まさか、工房の拡大が報酬としてでは無く、国の改善策として受け取られるとは思ってもみなかったからだ。
『当然でございましょう。この件は、どう考えましても【noir】の皆様の報酬では無いですからね。どちらかと言うと我が国に対する報酬でしょう』
もしかしてだが、この王様は図々しいのでは無くて物凄く有能な人物なのでは無かろうか?僕の中では評価が鰻登りだ。
『分かりました。それでは、有り難くその提案を受けさせて頂きます。依頼の方は、少しずつ進めさせて貰います』
後で、侍女に見せて貰った報酬リストの中に僕が欲しかった銃の素材や、魅力的な【アーツの書】や、今までに見た事の無い【スキルの書】と言うアイテムが有った。
街の小さなクエスト?に関しては、それ自体にも元から報酬が有るので、5つクリアする毎に1つ報酬が貰える契約になった。これはケイトとアキラを中心に攻略していく予定だ。ケイトは普段からこの手のクエストを得意としている。街のクエストには大きく分けると素材を何個納品してくれ等の採取、採掘系、魔物を何匹か討伐してくれ等の討伐系、街のお手伝い系の3種類が有る。基本的に何個も同時に受けれるので纏めて受けて効率良く攻略していくのがセオリーになっているらしい。クエストクリアでもギルドランクが上がるので一石二鳥だろうな。ちなみに【noir】のギルドランクだが、今はDにランクアップしている。これは普段からコツコツとクエストをクリアして来た結果だろうな。
船に関しては、現在【ワールド】から依頼を受けているので、そのあとになる。これは、ヒナタとカゲロウを中心に製作を進める予定だ。クラーゴンの討伐を終えた事でトウリョウの【カーペントリ】も《造船》スキルを取得出来ているので協力して貰うようだ。一応、僕もスキル持ちなので協力したい。
畑を荒らす魔物、推定ケンタウロス?の討伐だが出会える可能性が低いと言う事も有り、ギルドメンバーを割くことが出来ず、僕が1人で捜索する事になった。僕が1人になった理由の1つに前回のイベントで貸しを作ったプレイヤーを捜索に協力させる事を思い付かいたからだ。その皆には悪いが馬車馬の様に働いて貰う予定だ。
残ったフレイだが【noir】への依頼を積極的に受け持って貰う事になった。フレイ自身も言っていたが、現在は《刀鍛冶》系の依頼が多いので適任だと思う。勿論、各々担当者に任せっきりにするのでは無く人手が必要な場合は協力もする。ただ、クエストを進めるにはリーダーは必要になるだろうと言う事でこうなった。まぁ、我ながらバランス良く配置出来たのでは無いかなと思う。
『どや、シュン畑荒らしの犯人は見付かったんか?』
『まだだな。目撃者すら見付かって無いな。当然、手掛かりもな………』
【ヴェール】付近の畑で被害は出ているのだが目撃者が全く見付からない。僕は時間が許す限り張り込んでいるし、アクアやガイア達にも協力させているのにも拘わらずだ。確かに王様の言う通り、馬?の足跡らしき物は現場に残されているのだが…………この巧妙な犯行に犯人は本当に魔物なのか?と疑問に思ってしまうぐらいだ。
『そなんか………そっちは大変そうやな。そや、シュンはもう月末のイベントやバージョンアップ確認したか?広場に掲示されとったで、気分転換にでも確認して来たらどうや?今回も楽しそうな事になりそうやで』
不適な笑みを浮かべるフレイに若干引く。
それにしても、ここまでフレイのテンションを上げるとは、一体どんなイベント何だろう?OOOのイベントは現実世界の季節感が重視されたりもしている。今は10月だからな………秋を推してくる可能性も有るよな。紅葉とかも有ったら楽しそうだな。でも、食欲の秋を推してきて大食いイベントだったら嫌かも知れないな。
広場のテンションは、普段のバージョンアップ情報掲示よりも高く感じられる。そこまで楽しいイベントなのか?僕もかなり期待したのだが…………
『これか…………確かに10月だな』
周りの皆とは逆に僕の上がりかけたテンションは、ただ下がりになっている。
・酪農機能とスキル追加
・農業機能とスキル追加
・新規露店の追加
・スキルチェンジ機能追加
・バージョンアップ後に第3回公式イベント【大運動会】開始
………頭が痛くなりそうだ。えっ~と、酪農や農業は文字通りってところだよな。まぁ、料理の材料や紅茶の木を栽培出来る可能性が出来たのは喜ばしいな。
新規露店は成長したプレイヤー用の装備販売がメインの様だ、自分達で自作する僕らには余り関係無さそうな事だが、一般論では良いバージョンアップだろうな。僕ら的には、露店を確認するくらいで調度良いだろう。それに、良いデザインは参考にしたいしな。
しかし、問題は………残りの2つだな。
スキルチェンジ機能は使わなくなったスキルをLvを半分にして新しいスキルにチェンジする事が出来るらしい。これは不遇スキル取得者に対する是正処置になるのか?………これって益々、銃系のスキル所持者減るんじゃないか?不遇と言われるスキルも使っていれば存在感が出てくるだけどな。
この際だから、僕も最近は使わなくなっている《拳》《旋風魔法》を何か便利な戦闘系のスキルに変えても良い時期かも知れないよな。
今回の公式イベントだが【大運動会】は1週間かけて行われて、1日3種目開催の計21種目で争われる。1人につき2エントリーまで可能らしい。簡単に言うとOOO内でのオリンピックみたいなものかな。タイムを競う物から、得点を競う物まで、幅広い競技が有るようだ。当然、個人種目、チーム種目と多種多様だ。現実の体育祭で失敗している僕としては、なるべくなら関わりたく無いな。
ログイン時間等の兼ね合いも有り、見る事の出来る種目にも限りが有りそうだよな。昼間や夜中に有る種目も有るのは仕方ない事だろうな。
『おっ!!射撃競技も有るんだな………』
〔『主よ、これはワシらに有利なのじゃ。ワシと黒がおるのじゃ、的を外すなんて有り得ないのじゃ』〕
〔『………黒に任せる』〕
白と黒には、オート必中機能とでも言えば良いのか?が付いている、これは銃型の魔銃器特有の能力なんだと思う。多分だが、白と黒に意思が有るから成せる能力だろうな。
まぁ、白と黒を使わないにしても射撃競技は〈必射〉のアーツも有るから有利なんだがな。当然と言うか、やっぱりと言うか射撃競技は金曜日の夜中………むしろ土曜日の朝方と言った方が良いかも知れないな。まぁ、翌日が休みなのは救いだよな。
他にも障害物競争やPVPとかも面白そうだよな。あくまで、見る側からの意見だけど………参加の方は、遠慮したい。
『マスター、今大丈夫ですか?です。ちょっとクエストを手伝って頂けませんか?です』
『大丈夫だよ。どうしたんだ?』
『はいです。【ポルト】で変なクエストを引き当てましたです。マスターも《機械製作》取得してましたよね?です』
『あぁ、全く成長してないが取得はしてるぞ。今は【ポルト】だよな。ゲートの前で待っててくれ』
『違いますです。【ヴェール】に来て下さいです』
あれ?さっきは確かに【ポルト】でクエストを引き当てたと言ってたよな………【ポルト】のクエストを【ヴェール】でクリア出来るのか?ちょっとした疑問も浮かぶ。それにしても《機械製作》が必要な変なクエストか………まぁ、行けば分かるよな。
『………了解だ』
『あれ?フレイも呼び出されたのか?』
僕が【ヴェール】のゲートに着くとケイトとフレイが既に待っていた。
『そやで、なんでも《機械製作》取得者3人でのクエストらしいんやわ。ウチもケイトも、かなり前に検証の為に取得したんやけどな全く成長してないんよ。この《機械製作》って言うんは生産する方法が全く分からへんねん。メニュー画面のリストにも何1つ表示してないんやわ』
《機械製作》取得者3人ねぇ………《造船》の時を思い出すな。しかし、僕だけじゃ無くてフレイ達も成長させて無かったのには驚いたな。
『はいです。私もLv1で成長してませんです。今回のクエストはチャンスかも知れないのです』
確かに何かスキルの成長?製作方法のヒントくらいは分かるかも知れないな。
『クエストの名前は〔灯台に灯を灯せ〕と言いますです。内容は古びた灯台の整備と灯りの確保です』
『それ本当に《機械製作》必要なのか?』
どちらかと言うと必要なのは《家事》や《細工》《木工》な気がするんだが………
『はいです。灯台の灯りの修理に必要になりますです。ここに来て貰ったの道具を手に入れる為です』
『修理道具か?それならウチが、なんぼでも作るで』
『Noです。修理に必要な道具は魔物のドロップアイテムになりますです』
ケイトが言うには、修理するには専用のアイテムが必要で、その為にはドロップする魔物を探して倒さなければならないらしく、【ヴェール】迄呼び出したとの事。イベントの進行には《機械製作》スキル所持者が3人必要なのだと教えられたらしい。
『その魔物って?もしかして………』
ここに呼び出すって事は、例のケンタウロスか?アレを見付けるのは酷だぞ。
『はいです。ビーです』
あれ!?予想と違ったな………でも、ビーなら千回以上は倒しているけど修理に使えそうなアイテムはドロップした事無いんだけどな。
『ビーのイベント用ドロップアイテム【密油】が100個必要になりますです』
なるほどイベント用のドロップね。それなら見た事無くても仕方ないな。それにしても100個か………確実に1回はクィーンに遭遇しなければならないようだな。もしかするとクィーンってこのイベント用の魔物だったのかも知れないな。何かと縁が有るのを感じるよ。
装備
武器
【雷光風・魔双銃】攻撃力80〈特殊効果:風雷属性〉
【白竜Lv26】攻撃力0/回復力146〈特殊効果:身体回復/光属性〉
【黒竜Lv23】攻撃力0/回復力143〈特殊効果:魔力回復/闇属性〉
防具
【ノワールシリーズ】防御力105/魔法防御力40
〈特殊効果+製作ボーナス:超耐火/耐水/回避上昇・大/速度上昇・極大/重量軽減・中/命中+10%/跳躍力+20%/着心地向上〉
アクセサリー
【ダテ眼鏡】防御力5〈特殊効果:なし〉
【ノワールホルスター】防御力10〈特殊効果:速度上昇・小〉〈製作ボーナス:リロード短縮・中〉
【ノワールの証】〈特殊効果:なし〉
天狐族Lv36
《双銃士》Lv59
《魔銃》Lv58《双銃》Lv53《拳》Lv35《速度強化》Lv83《回避強化》Lv85《旋風魔法》Lv33《魔力回復補助》Lv85《付与術》Lv52《付与銃》Lv60《見破》Lv85
サブ
《調合職人》Lv24《鍛冶職人》Lv27《上級革職人》Lv4《木工職人》Lv30《上級鞄職人》Lv5《細工職人》Lv24《錬金職人》Lv24《銃職人》Lv1《裁縫職人》Lv12《機械製作》Lv1《料理》Lv40※上限《造船》Lv15《家守護神》Lv16《合成》Lv18《楽器製作》Lv5
SP 26
称号
〈もたざる者〉〈トラウマ王〉〈略奪愛?〉〈大商人〉〈大富豪〉〈自然の摂理に逆らう者〉〈初代MVP〉〈黒の職人さん〉〈創造主〉〈なりたて飼い主〉




