日常 2
日曜日の夕方【noir】のホームでは、慌ただしくケイトの誕生日会の準備が行われていた。ケイトのログインしてくるまでは、あと1時間程度しかない無いからな。
僕とアキラとフレイがログインしてきたのは、ついさっきの事で殆どの準備をカゲロウとヒナタ、それに白と黒と雪ちゃんが請け負ってくれている。僕らのログインが、遅れたのは今日が体育祭だったからなんだけど。
『本当に、遅くなって悪かったな………かなり終わっているようだが、どうすれば良いんだ?』
リビングの飾り付けは、殆ど終わっている感じだ。リビングの高い場所にも飾り付けられているが、これは雪ちゃんや、白と黒に頼んだのだろう。
『ギルマス、それは気にするな。えっ~とそうだな、ギルマスは予定通り料理、材料はキッチンに用意してあるぞ。アキラはケーキ買いに行って下さい。フレイはヒナタを手伝って下さい』
相変わらず、僕以外は敬語なんだよな。アキラもフレイも、そう言う事は気にしないタイプなんだがな。
『了解や』
『じゃあ、ちょっと行って来るね』
各自の割り振りは、ある程度は前もって予定していた事なので、誰もがカゲロウの割り振りに異論無く行動に移って行く。
僕もキッチンに入り時間のかかる物から料理を始めるか。
本日のメインは手巻き寿司、以前ポルトで仕入れてきた魚を刺身にしたところ、想像以上にケイトが気に入っていた為に採用された。まぁ、皆で好きな物を自由にワイワイ食べやすいってのが大きな理由だけどな。
その為、今日は朝早くからカゲロウとヒナタが船釣りに出掛けている。そして、釣り上げて来た魚も料理する予定だ。ちなみに釣竿は、ヒナタが製作した物を使用したらしい。ここでは、しなる事には優れていた御神巨木が大活躍だったようだ。
予めヒナタが炊いてくれていたご飯を、寿司桶に入れて冷ましながら酢を混ぜていく。だんだんと酢飯の良い香りがリビングに全体にまで届いたようだ。
『これは良い匂いやな。美味しそうやわ』
匂いに釣られてフレイがキッチンまで入って来た。
『そうだな。もう飾り付けの方はは良いのか?』
『あ、あぁ、何て言うか………ヒナタにクビ切られてもたわ』
どうやらフレイは、飾り付け等細かい作業が苦手のようだな。ご丁寧な事に手を使ったアクション付きで…………
さっきまでフレイが飾り付けしていた場所をヒナタが一生懸命に直している。《鍛冶》の時に見せる丁寧さは発揮されてない。全く残念だよ。
『………そうか、それなら食器類を洗って並べてくれるか?』
僕の方も準備がギリギリになりそうだから、丁度良かったよな。実際には猫の手も借りたい状況だ。
『任せとき、洗いもんは得意やで』
そう言って、フレイは今日使う予定にしていた食器類を洗い始めた。洗わなくても綺麗なのだが、こう言う時は気分の問題だ。洗い終わったばかりの食器の方が美味しそうに見える。多分だが………
実際に、フレイと言うアシスタントが出来た事も有り、僕の作業も捗っている。僕の準備する具材を綺麗に盛りつけてくれてもいる。具材は細く切った玉子焼きにキュウリやレタス、それにカゲロウの釣ってきた秋刀魚を刺身にして、ヒナタの釣ったアジは刻んだ大葉と一緒にタタキにしている。アジはナメロウにしても良かったのだが寿司と味噌が合いそうも無かったので今回は止めた。
あとは【ポルト】の露店で買ってきた紅い魚卵と海老。本当はツナが欲しかったのだが、今現在OOOの世界でツナは発見れていないので海老で代用する事に。茹でた海老を細かく刻んでマヨネーズと和える。なんちゃってエビマヨの誕生だな。魚卵の方は、少し味見してみたが味付けをしなくても良い塩梅だった。あっ!!醤油のストックって切れてたよな………
『アキラ、悪い。ついでに醤油を買ってきてくれる』
外に出ているアキラに、お使いを頼む。
『分かったよ。少し待っててね』
ケーキ屋で少し時間がかかっているようだな、まぁ、醤油は食べる時に使うので問題ないな。
手巻き寿司の方の準備は、殆ど終わったかな。あとはサラダとスープ………ご飯系だから、お吸い物の方が良さそうだな。
『シュン、これ………味見が必要だよな?』
フレイが物欲しそうな顔で僕の手元を見ている。
『今は、大丈夫だ。フレイ、次は大皿を2つ用意してくれ』
非常に残念がるフレイに指示して、僕はサラダに取り掛かる。
先ずは玉子を茹でて、その間にキャベツ、キュウリ、トマトを切り綺麗に盛り付けていく。フライパンで刻んだベーコンをカリカリに炒めて、サラダの上に乗せ茹で上がった切って玉子を添える。我が家では、普通に作っているサラダだが、いつも以上に旨そうだよな。やはり雰囲気は大事なのか?
残りは、お吸い物を作れば………よし、完成だな。ちょっと和風寄りになっている気もするが、食後にはケーキも有るし、お祝いの雰囲気は出せたんじゃ無いかな。お吸い物以外をリビングに運べば準備完了だな。あとはケイトが喜んでくれる事を願うばかりだ。
『お待たせ、ケーキ特注で作って貰っちゃった』
そう言うアキラの両手には、かなり大きいサイズの箱が抱えられている。どんだけ大きいサイズのケーキを注文したんだよ。あれは絶対に食べきれないだろうな…………
『ただいまです』
いつものようにケイトがログインしてくる。ホームに誰も居ない時でも、この挨拶は変わらないらしい。
『『『『『『ケイトお誕生日おめでとう』』』』』』
ケイトのログインを待っていた僕らは一斉に声を出す。惜しむべきはOOOの世界にパーティー用のクラッカーが存在しなかった事かな。何かのスキルで生産可能なら是非作りたい物だ。
『ひぇっ!!………お、おめでとうございますです』
一瞬、何が起きたのか分からなくて、自分の誕生日を自分で祝ってしまったケイトだが、リビングの様子を確認して状況が把握出来たようだな。
『どうして私の誕生日を知ってたのですか?です』
『カゲロウが、私たちがパーティー結成時に話した自己紹介を覚えてたんですよ』
『oh~!!カゲロウ、ありがとうございますです』
カゲロウにハグをしてみせるケイト。こう言うところは、流石に外国人だよな。僕らには簡単に真似出来そうも無いからな。
『別に………そ、それよりも、早く始めようぜ。ギルマスの作った料理も冷めるし、もう俺は我慢ができないぞ』
それに照れて、なんとか逃れようとするカゲロウ。なんか見ているこっちまで微笑ましい気持ちになるよな。動揺して気づいてないのか?今日のメイン料理は元から冷めているんだよ。お吸い物以外だけどな。
〔『主よ、そこは、見て見ぬ振りをするのが大人の男じゃ』〕
〔『………武士の情け』〕
2匹揃って、そう言ってくる。いくら、僕が鈍感でも流石にそこは分かっているんだけどな。
『じゃあ、改めて、ケイトお誕生日おめでとう。この1年が素敵で幸せでありますように、乾杯』
『『『『『『かんぱ~い』』』』』』
アキラの音頭で、一斉に誕生会が始まる。カゲロウとフレイは手巻き寿司が待ち切れなっかたようだな。我先にと、美味しそうに頬張っている。アキラやヒナタは、雪ちゃんやケイトに手巻き寿司の食べ方をレクチャーしているようだ。僕はと言うと、お吸い物を皆に配っている。何気に、貝類で出汁を取ったお吸い物は、僕の自信作でもある。
皆、気に入ってくれたみたいだな。美味しそうに食べているのを見ると、こっちまで幸せになるよな。それでこそ、作ったかいが有ると言うものだな。
『それで、ギルマス達の体育祭はどうだったんだ?』
『私も聞きたいです』
カゲロウとヒナタが体育祭の事を聞いてくる。勿論2人共食べる手は止めていない。
『あっ、う~ん、その、シュンも頑張ったよ』
『そ、そやな、シュンも頑張ってたわ』
2人に気を使わせてしまったかな…………
『アキラとフレイはリレーや個人種目で大活躍だったんだぞ。僕は、借り物競争と障害物競争に出たんだが1回ずつコケて最下位だ。まぁ、体育祭的には、盛り上がったし楽しかったんだがな』
結果は結果だ。特に隠す必要も無いしな。OOOだったら、新しいトラウマが生まれてたかも知れないので現実で良かったくらいだ。
それに、蒼真が毎年の様に大活躍で、クラスは学年1位だったからな。クラスの皆には感謝だな。
『そうですか…………それは残念でしたね。でも、楽しかったなら良かったですね』
『マスター、この手巻き寿司は本当に美味しいのです。材料は何ですか?です』
カゲロウの質問で、ちょっと悪くなりかかった空気が、ケイトの一言で晴れたな。実際ケイトは、かなり空気読めるよな。
『おう、ありがとな。その魚は秋刀魚とアジって言うんだ。今朝カゲロウとヒナタが釣って来たんだよ』
『それは凄いのです、カゲロウ、ヒナタ、自分で釣ってきたんですか?です。私も釣りに行ってみたいです』
ケイトも驚いているな、これはプレゼントを渡す良い雰囲気じゃないのか。
僕は、カゲロウのプレゼントも知っている為、今がベストだと思う…………どうやら本人にも分かっているみたいだな。こう言う時にはアシストが必要だろう。黒流に言うなら思いやりだな。
『そろそろ、お楽しみのプレゼントタイムだな。順番は、そうだな………カゲロウから左回りでどうだ?』
当然、ケイトは、プレゼントが有る事も知らないのでキョトンとしている。
『お、俺からは、この釣竿だ。《木工》で作ったんだ。一応試作品の竿でも魚は釣れたからな。期待しても良いぞ。良かった………これで一緒に釣りに行かないか?』
『カゲロウありがとうです。この釣竿は素敵なのです、釣りに行くの楽しみにしますです。皆で一緒に行きましょうです』
凄く良い笑顔になったカゲロウだが、一瞬で絶望的な表情に変わったよな…………まぁ、それも仕方ないだろうな。ケイトには肝心な部分が伝わらなかったようだし、ゆっくり地道に頑張るしか無いだろうな。
カゲロウに続いて、皆が順番にプレゼントを渡していく。アキラが《裁縫》で作ったマフラー、フレイは《細工》と《鍛冶》で作った腕輪、ヒナタは《木工》で作った魔力を溜めておく事の出来る杖のセットらしい。こうなると姉弟でプレゼントが杖に被らなくて良かったんじゃないかとも思うな。それにしても、皆各々に凝ったプレゼント考えてるよな。しかも、カゲロウ以外は装備品で、まだ選択肢に色々と有った事を気付かされる。そして最後は………
『僕の番だな、プレゼントはこれだ』
鞄の中から2本のギターを取り出す。
『それはギターですか?です』
『うん、何をプレゼントしたら良いか悩んでな………《楽器製作》取得してギターを作ったんだ、こっちはケイトへのプレゼント用で、こっちは…………』
僕の合図で、事前に打ち合わせしていた通りに、ヒナタ、カゲロウ、フレイがその場に立ちハッピーバースデーを歌いだす。当然、僕はギターの演奏も兼ねている。
『改めて、ケイトお誕生日おめでとう』
1人、歌に参加していなかったアキラが歌の終了と同時に巨大なバースデーケーキを持って現れた。そしてアキラの一言と同時に、リビングの灯りが消え16本のロウソクの炎だけが、辺りを照らしている。ロウソクの炎って綺麗だよな。
『ふっ~~~~~』
ケイト本人も全てを理解したのか、一息でロウソクの炎を消し去った。
『皆さん、本当にありがとうございますです。とっても幸せな気分になりましたです』
ケイトの目には、うっすらと涙が浮かんでいた。どうやらケイトは、歌もプレゼントのギターも両方とも喜んでくれてた様だな。これだけ喜んでくれたのならサプライズを企画は成功だよな。
僕らは、ケーキや料理を食べ終わり、紅茶やコーヒーで食後の一時を過ごしていた。
『主よ、そろそろ、あの話を進めてはどうじゃ?』
さっきまでは、一心不乱にケーキを食べていた白が急に話し出した。あの話と言うのは大臣さんの事だよな。約束の期限も明後日に迫っているし、皆がそろってるのでタイミング的には調度良いのだが、話題が少し重い気もするよな。まぁ、そうも言ってられないんだがな。
『皆、少しだけ時間を貰っても良いか?』
この前の出来事を相談していく。どうしても、あの件は1人で決める気にはならないからな。
『マスター、困っている人は助けましょうです』
趣味がボランティアと言うだけはあるよな。ケイトは、即答で賛成してきた。
『ウチも、別にかまへんで。城の中とか妙に楽しみやんか』
『私も賛成だから、これで3人………ヒナタとカゲロウもだから5人だね、それでシュンは?』
更にフレイ、アキラと続き、それとほぼ同時にヒナタとカゲロウも賛成派に同意する。
『う~ん、実のところ僕は、さっきの話でも分かると思うけど、あまり乗り気では無いんだよね。今までが今たでだから僕が絡むと、ろくでもない無い事になりそうなんだよな………』
僕の言葉には、かなりの説得力だけは有ったようだな。付き合いの長いフレイとアキラのやる気が下がったのは分かった。
『…………黒は賛成』
『黒もか………そう言えば白も、賛成派だったよな。仕方ないか………取り敢えず、王様の話だけは聞いてみるか。それと一緒に城に行きたい人は?………って、全員か』
5人全員が手を挙げたので、ギルドメンバー全員で行くことになった。来週末には、次の定期バージョンアップも控えている。
新しいイベントが始まると言う噂もあるの、それに今月末には第2回オークションが開催される予定なのだ。今回のオークションの為に会場の規模を拡張しているからな。あまりにも時間のかかるクエスト?依頼は避けたいのが本音だよな。それに目的地は仮にも一国の城である、城内には武器等の持ち込みは出来無いだろうな。行くのなら、ある程度の準備は必要だよな…………
『シュンくん、今時間は大丈夫かい?』
誕生会と話し合いが終わったタイミングで、ネイルさんからコールが有る。
『今は、ちょっと立て込んでまして………1時間後で良いなら大丈夫ですよ』
実のところ昨日も誘われていたのだが、昨日はギターの最終調整に時間が掛かったので断っている。流石に、日頃から世話になっているネイルさんからの誘いを2日連続で断る勇気は無いし、2日連続誘ってくると言う事は、急ぎの案件なのかも知れないからな。まぁ、今は後片付けを皆でしているので僕だけが抜ける訳にはいかないだろう。ちなみに、後片付けには主賓のケイトも参加している。僕らは、今日は手伝わなくてもいいと言ったのだが、ケイトは、お礼に少しでも手伝いたいと譲らなかったからだ。
『じゃあ、待ってるから【プレパレート】のホームに来てくれる?そこにフレイも居たら連れて来て欲しいな』
『分かりました。フレイも居ますので行けそうなら連れて行きます』
幸いな事にフレイも時間が有るらしく、少し遅くなるが2人で行く事にする。僕とフレイに用が有ると言う事は、生産ギルド組合関係の話だろうな。ただ、珍しいのは【noir】のホームに集合じゃ無い事かな。
生産ギルド組合の集まりには、4ギルドから数人ずつが参加する事になっている。1つ参加ギルドが増えているのは以前のイベント後に、少し仲良くなったチャリさんのギルド【サイク=リング】も加入している。お互いが使わない素材の交換等でメリットが大きいらしく、ギルドメンバーと相談して決めたようだ。
他の3ギルドはギルドマスターとサブマスターが代表者だが、【noir】からは僕とフレイが代表になっている。歴から言えばフレイもサブマスタークラスにあたるのだが【noir】は、ギルドマスターが2人いる為にサブマスターを作っていない。以前に提案した事も有ったのだが、柄ではないと断られている。
余談だがフレイが選ばれた理由は【noir】内で1番生産系に詳しいからだ。
『ネイル、来たで~』
【プレパレート】のホームの前で、いつもの様にフレイが友達の家に遊びに来たような感じで入って行く。僕はあまり来た事が無いが、フレイは頻繁にお邪魔しているらしい。生産の種類は違うがお互いに良き相談相手、理解者になっている様だな。
『急に呼び出して悪かったね。ちょっと相談事が有るんだよ』
【プレパレート】のホームには、ネイルさんと【カーペントリ】のギルマスのトウリョウだけがいた。
『チャリさんとか他のメンバーは、どうしたんだ?』
『??他のメンバーって………あぁ、今日は生産ギルド組合の集まりでは無いんだよ、生産ギルド組合と無関係では無いんやがな』
『違うんか?ウチとシュン呼ぶんなら生産ギルド組合の会議ちゃうん?』
『まぁ、普通そうなるわな。そやけど、今日は別件やねん。私が説明するけど、ネイル良い?』
トウリョウがネイルさんに確認を取り、ネイルさんが頷くのを確認して話を続ける。
『話って言うのは、私達はギルドホームに工房持ってるから知らないかしれんのやけど、最近生産系のプレイヤーが工房に溢れてパンクしてるんが問題になってるんよ。なかなか、順番が来ないとかね。街に有る工房って何処も規模と設備はソコソコ有るんやけど広さがイマイチやんか、ギルドに所属したりしてホームに工房作れば問題無いんやろうけどな。新人さん達は所属したいギルドが有るらしくてな…………ギルドに入らないらしいんやわ。中には、かなり腕の良い職人もいるみたいなんだけどな』
そう言えば、どの工房もプレイヤーで賑わっていたよな。だが、だんだんと雲行きが怪しくなって無いか?このパターンは絶対に………
『その所属したいギルドってのが………』
『【noir】って事なんやな、それならウチや無くてアキラに相談した方が良いんやないか?』
だよな……と溜め息をつきたくなる。確かに、フレイの言う通りで、この案件ならギルドマスターのアキラも居た方が良いだろう。
『実は、アキラには昨日の内に話してるんやわ。アキラにはシュンとフレイにも直接話して欲しいと言われてな………自分で説明したら、自分の余計な感情が入るかも知れないからと言われたんや』
昨日は、僕だけでなくアキラも誘われてたんだな。それなら今日の話し合いの時に言ってくれても良かったんじゃないか………
『それで、ネイルさんとトウリョウはどうしたいんだ?』
ギルドでアキラと相談する前にネイルさん達の意見も聞いて置かなければならないよな。
『その前に逆に質問。何でギルドメンバー増やさないんや?メンバー増えたらギルドのランクも上がるから便利なんやで』
『それは………2人共知ってると思うけど【noir】って、かなり特殊なんだよな。秘密にしている事も多いし、工房の設備も街の工房以上の物が殆どだしな。メンバーを増やすにしても、最初にクエスト形式のイベントを開いたからな、簡単に加入させるとなると問題が起きそうでな………』
実際に、次のイベントを待ってると言う噂も数回聞いてるしな。
『やっぱり、そこやねんな。アキラも同じ事を気にしてたんよ』
流石は、アキラだな。僕と考え方が似ているよ。
『そやろな、ウチが入った時でさえホームや工房設備は異常だったからな。今は、異次元やし』
確かに【noir】の工房には、複合スキルの工房も有るし、ホームの施設も便利になっているので言いたい事は分かるが、異次元は言い過ぎだと思うんだけどな。
『まぁ、それだけじゃなくて普段もなるべく正体や所在がバレない様に工夫しているんだが、正体を知ってるプレイヤーが増えたらOOOで遊び難くなりそうだろ?………それと1番大きな理由なんだが、基本的に僕はギルドマスターの器では無いんだよな』
ギルドに入れなかったプレイヤーから、僕はともかく仲間が嫌がらせ等を受けるのは勘弁願いたい。
『私達としては、生産系のプレイヤーには、新人プレイヤーが気軽に街の工房を使用出来るようにする為に生産系ギルドへの加入を進めたいんやけどな、生産ギルド組合の【noir】がメンバー加入を求めて無いからな、少し困ってるんや』
なるほどな、アキラが直接相談しない訳だよな。この件は、はっきり言って僕に対しては言いにくかっただろうな、ネイルさんとトウリョウにも、かなり気を使わせてるよな。
『シュン、またクエスト申請するか?』
それでは根本的な解決にはならないだろうな。
『どうしようかな。もう1回くらいはクエストしても良いんだが…………まぁ、これは皆で相談した方が良いだろうな。何か解決策が出るかも知れないし、メンバー増やすにしても、どんなクエスト?にするかとか、問題が多そうだしな』
以前とは明らかに立場が変わっているので、同じ様なクエストではダメだと思う。
『トウリョウ、悪いが少し時間をくれないか?ちょっと予定も立て込んでてな』
トウリョウ達も、すぐに答えが出ない事だとは分かっていたみたいで、すぐにOKの返事が返ってきた。
いつの間にか色々と考えないといけないみたい立場になっているみたいだな、目の前の事から少しずつ終わらせていくか、まずは王様の案件からだな。その時に皆に今日の事を相談しようかな。
翌日、僕はログイン直後に【シュバルツランド】の街を散歩している。まぁ、散歩と言っても工房や露店等をみて回っているだけなんだがな。確かに、ネイルさん達の言うように、明らかにプレイヤーが工房から溢れている。少しだが順番待ちの列まで出来ているよな。平日でこれなら、休日は…………
このメンバーの中にも【noir】に入りたいプレイヤーがいるんだろうな………
改めて全ての工房を回ってみたが、何処も似た様な感じで、日頃から空いている工房が見当たらなかった。まぁ、この状況は運営側も分かっていると思うので何らかの改善策は有ると思うのだが………それでも、このままではダメだよな。
『何か良い案ないのかな?』
広場の端の方で街を眺めながら、心の声を思わず呟いていた。
〔『主よ、心の声が漏れているのじゃ』〕
〔『…………工房作る?』〕
〔『黒、工房は既に持ってるぞ』〕
〔『なるほどのう。主よ、黒はホームとは別に工房を作ってはどうかと言っておるのじゃ』〕
『えっ!?』
黒からの意見に思わず、《心話》を使うのを忘れる。
なるほどな………街の工房とは別に、皆で共有出来る大きな工房を作れば、問題になっているプレイヤーが溢れる状況は緩和出来るよな。これは全く思い付かなかったぞ。まだ【noir】の土地だけでなく、街の中にも土地が余っている。出費さえ考えなければ案外良い案かも知れない。もし、作るなら【noir】と分からない様な場所が良いだろうな。
〔『主よ、それも良い案かも知れないのじゃが、黒の意見を聞いてワシは良い案を思い付いたのじゃ』〕
僕の心を読んで、白が答えてきた。
〔『ちなみに、白のはどんな案なんだ?』〕
〔『これは一石二鳥なのじゃ。王様の依頼の報酬で街の工房を大きくして貰うのじゃ』〕
〔『……………そんな事が可能なのか?』〕
確かにそれが可能なら一石二鳥どころか、余計な出費も出ないので最低でも一石三鳥の価値は有るだろう。
〔『主よ、それは王様のみぞ知るじゃ』〕
まぁ、そうだろうな。依頼の内容も分からないのに報酬を選べる訳がない………だが、そう言う可能性は有るだろうな。まぁ、どっちにしろ明日王様に会ってからだよな。ある程度自分なりの考えを纏める。
〔『今日は、残り時間は何しようか?』〕
考えが速めに纏まった事も有り、ログアウト迄にまだ時間が有る。
〔『…………騎乗出来る魔物』〕
ガイアの話に有ったヤツだよな。捜索となると時間的には短いかも知れないが………狩りのついでに行っても良いかな。丁度良い事にゲートの近くにいるしな。迷う事なくゲートで【ヴェール】に転送して行く。
最近の【ヴェール】は《木工》《調合》の素材を採取に来るプレイヤーか新人プレイヤーしかいない。魔物のLvがお手頃な事も有ったのだが有るが、元々街としても小さめだからだ。
『ここにいたら目立ちそうだよな………』
『何が目立つんすか?』
『いや、捜し人?』
『捜し人っすか。手伝うっすよ』
『おう、ありがと………って誰?』
急に背後から話しかけられて、普通に会話していたのだが今日の僕は1人だと思い出し、振り返ると………
『嫌だな~、チャリっすよ』
チャリさんがいた。
『こんな所で奇遇っすね。捜し人手伝うっすよ』
『いや、今日は大丈夫かな。宛が無くて手探り状態なんだよ。困った時は、また頼むよ。あっ!!月末のオークションはヨロシクな』
残念そうにしているチャリさんを置いて、森の中に入って行く。
白と黒は。チャリさんに気付いていたのなら教えて欲しかったよな。でも《細工》系ギルドのチャリさんが、【ヴェール】にいるとは思わなかったな………新しい素材でも見付かったのかな?僕の方は、全然目当ての物が見付からないんだけどな。
暫く捜しているのだが見付かるのは普通のMOBばかり、白と黒の《探索》スキルにも引っ掛からないようだな。まぁ、レアな存在に1回で会えるとは思って無いがな。都合良く簡単に会えるのは漫画かアニメくらいの物だろう。
『仕方ない、滝でも見て帰ろうか………』
森まで来たのかなら癒されて帰るのは、僕の中では密かな定番だ。それに久しぶりに見る滝は相変わらず見事だった。
『うん!?アレか?白、頼む』
滝の上に黒い馬?みたいな魔物に乗るプレイヤーが一瞬見える………ってか、アレって………
僕が呼ぶのと同時に白は竜の姿で、一瞬見えたヤツを追っかけて行く………
『ダメじゃ、もういなかったのじゃ』
……が、滝の上まで飛んで行ったところで見失った様だ。かなり素早かったよな。確認できたのが一瞬過ぎて《見破》も使う隙がなかったが、いるのは確かに確認したぞ。
『主よ、残念じゃがファミリアでは無さそうなのじゃ。更に、少なくともアレはプレイヤーでも無いのじゃ。多分じゃが、希少魔物の人馬一体なのじゃ』
レアMOBにただのを付けるのは間違っていると思うが、人馬一体って事は、アレはケンタウロスなのか?
白や黒の目当てのファミリアでは無かったのなら、今のところは時間をかけて探す必要も無さそうだな。まぁ、あのスピードだけは魅力的だったけどな。
装備
武器
【雷光風・魔双銃】攻撃力80〈特殊効果:風雷属性〉
【白竜Lv25】攻撃力0/回復力145〈特殊効果:身体回復/光属性〉
【黒竜Lv22】攻撃力0/回復力142〈特殊効果:魔力回復/闇属性〉
防具
【ノワールシリーズ】防御力105/魔法防御力40
〈特殊効果+製作ボーナス:超耐火/耐水/回避上昇・大/速度上昇・極大/重量軽減・中/命中+10%/跳躍力+20%/着心地向上〉
アクセサリー
【ダテ眼鏡】防御力5〈特殊効果:なし〉
【ノワールホルスター】防御力10〈特殊効果:速度上昇・小〉〈製作ボーナス:リロード短縮・中〉
【ノワールの証】〈特殊効果:なし〉
天狐族Lv36
《双銃士》Lv58
《魔銃》Lv57《双銃》Lv52《拳》Lv35《速度強化》Lv83《回避強化》Lv85《旋風魔法》Lv33《魔力回復補助》Lv85《付与術》Lv52《付与銃》Lv60《見破》Lv82
サブ
《調合職人》Lv24《鍛冶職人》Lv27《上級革職人》Lv2《木工職人》Lv30《上級鞄職人》Lv3《細工職人》Lv24《錬金職人》Lv24《銃職人》Lv1《裁縫職人》Lv9《機械製作》Lv1《料理》Lv39《造船》Lv15《家守護神》Lv15《合成》Lv18《楽器製作》Lv5
SP 16
称号
〈もたざる者〉〈トラウマ王〉〈略奪愛?〉〈大商人〉〈大富豪〉〈自然の摂理に逆らう者〉〈初代MVP〉〈黒の職人さん〉〈創造主〉〈なりたて飼い主〉




