情報開示?
僕達は、クラーゴンとのレイドバトルを終えて【noir】のホームに戻って来ている。本来なら造船所、もしくは、船上で打ち上げをする予定だったのだが、初対面のメンバーの何人かに予定が有った為、打ち上げ兼親睦会は後日と言う事になっている。
その為、今リビングに集まっているのは、それなりに親しいメンバーになっている。僕は、紅茶で軽く口を湿らせて話をする態勢を整えた。特に喉が渇いている訳では無いが、雰囲気は大事だろう。
『さて、僕は、何から話せば良いんだ?』
話し合いと言う名の吊し上げの始まりだな。はたして、僕の味方はいるのだろうか?
〔『主よ、ワシらもファミリアの情報が欲しいのじゃ』〕
〔『了解だ』〕
少なくとも、白と黒は味方だな。
『俺達も、これがマナー違反だとは理解してるんだが…………それでもな…………』
『別に気にするな。この際ここにいるメンバーには、ある程度何でも話すが………そうだな。情報は交換にして欲しい。僕達にもメリットがないと、どうにもな………』
やる気が出ない。
『それは、当然ですよね。いつもこちら側ばかりが、重要な情報を頂く訳には、いきませんからね………分かりました。ギルド【ワールド】は、それで構いません』
『私達も、大丈夫』
ジュネが仲間に確認して代表で答えた。
『悪い。俺達には、出せるようなレア情報が無いんだが………』
アクアのギルド【双魔燈】は戦闘、冒険重視のギルドだからな、僕らが欲しい情報等は持って無いだろうな…………
『そうだな………ドロップ素材やスキル、エリアの情報等でも良いぞ』
これは、これで生産系の職人には必要な情報だからな。
『分かった。それなら助かる』
『じゃあ、改めて知りたい事は?』
『では、私から良いですか?』
まずは、ヒナタが口火を切った。僕が頷くと、質問を続ける。それにしても身内からも責められる状態の僕って、何なんだろうな。
『何故、ライトニングが空を飛べたんですか?』
って言うか………まぁ、その質問になるよな。覚悟はしていたよ。
『ヒナタにも、隠していて悪いと思ったんだが、今回のレイドバトルが船上だったからな。いくら、ヒナタやカゲロウが壊れたら直すと言っても、皆で造った船を簡単に壊されたく無かったんだよ。だから、万が一の為に準備時間に【アーツの書・浮遊】を《合成》させて貰った。少しテストをしてみたが魔力消費の問題で長時間の飛行は無理で、短時間の飛行なら可能だったから切り札にさせて貰った。ヒナタ、隠していて本当にすまなかった』
僕は、全力で頭を下げる。ちなみに、竜の力を使える僕は長時間でも飛行出来るんだが………それは、流石に内緒だな。
『そうだったんですね………シュンさん、色々と気を使わせて、すみません。ありがとうございました。怒って無いので頭を上げてください。私は、理由が知りたかっただけなんですよ、せっかく皆で作った船なんですからね。それにしても、【アーツの書】も《合成》出来るんですね、知りませんでしたよ』
『そうなのか?裏の露天風呂にも【アーツの書・結界】を《合成》して有るぞ。ちなみに〈結界〉には、覗き防止効果も有るからな。安心して楽しんでくれ』
【アーツの書】の《合成》の件は言って無かったっけ?カゲロウだけが驚いていないので、初入浴の時にしか話して無いかも知れないな。
『ちょ、ちょっと待て、さりげなく話が進んでいるんだが………露天風呂って何だ?OOOにそんな施設や機能無かったよな』
アクアが慌てて話に割り込んで来た。
『いや、これは話が長くなるから省略するが、少し前に裏庭に《合成》で作ったんだ………アクアは知らなかったか?』
女の子達は、何回かお風呂で女子会をしていたようだがな…………アキラが誘って【双魔燈】のレナも参加していたはずだ。レナやガイア達もお風呂気持ち良かったよねとか話している。どうやら、アクアは教えて貰えなかったんだな。露天風呂の製作には、それなりに金が掛かった事も補足しておくかな。
『おい、アクア、そんな事でいちいち拗ねるな。それで、次は誰だ?』
拗ねているアクアを無視して次に進める事に。
『では、私が皆さんを代表して………その2匹のドラゴンは何者ですか?《召喚》《調教》スキルですか?以前のレイドバトル以外で、ドラゴン系の魔物は見付かって無いはずですよ』
ガイアが、僕の両肩に乗っている白と黒の2匹を指差している。
『え~っと、この情報は………多分と言うか、絶対にレアなんだが、同じ様な特殊情報は有るのか?』
僕の発言で一瞬で静かになる。少し可哀想だったかな。
『まぁ、今後に期待でも良いんだけどな。白、黒』
2匹を呼ぶと肩から手のひらに飛び降りて、僕の手のひらの上で銃の姿になる。
『右手が【白竜】の白で、左手が【黒竜】の黒だ。僕が《銃製作》で造った武器だ。これは、魔獣器と言って、1種のファミリアになるそうだ。ちなみに、話す事も出来るし、成長してスキルも使える。あっ、こう言う魔獣器は他にも有るらしいぞ』
簡単に説明したのだが、やはり開いた口が塞がらない様だな。これでは、話の半分も聞き取れているかは分からないよな。同じ説明を2度するのは流石に嫌だぞ。
ギルドメンバー以外の皆は、依然としてポカンとしている。その間に白と黒は竜の姿に戻った。今は、翼をはためかして僕の上に浮いている。
『それで、ガイアは、この情報と等価値の情報は有るのか?って、お~い、聞いてるのか?』
『あっ!?いや、すまない。あまりにも予想外で。流石に、これに見合った情報は無いですよ………あっ!!そうだ!!これは、ファミリアかどうかは分からないんですけど………この前、魔物に騎乗しているプレイヤーを見かけたました。それと、複数のスキルから新しいスキルが派生するのが複合スキルみたいです』
《槍》スキル《斧》スキル《剣》スキルで複合スキル《斬撃》が発生したらしい。これには、カゲロウやアクア達が興味津々と言った感じでガイアの話を聞いている。【noir】で関係有りそうなのはカゲロウかフレイぐらいだよな。それにしても戦闘系の複合スキル情報は初だな。もしかしたら、銃系にも戦闘系複合スキルが有るのかも知れないな。まぁ、今更その為だけに《狙撃銃》と《機関銃》スキルを取得する気は無いけどな。
『複合スキル情報か………僕も、複合スキルは、既に何個かは取得しているぞ。全く使って無いのもあるけどな。ちなみに《銃製作》も複合スキルだ。それにしても騎乗出来る魔物か………それは、ちょっと気になるよな』
〔『白、どうだ?』〕
〔『実際に、会ってみないと分からないのじゃが、可能性は有るのじゃ。場所を訪ねてみてくれんかの』〕
〔『了解だ』〕
『ガイア、ありがとう。見かけた場所を教えて貰えるか?』
『あれは、【ヴェール】付近の森の中だったよね?』
ガイアの変わりにリツが答えてくれた。そのリツの言葉にガイアとレジーアは頷いている。落ち着いたら、少し本腰を入れて探して見るのも良いかもな。ファミリアじゃ無くても移動が便利になるかも知れないからな。
『あの………白ちゃんや黒ちゃんを私も欲しいのですが、素材を用意したら作ってくれますか?』
マナカの質問には、皆が同様に興味深い眼差して僕を見つめている。にわかにだが、確実に熱気が高まってきたな。
『残念だが、答えはNoだ。素材なら在庫は有るが………まぁ、元々素材自体もレアな素材も必要になるから集めるのは難しいんだがな。理由としては【白竜】と【黒竜】の製作後にリストから名前が消えているので、2度と同じものは作れないからだ。あぁ、説明して無かったが《銃製作》は、他の生産系と違ってリストからしか製作出来ないんだよ。それに、【白竜】と【黒竜】は一応ユニーク武器らしいからな』
ユニーク武器と聞いて一気に熱気が冷めた気がするな。仕方ないとは思うが………出来ないものは、出来ない。
『それは、了解。カゲロウが、あの時使ったのは魔法?』
ジュネが知りたかったのは、魔反の事か………確かにあの威力は、切り札にしていた僕ですら驚いたからな。
『あれはだな………う~ん、フレイ頼める?』
こう言う時は製作者に頼むのが1番だ。実質、これはフレイの手柄だしな。それに、僕も実際に見たのは始めてなんだ。分からない事も有るだろから、分かる人に任せるのが良いだろう。
『ウチがか?まぁ、えぇで。アレはやな。アーツや魔法とは違うんや、防具のボーナスの1つやねん。武器には、セットボーナス有るんは有名やから知っとるやろ?防具にもシリーズボーナスって言うんが有るんよ。発生条件がシビアで付けるのは難しいんやけどな。カゲロウのは魔反って言うて、戦闘中に1度だけ、相手の魔法を2倍で跳ね返す代物やねん。一応、言っとくけど【noir】のメンバーの装備には、シリーズボーナスが付いてるで、ウチとシュンの製作や』
『それは………依頼すれば、俺達にも作ってくれるのか?』
アクアが真剣な顔でフレイに質問している。
『それは内容とお金次第やな………シリーズボーナスの発生はセットボーナスと違って本当に難しいんやわ』
指でお金を表現している。流石関西人、商売が上手そうだな。
『それと、シュンが、話した話を含めて秘密にして欲しいんやわ。ウチはこれ以上、依頼や噂が増えるのは、叶わんわ………楽しいし、嬉いんやけど疲れる』
ただでさえ、刀の依頼が多くて狩りに行けて無いと愚痴を溢している。確かに生産で毎日が忙しそうだからな………
皆が、それなりに今日の出来事に納得できたようだな。これで暫くは平穏が続いてくれたら良いんだかな………そろそろ、この会を締めようかな。
『他にも聞きたい事は有るか?無かったら……』
大体は話したはずだかはな。これ以上は………うん?アキラが手を挙げている。
『どうした?アキラ』
『………シュンは、他にも何か隠してない?かな』
『いや?無いと思うんだが………』
『………《探索》系のスキル持っている人は、気付いた人もいると思うんだけど………あぁ、えっ~と多分シュンの《見破》も含まれていると思うんだけどね。今日のレイドバトル、シュンの存在が2重?って言えば良いのかな………何かあやふやになってたんだよね。驚いて、直接確認してみたら左目だけが赤くなってたんだよね。戦闘後には黒目だったから、見間違いかも知れないんだけどね』
戦闘中に赤目になるのは自覚が有るが、存在が2重?あやふや?これは分からないよな………それにしても、あの戦闘中で気付かれるとは思わなかったな。後衛に控えて目立たない様にしていたのだがな。まぁ、はっきり言って油断してました。
〔『白、黒、何故か分かるか?』〕
〔『いや、ワシは気づかなかったのじゃが………黒はどうじゃ?』〕
〔『………竜の力の分、余分に力が乗っかってるから?』〕
確かに竜の力で回復中は、尋常じゃないくらい身体が活性化している。これは《見破》も確認しているので間違いは無いが、それだけで、あやふや?になるのだろうか………
『それなら、ウチも疑問有るで、シュンの使ったMPは異常や無かったか?いつもなら、あれだけ《付与魔法》使ったらMP枯渇してるやんな?更に今日は魔動力で船も動かしてたんやろ?いくら《魔力回復補助》のLvが上がっている言うても………何か、おかしくないか?………シュン、本当に大丈夫なんか?』
確かに、今日は普段以上に《付与術》や回復にMP を行使している。付き合いが、それなりに長い2人にはバレるのは仕方ないかも知れないな。
〔『主よ、これ以上隠すのは難しいのでは、無いじゃろうか?』〕
〔『………黒には無理』〕
〔『そうだな。ギルドメンバーだけには、竜の力の事を話そうか………』〕
『本当にすまない。まさか、これに気付くとは思ってなかった。少し心配かけたかも知れないな。これに付いては、あとでギルドメンバーにだけ話すよ』
『シュン、俺やジュネにも秘密なのか?』
アクアは、知りたそうな顔をしているが、こればかりは簡単に言う訳にはいかない。今後のイベントで盾扱いとかされたくは無いしな。
『今までに提供した情報ですら、まだ情報を貰ってないのだが………そうだな、等価値の情報が有れば話す事にするよ。聞けば納得すると思うけど、これと等価値は並大抵の情報では多分無理だな。皆も知りたかったら、凄くレアな情報かファミリアや魔獣器の情報を持って来てね』
これだけ言っておけば簡単には聞いてこないし、最悪でもファミリアや魔獣器の情報と交換出来るだろう。
『そうですね。今でも十分な情報を頂きましたし、これ以上は良心が耐えれません………シュン、今回の事は借りで良いですか?私達も新しい情報が入れば絶対提供します』
『それは、俺達も同意だな。借りにしといてくれ。俺達も必ず返すからな』
『私のところも、同じく』
アクア達に続いて、ジュネ達もガイアの提案に乗っかった。皆各々に得意な分野が違うので、僕達が入手出来ない情報や僕達とは違った情報が入ってくる可能性が高い。
『それと、話は変わりますが、皆さんクラーゴンのドロップの確認はしましたか?私はドロップ武器【クラーゴンの鞭】が手に入りましたよ』
鞄から取り出して見せてくれる。クラーゴンの触手?もとい脚を彷彿させる鞭だ。はっきり言って不気味だよな。
『くそっ、俺は今回も武器じゃなかったぜ。海の藻屑とクラーゴンの目玉って言う素材だな。そこそこレアみたいだな』
聞いた事の無い素材は生産系の職人としては羨ましいのだが。
『素材、珊瑚の枝、海洋石』
ジュネの方も新しい素材だな。
『ウチもガイアと同じでドロップ武器みたいやな。ウチのは【海槍】って言う槍やな。これダジャレ系か?攻撃力はそこそこやけど、特殊能力は面白そうやわ』
今回は、武器と素材が半々くらいの確立で出ていなる。レア度はバラバラのようだが、どれも魅力的だよな。まぁ、槍、特殊能力と聞いて、ガイアは目の色を変えているが………これは、スルーだな。
変わったところで言うなら、ケイトとレジーアの獲得した【アーツの書・潜水】と【アーツの書・請け負う】だろう。多分〈潜水〉は潜れる様になるのだと予想が出来るが〈請け負う〉に至っては想像出来る範囲が広すぎて分からない。一体全体何を請け負うのだろうか………【アーツの書】系のアイテムは名前で能力を想像できるが、確認する事は出来ない仕様になっている。
これに付いては不思議と《見破》でも視る事は出来なかった、1種のギャンブル要素か?運営側の若干意地の悪さを感じている。まぁ、単純に《見破》スキルLvの問題かも知れないがな。
以前のイベント報酬でカゲロウが獲得した【アーツの書・毒】は毒の攻撃系アーツか〈追加・毒〉を覚えるかと期待していたが、覚えたのは〈解毒〉のアーツだった。掲示板で確認してみたが、期待と違っても大抵は便利なので問題ないが、たまに拍子抜けする物も有るらしい。僕が、過去にの獲得した物は、まともで良かったと思う。
それにしても、クラーゴンのドロップか、色々問い詰められていて確認する暇が無かったよな、どれどれ………
『誰か………古地図ってアイテムだったヤツいるか?』
『えっ!?宝の地図ですか?』
僕の質問に、いち早く反応したのはリツだ。
『それっぽくも見えるけど………な、アイテム名は古地図だ。実際は分からないな』
って言うか、僕以外は誰もいないのか………一体何だろうな。これは?
何処かの地図なんだろうけど、当然行った事は無いし、近場でも無さそうだな。この地図で解るのは珊瑚礁が多く有り、高い山が有る島の近くの場所って事くらいだよな。赤字でXが書かれているので、そこを探せって事だと思うけど。まぁ、冒険をしていれば、いずれ辿り着くんだろうけど、問題は何が有るかだよな…………レアアイテムなら嬉しいし、普通に素材等でも良いが、ろくでも無い事は勘弁して欲しいな。
くそっ、嫌な事を思い出してしまった。苦労して見付けた宝箱でポーションとか………最低だと思うぞ。
『その場所を探すのか?』
俺も手伝うぞと言いたそうなアクア、だが………
『う~ん、この場所に行くには、最低限船が必要そうだしな。まぁ、気長に探すよ。何か有ったら、また今回の様に助っ人を頼むわ』
今のところ、人の手は必要ないだろう。地図の場所を見付けた時は分からないがな。
色々な話も纏まり、取り敢えず、今日は解散と言うことになった。各々がゲートから転送して行く。【ワールド】は以前に繋いで有ったが【ウィザード】【双魔燈】も、これを期に繋がして貰った。これからのイベント時、協力するのに便利だと言う理由だ。お互いホームに誰も居ない時は使用不可になる設定も織り込んだ。最後にレジーアが転送しようとした時に………
『おっ!!そうだ、おいシュン、【アーツの書・請け負う】だが今日の情報の代わりに貰ってくれ。俺は、既に〈請け負う〉を取得してるからな。あまり使い勝手は良くないが………【noir】のカゲロウには合うんじゃないか?』
レジーアが言うには《大楯》アーツの〈請け負う〉は、味方への攻撃を代わりに請け負える能力らしい。攻撃を受けることには変わらないので、仲間がピンチの時の回避策にしかならないアーツだ。確かに、カゲロウのシリーズボーナスとの相性は良いかも知れないな。だが、貴重な物には代わりない。
『良いのか?貴重な物だぞ?』
『あぁ、今回の情報は、どう考えても貰い過ぎだからな。【ワールド】でも俺以外には合わないアーツだ。だからな………ほら』
使い道が無いと言い【アーツの書】を僕に手渡してくる。
『分かった。大事に使わせて貰うよ、ありがとな。レジーア』
『よせよせ、礼なんて照れるだけだ』
豪快に笑いながら転送されていく。
『さぁ、シュン、皆帰ったし話してもらうよ』
『別に良いんだけどな。他言無用で頼むぞ。約束出来るか?』
『約束しますです』
『『大丈夫』です』
『ウチも大丈夫や』
『当然、私もね』
『雪もなの』
ケイト、カゲロウ、ヒナタ、フレイ、アキラ、雪ちゃんの順で即答してきた。ちなみに、雪ちゃんは皆が帰ったので自分の部屋から出てきている。
『それなら話すが、まずは裏庭に行こうか』
皆を引き連れて裏庭に行く。両手に【白竜】と【黒竜】を持って………
『じゃあ、まずは僕のステータスを表示するから見ていてくれ、次に、このエリアを攻撃可能に設定し直したから………フレイ、全力で僕を攻撃してくれないか?』
この中で僕を除けば、一瞬での攻撃力が高いのは、フレイだろう。
『えっ!?何でや?大丈夫なんか?』
『大丈夫だから、全力で頼む』
『………しゃ~ないな、やるからには本気で行くで、手加減無しや。覚悟しいや………〈抜刀酒咲き〉』
フレイが今使える最高の《刀》アーツ、抜刀で切りつけたあとに、遅れて同じ軌道の見えない斬撃がやって来る2連撃の〈抜刀酒咲き〉これは、単純に見事としか言えないな。
『痛っ!!!やっぱり痛みは有るんだよな。ちょっと、早まったかもな………それで皆分かった?』
『あっ、はい、切られた瞬間はHPが減りましたが、すぐに全快して、えっ!?』
ヒナタは、有り得ないって、小声で呟いている。
『おいおい、ちょっと待ちいな。痛みだけ?有り得へん………それは、なんぼなんでも有り得へん。ウチは、前線組と比べると大したこと無い攻撃力や、そやけど、それなりにLvも有るし、それに、武器性能だけは現時点では最高級なはずや。〈抜刀酒咲き〉かて、連続で喰らった時の2撃目は防御力無視のクリティカル………痛いだけで済むはずは無いんやで』
フレイの慌てようが尋常じゃ無いな。言葉通り全くの手加減無しとはな………全力でとお願いしたのは僕だが、友達なら少し手加減は有っても良いんじゃ無いかと思う。
『これが、【白竜】と【黒竜】のセットボーナス竜の力の効果、自己回復力強化なんだ。自己回復力強化ってよりは瞬間回復って感じなんだけどな。まぁ、ちょっとした無敵って感じかな。ただ、まぁ、痛みは有るんだよ、痛みは………』
僕は笑いながら答えたが、皆一斉に………
『『『『『『………それは笑えない』』』』』です』
雪ちゃんを含めて全員に突っ込まれてしまった。
『カゲロウ、どうだ?少しは進んでるのか?確か次の日曜日だよな』
あのあとで、100%を出した竜の力のリスク等も説明させられて、白と黒と僕はアキラを筆頭に全員から説教を受けていた。白と黒も絶対に使うつもりも無かったが、アキラ、フレイ、ヒナタの各々から別々に念を押されていた。今は、ケイトに捕まっている。これからは、白の小言が増えそうで滅入るな。
僕は、説教中に然り気無く工房の方へと移動したカゲロウを見逃す事は無かった。皆、が白と黒に注意している間に逃げさせて貰おうかな。
『おぉ!?ギルマスか、もう良いのか?色々災難だった………』
僕は、指を1本立ててシッーーと言い、周りを見回した。それだけでカゲロウは僕が逃げて来た事に気付いてくれた。
『あぁ、うん。デザインは、これに決めたんだけど……素材の予備が無いからな……まだ心構えが………』
『大丈夫だ、その杖は自分で作ったんだろう?その杖通りに作れば問題ないだろ。かなり良い出来だと思うぞ』
カゲロウの手元には、時間をかけて丁寧に作られた杖が有る、《細工》系のスキルは使われてない代わりに《合成》を使って宝石が組み込まれている。
『ありがと。頑張ってみるわ。ギルマスも、このあとは生産するのか?』
『そうだな…………そうしようかな。白と黒が捕まってるから外出れないからな。それにちょっと依頼されたモノも有るしな』
マリアに依頼された【狙撃銃】の新作。オークションの時よりも素材が集まっているので、新しいものが作れる様になっている。
先ずは、リストを確認してみる。
『2種類か………』
作れる狙撃銃は2種類有るが、マリアのプレースタイルが分からないので、どちらを作れば良いか分からない。
【インビジブル】攻撃力85〈特殊効果:無音/追加・不可視〉
この能力は、発射音が無くなり弾道が見えなくなる様だな。まさに、暗殺向きで《狙撃士》的には、有ったら便利な能力だよな。
【俊転】攻撃力80〈特殊効果:オートリロード〉
この能力は、僕が欲しかった能力だな。魔銃系を使う今となっては必要ないが、マガジンを鞄に入れておけば、弾が無くなった時に自動でリロードされる。《狙撃士》が近距離で射撃する事は無いだろうが、リロードの手間を省いて連射出来るのは、魅力的だろうな。これは、本人にメールで確認してみるのが1番かな。性能と価格を書いて………
『送信!!っと』
価格は素材費だけで、かなり高くなるよな………製作費は、少しオマケしておこうか。知り合い価格ってところだろう。
次は、ケイトの誕生日プレゼントだ。ケイトの誕生日が近い事を話したら、ギルドでケイトの誕生日を祝う事になったので、プレゼントは各自で用意して、当日の会場のセッティングは女の子、料理は僕の担当になっている。当然だが、ケイトには秘密だ。日曜の夜は、ギルドの定例会議になっているし、ケイトのログインも確認済みだ。
『杖は、カゲロウが作るからな………僕は、何が良いかな?』
基本的に女の子の誕生日を祝うなど、現実でも純以外でしたことが無い、僕だからな。更に、来月にはアキラとフレイの誕生日までやって来る。悩みの種が尽きないな。
まぁ、まだ1ヶ月以上先の事だから、2人の分は余裕が有るから良いんだけどな。ちなみに、僕は1月1日で、純は12月31日の誕生日なので、親戚以外では蒼真家族にしか祝われた事は無い。だから、今年は少し楽しみでも有る。
一昔前は遅く産まれた方が兄や姉になるらしいが、今はどっちでも良いらしく、僕の家では先に産まれた純が姉になっている。当然、僕もそれで問題ないからな。
まぁ、それはおいといて………どうせなら、ケイトに長く使って貰える物をプレゼントしたいよな。
そうだな。久しぶりに本気で鞄でも作るか、店舗用の商品は定期的に補充しているが、仲間用の鞄は久しく新調していない。これなら、僕しかプレゼント出来ないし、皆と被る事も無いだろう。
Lvも上がっているし、素材的にも新しい魔物の皮が手に入っているので、性能アップや新しい製作ボーナスも追加できるだろうな。まずは、試作を兼ねて自分の鞄を作ってみようか。
素材は、ポルト周辺で最近確認された新しい魔物サークルウルフの皮と強度面での定番リザードの皮の合皮だ。更に《合成》スキルで余っていた宝石や精霊の結晶を合わせて数パターンの合皮を作ってみる。あとは慣れ親しんだ製作作業だ。手間取る事は無かった。出来た試作品の中でも、特に異彩を放っていたのが………
【試作ボディバッグその3】
〈特殊効果:重量軽減/透明化/自動回収・ドロップ素材〉〈製作ボーナス:容量拡張・最大/自動回収・自然素材〉
ボディバッグタイプ
『………………』
これは水精霊の結晶を混ぜた分なのだが、他の試作品に群を抜いて異常な物が出来た。新しい製作ボーナスを選べたので選んでみた結果…………はっきり言って、試作品の性能では無い。オークションに出すと目玉になりそうな性能だよな。
実際は、テストしてみないと感覚が分からないが《見破》で視た限りだと、自動回収・自然素材は採取や採掘をした瞬間に鞄への回収が終わるようだな。そちらはまだ良いが、容量拡張・最大ってどんだけ入るんだ?容量拡張・中や大でもかなりの量が持ち運べている。これは、近いうちにテストしてみる必要が有るよな。結果が良ければ、自分用とケイト用にカスタムすれば良いからな。
装備
武器
【雷光風・魔双銃】攻撃力80〈特殊効果:風雷属性〉
【白竜Lv23】攻撃力0/回復力143〈特殊効果:身体回復/光属性〉
【黒竜Lv20】攻撃力0/回復力140〈特殊効果:魔力回復/闇属性〉
防具
【ノワールシリーズ】防御力105/魔法防御力40
〈特殊効果+製作ボーナス:超耐火/耐水/回避上昇・大/速度上昇・極大/重量軽減・中/命中+10%/跳躍力+20%/着心地向上〉
アクセサリー
【ダテ眼鏡】防御力5〈特殊効果:なし〉
【ノワールホルスター】防御力10〈特殊効果:速度上昇・小〉〈製作ボーナス:リロード短縮・中〉
【ノワールの証】〈特殊効果:なし〉
天狐族Lv36
《双銃士》Lv56
《魔銃》Lv56《双銃》Lv51《拳》Lv35《速度強化》Lv82《回避強化》Lv84《旋風魔法》Lv33《魔力回復補助》Lv82《付与術》Lv50《付与銃》Lv59《見破》Lv78
サブ
《調合職人》Lv24《鍛冶職人》Lv27《革職人》Lv50※上限《木工職人》Lv30《鞄職人》Lv50※上限《細工職人》Lv24《錬金職人》Lv24《銃製作》Lv35《裁縫職人》Lv8《機械製作》Lv1《料理》Lv35《造船》Lv15《家守護神》Lv12《合成》Lv18
SP 78
称号
〈もたざる者〉〈トラウマ王〉〈略奪愛?〉〈大商人〉〈大富豪〉〈自然の摂理に逆らう者〉〈初代MVP〉〈黒の職人さん〉〈創造主〉〈なりたて飼い主〉




