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OOO ~Original Objective Online~ 称号に振りまわされる者  作者: 1048
第1部 第3章
27/65

クラーゴン討伐

『マジか………』

30人以内限定でのレイドバトル?だと、この仕様(人数限定)には何か意味が有るのか?………多分、このレイドバトルを攻略しないと海で自由に航海出来ないんだろうな。


だったら、こっちも作戦をしっかり練らないとダメだな。それに人数制限が有るからメンバーも厳選しないとな。残念だが、今回は雪ちゃんを連れていけそうもないな。


『おい、シュン、俺だアクアだ。緊急連絡聞いたぞ、俺たちも参加させてくれ』

早いな。まだ、緊急連絡から1分も経って無いはずだよな。コールに出るなり早速参戦の要望かよ。少しは心配してくれてもバチは当たらないと思うがな。


そらに、いつも思う事だが、少し落ち着いて欲しいものだ。まぁ、戦力としては信頼出来るし、計算出来る。なによりも双子の姉(ジュネ)並みに付き合いが長い。僕としては、当然参加して貰うつもりだ。


『取り敢えず、6人でパーティー組んでホームに来い。話は、それからだ』

それだけ伝えてコールを切る。僕らも、まだ状況の整理が出来てないんだからな。


『シュン、ジュネ達も来るって』

僕とアクアが話している間にアキラにもコールが有ったようだな。魔法攻撃に関しては、OOOトップクラスのギルドだ。参戦は喜ばしいな。他に僕の知り合いで頼りになりそうなのは………取り敢えず。メールだけは入れてみるか。


『了解だ。ヒナタ、1回造船所に戻ろうか』


『分かりました』

帆をたたみ、魔動力エンジンで船を操る。魔動力の核に手をかざしているだけの様に見える。


『ヒナタ、それって誰でも出来るのか?』


『はい。簡単なのでMPさえ有れば誰でも操縦出来ますよ』

ヒナタが言うには、魔動力エンジンは手をかざして魔力を込めて進路を想像するだけで良いらしい。確かに、簡単だな………今回は船上でのレイドバトルなので、この魔動力エンジンは重要なポイントになるかも知れないな。





ホームに戻るとアクアとジュネのパーティー、それとメールで誘ってみた………


『本当に、私達が参戦しても宜しいのですか?』

ガイア達のパーティーがいた。


『是非、お願いしたい。僕にレイドバトルの経験は、あの時の1回しか無いからな』


『おう、俺達に任せておけ』

レジーアも相変わらずの様だな。まぁ、今回は頼りになるけどな。ガイア達はOOO以前に他のMMOでも多くのレイド経験が有るそうだ。流石は、自称ゲーマーの集いだな。これで4パーティーか………魔法特化のジュネパーティー、打撃特化のガイアパーティー、バランス型の僕とアクアのパーティー、あと欲を言えば回復補助特化のパーティーが欲しいよな。


『シュン、さっき広場にレイドバトルの詳細が掲示されてたからスクショ撮って来たよ。見るかい?』

リツがスクリーンショットを展開する、その内容は………




レイドバトル クラーゴン討伐


レイドリーダー シュン(黒の職人さん)

5パーティー(30人以下)限定

戦闘開始後逃亡不可

討伐報酬 海エリア・港・造船・客船の開放

個人報酬 ドロップ素材2種 or  ドロップ武器 or  アーツ

敗北ペナルティー 船の破壊とクラーゴン討伐の権利剥奪



『何故!?ここに来ても、まだ黒の職人さんを推してくるのか?それにしても敗北ペナルティーが痛すぎるんだが………』

完成したばかりの船を破壊されるのは辛い。誰よりもヒナタが耐えれないだろう………まぁ、報酬の一部は予想通りだし、個人報酬は、それなりに魅力的だと思うけどな。


『…………勝ちましょう。勝って船を守りましょう、いえ、それよりもです。誰にでも自由な(場所)を誰かに支配されるなんて絶対に許せません』

誰よりもヒナタが、やる気になっている………って言うか怒っているのか?


『ヒナタ、良いのか?船が壊されるかも知れないぞ?』


『大丈夫です。もし仮に破壊されても私が絶対に修理します。それに、私達は負けません』


『あ~ぁ………ギルマス、ダメだ。あのヒナタは止まらないぞ』

カゲロウが、もう誰が何を言っても無駄だから覚悟を決めろと言ってくる。仕方ない僕も腹を括ろうか。


『なぁ、シュン、取り込み中に悪いんだが………あと1パーティーは、どうするんだ?』

ジュネ達と戦力の分析をしていたアクアが、代表して尋ねてくる。


『そうだな。今の戦力なら、残りは回復補助特化のパーティーが欲しいんだが、心当たりがなくてな………』

基本的にギルド内で事足りる僕達は、知り合いが少ないので、こう言う時に頼りにならない。


『3ギルドから、集める』

ジュネが唐突にだが、的確な意見を延べた。なるほどな。パーティーと言うくくりが有るが、いざ戦闘に入れば自由だろう。これは、以前の経験で分かっている。これは、なかなか良い案かも知れないな。


『ガイア、ジュネ、アクア、回復や補助系で優秀なプレイヤーを2人ずつ頼めるか?更に、欲を言えば攻撃魔法か遠距離攻撃も使えるプレイヤーが良い』

これが可能なら、戦力的に問題無い気がする。僕のお願いに頷いてコールでギルドメンバーを集めてくれる。コールから、ものの数分で残りの6人が揃った。




『えっと、レイドバトルの為に集まってくれて。ありがとうございます。一応、このレイドバトルのレイドリーダーのシュンです。僕は、こう言う経験が不足していますので経験豊富なガイアに戦場の指揮は任せようと思います。それと、ライトニング(船上)が戦場になりますので、僕は船の操縦を受け持とうと思います』


『『『『『えっ!!?』』』』』

事前に相談しておいたギルドメンバー以外が一斉に驚いている…………そんなに、変な選択じゃないと思うのだがな。


『ちょっと待てシュン、何でお前が船の操縦なんだ?』

皆もアクアの意見に頷いている。ここにいる大抵のプレイヤーが黒の職人さんの事は知っているので、何故前線で戦わないのかとも言っている。


『このライトニング()の動力は、魔動力エンジン(MP)を使用するからな。MPが多くて、魔力の回復力が高い方が有利なんだ。あぁ、ライトニングって言うのは、僕らが《造船》スキルで作った帆船で帆の力でも進む事も可能だが、MPを動力しても進む事も出来るんだよ。それに、この【白竜】()でHPと毒の状態異常回復、こっちの【黒竜】()でMP回復、《付与術》《付与銃》のコンボで遠距離からでも補助が出来るからな。全体を把握しながら、サポートが出来る位置の方が都合が良いんだ』

当然、ファミリアと竜の力の事は喋らないが………それ以外でも十分な衝撃だった様だな。


MPの減っているプレイヤーに【黒竜】を使って実演してみると、ギルドメンバー以外の全員が口を開けたまま固まってしまった。誰もが1度は通る道なのか………ギルドメンバーですら、仕方無いよねと苦笑いをしている。




『シュン、お前は、いつの間にそんな規格外の存在になったんだ?《造船》とか、回復系の武器とか、俺は全然聞いてないぞ。それともジュネは知ってたのか?』

今の説明で規格外の存在って言うのは大げさだと思うぞ、本当に規格外なのは白と黒だからな。それに、説明する義務は無いと思うんだが………


『知らない。あとで説教』

おい、ちょっと待て、最近はOOOで絡む事が無かったから知らないだけだろ。説教をされる筋合いがない。それ、に秘密主義はお互い様だろう。


『まぁ、それは一旦置いといてだ。これで、ガイアが戦場の指揮、僕が操縦で異論は無いよな。ガイア、あとは頼む』


『不本意ですが、シュンから指名されました【ワールド】のギルマスをしているガイアです。船上でのレイドバトルと言う事で、今までとは、勝手が違うと思います。戸惑う事も有ると思いますが、頑張りますのでヨロシクお願いします。まずは、部隊を分けようと思います。防御兼追撃はレジーア、回復兼補助はレナさん、魔法攻撃はジュネさん、遊撃はアキラ、全体を私が指揮を執ります。そして、シュンには船の操縦兼補助をお任せします。レイドバトル突入後はパーティーを別れて、各部隊毎に行動して下さい。クラーゴンはその名前からして大王イカの類いではないかと思われます。ただ、触手?脚以外はどんな攻撃をしてくるか分かりませんので防御部隊の皆さんには、かなり無理をお願いすると思いますがヨロシクお願いします』

ガイアが各々の申告に従って部隊を編成していく。防御班7人に1人ずつ専属の回復役を付ける念のいれようだ。魔法攻撃7人と遊撃6人には部隊毎に各1人の回復役を付けている。


【noir】の皆は、フレイとカゲロウが防御部隊、ヒナタとケイトは回復部隊、当然だが、アキラは遊撃部隊になっている。ちなみに、指揮を執るガイアも割り振り的には遊撃部隊に属している。


『各リーダーのところに集まって軽いミーティングに入って下さい。その後、装備やアイテムを確認した人からゲートで順次転送して下さい。ゲートで【蒼の洞窟】を選択すれば造船所に着く設定になっています。それでは1時間後に出航します』

各自が一斉に各部隊のリーダーの場所に集まって準備に入っていく。


〔『雪ちゃん、済まないがレイドバトルには連れていけないんだ、ホームで1人お留守番出来るかな?』〕


〔『雪、ちゃんとお留守番出来るの。でもな。るべく早く帰って来てね』〕


〔『了解だ』〕


各ミーティングで、各々のアーツやスキルを踏まえて戦略が立てられていく。まぁ、それとは別に切り札を用意しときたいな。


『お~い!!カゲロウ、少しだけ良いか?』

レジーアの簡単なミーティングを終えて準備に入ろうとするカゲロウを捕まえる。


『何か用か?ギルマス』


『あぁ、ちょっと頼みがあるんだ………』







僕は、一足先に造船所にやって来た。少しライトニングの操縦に慣れておかなければならない。


『おや?、お主、久しぶりじゃのう。良い船は出来たかの?』

造船所には、何故か元持ち主のおじいちゃんがいた。


『本当にお久しぶりですね。船は、無事完成しましたよ。おじいちゃんが前に言っていた。この港街に船が全く無い理由は、クラーゴン(魔物)だったんですね』


『すまんのう。隠すつもりは無かったのじゃがのう。楽しそうなお主達の顔を見ておると言いそびれたのじゃよ。こんな事をワシが言えた義理ではないのは分かっておるが、頼むクラーゴンを倒して皆の敵を打ってくれ、頼む…………』

おじいちゃんが必死で頭を下げてくる。


『頭を上げて下さい。僕らには《造船》スキルは、絶対に必要なモノだったんです。それに、おじいちゃんと話した時から何となく魔物討伐系の依頼も覚悟してましたし。まぁ。流石にレイドバトルは予想外でしたが、今は僕らにも負けられない理由が有ります。安心して待っていて下さい』

僕は、おじいちゃんを1人残しライトニングに向かった。





『主よ、主には船乗りの資質もあるのじゃ』

魔動力エンジンのお陰で手をかざすだけで、僕の意思通りに船が動いているので、白が勘違いするのも無理無いだろう。それにしても、これは便利な機能だな。サブ的な役割では無く、メインとして使いたい。ちなみに、風の影響を受ける可能性が有るので帆はたたんである。


『そうか?ありがとな。でも、これは魔動力エンジンと白と黒の竜の力のお陰だぞ』

魔動力エンジンを全力で使うには、思っていたよりもMPの消費が激しい、竜の力の常時回復効果が無ければ、10分と持たないだろう。


『…………消費の方も大丈夫そう』


『了解だ。あと、ヒナタには悪いが、少しだけ弄らせて貰おうか…………《合成》』


『主よ、それは…………邪道なのじゃ』


『白、これは使わなかったら使わないで良いんだよ。折角ヒナタが一生懸命作った船を壊される訳には、絶対にいかないからな。黒、どうだ?上手くいきそうか?』


『…………問題無い………テストする?』


『ちょっとだけな。白、外から見てくれ………どうだ?』


『主よ、大丈夫そうじゃ…………邪道じゃが』

そんなに言うほど邪道なのか?かなり素敵だと思うのだがな………まぁ、切り札その2ってとこだよな。


『よし。じゃあ。ホルスターに戻ってくれ。そろそろ、時間だ。早かったら誰か来るだろう』

2匹は、返事をするよりも早くホルスターに戻っていく。


〔『了解じゃ。主よ、先に言っておくが………くれぐれも竜の力の乱用は控えるのじゃぞ』〕


〔『分かっている、普通の竜の力で十分だ。それに100%の方は、僕が自由に使えないんだろ?それなら問題無いさ』〕






『皆さん、準備は大丈夫ですか?クラーゴンの大きさも姿も判りませんが、皆さん全員の力を合わせれば勝てるはずです。それでは、シュン、最後に一言お願いします』

既に、ライトニングは30人全員を乗せて【ポルト】の沖2キロ手前まで来ている。予定よりも時間が押しているのは………【蒼の洞窟】で1回、ライトニングを見て1回、皆が驚き質問攻めに遇ったからだ。ガイア達からは、船の製作依頼まで請ける始末………ヒナタが喜んでいたので、それはそれで良いんだがな。


『ここまで来て、一言って言われてもな………皆、絶対に勝つぞぉぉぉぉ~~~!!』

これ、ちょっと恥ずかしいよな………


『『『『『『『うぉぉぉぉぉぉ!!!!』』』』』』』

あんな単純な一言でも意外に士気が上がるものだな。


『シュン、お願いします』

僕は、ライトニングを前進させる。すると、目の前に大きな渦が現れた。


『来ます。警戒最大、守備部隊の皆さんお願いします』


『違う、後ろ!!』

誰よりも早くアキラが背後からの攻撃に気付いた。僕は、アキラの声とほぼ同時に船を動かしている、白も背後からの攻撃に気付いて知らせてくれていたからだ。どうやら《探索》スキルなら相手の動向が分かるようだな。それにしても、目の前に渦を見せておいて背後からとか汚な過ぎないか?


『うそ………な、何?あれ………あれが、クラーゴン?なの』

回避した場所に浮かび上がったのは、巨大なクラゲ?の化け物だった。


『OK!!確認出来た。あれがクラーゴン(レイドボス)だ。弱点は………風属性。水属性と………嘘だろ!?悪い、水属性と土属性、雷属性は吸収だ。それと、打撃系は効きづらい様だぞ』

《見破》を使い、手早くクラーゴンのステータスを報告する。


『ガイア、大王イカの類いじゃ無かったのか~』

クラーゴンの攻撃を交わしながら誰かが叫んでいる。それを今責めても仕方ないだろ…………まぁ、気持ちは分からなくも無いがな。それに、触手攻撃は当たっていたのだから問題無いだろうな。


『すみません。き、吸収ですか……分かりました。斬撃系と魔法で攻めます。シュンは、船の回避優先で距離を詰めて下さい』

一言大きく謝り、状況を立て直そうとガイアの合図で魔法攻撃部隊の詠唱が始まる。こんな状況でも謝るとは律儀な奴だな………


遠距離攻撃が、このレイドバトルの要になるのが分かっているからか………高威力の魔法が順々に放たれる。その分、詠唱時間も長くなってるんだがな。その間は、回避と防御、弓や扇等での遊撃で時間を繋いでいる。それにしても、高位の魔法はド派手だよな………まるで、花火だな。少し、クラーゴンに同情しそうだ。さぁ、攻撃は皆に任せて、僕は回避に集中しようか。


『ダメだ。注意しろ。触手の直線防御は、低確率で感電するぞ』

率先してクラーゴンの攻撃を防いでいたレジーアが声を上げる。レジーアの他にも何人か感電または毒を喰らっているようだ。僕も【白竜】で毒の治療と回復の手伝いをする。


『うわぉ!?』

僕に撃たれたレジーアは、撃たれて回復したので驚いている。念の為に、事前に1回見せているのだから驚かないで欲しいんだがな………取り敢えず、態勢を立て直す時間を稼がせて貰おうかな。


『どれでも良い………何か、効いてくれ〈乱〉〈朧〉〈ウインドミスト〉』

〈朧〉〈ウインドミスト〉は効果が無かったが、僅かに、本当に僅かだが〈乱〉は効果が有ったように思える。ならば………


『〈乱〉、〈乱〉、〈乱〉』

連続で仕掛ける………今度は《見破》で確認した。1回につき5秒程度か、攻撃対象を見失い違う場所を攻撃している。流石にレイドボスは強力な仕様だな。まぁ、若干だが効果が有るだけマシなのかも知れないが。


『ガイア、今のうちだ………あと、10秒は余裕が有る』


〔『白、毒になった奴やMPが少なくなっている奴がいたら教えてくれ』〕

既に、船の回避が精一杯で、他を見る余裕が失われている。なにしろ、回避しながらクラーゴン本体に接近しているのだからな………


〔『了解じゃ』〕


『補助部隊は、守備部隊にマジックシールドを、魔法部隊は詠唱を優先して下さい』

僕も微力ながら〈ウインドシールド〉と〈回避上昇〉を唱えていく。そして………


『お前には、これをプレゼントだ。〈速度激減〉〈回避激減〉〈攻撃力激減〉〈防御激減〉〈魔法攻撃力激減〉〈魔法防御力激減〉』

全て《付与術》での合体魔法を順番に放つ。竜の力の恩恵でMP消費は気にしなくても済む。以前は、MP消費の関係で使用に躊躇いがあったオール減少系の合体魔法だが、かなり効果的な様だな。これは《見破》を使うまでもなく、はっきりと弱体化が分かる。


そして、先程の魔法攻撃に参加していなかったジュネが、ようやく動き出した。


『お待たせ、〈サウザンドボルト〉』


『って、おいジュネ、ちょっと待て………』

遅かった。既に、高威力の雷属性魔法は、放たれている。ジュネは、僕の話をマック聞いてなかったのか?雷属性は吸収……



『ぐぎゃぁぐおぉぉ~~~』



『………されてない?えっ!!なんで?』

確かに、さっきの魔法は高位の雷魔法だよな………それなのに、吸収されずに大ダメージが出ている。ってか言うかクラーゴンも声出るんだな。


『エルフ専用アーツ。〈属性変化〉』

さっきのは種族専用アーツか………その名の通り、属性を自由に変化させる事が出来るようだな。これまたピーキーな能力だが………全属性持ちの意味が無くなったんじゃないのか?ジュネに少しの同情を覚えるな。


『つ、津波!?皆、津波が来るよ』

アキラの言葉でクラーゴンを確認すると、多数の脚から高い波が巻き起こしている。おいおい、こんな至近距離で津波とか回避出来ないよぞ。まぁ、今はそんな事も言ってられないがな………


『全員、何かに掴まれ旋回するぞ』


『えぇぇぇぇ、急に!?ちょっと待ってぇぇ~~~』


『そんなの待てるか~、耐えろ』

右に旋回して、なるべく波がぶつかる面を少なくする。まだ、こんな序盤で切り札は使えないからな。




『各リーダー、被害状況はどうですか?』


『俺のところは、全員無事だ。おら、いつまで寝てんだ。守るぞ』

ガイアの問いにレジーアがいち早く反応し態勢を立て直していく。


『2人、落ちた』

どうやら魔法部隊は被害が出たようだ。


『私のところは……1人、ケイトがいません』

マジか!?くそっ、パーティーチャットも繋がらない……


〔『白、ケイト達は見つかるか?』〕


『遊撃部隊は、全員無事』


〔『まだ、生きておるようじゃ……他の2人も生きておるようじゃな』〕


〔『白、頼む。竜になってケイトを探して、出来る事なら助けてくれ』〕


〔『了解じゃ。黒よ、ここは頼むぞ』〕


〔『………分かった』〕


『皆さん、落ち着いて下さい。まずは、態勢を立て直しましょう』


『〈朧〉頼んだ』

白に〈朧〉をかけて、他人の目から隠し後方に放り投げる。白は竜の姿になり飛び立っていく…………頼んだぞ。黒、力を貸してくれ。【白竜】の代わりに【黒竜】を右手に持つ、左手は魔動力エンジンの操縦で手一杯だ。


〔『………回復』〕

そうだな。僕は、僕に出来る事をしなければな。


『MP減ってる奴から順番に回復だ。受けとれ』

白が、いないので竜の力は発揮できない。操縦も有るので、あまり無茶は出来ないが消費の激しい10人位は回復させておきたい。


『アキラ、津波来るの、分かる?』


『次は、タイミングは分かると思うけど……』


『教えて、次は止める、必ず』

久しぶりにジュネが本気で怒っている。何か、とんでもない事をしでかしそうだな。


そうだ。僕もジュネに聞きたい事があるんだった。


『ジュネ、|エルフ専用のアーツ〈属性変化〉は敵の攻撃でも効果有るのか?』


『???何が言いたいか、分からないけど、大丈夫』

それは有り難いな。カゲロウは……今の会話を聞いていたようだな。指でOKを出している。僕の意図が伝わったみたいで良かったよ。さて、そろそろ、状況を打開しないとダメだよな。


『守備部隊、今は防御に専念だ』

レジーアが守備部隊の先頭に立って、クラーゴンの触手攻撃を捌いている。


『リツ、アキラ、全員で融合は使えないのか?』


『分からない………多分、数人なら可能じゃないかな』

扇のアーツを繰り出しながら、考えているようだ。


『アキラ、試してみる?』

リツの問いにアキラは頷いて答えている。


『遊撃部隊の皆、風属性アーツ限定で攻撃のタイミングを合わせるよ、準備して………3・2・1・今』


『〈翠風扇〉』


『〈ウインドアロー〉』


『〈エアジャネリング〉』


『〈ストームブレード〉』………


風属性のアーツが一塊になり、クラーゴンに向かっていく。クラーゴンの触手?もとい脚を大量にぶった切る………いや、ぶっ飛ばした。


おいおい、とんでもない威力だな………融合アーツ|〈インフィニットハリケーン〉《無限の嵐》。取り敢えずは、成功のようだな。


『魔法攻撃の皆さんも同属性魔法の同時撃ちで、あとに続いて下さい』

ガイアが指示を出していく。これで、攻撃の方は任せておいて大丈夫そうだな。


〔『主よ、無事に見つかったのじゃ。今は、3人が一緒になっておる』〕


〔『サンキュ。白、場所は?』〕


〔『そこからじゃと西南西に400mと言ったところじゃ。どうやらレイドエリア、ギリギリのようじゃの』〕


〔『分かった。タイミングをみて救助に向かう。白は、正体がバレても良いから回復を頼むぞ』〕

こんな状況では秘密を守っている場合ではないよな。あとで質問攻めに遇うのも覚悟しようか。


〔『了解じゃ、流石は主じゃ』〕


『ジュネ、また津波来そう』

また、クラーゴンが残りの脚で波を起こそうとしている。このタイミングでまた津波が来るのか………


『旋回するぞ、つかま………』


『任せて〈フリージングワルツ〉』

一瞬だった。


ほんの一瞬で波が、いや、クラーゴンの周りの海が凍った。当然、津波を起こそうとしたクラーゴンの脚も巻き込んでいる。


『ウ、ウソだろう………』

アクアが驚いている。僕も、ジュネが何かしでかすとは思ってていたが………これは、やり過ぎだと思う。


『氷、暫く大丈夫、足場にして』

そうなのか?それなら今のうちに………


『皆、一旦氷に降りてくれ。僕は、落ちた仲間を回収して来る』


『えっ!?場所は分かるのですか?』


『大丈夫だ、もう見付けてある』


『皆さん、氷に降りて下さい。今がチャンスです。総攻撃をします。補助をお願いします』

ガイアの指示で氷を足場に一気にクラーゴンを目指していく。近距離攻撃がメインのプレイヤー達は、今が見せ場と張り切っているようだな。さて、僕も向かうか…………


『黒、白の場所へ案内してくれ』


『………分かった』

近くに誰もいなくったので、黒は竜の姿で先導してくれる。





『…………あそこ』

すぐに黒が、ケイト達を見付ける。どうやら、全員無事のようで良かった。


『ケイト、聞こえるか?』


『マスターですか?です。クラーゴンは倒したのですか?です』


『いや、まだ戦闘中だ。あそこ見えるか?氷の塊が戦場になっている。僕だけでケイト達を回収しに来た。取り敢えず、乗り込んでくれ戻るぞ。それと白、サンキュ助かったぞ』

海に降ろした縄梯子でケイト達を回収し、ライトニングの進路をレイドバトルの戦場に戻す。


【ウィザード】の2人は黒を見て、まだ驚いているようだが、事前にケイトが白の事を説明したのだろう。大した混乱もなくて良かったな。3人共にステータスの低下も少ないようだな。これは、白のお陰だろうな。


『すぐに着くぞ。皆、戦闘の準備してくれ』




僕達が戦場に戻った時、クラーゴンのHPは、かなり削れていたが、こちらのMPも尽きかけている様だった。


『戻ったぞ。一体何が有ったんだ?』

MP消費の激しい仲間には、既に銃の形態に戻っていた【黒竜】を射撃していく。まぁ、ほぼ全員になるんだが………竜の力が戻った僕には消費の効率等は関係が無い。


『シュン、ありがとう。始めは氷のお陰で反撃も無く優勢に攻撃してたんだけど………突然氷の下からクラーゴンの脚が突き出て来て、戦局が逆転したの』

どうやら無警戒だった下からの攻撃で、一気にやられたみたいだな。回復を優先させたのでMPが尽きてるんだな。


『皆さん、態勢を整えて下さい。クラーゴンが魔力を溜めています。急いで順番でに船に戻って下さい。申し訳ございませんが防御部隊は、しんがりを務めて下さい』

船の方では、救助された3人が氷の上の仲間に向けて縄梯子を降ろしていく。


『聞いたか?俺達が最後だ。全員を守るぞ』

レジーアが防御部隊に気合いを入れる。カゲロウだけは、僕の方を見ている。


『ジュネ、頼む。クラーゴンの放つ魔法に〈属性変化〉を使ってくれ、属性は風だ』


『今は、分かった事にする、あとで説明して貰う』


『カゲロウ、こっちの準備は出来たぞ。あとは任せたからな』


『こっちも大丈夫だ。ギルマス』

カゲロウは、既に態勢を整えて待ち構えている。【noir】のメンバーは、今から何をするか分かったみたいだな。フレイに至っては製作した防具の性能をチェックしているようだ。


『レジーア、残りはお前だけだ。早く上がって来い』

既に、殆どの部隊は勿論、守備部隊もカゲロウとレジーアを残して回収が終わっている。


『いや………アイツはどうするんだ?』


『大丈夫だ。早くしろ』

レジーアは、1人残したカゲロウに後ろめたさを感じながら、船へと昇ってくる。



『魔法が来ます。皆さんマジックシールドを……』

使えるプレイヤーが一斉にマジックシールド系のアーツを使用する。僕は、使用してないんだがな。


〔『黒、白、念の為にカゲロウのフォローを頼めるか?』〕


〔『了解じゃ』〕

2匹は、然り気無く竜の姿に具現化してカゲロウのもとへ飛んでいった。何人かには、見られたかも知れないな。まぁ、既に助けた仲間には見られているから良いんだがな。さぁ、僕の方も切り札を切ろうかな。冷静にライトニングに魔力を込めた。



クラーゴンは|全魔力を込めた一撃《〈メイルシュトローム〉》をライトニングに向けて放ってきた。だが、ライトニングに当たる事はなく………


『〈属性変化〉、風』


『いくぞ~~!!魔反』

カゲロウが魔反を使った瞬間、広範囲の魔法がカゲロウの前で圧縮されていく………


『おいおい、とんでも無いなぞ、これは………』

始めて見た僕には、衝撃的だった。カゲロウが自信満々だったので信用していたのだが、これ程の威力とはな………ジュネが〈メイルシュトローム〉の属性を水からクラーゴンの弱点の風に変えて、カゲロウが防具のシリーズボーナス(魔反)で2倍にして跳ね返す。


跳ね返された、圧縮〈メイルシュトローム〉は勢いよくクラーゴンにぶつかった。その衝撃は激しく、とてつもなかった。一瞬で水面の氷が割れて砕け散っていく、水蒸気が巻き起こり、辺りが白い霧で霞んで行く………





『ど、どうなった?』

徐々に霧が晴れていき、辺りの状況が鮮明になっていく。


『お、おい、ウソだろ!?船が浮いてる』

いち早くクラーゴンの生存を確認しようとしたアクアが、自分達が置かれている状況を確認したようだな。他にも確認したプレイヤーがいるようだが、高所恐怖症だったのか?ガクガクと震えている。少し悪い事をしたかな?


『カゲロウは!?大丈夫?無事?どこ?』

ヒナタは、全く何も見当たらない海を探しているようだ。まぁ、カゲロウは海にいないからな。下を見ても、見つかる訳は無いんだが………


『お~いヒナタ、オレは上だ。上、上』

空に浮いているライトニングの更に上空に、白と黒に抱えられたカゲロウの姿があった。


『良かった~。でも、どうして空にいるの?』


『魔反で反射した時に、足場が崩れたんだが間一髪のところを白と黒に助けられたんだ。白、黒、サンキュな。それよりも、何でライトニングも飛んでいるんだ?』

カゲロウは、白と黒に船に降ろして貰っている。


『そうですよ。そんな機能は付いてませんよ』

ヒナタとカゲロウが詰めよってくる。事前に、説明していないのだ仕方ないな。


『まぁ、待て。取り敢えず、その話はあとだ。クラーゴンの生存を確認するぞ。アキラ、どうだ?』



〔緊急連絡、緊急連絡。ただ今、シュン様のパーティーが、緊急イベント【レイドバトル クラーゴンの討伐】を攻略致しました。なお、今回のレイドバトルは参加していないプレイヤー様にも【ポルト】沖でイベント(レイドバトル)が発生しますので、お楽しみ下さい。そして、只今より海エリアが全プレイヤー様に開放されました。今後もOOOをお楽しみ下さい〕



『良いタイミングで緊急連絡だね。うん、一応確認してみたけど倒したみたいだよ』

僕は、このレイドバトルの責任者だからな。死者0でレイドバトルを終える事が出来て、本当に良かったよ。このあと、皆で打ち上げでもしたいな………


『それとこれは別の話やな。ウチらも船の事は、しっかりと聞かせて貰うで』

僕にとっては、良くなかったようだな。アキラとフレイが仁王立ちで身構えている。はっきり言って恐怖でしかないな。


『シュン、俺達もだ。色々と話して貰うからな』

アクア達が白と黒を指差している。これは、覚悟を決める必要が有るかも知れないな。


完全に打ち上げの雰囲気では無いな。これでは、吊し上げの雰囲気だからな。









装備

武器

【雷光風・魔双銃】攻撃力80〈特殊効果:風雷属性〉

【白竜Lv23】攻撃力0/回復力143〈特殊効果:身体回復/光属性〉

【黒竜Lv20】攻撃力0/回復力140〈特殊効果:魔力回復/闇属性〉

防具

【ノワールシリーズ】防御力105/魔法防御力40

〈特殊効果+製作ボーナス:超耐火/耐水/回避上昇・大/速度上昇・極大/重量軽減・中/命中+10%/跳躍力+20%/着心地向上〉

アクセサリー

【ダテ眼鏡】防御力5〈特殊効果:なし〉

【ノワールホルスター】防御力10〈特殊効果:速度上昇・小〉〈製作ボーナス:リロード短縮・中〉

【ノワールの証】〈特殊効果:なし〉



天狐族Lv36

《双銃士》Lv56

《魔銃》Lv56《双銃》Lv51《拳》Lv35《速度強化》Lv82《回避強化》Lv84《旋風魔法》Lv33《魔力回復補助》Lv82《付与術》Lv50《付与銃》Lv59《見破》Lv77


サブ

《調合職人》Lv24《鍛冶職人》Lv27《革職人》Lv48《木工職人》Lv30《鞄職人》Lv49《細工職人》Lv24《錬金職人》Lv24《銃製作》Lv35《裁縫職人》Lv5《機械製作》Lv1《料理》Lv34《造船》Lv15《家守護神》Lv12《合成》Lv18


SP 72


称号

〈もたざる者〉〈トラウマ王〉〈略奪愛?〉〈大商人〉〈大富豪〉〈自然の摂理に逆らう者〉〈初代MVP〉〈黒の職人さん〉〈創造主〉〈なりたて飼い主〉

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