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OOO ~Original Objective Online~ 称号に振りまわされる者  作者: 1048
第1部 第3章
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ワールド・ワイド・ウェ~ブ

「おい駿、聞いたか?今日転校生が来るらしいぞ」

今日も、朝から騒がしいな。少し落ち着いて欲しいものだ。


「そうなのか?全く知らなかったぞ」

って言うか、お前はいつ知ったんだ?


「それもそうか、俺もさっき職員室の前でチラッと聞いたばかりなんだけどな」

おい、それは、知ってる方が圧倒的に少ないんじゃないのか?


「駿は、男か女どっちだと思う?いや違うな、どっちが良い?」

僕としては、嫌なヤツじゃ無ければ、性別はどっちでも良いんだが………転校生が来るのは、あまり無い事だから……まぁ、気にならないと言ったら嘘になるかな。



「はい。皆さん静かにして下さい。今日は、このクラスに新しい仲間が増えます。さぁ、中に入って自己紹介して下さいね」

ガヤガヤとしていた教室が、先生が放った一言で一気に静まる………蒼真以外は、やはり知らなかったようだな。


「了解やで、ウチは…………掛布麗花や。掛布は阪神タイガースの伝説の4番掛布様と同じ掛布や、麗花は麗しい花って書いて麗花や。仲良うしたってな」

転校生は黒板に自分の名前を解説しながら書いていく。このクラスには居ないタイプだな………どっちかと言うと晶みたいに女子にモテそうなタイプの美人だよな。


「皆さん、掛布さんは、御家族の仕事の関係で大阪から引っ越しされて来ました。仲良くして下さいね。えっ~と席は………水野君の隣が空いてますね。それと、皆さん再来週の体育祭の出場種目も決めておいて下さいね」

蒼真の隣って事は、僕の斜め右後ろか………あの空席は、昼休みに純達が使ったりもして、何かと便利だったんだがな。


それにしても、もう体育祭の時期か、時が経つのは速いよな。この前入学したような気がするのにな。


「仲良うしたってな」

転校慣れしているのか?それとも、関西人だからか?通路を通りながら近くの女子に挨拶して既に仲良くなっている。まぁ、良い人そうで良かったな。


「おい、駿」


「どうかしたか?」


「あの転校生、どっかで会ったことないか?」


「いや、会ったことないと思うけど………」

確かに、言われてみれば、あの雰囲気は知り合いに似ている気がしなくも無いが…………いや、そんな事は有り得ないだろう。そもそも、彼女は関西にいるはずだからな。


「水野蒼真だ。ヨロシクな」


「ウチは………さっき言ったから分かるか、ヨロシクな」

早速、自己紹介してるし………蒼真が打ち解けるのは早いかも知れないな。





「駿くん、転校生来たんだって?」

昼休みになり、いつもの様に晶と純がお弁当を食べにやって来た。


「今、晶が座ってる席が転校生の席だな」


「ここなんだ。それで、今はどこにいるの?」

晶は転校生が気になるようだな。純は、相変わらずの無関心か。


「さっきまでは、いたから………」


「食堂じゃないか?財布もって教室の外に出て行ったぞ」

お前、よく見てるな、僕は気付かなかったぞ。



「あれ?ウチの席………」

食堂で買って来たのだろうか?菓子パンを片手に掛布さんが戻って来た。


「あっ!?ゴメンね、勝手に借りてた」

晶が席を空けようとすると………


「ええよ。ウチは、そこの空いてる椅子使うから。それとウチも一緒して良い?ウチは掛布麗花ヨロシクしてな」


「一緒でも良いよね?」

晶が確認してくるので頷く。


「私は水無晶で、こっちは颯馬純。クラスは違うけどヨロシクね」


「晶ちゃんに純ちゃんやな。了解や。ウチは、麗花って呼んでな」


「僕は、まだ、自己紹介してなかったな。僕は颯馬駿。こっちの純とは双子だ。ヨロシクな」

僕と純の名前を聞いて、一瞬で表情が変わる………


「えっ!?えっ~~~!!!フッフッ、マジかいな!?世間は狭いんやな」

掛布さんが驚きだす。何か、おかしな事でも有ったか?それともやっぱり何処かで会ってるのか?


う~ん………見覚えは無いんだがな。


「あぁ、悪い悪い。急やったから、ウチも驚いてしまったて大声が出てしまったな。自分ら、アキラにシュンにジュネ、それと自分はアクアやろ。今の今まで全く気付かなかったわ。ウチやウチ、分からんか?フレイや」


「「「…………はい!?えっ~~!?」」」


「フレイ、久しぶり」

我がお姉様は全く動揺してないが、僕ら3人は全く理解が出来なかった。






『『え~~~~~!!』』

今のは、カゲロウとヒナタの叫び声である。まぁ、無理も無いだろうし、理解も出来る。


OOOに久しぶり、ほぼ10日?ぶりにログインして来たフレイと雑談に花を咲かせているところだ。


『オトンの仕事の都合やからな。ウチも転校先の高校がシュンやアキラと同じやとは思わんかったわ。本当、世間は狭いで』

笑いながら話すフレイだが、僕の周りの世間は特に狭すぎる気がする。


フレイの父親がギリギリになって単身赴任は嫌だと言い出し、フレイも大学は東京にしたいと言う事も有り、急に家族で引っ越す事になったそうだ。その引っ越しのバタバタで全くログインが出来なかったらしい。急遽決まった引っ越しなので連絡が出来なくても仕方がないよな。


『それにしてもシュンは、見た目そのまんまなんやな。狐の耳と尻尾が付いただけやん。名前聞いてすぐに気付いたわ』


『それは仕方ないだろ。初期設定で身体を変更する(いじる)時間が無かったんだよ。イタズラ好きの2人のせいでな。そう言うフレイも………髪の色は、あまり変わらないだろ』

フレイの見た目は掛布さんとは、ほぼ違っている。似ているのは髪の色が同じぐらいだ。


『そやな、髪の色は気に入ってるからな。それにしても………なんやアレは?正直言って引いたわ』

背後にある露天風呂を親指で指差している。


『だよね~!!私も若干引いたもん』

フレイに続きアキラまで………そう思うのは、今のうちだぞ。入ってみれば絶対に良さが分かるぞ。


『ギルマスを庇う訳じゃ無いけど………アレは魔物だ。1度入れば出たく無くなるぞ』

珍しい事にカゲロウが僕の味方になってくれた。


『そらでは、後で皆で一緒に入りませんか?あっ!!勿論、女性陣だけですよ』

ヒナタが、冗談っぽく僕とカゲロウを見て注意してくるが、当たり前だろう。僕らには、一緒に入る度胸や精神等は持ち合わせて無い。


『私も、ジャパニーズ温泉に入りますです』

皆揃いも揃って初見では驚いたと言っていたが、内心は楽しみだったのだろう。ヒナタとケイトの発言に、すぐに同意している。何だかんだ言っても温泉大好き日本人なんだよな。まぁ、ケイトは違うけど…………


『それなら、ジュネ達も誘ってあげて。それでカゲロウ、僕らはどうする?』

アキラが頷いたのを確認して、カゲロウに話を振る。たまには、2人で狩りをする(遊ぶ)のも良いだろうな。


『ギルマスに時間が有るなら《木工》しないか?少し教えて欲しい事が有るんだ』

今日は、本当に珍しい事だらけだな。カゲロウが生産活動に誘ってくるなんて初めてじゃないか?


今までも一緒に生産活動をしたことは有るが、必ずヒナタがいたからな、しかも《調合》じゃなく《木工》を教わりたいと………明日の天候が心配だな。


『僕は、時間は有るから良いぞ。もう行くか?』

同意したカゲロウに続いて2人で工房に移動する。





『どうした?何か有ったのか?』

工房で2人になったので疑問だった事を聞いてみる事にした。もし、僕に出来る事が有るなら協力したいしな。


『………ギルマス、内緒にして欲しいんだが………あの、その、もうすぐケイトが誕生日らしいから、杖をプレゼントしたいんだけど……あの、その、作り方を教えて下さい』

ケイトは、誕生日が近いのか。僕らも、何か用意した方が良いかも知れないな。それにしても、動揺し過ぎじゃないのか?


『別に良いぞ。木材は準備してるのか?無いなら、これ使ってみるか?』

御神巨木を1本手渡す。どうせケイトにも御神巨木素材の杖を作ろうと思っていたしな。製作者が僕からカゲロウに変わっても問題無いからな。


『ギルマス、こんな高価な素材を貰っても良いのか?』

カゲロウは、目をキラキラさせて僕を見てくる。


『大丈夫だ。そのうち、ケイトにも作ろうと思ってたからな。製作者がカゲロウになっても問題無いだろ。頑張れよ。まずは、練習を兼ねてサンプルを作っていこうか』

基本となる杖のサンプルを渡して、これを基に練習をさせる。元々《木工》のLvは採取等で鍛えられているカゲロウは2、3本でかなり出来の良い杖を作り上げた。出来が良いと言っても、あくまでサンプル品としてだがな。


『暫くは、その練習の繰り返しだな。それと、ケイトの誕生日は何時なんだ?』


『再来週の日曜だ』

体育祭の当日か………それなら、時間的にも十分な余裕が有るな。頑張れカゲロウ。







『これで、一応注文の品は全部やな』

トウリョウが、約束通りテーブルとイスの納品にやって来ている。


『流石の仕上がりだな。でも、何でこの形にしたんだ?』

素材も良いものを使っているし、仕上がりにも問題は無い。しかし、形がかなり特殊じゃないか?見た目はUにしか見えない………Uの頂点の部分は空いているのは、通路の役目を兼ねているように見えなくも無いのだが………


『シュンが気になるのは、この部分やろ?自分ら適当に席に着いてみ』

トウリョウは自信有り気にUの中心に移動して、僕とヒナタ、アキラに指示をだす。


『ここはやな、この辺りに立てば全員の顔を見渡せるように設計されてるんや、勿論会議にも使えるようにやで。後は座ってみたら解ると思うけど…………座ったままで各々の顔が見えるやろ?』

確かに言われてみれば、そうかも知れないな。適当に間隔を空けて座ってみたがヒナタとアキラの顔が簡単に視界に入る。


『本当だね。皆の顔が見えるのは素敵かも。それに、この曲線が妙に使いやすいよ』

アキラが言うようにテーブルの曲線は、使いやすいように工夫されている。かなり手を置きやすい。


『それにですね…………これは1枚板ですよね。技術的にかなり高度ですよ。現実世界で買ったら、うん百万は軽くしますよ………』

ヒナタが、トウリョウの技術力に目をキラキラさせている。僕らも《造船》時に1枚板の加工を経験しているので難しいのは伝わってくる。


『確かに、そうだよな。イスも座りやすいし、使ってみると…………これ以外は、有り得ない気がしてきたな』


『おっ!!理解してくれたか?これでもアタイはユニバーサルデザインには拘りがあるんやで』

テーブルを我が子の様に撫でながら微笑んでいる。何時ものキリッとしたトウリョウとのギャップが凄いな。


『おう、サンキュウな。大切に使わせて貰う。それと《造船》スキルは見つかったか?』


『そっちは、アカンな。まだまだこれからやな』

毎日【プレパレート】メンバー数人が《造船》スキルを探しているみたいだが良い報告は無いらしい。僕らの運が良かったのか?トウリョウ達の運が悪いのか?何か新しい情報が入ったらトウリョウ達に伝えたいな。





『えっ~と、皆さんは、この後はどうしますか?』

船の内装も完成して、明日の進水式を残すのみの状態だ。それにしてはヒナタはソワソワしているようにも感じる………


『ゴメン、このあと私は雪ちゃんと買い物の予定があるんだ』


『僕は、特に予定無いけど……』


『主よ、久しぶりに狩りに行ってみてはどうじゃ?』

急に白が喋り始める。


『何か有るのか?』


〔『黒が竜の力のテストをしたいそうじゃ』〕


〔『それは、別に良いんだが………何で《心話》なんだ?』〕


〔『主よ、竜の力の事は隠したかったのじゃ無かったのか?』〕

そうだったな。竜の力はギルドメンバーにも秘密にしている能力だったな。


『じゃあ、僕らは狩りに行こうか?ヒナタはどうするんだ?』


『私も狩りに一緒に行きたいですが、今日は止めておきます。明日の進水式の準備をしたいので………気を付けて行って来てください』

どうやらヒナタは1人で何かしたいようだな。ここは気を効かせておこうか、ついでにケイトの誕生日プレゼントになりそうな素材でも採掘しに鉱山ダンジョンでも行こうかな。





『ここに来るのも久しぶりだな』

ゲートを使って【ヴェルク】に来ている。


『主よ、ここは魔石を取りに来て以来かの?黒は初めてじゃな』

【黒竜】を造る為の素材を取りに来て以来だからな。


『…………岩がゴツゴツ』


『一応、ここは鉱山の街だからな。今から行くのは鉱山の中だぞ』

ここは、小部屋が多くて魔物の数も多いので、中位のプレイヤーのLv上げや練習向きの場所になっている。


『今日は、少ないみたいだな』


『主よ、その方が都合が良いのじゃ。まずは、適当な魔物を探すのじゃ』

よくよく考えれば竜の力のテストって、僕が痛い思いをするんじゃ無いのか?


『…………うん』

黒が肯定しちゃったし………まぁ、テストの必要性は分かるんだが、理性では理解出来ても体が納得してない(拒否してる)よな。


〔『主よ、振り返らずに聞いて欲しいのじゃが、ワシらは尾行されておるようじゃ。牙狼族の|《狙撃士》《スナイパー》のようじゃな。』〕


〔『了解だ。隠れて様子を見るぞ』〕


〔『………おや、ワシらは見た事無いのじゃが、主とは知り合いのようじゃな』〕

白は、僕のフレンドリストに名前を確認しているようだ。


〔『僕の知り合いに《狙撃士》?取り敢えず、ダンジョンに入ったら〈朧〉を使ってやり過ごすぞ』〕

普段なら銃仲間は是が、非でも欲しいが、尾行するようなプレイヤーは………考えさせて頂きたい。しかし、フレンドリストに登録されているみたいだからな。一体誰なんだ?


『〈朧〉』

ダンジョンに入り最初の分岐で〈朧〉を使う。その瞬間、僕らの存在が曖昧になり、背景に同化しているような感じになる。さて、誰が尾行なんて面倒な事をしてるんだ?




『あれ!?シュン兄、今こっちに曲がったと思うんだけど。まぁ、良いや、〈狼追〉(ろうつい)対象はシュン兄…………』

なんだ尾行していたのはマリアか、初めて知ったがマリアって銃使うんだな。前に会った時はフレンド登録だけして逃げるようにその場を去ったからな。


うん!?マリアが手に持ってる銃って僕の製作した【ロングリーロング】だよな。アレを買ってくれたのはマリアだったんだな。それにしても、僕以外の銃使いって初めてみるよな。皆の話では、それなりに銃使いも普及しているようだが、僕自身は全く会った事が無い。


『あれ!?この辺りにいるの???』

マリアの使った〈狼追〉って言うアーツは、対象()が何処にいるか分かるのか?それは、索敵には便利だよな。今の僕にとっては邪魔でしかないけどな。


アーツ名に狼が入っているし種族専用のアーツか?知り合いの牙狼族はマークとマリアくらだからな。あまり関わりが無ので内容も分からない。まぁ、それは置いといて………


〔『さて、どうする?』〕


〔『…………逃げるの、無理』〕


〔『う~む………主よ、黒の言う通りじゃ、あのアーツが有る限りは、逃げ隠れ出来ないようじゃ』〕


〔『了解だ。次の角で〈朧〉解除するぞ』〕



『あれ?マリアか?久しぶりだな。鉱山ダンジョンに1人とは珍しいな。それともアクアと一緒か?』

すぐに移動して〈朧〉を解除し、何事も無かったかの様な態度でマリアの前に現れる。それにしても《狙撃士》がソロでダンジョンって問題有り過ぎだよな。


〔『主も、だいたいは1人で来ているのじゃが………』〕

今、僕の事はスルーして欲しいな。


『あれ!?シュン兄?久しぶりだね。今日は1人だよ。それにシュン兄、今何かしたよね』

ニヤッと笑いながら核心をついてくるマリア、相変わらず鋭いな。アーツの内容までは、バレていないがアーツを使っていたのはバレたな。まぁ、今のはマリアが動揺してるのを隠したいだけなんだろうけどな。


『???いや、何もしてないんだが、1人って事はLv上げか?採掘か?』


『一応Lv上げ?かな、シュン兄は?』

白々しく惚けてるのは、お互い様だよな。


『僕は採掘だ。ところで、その銃は僕の作ったヤツだよな。買ってくれてありがとな。マリアは《狙撃士》だったんだな。僕以外の銃使いは初めて見るよ』


『銃使いは、圧倒的に少数派(レア)だからね…………武器の種類も少ないしね。今のところ【ロングリーロング】が1番性能が良いからね。そうだ!!この際、新しい銃の製作依頼しても良いかな?』


『それは、構わないが………暫く時間が掛かるぞ』


『うん。それは、大丈夫。出来たらメールくれたら良いからね。じゃあ。私はこれでバイバイ』

予想外に直ぐに立ち去ろうとする。これなら尾行の必要無かったんじゃ無いのか?そして、僕はここに置き去りですか………




『どうやら、さっきの娘は【ヴェルク】のゲートで転移したようじゃな。主よ、暫くは警戒した方が良いかも知れんのう………』


『そうだな。普段のマリアなら、あんなに動揺しないはずだしな。何か隠しているのだろうな………白、警戒を頼む。それと今日は《心話》で話すぞ』

僕の知ってるマリアなら、まず最初にアクアの事を聞いたり、探したりするだろう…………


〔『了解じゃ』〕


〔『…………分かった』〕


〔『主よ、本来の目的通り竜の力のテストじゃ。右折した先の小部屋に丁度よさそうな魔物がおるようじゃ』〕


〔『了解だ………って、おい、ちょっと待て白、お前《探索》スキル使えてないか?』〕


〔『その様じゃな。Lv15に上がって新しくスキルを覚えたようじゃな』〕

これも《成長》スキルの恩恵か?実際のところ性能半端ないよな………徐々に回復力も上がっているしな。


〔『それなら活用させて貰うぞ。それで、黒、テストの事だが具体的に僕は何をしたら良いんだ?』〕


〔『……………』〕


〔『………主よ、黒と相談したんじゃが、主には竜の力のリスクを知って貰いたいのじゃ………本来の竜の力は、使用者に全く反動が無い物なのじゃ。しかし、どうやら、主の場合は100%の竜の力を使ったおかげ(反動)で、主の身体の外見は、徐々にじゃが竜の力に蝕まれておるのじゃ』〕


〔『………はい!?』〕


〔『現時点で身体の内面や精神に問題がある訳でも無いし、すぐにどうこう言う訳では無いのじゃが………現在進行形で、ゆっくりじゃが、主の毛と目の色が変わりつつ有るのじゃ、主は、あの時ワシらを庇っていたので知らないと思うが、あの時の主は銀髪、赤目になっておった。その影響も有るのだと思うのじゃ』〕

冷静な白が取り乱しながら話すのは珍しいな。それだけ、想定外なんだろうな。あの時って言うのは風雷のビークィーン戦の事だよな…………まぁ、あの時は状況が状況なだけに仕方が無いと思っているし、あの行動は納得の上なので後悔はしていないのだが、黒髪、黒目が変化しつつあるって事は少しショックだな。


〔『それに、ワシらの《成長》の影響も有るかも知れないのじゃ………なにぶん前例の無い事じゃ。実に言いにくいのじゃが、完全には大丈夫と言えんのじゃ…………本当に申し訳無いのじゃ』〕

だが、今さら白と黒の2匹を手放す選択肢は存在しないしな。だけど、出来ればダンジョンの中では無くホームとか落ち着いた場所で聞きたかったよな。まぁ、ホームは他に人がいるから気を使ってくれたんだろうけど。


〔『………そうか、まぁ、アレだ。なってしまったものは仕方ないしな。これから、もし今後も100%の竜の力を使えた場合は銀髪、赤目になるんだよな?』〕

無言だが白と黒が同時に頷いたのは分かった。黒髪、黒目は惜しいけど、銀髪、赤目も素敵かもな。


〔『10%(普通)の竜の力だと、どうなんだ?』〕


〔『主の場合は分からん。黒が言うには、その為のテストだそうじゃ』〕

白と黒も僕の事を心配してくれているんだろうな。一緒にいたいけど、一緒にいない方が良いって思ってるだよな………僕には伝わるぞ、その優しさで十分だよ。


〔『了解だ。だが、どっちにしても、今のところギルドの皆には絶対に内緒にして欲しい。心配させたくないし、もしかしたら慣れて大丈夫になるかも知れないしな………あと、白の事も黒の事も僕は手放す気は無いからな。お前達は、気にする事無いからな。じゃあ、テスト始めるか』〕

現状は、少しでも試してみるしかないな。その日は、ログアウトまで竜の力を使って狩り(テスト)をした。






『よし、そろそろ造船所行くか?』


『主よ、やはりワシらは………』


『白、黒、昨日のテストで、取り敢えずは、竜の力には問題無かったんだから、もう気にするなよ。それとも僕と一緒にいたくないのか?』

昨日は、あれから狩りを続けてテストしてみたが、10%の竜の力では身体に影響は無かった。これは《見破》でも視ているので確実だろう。


『『違う』のじゃ』

白と黒が同時に答える。


『それなら、もう気にするな。僕もお前達と別れるのは辛いんだからな。きっとなるようになる。大丈夫だ。それに白と黒が意識して100%の竜の力を出さなければ当面は問題無いだろ。それに、今日はライトニングの進水式だぞ。暗い顔は、似合わないと思うんだが』


『分かったのじゃ。もう気にしないのじゃ』


『それなら、行くぞ』

僕の言葉と同時に2匹は銃の状態に戻りホルスターに戻る。最近、少しずつだが黒もホームでは竜の状態でいる事がある。ギルドメンバーには、少しづつだが慣れたみたいで良かったかな。






『あれ?僕が最後みたいだな。待たせてごめんな』

僕が、ゲートで造船所に移動すると皆は既に待っていた。


『まだ、時間になってませんので大丈夫ですよ。少し予定より早いですが、皆さんが揃いましたので初めさせて頂きますね。これどうぞ、シュンさんが最後に舵を取り付けて下さい。それで本当に完成します。一応ライトニングには、サブ的な役割として魔動力エンジンも搭載していますが、メインは帆船ですからね』

魔動力エンジンは、魔力を使って船を動かす為の物だ。ヒナタとカゲロウが《造船》スキルのオプションで作った代物だ。万が一の場合に補助動力が、どうしても必要だと言う事でヒナタが取り付けている。


『そんな大役、僕で良いのか?ヒナタ船長(キャプテン)の方が良いと思うんだが?』


『船長!?わ、私が船長なんですか?』


『ヒナタ以外にいないよ。皆で話したら満場一致だったよ。これは、船長帽。作ってみたから良かったら使ってね。一応サイズは合ってると思うけど手直しも出来るからね』


『雪も手伝ったの』

アキラと雪ちゃんが自作の船長帽を手渡す。ヒナタは嬉しそうに船長帽を眺めた後、ゆっくりと被る。


『に、似合いますか?』

皆が一斉に拍手をする。ヒナタは、照れているが顔はとても嬉しそうだ。


『おぅ。似合ってるぞ。それと、やっぱり舵はヒナタが取り付けてくれ』

ヒナタから受け取った舵を、ヒナタに返す。


『それでは、僭越ながら私が取り付けさせて頂きますね。少々お待ち下さい』

舵を取り付けた瞬間、甲板にいるヒナタから一筋の涙が流れた様に見えた。夢が叶って良かったと思う。残すは、メインの進水式だけだな。


『ヒナタ、この辺で良いのか?』

皆の背後でカゲロウがクレーンを慣れた手つきで操作している。


『うん大丈夫。では皆さんカウントを3・2・1・0でお願いします…………せ~の』


『『『『『『『3・2・1・0』』』』』』』


『ライトニング進水!!』

ライトニングは、静かに海面に着水する。見事に浮いている。特に水漏れ等も無さそうだな。改めて浮いているのをみると壮観だな。それにしても、僕らは自力で船を作ったんだよな。少し感極まって涙が流れた。そうだ!!スクリーンショットを残しておこうかな、記念になるしな。



『ヒナタおめでとうございますです』


『ヒナタお疲れさんやな』


『お疲れ様、頑張ったね』


『ヒナタちゃん、凄いの』

ケイト、フレイ、アキラ、雪ちゃんの順でヒナタに称賛を贈る。この数週間のヒナタの頑張りを見ているので皆も嬉し涙を流している。




『では、皆さんもライトニングに乗り込んで下さい。出航します』

おぉ~!!乗り心地も完全に船だな。微妙な波の揺れ具合も再現されている。まぁ、現実の船と違って激しく揺れないのは良いよな。


皆が乗り込んだライトニングは進路を【蒼の洞窟】の出口へと変える。徐々に空と海の青色が大きくなっていく。


『いよいよだな。船長、取り敢えず、1キロくらい沖まで出てみるか?』

全員わくわくが止まらないといった感じだな。当然、僕も含めてだが。


『分かりました。カゲロウ帆を張って下さい』

ヒナタの一言でカゲロウはメインマストの帆を張る…………昨日までは存在しなかったモノが、そこには有った。


『………ヒナタ、それどないしたんや?』


『そうだよね。昨日までは真っ白だったよね』

フレイとアキラがヒナタを問いただしている。


『私からのお礼と言いますか………そのサプライズですね』

帆には、大きく綺麗にギルドのマークが描かれている。さては昨日あのあと、1人で描いたな………それにしても見事だ。


ヒナタとカゲロウは嬉しそうにしている。普段は、姉弟なのに余り似ていないのだが、こう言うところは、本当にそっくりだな。


『ヒナタ、このマークはビューティフルです』


『そうだな。驚いたけど、ありがとな』

自信満々なところを見るとカゲロウは知っていたようだな。寧ろ、手伝わされたってところかな?


【蒼の洞窟】を出たライトニングは帆で風を捉えて一直線に進んで行く。甲板で受ける潮風が気持ち良いな。潮の匂いも良い感じだ。


『凄い、凄い、船ってこんなに速いんだね』

珍しくアキラが、はしゃいでいる。その気持ちも分かる。風を掴んだ帆船ってかなり速かったんだな。あっと言う間に1キロ沖までやって来た。そんな時だった………




〔緊急連絡、緊急連絡。只今、シュン様のパーティーが大海に進出しました〕

どうした?一体何が起こったんだ?


〔つきましては、緊急イベント【レイドバトル クラーゴンの討伐】発動致します。このレイドバトルは、5パーティー(30名以下)限定となっております。なお、【ポルト】沖2キロの地点に進んだ時点で戦闘が始まりますのでご注意下さい。それでは、幸運をお祈りいたします〕


『マジか………』








装備

武器

【雷光風・魔双銃】攻撃力80〈特殊効果:風雷属性〉

【白竜Lv19】攻撃力0/回復力129〈特殊効果:身体回復/光属性〉

【黒竜Lv16】攻撃力0/回復力126〈特殊効果:魔力回復/闇属性〉

防具

【ノワールシリーズ】防御力105/魔法防御力40

〈特殊効果+製作ボーナス:超耐火/耐水/回避上昇・大/速度上昇・極大/重量軽減・中/命中+10%/跳躍力+20%/着心地向上〉

アクセサリー

【ダテ眼鏡】防御力5〈特殊効果:なし〉

【ノワールホルスター】防御力10〈特殊効果:速度上昇・小〉〈製作ボーナス:リロード短縮・中〉

【ノワールの証】〈特殊効果:なし〉



天狐族Lv34

《双銃士》Lv54

《魔銃》Lv52《双銃》Lv48《拳》Lv35《速度強化》Lv80《回避強化》Lv82《旋風魔法》Lv32《魔力回復補助》Lv78《付与術》Lv47《付与銃》Lv56《見破》Lv74


サブ

《調合職人》Lv24《鍛冶職人》Lv27《革職人》Lv52《木工職人》Lv30《鞄職人》Lv49《細工職人》Lv24《錬金職人》Lv24《銃製作》Lv35《裁縫職人》Lv12《機械製作》Lv1《料理》Lv36《造船》Lv14《家守護神》Lv14《合成》Lv12


SP 58


称号

〈もたざる者〉〈トラウマ王〉〈略奪愛?〉〈大商人〉〈大富豪〉〈自然の摂理に逆らう者〉〈初代MVP〉〈黒の職人さん〉〈創造主〉〈なりたて飼い主〉

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