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OOO ~Original Objective Online~ 称号に振りまわされる者  作者: 1048
第1部 第3章
25/65

何も言えねぇ

ここ2週間は、平日は防具の生産、土日は素材の採取&狩りか《造船》になっていた。お陰さまで、ほぼ全員の防具がシリーズボーナスを獲得出来ている。


その中でも変わっていたのはフレイがカゲロウ用に作ったガーデンシリーズのシリーズボーナス魔反、1回の戦闘中に1回だけだが魔法を2倍で反射出来る代物らしい。1度ヒナタの弱い魔法でテストした様だが、反射されたヒナタは想像以上のダメージをおったそうだ。前衛守備型(盾キャラ)のカゲロウには、かなり美味しい能力だよな。



他種族のアーツの詳細は不明だが、天狐族の専用のアーツは、平日にソロで行った狩りで実戦(テスト)もしている。


〈乱〉は対象に幻覚を見せ錯乱させる効果が有った。上手く使えばMOB同士で同士討ちをさせる事も出来るからな。


〈朧〉には対象の姿を隠す効果が有る。これだけなら〈ウインドミスト〉と大差がない気がするのだが、対象にはアイテムや装備、地形も含まれている。そして、隠すと言うのは見えなくすると言うよりも透明にすると言う方が近い感じがするやな。後日、フレイと2人で検証をしてみたのだが、見えない刀を振るうフレイは、はっきり言って恐怖でしかなかった。何も無いところから血飛沫が飛ぶとか………アレは、思い出すのも恐いな。当然、この対象には白や黒も含まれている。まぁ、銃に姿を変えれる白達に使う事は滅多に無いんだがな。




『そろそろ、このライトニングも完成しますね。次の土日には進水式も出来そうですよ』

確かに外見は、素人からみても帆船になっているんだが、内装はまだ全然じゃ無いのか?


それに、この船、出来上がってみると想像以上に大きんたが…………


『ヒナタ、内装はどうするんだ?』

まぁ、分からなければ聞けば良い。


『内装の方は、平日に殆ど仕込み終えてます。お陰で《木工》と《造船》スキルの上がりが良かったですよ。残っているのは、ダイニングとキッチンだけです。これは、シュンさんに相談したかったので置いて有ります』

なるほどな。ヒナタは、平日の個人活動中もやっぱり船が優先だったみたいだな。スキルの成長もかなり良かったみたいで満足そうだ。


『了解だ。中に入ってもみても良いのか?』

どうぞと言われて船内を案内されていく。まずは、船倉からのようだな。


『こっちに男部屋と女部屋、その奥がファミリアルーム、ゲストルーム、1番奥にあるのが倉庫ですね、倉庫以外の各部屋には一応ベットも作っています』

これ、外見は帆船だが、中に入ると完全な客船だよな。それも、かなり本格的に作り込んでいる………って言うか小さなホームより豪華じゃないのか?


『ワシらの部屋も有るのは嬉しいのじゃ』

白は、竜の姿で僕の側を飛んでいる。最近は慣れてきたのか、竜の姿でいる方が多い。黒は、相変わらず銃のままだが……


『中も想像以上に広いし快適そうだな。倉庫は別として男部屋こんなに広くて良いのか?僕とカゲロウの2人だけだぞ』

僕とカゲロウしかいないのだから、女部屋並の広さが無くても良いはずだ。


『えっ~と、それはですね。新しく仲間も増えるかも知れませんし、それにシュンさんのお友達、アクアさん達も来るかもと思いまして………少し大きめに』

アクアは、ともかく………確かに、新しい仲間の可能性は大いに有るよな。最近は、このメンバーに慣れすぎていて考え付かなかったな。


『それもそうだな。それで、問題のダイニングとキッチンは?』


『さっき下った階段を上って………こちらです』

1階がダイニングやキッチンのようだな。あれ!?更に上にいく階段もあるよな。聞くところによると上には船長室等が有るらしい。


『えっ~とだなヒナタ、このスペースは………どこかの社員食堂でも開くのか?』

ダイニングとキッチン用のスペースには、ホームのリビング程では無いが、かなり広いスペースが用意されている。この広さなら20席、いや30席は余裕だろう………


『すいません。本当は、作っている途中で気付いてはいたんですが、結果的に実物以上に大きくなりまして………』

どうやら、さっきの各部屋が大きかったのもスペースが余り過ぎたからのようだな。出会った時からしっかりしているイメージが強かったヒナタだが、案外抜けたところも有るんだな。


『じゃあ、キッチンはこれだけのスペースをくれ、カウンターバーみたいな感じのキッチンを作ろうと思う。工事の方は街の工房で手配してくるな。それと、ダイニングで使うテーブルとイスはどうするんだ?』

かなり大きめのスペースを適当に貰うが、まだまだ十分にスペースが残っている。


『それは、私が作っても良いんですが、1度トウリョウさんに相談しようと思っています。リビングのテーブル、素敵過ぎでしたし』

どうやら、ヒナタもホームのリビングに有るテーブルを気に入っているみたいだな。アレは使い易くて美しいしな。


『そっか、それは任せる。ついでに、カウンターバー用のイスも頼んでおいてくれ。造船所へ侵入許可は自由にしてもらって構わないからな』

ヒナタなら無茶苦茶な侵入許可は出さないだろしな。それだけ言い残して造船所をあとにする。





さて、どんなカウンターバー風のキッチンにしようかな。船内と言う事も有るしな………あまり大規模なものは作れないよな。意気揚々と街の工房で申請を出したのだが………


『えっ!?出来ないんですか!?』

船内にキッチンを、いつものようにポンと製作する事は出来ないらしい。ホーム等の大地に固定されたエリアに有る建物内なら問題無いらしいが、動くものには無理なようだ。どうしようか?と悩んでいると………


『そんなに、キッチンが欲しいなら、これなんかどうだ?』

工房の奥から何かを取り出してくる。


『このキッチンキットを買って手作りするなら作れ無いことも無いぞ』


『???どう言う事ですか?』


『兄ちゃんには、何時もご贔屓にしてもらってるからな。教えてやるよ』

工房のおっちゃん曰く、自由自在(オリジナル)な設備を作る為に設備部品(パーツ)をバラバラの状態で買えるらしい。普段設置してもらっている設備も、元はこの状態なのだそうだ。


しかし、一括セットでの購入よりも高くなるので、殆どのプレイヤーには縁が無い事らしい。どうやら、ある程度工房や神殿で建物等の新築や増改築をしないと、この話は出てこないのかも知れないな。多分だが、ある種のイベントだと思う。


『じゃあ、このセットを一式買わせて貰います』

おっちゃんから船内キッチンに、必要なパーツを買わせて貰った。一瞬ホームのキッチンも自分で改築しようかと思ったが、今の状態でも十分使い易いので現時点では保留にするか。


うん!?ちょっと待てよ!?もしかしてキッチン用のパーツが有るのなら………


『あの、無理だとは思うんですが、お風呂用のキットって無いですよね?』


『有るよ。でも、値段も高いし、製作も難しいぞ』


『そうですよね。無理だと思ってまし…………えっ!?有るんですか?』


『有るよ。風呂ならパーツのラインナップは、これだな。わしらには、扱いきれん品物だけどな』

おいおい、一体どう言う事だ?かなりの種類のパーツが有るぞ。自分達で扱いきれ無い品物の在庫が、扱えるキッチンよりも種類が多いのは絶対に変だと思うぞ。確かに、値段も高いが買わないと言う選択肢は無いな。


『この露天風呂セット一式とジャグジー・大と打たせ湯のセット、それに、サウナキットを下さい。あっ!!これ、この子供用の露天風呂セットも下さい』

うげっ!?合計の金額にもびっくりしたな。もともと欲しいものだったし、衝動買いだったので値段は気にしていなかったのだが………造船所が2つは買える金額になっている。


う~ん…………まだ20億フォルム以上も有るのだか、【noir】の所持金ってゲームバランスが崩してるよな。相変わらず《鞄製作》のスキル所持者が少ない事も有るが、鞄事件の影響で【noir】製の鞄が一種のステータスになっている様で、店舗に出すと直ぐに売り切れる。その為、お金がどんどん増えている。


〔『主よ、無駄遣いが過ぎるのじゃ』〕


〔『僕も自覚したよ。だけど、白は露天風呂の素晴らしさを知らないらしいな、楽しみにしてろ。黒もな、3人で一緒に入ろうな』〕


ヤバイよな、にやけ顔が止まらないぞ………今から楽しみで仕方ない、当然、1番風呂は僕達だな。




僕は、造船所に戻りキッチンのキットを組み立て始める。まぁ、組み立てると言っても、キットアイテムを並べて《合成》するだけなんだけどな。購入時には分からなかった事だが、このキットを組み立てるには《合成》スキルが必要になっている。つまり、街の工房で起きた組み立てキット系のイベントは《合成》スキルを取得していたから起きたようだな。勿論、贔屓にしているってのも関係有ると思うんだがな。そうでなければ、トウリョウも《合成》スキルを持っているはずなので、キット類の事を知っていないとおかしいからな。


『良し。これで完成だよな』

船が木製なので、火力を強く出来なかったのが唯一の心残りか………まぁ、紅茶を淹れたり、簡単な調理をするだけなら十分すぎる代物だし、換気用のダクトとかも付けれたので満足してるんだがな。ダクトが無いと魚を焼くのに困り過ぎる。せっかく、海に出るのだ。釣りたての魚を焼いて食べたいからな。


『まずは、紅茶でも淹れてみるか』

出来たばかりのキッチンのテストも兼ねて紅茶を淹れる。食器類や調理器具は無いのだが、僕専用のティーセットだけは、常に鞄の中に持ち歩いている。


『白と黒も飲むか?』


『勿論頂くのじゃ。おや?今日は黒も欲しいそうじゃ』

2匹が同時に竜の姿に具現化してカウンターバーに降り立つ。黒の竜の姿を見るのは、これが2度目だよな。以前も思ったが、竜2匹は、やっぱり壮観だよな。


『おぉ!!黒、正面から見るのは初めてだな。はい、黒の分の紅茶だ。白と一緒で少し甘めにしてあるぞ。それと少し熱いから気を付けて飲めよ』

手元で、少しフーフーして冷ましてから黒に手渡す。なにしろ、白は何度も飲んでいるので慣れているが、黒にとっては初体験で有る。熱過ぎて、紅茶が嫌われるのは嫌だからな。


気に入ってくれたら良いんだがな。


『………ありがと…………美味』

こう言う時は、素直に嬉しいよな。僕も紅茶を飲みながらしみじみと感じる。


『主よ、今日は茶菓子は無いのかの。ワシは茶菓子を所望するのじゃ』


『急だったからな。無い』

嬉しそうな黒とは対照的に、白は凄く残念そうな顔をしているな。まぁ、次は茶菓子も用意しておくかな。是非とも黒に食べて貰いたい。手作りキッチンのテストも問題無さそうだしな。


残りのダイニング部分は、ヒナタに任せておこうかな。本当に完成が楽しみだ。ヒナタにキッチンの完成をメールで伝えてホームに戻る事に。


いよいよ、次は念願の露天風呂の番だな。





『この辺りのスペースが良いかな?どう思う?』

ホームのリビングから裏庭に出てすぐの場所で候補地を決める。


『ワシらは、露天風呂なる物がよく分からないのじゃが、水浴びやホームに有るシャワーとは違うのかの?』

僕の頭の上に居座る白が答える。ちなみに、黒はホルスターの中で気持ち良さそうにお昼寝中だ。


『全く別物だな。露天風呂は天国、いや聖地(サンクチュアリ)だ』


〔『うん!?主よ、人じゃ』〕


『シュン、お湯の問題が、解決したんか?』


『おっ!!トウリョウ、久しぶりだな………お湯の方は、何とかなりそうだ。今日はヒナタに用か?』

誰よりも早く他人の気配に気付いた白は、既に銃の形状でホルスターに収まっている。


『ほんまか!?そりゃ良かったやないか。そや、なんでもテーブルとイスの件で依頼があるそうや』

確実に、船のダイニング用だな。


『そうか、イスは僕からの依頼だ。良い物を頼むぞ』


『当たり前や、このトウリョウに任せとき。抜かりは無いで』

実力的にも申し分無いし信頼もしている。


〔『さっきは、危なかったな。白、サンキュ。トウリョウが帰るまでは竜になるなよ』〕


〔『了解じゃ』〕


『さて、やりますか』


取り敢えずは、配置決めからかな。サウナと水風呂は裏口の側で、露天風呂本体と子供用の露天風呂、ジャグジー・大は【シュバルツランド】の城が見えるようにしようかな………残った打たせ湯は、反対側で良いだろう。


〔『主よ、結構な場所を使うのじゃな………』〕


〔『あぁ、僕も若干引いている』〕

配置を考えただけなのだが、広さや設備がちょっとしたスパ並だと言う事に気付いた。衝動買いって本当に恐ろしいよな………


まずは、メインの露天風呂からだな。地面を適当な深さに掘って露天風呂キットの岩を配置していく。地面を掘る作業は手作業だったが、岩はメニュー画面から選んで配置していけるので1個1個手作業で並べる必要も無くて良かったな。


『これは、なかなか良い感じだよな』

露天風呂の回りも芝生から石の床にに変えている。ついでに、通路以外は枯山水仕様に変更済みだ。完全に見た目は、高級旅館の離れの露天風呂って感じだな

大きさも10人位は入れる規模に仕上がっている。


〔『主よ、先にこれだけを《合成》するのかの?』〕

さっきまでと違い、白はワクワクしているようだな。


〔『それ、悩んでるんだよな………今これだけを《合成》すると、入りたくなるのを我慢出来ない気がするんだよな………よし!!決めた、全部出来てから《合成》する』〕


そうと決まれば、どんどん組み立てなければならない。雪ちゃん用の子供露天風呂に2、3人用のサウナと水風呂、打たせ湯、どんどん組み立てていく。


『あとは、《合成》すれば、自然とお湯が出てくる予定なんだが………』

うん!?自然とお湯が湧くなら、これは温泉になるのか?………そんな事を気にしながら右手と左手を露天風呂に添えて《合成》してみる。


〔『主よ、何も変わらないようじゃが………』〕


〔『いや、一応この場所は露天風呂&スパって施設になったぞ』〕

《見破》で確認もしてるから間違いないと言いたいが、僕にも何も変わらないように見える。


〔『しかしじゃ、見た目は枯れ果てた池のようじゃ………』〕

白が、見も蓋も無い(ひどい)事を言いきった瞬間に、ゴォォォ~と音を立てて勢いよくお湯が吹き出してきた。


『おぉぉ~~~~!!すっげぇ~な』

露天風呂は、あっという間にいっぱいになり、湯船の縁から溢れている。


打たせ湯、あれは小さな滝だな。あとで絶対に修行だな。どう言う原理かは分からないが溢れたお湯は循環して、また綺麗なお湯として湯船に溜まる仕組みになっているらしい。大量の湯気が発生しているせいで、お気に入りの【ダテ眼鏡】が曇っている………仕方ない露天風呂の中では外そうかな。


『……………凄い』

いつの間にか目を覚ました黒は竜の姿に具現化して、僕の頭の上に座っている。それにしても、これは天国、いや本当に聖地だな。


『黒もそう思うか?』


『………うん……………《結界》張る?』

確かに、いくら【湯着】が有るからと言っても覗き防止機能は欲しいところだ。


『でも、残念だか、《結界》を張るアーツを僕は覚えて無いんだよ、うん!?ちょっと待てよ………そう言えば【アーツの書・結界】っての前のイベントで貰ったよな。それを、使って取得すれば良いのか?』


『…………違う?』


『主よ、どうやら黒は【アーツの書】を露天風呂に《合成》してみろと言っておるようじゃの』

これまた、いつの間にか竜の姿になっている白が、露天風呂の上をぐるぐる回りながら教えてくれる。


『えっ!?そう言う《合成》も出来るのか?流石にそれは無理じゃないか、それが出来たらある意味で革命だぞ』

【アーツの書】でアイテムにもアーツを覚えさす事が出来るなら、その価値は計り知れない気がするのだが………


『結果は、黒にも分からんようじゃ。どのみち、失敗してもアイテムは無くならないのじゃ。それに物は試しと言うのじゃろ?』


『まぁ、僕は《合成》を試すだけなんだし、良いけどさ…………』

露天風呂の時と同じ様に【アーツの書】も《合成》してみる。違うのは、今回は右手に露天風呂、左手に【アーツの書】が有るくらいだな。


『《合成》』

ピカッと光ると手元の【アーツの書】が消えていた。


『…………成功』

黒の言葉で《見破》を使って確認してみると、露天風呂&スパのエリア内に人が入っていると、外から中は透明に見える様に結界が張られていた。


なお、この結界は立方体の形をしており、露天風呂エリア全体を覆っている。副産物だったが雨や雪も防ぐ仕様になっているようだ。


『うわっ、マジか!?《結界》って凄く便利なんだが………この性能なら露天風呂に使ったのは少し勿体なかったかもな』

アーツの能力を確認すると状態異常系を防ぐ能力が有る。その能力マジでかなり欲しかったよな。いや、僕の大事な露天風呂(温泉)が、強化された事を喜ぶとしようかな。


ホームにヒナタとトウリョウは、まだ居るのかな?是非とも、この完成した露天風呂&スパを見て欲しい。それにしても、《合成》のLvの上がり具合がエグいよな………【アーツの書】の《合成》で一気に7も上がっている。まぁ、【アーツの書】とか貴重過ぎて気軽にLv上げには使えないんだけどな。そもそも、残りは1つしか無いし………




『ヒナタ、トウリョウいるか?』


『主よ、残念ながら、ホームには誰も居ないようじゃ』

2人で【蒼の洞窟】にでも下見に行ったのだろう………しまった!!あの光景を見て驚くトウリョウの顔を見損ねたな。まぁ、それならそれで………


『仕方無い。これは、仕方無いよな。白、黒、僕らだけで風呂に入ろうか?』

皆には悪いと思うが、素早く装備を湯着に変える。白と黒は着替える必要が無いのが少し羨ましいな。


『主よ、賛成じゃ』

素早く露天風呂まで飛んで行く。黒に至っては準備万端って感じで待機しているからな。


『熱いから気を付けて入れよ』

僕の事を待ちきれないようだし、仕方ないよな。


『主よ、これは良いのじゃ。最高なのじゃ』

僕が、かけ湯をしている間に2匹は既に湯に浸かっている。白の喋り方と雰囲気だけみれば、お爺ちゃんだよな………今度入る時には、かけ湯の文化を広めようかな。


『主よ、お爺ちゃんは酷いと思うのじゃが、今は特別に許すのじゃ』

白は、本当に気持ちよさそうにしている。普段、無口無表情の黒が何とも言えない表情をしているしな。


それでは、僕も入らせてもらおうかな。だが、その前に白と黒の頭の上に折り畳んだタオルを置く、やっぱり雰囲気は、大事だよね。当然僕の頭の上にも乗っけている。


『ふはっ~~~~』

ヤバい、ヤバいぞ。これは簡単にダメ人間が出来る。ポカポカぬくぬくって気持ち良すぎだぞ。機嫌度が入った瞬間にMAXまで上昇してるし。何も言わ無いが顔を見たら全員に伝わるだろうな。幸せだ。




『…………誰か来た』

長い間3人で良い気分に浸っていたようだな。かなり長い時間入っているのだが、のぼせないのは嬉しい仕様だな。


『誰が、戻って来たんだ?』


『うむ、この様子は弟君じゃな』

カゲロウか、それなら、何も問題ないな。


『お帰り、カゲロウ。ちょっと裏まで来いよ』


『ギルマス?、裏庭で何してる……………何だ!?これ!?って、ギルマス何処だ?』


『露天風呂の中だ、《結界》のお陰で外からは見えない。倉庫に【湯着】を作って有るから着替えて来いよ』






『俺は、もう何からツコッんでいいのか分からない』

【湯着】に着替えて、露天風呂に浸かったカゲロウの第一声はこれだ。


『まぁ、何も言うな。顔を見れば分かるよ』

カゲロウの顔も幸せそうだ。色々言いたい事も有ったんだろうが、カゲロウも機嫌度がMAXに上昇したことで小言が出ない。本島に良いシステムだな。


『気持ち良いから仕方ないだろ。このお礼に後で《木工》使って看板作っておくわ。今、入浴してるのが男か女か分かる方が問題が起きなそうだろ?』


『そうだな。この場所に合うヤツを頼むわ』

カゲロウは良いとこに気付いたよな。外から見たら全く分からなかったそうだ。


《結界》の中には、【湯着】を装備して(着て)ないと入れない様にしてあるが、念には念を入れた方が良いだろう。まぁ、中から外は見えるので声さえかけるようにすれば、覗き疑惑をかけられずに済むだろうけど…………有るに越した事は無いからな。





露天風呂から上がるとヒナタからコールが入り、カゲロウと共に造船所に来ている。白と黒は、新しく誰かがホームに来るまでは露天風呂の案内人としてホームに残して来た。急にあの露天風呂を見れば誰だって驚くだろうと言うカゲロウのアドバイスを採用した結果だ。


『お待たせ。それでヒナタ、トウリョウ、用って何だ?』


『シュン、どうやって《造船》スキルを取得したんや?多くのプレイヤーが海に出る為に船を探しとるが、まだ見つかって無いんやで、ヒナタに聞いてもシュンやないと分からないって答えるし………なぁ、頼むわシュン、教えてや』

何時もの余裕がないぞ。ヒナタも困っているようだな………トウリョウには日頃からお世話になってるし。


『別に良いぞ。隠すことでも無いからな。知っている事なら全部教えるわ。カゲロウはヒナタと船の仕上げをしててくれ、僕はトウリョウに教えてくる』

取り敢えずは、造船所の持ち主がいた場所に行ってみるか、まぁ、会えるかどうかは別にしてだが………




『ここが、さっき話した造船所の元持ち主のおじいちゃんと出会った場所なんだが………今日は、いないようだな。トウリョウのギルドには《木工》スキル持ち多いよな?』


『勿論や、全員が取得しとるで。【カーペントリ】入会条件の1番目やからな』

1番目って………いったい何番まで有るんだ?


『そうなると《造船》イベントの発生条件が不明だな、てっきり《木工》取得3人以上が条件だと思ってたんだがな………仕方ないNPCに色々声かけてみるか』


『付き合わせてもええんか?』


『それは大丈夫だが、声はトウリョウがかけてくれよ。僕は既にスキル取得済みだから、イベントが発生しないのかも知れないしな』


『勿論や、アドバイスだけでも助かるわ』





暫く街の海側を回って様々なNPCに声をかけ続けてみたが、おじいちゃんみたいなNPCが見付からない。


『今日は、付き合わせて悪かったな。また今度ギルドメンバーで探してみるわ。それと、ヒナタに依頼は任せとき来週の金曜までには仕上げとくって伝えといてや。お代の方は、お礼に勉強させて貰うわ』


『うん!?お代を勉強って何だ?』

この関西弁?は全く分からないぞ。


『これは、関西弁で安くしとくって事やな。商売の授業料って事や。そっちのフレイなら伝わるやろ』


『フレイも関西みたいだからな。だけど、最近ログインしてないみたいで少し心配なんだがな』


『そなんか?まぁ、大丈夫やろ。そのうちひょっこり現れるで』


『そうだな。今日は悪かったな。また、何か有ったら何時でも呼んでくれ』

トウリョウは街のゲートから【カーペントリ】のホームに転送していく。




『ヒナタ、カゲロウお待たせ。トウリョウが依頼品は金曜までには仕上げるって言ってたぞ。《造船》スキルはダメだったわ』

ポルトのゲートからホームを経由して、造船所に戻って来た。ついでにホームに残していた2匹も回収済みだ。


『えっ!?ダメだったんですか?』

かなり歩いて探し回ったが、見付からなかった事等を伝える。


『僕が、一緒に居たからかも知れないんだけどな………また、探すって言ってたから。そのうち見付かるとは思うけどな』


『ギルマス、そんな事より最後の仕上げだ。帆を取り付けるの手伝ってくれ。1人では、難し過ぎてヒナタに怒られっぱなしだったんだぞ』

カゲロウはマストの上まで登っているが、問題の帆は地面に落ちている。どうやら落とした様だな。


それは、ヒナタに怒られても仕方がないと思うが、結果的に言えば僕がトウリョウに付き合ったせいで、カゲロウに全てを押し付ける形になってしまったからだよな。少し悪い事をしたかな。


『すまない、白、黒、ちょっと頼めるかな?』

2匹が竜の姿になり、帆の両端を持ち飛び上がる。2匹はバランスを取りながら器用にマストの位置で浮いている。


『ありがとう。カゲロウこれで結びつけれるか?』


『大丈夫だ。白、えっと、一応、黒は初めましてになるのか?ありがとな。本当に助かるよ』

カゲロウは、手早く帆の紐を結んで行く。ちなみに、下の方は僕が結んでいる。決して白と黒に任せてサボっている訳ではないぞ。


『主よ、報酬は後で紅茶を淹れて欲しいのじゃ』

黒も反対側でコクコクと頷いている。


『了解だ。雪ちゃんが今日は1人でクッキーを焼いたらしいから茶菓子にも期待して良いぞ』

先週末にケイトと3人で焼いたクッキーにハマった雪ちゃんは、今日1人で再挑戦しているらしい。この前も上手く焼けたので大丈夫だろうな。僕も楽しみだ。








装備

武器

【雷光風・魔双銃】攻撃力80〈特殊効果:風雷属性〉

【白竜Lv15】攻撃力0/回復力125〈特殊効果:身体回復/光属性〉

【黒竜Lv10】攻撃力0/回復力120〈特殊効果:魔力回復/闇属性〉

防具

【ノワールシリーズ】防御力105/魔法防御力40

〈特殊効果+製作ボーナス:超耐火/耐水/回避上昇・大/速度上昇・極大/重量軽減・中/命中+10%/跳躍力+20%/着心地向上〉

アクセサリー

【ダテ眼鏡】防御力5〈特殊効果:なし〉

【ノワールホルスター】防御力10〈特殊効果:速度上昇・小〉〈製作ボーナス:リロード短縮・中〉

【ノワールの証】〈特殊効果:なし〉



天狐族Lv33

《双銃士》Lv52

《魔銃》Lv50《双銃》Lv46《拳》Lv35《速度強化》Lv78《回避強化》Lv79《旋風魔法》Lv32《魔力回復補助》Lv76《付与術》Lv45《付与銃》Lv54《見破》Lv70


サブ

《調合職人》Lv24《鍛冶職人》Lv27《革職人》Lv49《木工職人》Lv28《鞄職人》Lv49《細工職人》Lv24《錬金職人》Lv24《銃製作》Lv35《裁縫職人》Lv9《機械製作》Lv1《料理》Lv34《造船》Lv12《家守護神》Lv12《合成》Lv12


SP 52


newアーツ

〈サザンクロス・4点バースト〉攻撃力×4/消費MP60

4点同時撃ち

習得条件/《双銃》スキルLv45


称号

〈もたざる者〉〈トラウマ王〉〈略奪愛?〉〈大商人〉〈大富豪〉〈自然の摂理に逆らう者〉〈初代MVP〉〈黒の職人さん〉〈創造主〉〈なりたて飼い主〉

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