黒(くろ)
2学期の始業式が終わってログインしてみたが、まだ誰もログインしていなかった。
『さて、予定通り防具の新調でもしますか』
『主、今日は生産活動なのかの』
『まぁな、白は雪ちゃんと遊んでても良いぞ。出る時は声かけるから』
白は、すぐに竜の姿に具現化して雪ちゃんの部屋に飛んで行った。同じファミリア同士だからか、白は雪ちゃんと直ぐに仲良くなっていた。
ちなみに、雪ちゃんとマナさん達はホームに住んでいるので専用の個室を作ってある。そこには、ベットやソファー等も完備して有るので、かなり住みやすい状況になっている。雪ちゃんは、まだ子供なんだからヌイグルミやオモチャくらいは有るほうが良いかもな。
今回は4人分だからな。さて、誰の分から作ろうかな………まぁ、約束も有る事だしな。まずはフレイからだよな。
フレイに新しく頼まれたのは、今までの様な中国の武道着では無く、和装の巫女服だった。正月に家の近くに有る神社を手伝っていて着なれていて動き慣れているし、《刀》スキルの為に袴系を装備したいらしい。
ただし、動きやすさを重視して袖の部分は短くして欲しいようだ。あと、折り畳んで収納出来る三節棍用の鞘も欲しいらしい。
『まずは、巫女服からだな』
当然、作った事は無いので、型紙から大まかな生地を切り出して試作していく。3着程作ってみたが、どうもしっくりこないな。
『う~ん』
やっぱり、サンプルが有った方が良いよな。
そもそも、和服系は振り袖くらしか見た事が無いからな。良く知りもしないで、良いものが作れる訳が無い。
『………買いに行くか』
確か露店でも和服系を売っていたはずだ。ついでに、他の皆の防具で参考になる物も買おうかな。
『白、雪ちゃん、ちょっと外に出るけどどうする?まぁ、買い物だから直ぐに帰ってくるけど……』
『雪、お外行きたい』
『なら、一緒に行くか?外では、これ会話出来ないけど良いかな?』
『主、大丈夫じゃ。雪も《心話》は使えるぞ』
えっ!!マジで?、そんな事は聞いた事ないぞ。白の話ではファミリアには必須の能力なんだそうだ。
〔『《心話》?って、これの事?雪、この前アキラとこれで話してたよ』〕
〔『あってる。これの事だ』〕
これが出来るなら問題無いな。オークションの時、アキラとはこれで会話をしていたらしい。こんな事が出来るならもっと早く僕にも教えて欲しかったな。
3人?で街にでる。人からは見えないから良いが、プレイヤーに幽霊に武器、組み合わせとしては凄く異様だよな。
〔『シュン、あそこ、人がいっぱいいるよ』〕
僕の上をぷかぷかと飛んでいるので発見が早い。確かに、普段以上なの人がいるよな。あの辺りなら神殿か?そう言えば、そろそろ定期バージョンアップの時期だよな。何か発表されたのかも知れないな。買い物は、特に急いでいないので寄ってみようか、何よりも雪ちゃんが行きたそうにしているからな。
『やっぱり、バージョンアップの情報か…………』
〔『バージョンアップって何?なの』〕
う~ん、何て説明したら分かりやすいのかな。
〔『この世界の拡大と言うか進化って言うか………そう!成長、成長だな』〕
〔『成長?』〕
〔『うん、成長。雪ちゃんもどんどん新しい事を覚えていくでしょ?この世界も同じように新しい事を覚えていくんだよ。それをバージョンアップって言うんだ』〕
〔『そなんだ。じゃあ、雪も今バージョンアップしたね』〕
ニコッて笑う雪ちゃんに、またほっこりさせられてしまう。雪ちゃんのこの笑顔はやはり反則だろうな。
掲示板を確認してみると今週の金曜日にバージョンアップになっている。詳しい内容は相変わらず書かれていないが、世界の拡大と種族に関するバージョンアップになるらしい。
種族に関するバージョンアップは期待したいよな。OOOではキャラメイクの時に種族を選んだが、今までは容姿以外にこれと言った違いが無かった。有ったのはステータス補正位ぐらいだからな。
かなりの人気を誇っているOOOだが、その辺のクレームが掲示板に書かれているのを見たことが有る。何か個別の特徴が増えてくれるなら嬉しいよな。そう言う僕もケモミミやモフモフの見た目に憧れて天狐族を選んだ1人だからな。当然、世界の拡大も楽しみなのだがな。
〔『そろそろ、行くよ。雪ちゃん何か欲しい物が有ったら言いなよ』〕
母の買い物に着いて行って、お菓子を買って貰っていた小さな頃の僕等の事を思い出してしまった。
〔『雪、お菓子が欲しいの。シュンの紅茶に合うお菓子』〕
本当に、雪ちゃんは可愛い事を言うよな。
〔『それなら、今日はケーキでも買って帰って、週末は一緒にクッキーでも作るか?』〕
〔『クッキーって雪にも作れるの?』〕
多分、大丈夫だよと伝えると嬉しそうに空を飛び回った。それから街をブラブラしながら、何種類かのサンプルを買ってホームに戻った。
『マスター、雪ちゃんお帰りなさいです』
ホームに戻るとケイトとフレイがログインしてきていた。フレイは既に工房にいるみたいだな。奥からカンカンと金槌を叩く音がしている。
『ただいま。今はケイトとフレイだけか?ケーキ食べないか?買って来たんだ』
『はいです。食べますです。直ぐにフレイ呼んできますです』
ケイトが嬉しそうにフレイを呼びに行ったので、僕は紅茶の準備をする事に、やはり女の子は甘いものが好きなようだな。
あれ?いつのまにか《家事》スキルが上限に達しているよな、進化先は《メイド》と《執事》と|《家守護神》《ハウスキーパー》か…………どれも《家事》の上位スキルで能力にたいした差も無さそうだな。それなら………
『《家守護神》だな』
すぐに、スキルを進化させる。実際のところ男としては《家事》はともかく《メイド》は女の子っぽく感じて少し遠慮したいよな。《執事》に関してはオークションで着ていた執事服を
通して入札者無しを思い出しそうで却下だ。
そう言えばトラウマ称号、あの時は成長しなかったよな………てっきりトラウマ神くらいにはなると思っていたが、それとも今がMAXなのかな?それはそれで嫌だな。
『シュン、ありがとな、それでケーキは何を買って来たんや?』
どうやら少し考え過ぎていたようだな。ケイトがフレイを連れて戻って来ている。
『チーズケーキとショートケーキを3個ずつに、季節限定梨タルトを4個買って来たよ』
僕のオススメは、季節限定梨タルトだ。
『うん?数が合わへん事ないか?』
『狐の姉さん、ワシを忘れてないかの』
白が竜に具現化する。
『白も食べれるんか!?それは悪かったな』
僕らも驚いたが白も食事が出来るらしい。最近は驚かせれる事ばかりだよな………でも、これはこれで貴重な経験かもな。
『マナちゃんとミナちゃんに紅茶とケーキ運んで来たよ』
雪ちゃんは、今日も当たり前のようにお手伝いをかって出てくれた。もう少し年相応に遊んでいてくれても良いと思うんだかな。各々が好きなケーキを選んでいくが、僕のオススメ季節限定梨タルトは…………僕以外は選ばなかった。本当に美味しいんだよ梨タルト。まぁ、カゲロウ達に食べて貰おうかな。
『主よ、これは美味だのう』
ショートケーキの苺を食べながら白が喋る。声だけ聞くと普通のなんだけどな、やはり驚かせれる。
『そうか、良かったな。週末は、雪ちゃん達とクッキー作るから楽しみにしてろよ』
『マスター、私もご一緒して良いですか?です』
『うん。良いよ。ケイトちゃんも一緒に作ろ』
雪ちゃんの一言で全てが決まったな。僕も指でOKを作って返事をする。さぁ、休憩もしたことだし、本格的に生産しますかねぇ。
まずは、サンプルにと買って来た和服を解体していく。中はこんな感じなんだな。僕が思っていたものとかなり違っていた、これではしっくりくる物が出来るはずが無いよな。サンプルを参考に試作していく………
『これは、なかなか良いんじゃないか』
あとは、着心地と動きやすさの改良かな………う~ん、ちょっと素材を変えてみようかな。絹系素材の在庫が有ったはずだし、巫女服には合わないかも知れないが絹地にしてみようかな。これで着心地は良くなるだろうな。
【フレイサールール・巫女服】防御力40〈特殊効果:速度上昇・中〉〈製作ボーナス:着心地向上〉
巫女服なら袴の色は当然朱だと思うのだが、フレイの希望は青系だ。それならと青に近い藍色を選んだ。これから作る予定の他の防具にも合わせなければならないからな。
他に作るのは、籠手と鞘とブーツだったかな。本当は、足袋とか草履等がデザイン的には合うのだけどブーツ系が良いらしい。籠手は前に作ったものを気に入っているようなので参考にする予定だが、ブーツがな………これは、かなりデザインに拘る必要があるんだよな。
まぁ、ある程度サンプル作って巫女服に合わせてみるしかないかな。暫く試作を続けてみるが、ブーツに関しては納得するものが出来ずに、その日はログアウトした。
「駿、バージョンアップの情報が情報サイトに少し載ってるぞ」
昼休みになると同時に蒼真がやってくる。同じ教室で、昼御飯も一緒に食べるのだ。そんなに慌てなくても良いんじゃないのか?
「昨日、神殿前の掲示板で見たぞ」
「何?そう言う事は。教えてくれ………」
「悪いな。生産で、ちょっと行き詰まっててな………ギルドメンバーに言うのも忘れてたな」
昨日のお茶会の話題は、希望の装備についてだったので、すっかり忘れていたな。あとでメールしておこうかな。
「それで、駿的には、どっちが気になるんだ?」
「どっちかと言われると種族かな。世界の拡大も気になってるけどな………」
「俺は、世界の拡大だ。噂では聞いていたが海外用のエリアやサーバーが導入されるんじゃないかと思っている」
確かに、徐々にだが街の人口も増えてきているしな。【noir】でこそメンバーにプレイヤーが増えていないが、他のギルドは人員の増加が激しいらしいしな。
ちなみに、【noir】の人員が増えていないのは、あのクエストイベントのお陰である。普段の加入希望者は殆どいない。噂では、次のクエスト開催を待っているらしいからか。当分開催予定は無いのだけど………それにしても、本当に海外用のエリアが有るのなら僕も行ってみたいよな。
「まぁ、金曜日の昼休みには分かるだろ」
「そうだな。それで生産の悩みってなんだ?」
「あぁ、今ギルドメンバーの防具の新調を始めたんだが………フレイ用のブーツがな。ちょっとした難問なんだよ」
蒼真に現状を話してみる。何かアドバイスでも貰えれば良いが………
「それは、俺には無理だな」
少しでも期待した僕がバカだったよ。でも幼馴染みが悩んでいるんだ、少しは一緒に悩んでくれても良いんじゃないのか。せめて悩む素振り位は有っても良かったはずだろ。
「そうだな。他の人に相談するわ」
【美神】のミコトさんにでも相談するか………《裁縫》系なら頼りになるはずだ。
『すいません。ミコトさん、少し時間いいですか?』
OOOにログインすると、ミコトさんのログインも確認出来たので、コールをしてみた。
『先日は。えらいお世話になりましたな。それで、今日はどないしはりましたん?』
『急で、すみませんが、和装に合うブーツのデザインって何か有りますか?』
『和装にブーツどすか?それなら、ニットブーツとかどないです?あとはロングブーツでヒールを高めにしはるとか』
ニットブーツは別として、ヒールの高いブーツは盲点だったかも知れないな。
『ありがとうございます。参考にさせてもらいます』
『いえいえ、お気になさらず。それでは、また』
OOOはゲームなのだ。現実で動きにくいブーツでも動きやすい物が作れる可能性は有る。黒に近い暗い青系の色にすれば巫女服にも合うかも知れない。
【フレイサールール・ブーツ】防御力20〈特殊効果:回避上昇・中〉〈製作ボーナス:跳躍力+25%〉
デザインに丸みを帯びさせヒールを太くする事で、動きやすさと巫女服とのバランスがとれるようになった。
『これなら、巫女服の袴の丈を少し短くした方が更に合うんじゃないか………』
巫女服にも改良を加えていく。少しずつバランスを取りながら作るしかないかな。籠手の方は1度作っているために製作は早かった。
【フレイサールール・籠手】攻撃力40/防御力35〈特殊効果:強度上昇・中〉〈製作ボーナス:速度上昇・中/耐火〉
余り能力が変わらなかったな。若干、性能アップってとこだな。あとは、三節棍用の鞘だ。確か、左の腰に自作の刀【旋】の鞘を装備すると言ってたからな。
『さて、どうしようかな………あっ!?』
そう言えば最初に出会った頃のフレイはトンファー装備してたよな、あれもスキル的には《棒》なんだよな。それならこう言うのはどうだろう………
【フレイサールール・右籠手】攻撃力20/防御力20〈特殊効果:強度上昇・小〉〈製作ボーナス:速度上昇・小/耐火〉
【フレイサールール・左籠手】攻撃力20/防御力15〈特殊効果:強度上昇・小〉〈製作ボーナス:速度上昇・小/耐火〉※三節棍収納可能
※三節棍収納時は三節棍性能の半分が付加
※セットボーナス:耐久度上昇・中
『これ、思い付きで作ってみたけど、性能面ヤバくないか?セットボーナスもついたし……』
取り敢えずは、依頼されたものは完成したんだが、試着を頼むにしてもフレイはまだログインしてきて………おっ!!ちょうどログインしてきたな。でも、タイミング良すぎじゃないかな。
『フレイ、ちょっといいか?』
『なんや?』
『装備が出来たから試着して欲しい』
フレイに装備を渡す。どうやら色々と驚いているようだな。
『そうなんか?早速着てみるで………シュン、どないや?』
その場で着替えているが、メニューから装備を変えるだけなのでほぼ一瞬で終る。見えてはいけない部分が見える等のトラブルは有り得ないのが素敵だよな。着替え終わったフレイが、恥ずかしそうにクルッと回ってみせる。
『良く似合っているぞ。やっぱり、フレイには好きな色だけあって青が良く似合うな。着心地や動きやすさはどうだ?』
フレイ本人が好きなだけでなく、青系の色が良く似合っている。
『その辺は、全く問題無さそうやな。これ、かなり良いで、動きやすいわ。ウチ自身も頼んでおいて半信半疑やったんやけど、ブーツも巫女服に意外と合うんやな、おっ!!念願のシリーズボーナスも出たで、フレイサールールシリーズでシリーズボーナスは協調(追撃時に攻撃力上昇補正有り)らしいな。でも、本当に1つのアイテムとして纏まるんやな。便利やわ』
シリーズボーナスが発現した事で色々とステータスや効果などの確認をしているようだな。僕は《見破》が有るから確認作業に時間は取られない。
『ブーツは、最大の難問だったからな。シリーズボーナスが出たのは良かったな。新たに検証の価値があるよな………そうだフレイ、左の籠手に三位一体節棍を収納してみてくれ』
何故?と思いながらも三節棍を収納してみてくれた。
『おいおい、シュン、これはええんか?』
性能をみて驚いているんだろうな。性能の高い三節棍を収納する事で籠手の性能が上がる。
『本当に偶然出来た能力だからな。良いんじゃないか?』
同じものをもう1度と作れと言われても出来る気はしないしな。
『ありがとうな。大事にするわ。そや、これ使ってや』
喜んでくれたなら良かった。竜髭のお礼のつもりだったのだが、逆に魔石を大量に貰ってしまった。これは、遠回しに早く【黒竜】を作れって事なんだろうな。
『こっちも、ありがとうな』
まだ【黒竜】を作るには少し黄魔石が足りないな。明日辺り1回鉱山ダンジョンに行ってこようかな。
『じゃあ、少し皆に綺麗になったウチを見せてくるわ』
リビングの方で拍手が起きている。皆の感想も上々のようだな。今日は、時間的に中途半端なので雪ちゃんにぬいぐるみでも縫ってみるか、形は…………そうだな、クマで良いかな。
ぬいぐるみは、以前に家庭科で作った事がある《裁縫》のLvもかなり上がっているので、多分このぬいぐるみを作り終えると《裁縫職人》に進化させる事が出来るだろうな。
『よし、完成だな………あれ?』
クマさん?のぬいぐるみになっているぞ。どう見ても完璧にクマなのだが、可愛く出来ているし失敗した箇所も無いよな。
『シュン、それ何?可愛いね』
これまたタイミング良く雪ちゃんが現れる。
『このぬいぐるみは、雪ちゃんの部屋にでも飾って貰おうかと思って作ったんだよ』
『本当!?雪、嬉しいの』
早速手に取り遊び始めている。気にいってくれて良かったのだが、やはりあの?が気になる………
『シュン、これは何のぬいぐるみ?』
えっ、どう見てもクマだろう。でも万が一って事も有るし一応聞いてみるか。
『雪ちゃんには、何に見える?』
『こんな生き物を、雪、見たこと無いよ』
何?もしかして………
『雪ちゃんは、クマとかベアーって見たこと無い?』
顎に指をあてて頭を左右に振りながら考えているようだが、全く見た事が無いらしい。そう言えば、僕らもクマ系の魔物には出会って無いかも知れない。あとで、ジュネやアクアにも確認して見るかな。魔物でクマ系は有りがちなのでいると思ってたんだがな。
『それは、クマって名前の動物なんだよ』
『クマ?じゃあクーちゃんだね。ありがとう』
雪ちゃんは、嬉しそうにぬいぐるみを抱き抱え部屋に戻って行った。あんなに喜んでくれるならまた合間に作ろうかな。どうやら思っていた通りに《裁縫》も《裁縫職人》に進化させる事が出来る。迷わず進化させる事に、これで下位の生産系は全て職人に進化できたな。また1つ目標に達する事が出来た。こう言う達成感の積み重ねって良いよな。そう言えば《銃製作》はLv30でも進化出来なかったよな。流石は生産系の複合スキルってとこだよな。
『それと、そろそろ《合成》も何とかしたいよな………』
《調合職人》と《木工職人》の取得で複合スキル《合成》を取得出来るはずなのだが、僕は得出来ずにいる。
カゲロウやヒナタは、同じLvで既に取得出来ているのだけどな。以前にフレイと考えていた結果は、複合スキル《機械製作》と《銃製作》の影響では無いかと言う事なのだが、答えは分からない。
ちなみに、同一プレイヤーが様々な生産を取得しているのは【noir】のメンバーくらいなので、【noir】で分からなければ、他のプレイヤーが分かるはずが無い。
翌日は、ログインしてすぐに鉱山ダンジョンに魔鉱石を回収に来ている。ダンジョンに入って既に1時間程度は経つのかな……
『主は、いつも1人で狩りにくるのかの?』
『まぁ、ソロもパーティーも半々ってとこじゃないか?ソロの時は製作品のテストや戦闘訓練が多いかな。パーティーなら素材集めと攻略がメインかな』
『主よ、今日は素材集めが目的ではないのかの?』
『そうなんだがな………岩系のMOBの狩り方が特殊だからな。ギルドメンバーならフレイと僕以外は出来ないんだよな。もしかしたらケイトも出来るようになってるかもだが………』
白と話ながらも狩りの手は止めていない。周りに他のプレイヤーがいないので白とも普通に話が出来ている。まぁ、今の白は銃形態なので見られても僕が変人に見えるだけなんだけどな。
魔鉱石から魔石への加工については、未だに条件が解明されていない、その為にかなりの量を用意しておかなければ、またここに来なくてはならなくなる。それでも、そろそろ十分に回収出来てるよな。回収した魔鉱石の数も50個を越えている。
『主よ、戻るのかの?』
『あぁ、バージョンアップもそろそろだからな。【黒竜】造って、《造船》の為に御神木を採取に行こうかと思ってる。時間的に1回くらいなら氷炎のビークィーンも倒せるだろうし、白が回復専用なら多分【黒竜】は攻撃専用だろ?』
『どうじゃろうな、ワシにそれは分からん。同じファミリアと言えど知らない事もあるのじゃ』
博識の白が解らない事も有るんだな。
『まぁ、造れば解るだろ。戻るぞ』
予定を決めれば、さっさとダンジョンを出てホームに戻る。
『まずは、魔鉱石の加工だよな』
魔鉱石を魔石に加工していく。今日は緋魔石が29個、翠魔石4個、蒼魔石11個、黄魔石が8個、やはり数が読めないよな。足りない魔石が黄魔石5個だったから良いけど、翠魔石だったら明らかに数が足りてないよな…………
『では、メインにいきますか………』
【黒竜・魔銃】
必要素材
魂魄
黄魔石×10
蒼魔石×10
緋魔石×10
竜の牙
魔銃
烈火
皇土
『素材も十分だよな。それでは、製作っと………』
真っ黒な【黒竜】が出現した。色が黒いだけで、形は【白竜】そっくりだった。
【黒竜Lv1・魔銃】攻撃力0/回復力100〈特殊効果:魔力回復/闇属性〉※譲渡不可
スキル《魔銃化》《魔獣化》《成長》《心話》※ユニーク
『えっ!?おい、ちょっと待て、白どういう事だ』
また攻撃力0、それに今度は身体回復では無く魔力回復になっているぞ………
『主よ、ワシにも解らない事は有る。つまりは、解らんのじゃ。おい【黒竜】よ、聞いておるのじゃろ、姿を見せたらどうじゃ』
『……………』
『白、全く喋らないんだが………魔獣器なんだよな、これ』
【黒竜】を手に取って白に確認してみる。ちなみに、白はホームでは竜の姿で自由に過ごしている。
『一応はそうじゃ、試してみたが《心話》でも一切喋らないの、主の《見破》でもダメかの?』
白に言われて《見破》を使ってみる。やはり魔獣器のようだな。ちゃんと生きている。
『魔獣器だな………何で、何も反応しないんだ?僕の製作が失敗したのか?』
『主よ、失敗はしておらんぞ。どうやら人見知りな性格のようじゃ』
人見知りですか………そんなに多種多様な性格が有るんだな。それともフレンドリー過ぎる白の方が変わっているのか?その可能性が高そうで怖いな。
『【黒竜】聞いて、僕はシュン、こっちが白。ゆっくりで良いから仲良くして欲しいな』
軽く自己紹介くらいは必要だよな。
『………………黒』
【黒竜】の名前かな?少し前進したかな。
『了解した。黒って呼ぶな。僕らの事は、好きに呼んでくれて良いぞ。ただ創造主は勘弁して欲しいな。今から森に行くんだが、黒も来るか?』
『……………』
何故だかは分からないが、黒が頷いた様に感じた。
『よし、じゃあ行くか。魔獣器の事はギルドメンバー以外には秘密にしてるから、話したくなったら《心話》で頼むな、白に言ってくれても良いしな。白は喋り方は堅いけど優しいから怖くないぞ。窮屈かも知れないがホルスターで我慢してくれ』
【白竜】と【黒竜】をホルスターに収納する。
【白竜】【黒竜】
※セットボーナス:竜の力(自己回復力強化)
『折角、新しいセットボーナスが発現したが、回避主体の僕には余り必要無さそうな能力だよな………』
まぁ、そんなに時間も無い事だし、蜂の巣を目指そうかな。
『マスター、今から狩りですか?です』
『私達も、ご一緒しても良いですか?』
ヒナタとケイトに捕まってしまったな。普段ならOKだが………今日は、人見知りな大型新人がいるしな。
『悪い、今日はダメだ。ちょっとソロでクィーン狩りに行ってくる』
2人に断りを入れゲートから転送して行く。
『【魔銃】と【烈火】無くなったのは、攻撃面で痛いよな』
【疾風】と【雷鳴】の2丁でビーを狩っていく。今までの主力だった2丁を素材として使ったので、今はリロードに大忙しになっている。速度と回避に余裕が有るのでダメージを受けたりはしてないが、とにかくリロードが手間だな。
前回も思ったが本気でもう1度【魔銃】の製作を検討する必要があるよな。魔獣器製作に浮かれていて【魔銃】の事を忘れた自分に腹をたてる。
『まぁ、戦えなくは無いんだがな………』
それは雷属性の【雷鳴】が優秀過ぎるからだけどな。風属性の【疾風】は、攻撃面ではそれなりだが牽制面ではかなり優秀だ。
ビー達の連続攻撃をひらりひらりと回避していく、次の回避の為のマージンも十分にとれている。これはやっぱり俊敏の効果だよな…………シリーズボーナスにマジ感謝だな。前回カゲロウ、ヒナタの3人で来た時よりも動きが軽快だ、《見破》のお陰も有るのだろうがMOBの行動の1手、いや2手は先を視ている気もするな。あくまでも気がするだけだが………実際のところは分からない。
『おや?今日は当りの日か』
1回目から氷と炎のビークィーンのご登場だ。あれ?でも色が………
『うん!?ちょっと待て、風と雷になっているぞ』
全然全く当りの日では無い。寧ろ大ハズレだろ…………何かいつもと違う事でもしたか?隠しレアボスの更に隠し?そんなの他のゲームの噂ですら聞いたことすら無いぞ。
しかも、風属性と雷属性だろ………手持ちの銃の属性からすると、合体したら詰んでないか?鞄に【デルタシーク】が1丁は有るが、それだけではかなり無理だろ。右手の【疾風】を鞄から取り出した【デルタシーク】に持ち変えて、風のビークィーンを射撃していく。アーツを惜しむ事無く使用しているが、思った通り大したダメージは出ていないな。
『うぇっ!?』
これは、かなりピンチだな。逃げようとエリアを確認したら進入可・脱出不可になっている。攻撃速度は、氷や炎のビークィーン程では無いが、範囲が広くてウザイ。ダメージは、まだ喰らって無いので正確には分からないが、周りの様子からかなり大きい事は想像出来るよな。
『主よ、絶体絶命じゃ』
白、お前はかなり冷静だな。
装備
武器
【疾風】攻撃力50〈特殊効果:銃弾に風属性が追加〉
【雷鳴】攻撃力50〈特殊効果:銃弾に雷属性が追加〉
【銃弾Lv3】攻撃力+15〈特殊効果:なし〉
【白竜Lv11】攻撃力0/回復力121〈特殊効果:身体回復/光属性〉
【黒竜Lv1】攻撃力0/回復力100〈特殊効果:魔力回復/闇属性〉
防具
【ノワールシリーズ】防御力105/魔法防御力40
〈特殊効果+製作ボーナス:超耐火/耐水/回避上昇・大/速度上昇・極大/重量軽減・中/命中+10%/跳躍力+20%/着心地向上〉
アクセサリー
【ダテ眼鏡】防御力5〈特殊効果:なし〉
【ノワールホルスター】防御力10〈特殊効果:速度上昇・小〉〈製作ボーナス:リロード短縮・中〉
+【マガジンホルスター2】防御力5〈特殊効果:なし〉〈製作ボーナス:リロード短縮・中〉
【ノワールの証】〈特殊効果:なし〉
《双銃士》Lv46
《魔銃》Lv45《双銃》Lv40《拳》Lv35《速度強化》Lv74《回避強化》Lv77《旋風魔法》Lv26《魔力回復補助》Lv74《付与術》Lv42《付与銃》Lv51《見破》Lv65
サブ
《調合職人》Lv19《鍛冶職人》Lv27《革職人》Lv47《木工職人》Lv20《鞄職人》Lv48《細工職人》Lv24《錬金職人》Lv24《銃製作》Lv35《裁縫職人》Lv2《機械製作》Lv1《料理》Lv33《造船》Lv8《家守護神》Lv3
SP 35
称号
〈もたざる者〉〈トラウマ王〉〈略奪愛?〉〈大商人〉〈大富豪〉〈自然の摂理に逆らう者〉〈初代MVP〉〈黒の職人さん〉〈創造主〉〈なりたて飼い主〉




