発見
先日の公式イベントが終了してギルドでは、オークションに向けて出展品の生産活動が徐々に活気付いている。
雪ちゃんも、もう皆と仲良くなったようで、色々とお手伝いをしてくれるので助かってるよな。それに、雪ちゃんのお陰で、更にギルドが明るくなっているからな。
ただ、僕としては、僕を見付ける度に尻尾を掴みにくるのだけは止めて欲しい。小さな女の子なので、いちいち注意はしないが、ときどき回避をさせてもらっている。まぁ、それを含めて楽しんでるみたいだがな。
僕自身は、オークションの準備も進んでいるので、1人で【ポルト】に来ている。【ポルト】に到着した日以来。イベント等でバタバタとしていたので、ゆっくりこの街を見ていなかったからだ。露店を冷やかしながら、この街でしか買えない物や海が近いので新しい魚介類も仕入れる事が出来た。そのうち料理に使いたいからな。
『やっぱり、海は良いよな~』
こんなに広くて穏やかで透き通った海を現実では見た事が無いよな。まるでテレビで見掛ける海外や沖縄の海のようだった。
一応、僕の住む東京にも海は有るのだが………こんなに綺麗だと思った事は無い。まぁ、小笠原諸島の方は行った事が無いので分からないが、見え方の違いも関係あるんだろな。東京湾で海を見ても雄大さを感じた事がない。夜景だけは、綺麗なんだけどな。
『そうじゃろ、そうじゃろ、海は良い』
いつの間にか隣にいるおじいちゃんに話し掛けられた。このおじいちゃんはNPCか?まぁ、世間話をするのにNPCもプレイヤーも関係無いけどな。
『ですね。落ち着きますし、癒されます。この前見た夕日も絶景でしたし』
『そうじゃろ、そうじゃろ、夕日も綺麗じゃ』
『そう言えば、船を全く見かけませんが、ここは港町ですよね?船は、どの辺りに行けば見れますか?』
ヒナタが船を作りたいと言っていたな、参考までに聞いてみる事にするか。
『うむ、船か………そうじゃの。今は、無理じゃろうな………』
『そうなんですか?それは残念ですね』
『うむ。大きな船は、他の大陸に行ったきり帰って来ないのじゃ……漁船は有るには有るのじゃが、誰も恐がって乗りゃせん。今は、造船所の中じゃ。わしが、もう少し若ければのう……消えた船を見付けて見せるのじゃがな』
『そうなんですか……』
他の大陸?気になるワードが出たな………今、現在はそう言う設定か?それとも、何かのイベントが進んだのか?あるいは、クエストか?まぁ、悩んでいても仕方がないのだがな。何故か気になるな。頭の中が、かなりOOOに染まって来たのかも知れないな。
『そうじゃ。お主、そんなに船が見たいのなら自分で作ったらどうじゃ。そして、わしの造船所を買わんかのう?もう何年も使ってないし、老い先短いわしには、もう必要ありゃせんからのう』
急に押し売りですか?残念ながら、ホームは既に持ってますよ。それに……
『残念ですが、僕には船を作るスキルが有りませんよ』
以前に《木工》スキル《木工職人》スキルでは、船を作れないのは実験済みだった。木を加工する事は出来るが船と呼べる物を作る事が出来ないのだ。
『何じゃ、造船所を買ってくれたら《造船》スキルくらいわしが教えてしんぜようぞ』
マジか!?それが、本当なら是非とも購入したいが………どうやらNPC関係のクエストだったようだな。発生条件は不明だが………
『おじいちゃん、教わるのは何人でも良いのですか?』
『そうじゃのう…………3人じゃ。それも、《木工職人》スキル取得が条件じゃ』
いきなり本当っぽい設定だな。それに都合が良い事に【noir】のメンバーで事足りる。もしかして、これが発生条件なのか?まぁ、どっちにしろ、この推定クエスト?を受けるので発生条件は関係ないんだがな。
『分かりました。仲間を呼ぶので少し待ってくれませんか。それと造船所は幾らになりますか?』
お金に余裕は有るので、足りない事は無いと思うが値段を聞いておくのが普通だろうからな。
『そうじゃのう…………わしが教える事も含めて3,000,000フォルムでどうじゃ?』
『おじいちゃん、それは、いくらなんでも安すぎないでしょうか?』
『よい、よい。老い先短いじいさんが大金を持っていても仕方がないじゃろうに。それに、造船所は古い建物じゃ。お主が手を入れる必要が有るしのう』
それを含めても安いと思うがな。まぁ、ここは好意に甘えさせて貰おうかな。おじいちゃんありがとう。感謝します。
『ヒナタ、今良いか?』
『大丈夫ですよ』
『今からカゲロウ連れて【ポルト】に来てくれないか?』
『何か有ったんですか?』
『それは、秘密だ。絶対に損はさせないから、急いで来てくれ』
こう言う時は、内緒の方が楽しいだろうな。
『分かりました。少しお待ち下さいね』
あとは、アキラに許可を貰っておこうかな。ヒナタに続けて、アキラにもコールを入れる。
『アキラ、《造船》系のクエストが発生したからギルドのお金使っても良いか?そっちにいるヒナタ達も呼んだから、こっちに来る準備してると思うけど、秘密な』
アキラもヒナタの目標を知っているので、反対は無いだろうけど業務連絡は必用だからな。
『分かったよ。もともとは、シュンのお金なんだし自由に使って良いんだよ。でも、《造船》なんてよく見付かったよね』
『たまたま、世間話してたNPCのおじいちゃんが、造船所のオーナーだっただけだがな』
『そうなんだ。シュンって、運が良いのか?悪いのか?かなり極端だよね』
『そう言ってくれるなよ。僕も、少しは気にしてるんだ。まぁ、詳しい事は戻った時に説明するわ』
以前から〈もたざる者〉の称号には、大きな疑問が有る。普段は、確実に運が悪い《持ってない》のだが、ここぞと言う時には、何かを持ってくる。良いか悪いかは別としてだがな。
それと、この称号だけ《見破》でも内容を視る事が出来ない。いずれ解明したいものだな。取り返しがつかない事が起きる前にな………
『すいません。お待たせしましたな。造船所を買わせて頂きます』
じいちゃんに4,000,000フォルム払う。
『お主、これはちと多すぎじゃ』
気持ちなので貰って欲しいと伝えた。僕らにとっては、それくらいの価値が《造船》スキルは有る。あの綺麗な海を皆でクルージングしたいからな。
僕が、おじいちゃんの造船所に着いた時。丁度、ヒナタとカゲロウもやって来た。
『2人共意外に早かったな。今から《造船》スキル取得するぞ』
『『えっ!?』』
流石は、姉弟だな。息がピッタリだ。
『さっき、偶然見付けて、たまたま3人まで取得チャンスが有ったから誘ってみた』
『シュンさん、ありがとうございます』
ヒナタの目標だったのだ。そうとう嬉しいらしいな。誘って良かったかな。
造船所の外見は、かなり年季を感じさせられるな。造船所の裏手は断崖絶壁になっていて狭く感じる。反対に、表にかなり広い敷地が有るが、裏手に有る断崖絶壁のせいで周りに何も無いので誰も寄り付かないからだろうが……
『お主、この3人で良いのじゃな。それでは、いくぞ…………どうじゃ?』
僕が頷くと、一瞬でスキルの取得が終わる。おじいちゃん曰く、これで《造船》スキルを教え終わったらしい。意外に呆気なかったよな。
あとは、造船所の改修作業をすれば船を製作出来るらしい。簡単に言うと、残りは自力で頑張れと言う事だよな。もっと何か特殊な技術を教えて貰えると思って、ヒナタ達に秘密にしていた僕としては、かなり拍子抜けだよな。ヒナタの嬉しそうな笑顔が無かったら、涙が出てたかも知れないよな。
『うわっ、ギルマス、大きいけどかなり改修が要りそうだぞ。この場所』
中に入ったカゲロウの第一声がこれだ。
確かに、中は外見以上に年季が入って感じるな。まぁ、最初からその条件を含めて造船所買ったからな。この場合は設備よりもスキルがメインだ。SPの消費も無かったんだ、かなりお得だと思うぞ。
『造船所の中は、こんなものじゃないか?何年か使って無かったみたいだしな。まぁ、2人共ついておいでよ。おじいちゃんの話ならここから………ほら』
ヒナタとカゲロウに造船所の裏口から外を見せる。僕自身も、じいちゃんから聞いていただけで初めて見るのだが、本当に圧倒的だな。
『『『………』』』
三者三様に言葉を失ってしまっている。造船所の裏口は、直接海に繋がる小さな洞窟の中に有る。その洞窟は、外からの光で海の青が反射して蒼色に輝いて見える。ちなみに、夕方になると夕日が沈むのも見れるらしい。
この洞窟の事は、街の人にも教えておらず秘密にしているみたいだ。当然、この場所からも船を出せる。更に、船を出せる場所はここの他に港側にも有るそうだ。かなり便利な作りになっているよな。本当にあの価格で良かったのか?
ちなみ、おじいちゃんは、スキルの取得が終わった時点で何処かに帰っていった。あのおじいちゃん、最初から最後まで神出鬼没だったな。
『まぁ、綺麗な景色は一旦置いておいて、ホームとゲートを繋ごうか、その後で設備と建物の改修。おじいちゃんに聞いたが改修は《木工》の工房で申請可能らしいからな。そっちは、ヒナタに任せる。次いでに、ここにも《木工》用の設備も頼む。今選べる最高の設備にして来てくれ。まぁ、《造船》は初級の設備しか選べないと思うけどな。僕は、神殿で造船所をホームに申請して建物自体のの改修をして来る。カゲロウは、ホームから木材を運んで貰おうかな』
船の製作自体は、オークション後になるだろうけど、造船所の準備だけはしておきたい。
神殿に着き、建物の改修の申請を済ませる。ギルドのホームみたいに大きくはしなかったが、それなりに立派で頑丈そうな物を選んだ。当然だが、木材用の倉庫も併設している。ついでにキッチンを取り付けたのは、ご愛嬌と言ったところかな。
『シュン兄、やっと見付けたよ』
後ろから尻尾を掴まれて捕まえられた。
『うわっ!?………えっ誰?』
僕の名前を知っているなら、知り合いだと思うのだが………こんな人は全く記憶に無いよな。人違いか?
『マリアージュ、真理だよ。この前も言ったけどマリアって呼んでね』
『おぉ、マリアか……どうしたんだ?今日は、アクアは一緒ではないぞ………』
『今日は、蒼兄の事は良いの。シュン兄を探してたの』
マリアがアクアを蔑ろにするのは珍しいよな。だが、今はそんな事よりも………
『まぁ、その、あれだ………そろそろ尻尾を放してくれないか?人の目があるしな』
明らかに周りの人の目が僕らに集まっている。中には黒の職人さんを知っている人もいるようだ。リア充と言う言葉も聞こえてくるが、決してそうでは無いと言いたいな。
『む~、まぁ、いいや。フレンド登録しよ』
フレンド登録くらいなら良いか。別に知らない仲でもないしな。フレンド登録と同時に冒険にも誘われたが、今日は予定が有るからダメだと断る………それならと、今度一緒に冒険する約束も強制的にさせられる。こう言う風に少し強引なところが有るので、はっきり言うと僕は苦手なんだよな。
『本当、時間が合っても御免だな。悪いけど、またな』
さっさと退散しよう。カゲロウやヒナタを待たせているし、何よりも僕自身が新しくなった造船所を見たい。ゲートからホームに、ホームから造船所へ転送していく。
『おぉ~~!!これは………見違えるよな~』
改修された造船所の中は、かなり豪華になっているな。大きなクレーンとかも設置されているし、これならかなり大型の船も作れそうだな。ちゃんと僕好みのキッチンも出来てるしな。あとで皆を誘って洞窟でティータイムも良いな。
外見の方も真新しくなっている。いつ見ても思うのだが、建物の改修は瞬間で終わる。これが1番の魔法っぽくてファンタジーな気がするな。倉庫を確認する為に中に戻る。
『おっ!!皆も来たんだな。もう奥は見たか?』
いつのまにかマナさんとミナさんの店舗店員コンビ以外のギルドメンバーが勢揃いしている。雪ちゃんもアキラに引っ付いて来たようだな。ってか幽霊にも転送ゲートは効果有るんだな。
『シュン、奥に何か有るの?』
まだのようだな。それなら………
『ヒナタ達も奥にいると思うし、行ってみたらどうだ?百聞は一見にしかず………って言うからな』
洞窟の方を指差して先頭を譲り、皆の後から付いていく。自分でも今の僕が人の悪い顔をしてるのが分かる。さて、どんな反応を示すかな楽しみだな。
おっ!!ちょうど夕日が沈むところだ、皆運が良いな。まぁ、初見なら言葉は出ないよな。この前の景色よりも絶景だからな。海の蒼と夕陽の緋のコラボレーションは絶大だ。さっき1度体験している僕ですら言葉が出ない。
『シュン、ここいったい幾らしたの?』
おじいちゃんとのやり取りを話して、3,000,000フォルムだったのを1,000,000フォルム増額して買った事も話す。改装とかその他諸々に別途費用が掛かってるけどな。アキラ達の反応はそれでも安過ぎると言いたそうな感じだった。
『ちょっと夜の海を見ながらティータイムにしないか?紅茶入れたぞ』
『雪、お手伝いするの』
雪ちゃんは、言葉よりも先にピューと飛んでくる。
『じゃあ、雪ちゃんは、僕の入れた紅茶を皆に配ってくれるかな』
『はいなの』
雪ちゃんは紅茶を持って、またピューと飛んで配って行く。空を飛べるのが羨ましく思えるな。【アーツの書・浮遊】を使えば飛べるようになるのだろうが………ここで使うのは悩ましい。こう言うレアアイテム使うのって何故か勿体無く感じるんだよな。レア素材とかなら別なんだけど………決めた。やっぱり今は使わない。ちなみに先日のイベント報酬である【スキルの書・生産】だけは苦手な生産活動の《調合》のLv上げに使った。
『ありがとう雪ちゃん。これは、雪ちゃんの分だよ。雪ちゃんが好きな蜂蜜入りにしてあるよ』
『ありがとうなの』
蜂蜜入りの紅茶を美味しそうに飲んでいる。その姿を見るだけで心がほっこりするな。僕1人だけでなくて皆そうみたいだが。
その日は、夜の海を見ながら遅くまで雑談に花を咲かせた。暫くして、朝日が昇る頃になると太陽光を海が反射してキラキラ光っていた。その光景で更に心が安らいだな。
オークションまで、残すところ4日………
昨日の夜は、オークションに参加する7ギルドが集まって打ち合わせ兼会議をおこなっている。観客も予想以上に集まりそうなので、新たに立ち見席300席を設ける事になった。
更に、当日券と【noir】受け持ちの分で配れていなかった分を午前・午後の2回に別ける事で少しでも多くの人に楽しんで貰う事になった。各ギルドの担当も決まり、今日からは出展品の搬入作業も始まっている。
出展品も午前中が《調合》《木工》《布製作》《裁縫》系のアイテム、午後からは《鍛冶》《細工》その他に分類した。なるべく欲しいアイテムの種類が固まるように考えている。
思った以上に出展品も多いみたいで、午後からのリストを担当しているアキラ、トウリョウ、ネイルさんは作業に苦労しているよな。前にトウリョウに相談していたお風呂はオークション後に【noir】と【カーペントリ】の共同で製作する事になっている。
ちなみにだが、午前のリストは僕とチャリさんで済ませている。午前のリストは、午後からよりも数が少ないので助かったよな。出来た部分からチャリさんが情報サイトにアップしてくれた。プライベートで、IT系の企業に勤めているらしく作業が物凄く速くて助かったよな。
僕は、オークションに出展するアイテムは、他の人と被らないように、絶対に被らない自信が有る【ロングリーロング】【マルチブレイク】に決めたので、ギルドで僕だけが暇人になっている。雪ちゃんは、皆の生産活動のお手伝い中だ。皆のお手伝いが楽しいらしい。
『《裁縫》でも鍛えて、自分用の装備でも作ろうか………まてよ、雪ちゃん達の装備を作っても良いかもな』
アキラ作のノワールの証が、装備出来ているので他のアイテムも大丈夫だよな。《造船》の方はヒナタがリーダーになり、仕切る事が決まったので、ヒナタがオークションの準備をしている今は、船を作らない事になっている。
しかし、最近の僕は、完全に暇をもて余す生産職の思考になっているな。
『とりあえずは《裁縫》のLv上げからだな』
プレゼントするなら出来るだけ良い物をプレゼントしたいからな。
ミシンで生地を縫っていく。オークションが終われば、お風呂を作る予定になっているので、練習も兼ねて湯着でも作ろうかと思う。いくら、ゲームの中でも裸は不味いだろうし、仮に失敗しても雑巾か何かに作り直せば良いしな………何度か失敗して、なんとか形になるものが出来た。
【湯着】防御力10〈特殊効果:耐水〉〈製作ボーナス:透過防止〉※上下セット・男女兼用
ボーナスに透過防止の効果を付けれたのは大きいよな。これで何も気にせずに、ゆっくり出来るからな。
一応、ある程度の数を製作しとこうかな。きっと皆も入りたいだろうからな。メニューから10着複製して倉庫に保管しておく。お風呂で使うのが楽しみだな。天然温泉は無理だろうけど、どうせなら露天風呂にはしたいな。その辺もトウリョウと相談だな。ワクワクが止まらない。
それにしても、今日は《裁縫》スキルの調子がすこぶる良い。それなら次は【ノワールクロース】の改良をするか。アキラが僕用に採寸した型紙を使って生地を裁断していく。スキルLvが上がっているおかげか?それにしても今日は本当に調子が良い。寸分違わず型紙通りに切れる。もしかして、このハサミが良いのか?
『あっそうだ!!今度《鍛冶》でオリジナルの工具を作ろう』
何故、今まで思い付かなかったのだろうか………製作品にボーナスが付くように、工具にも専用のボーナスが付けれそうだよな………ちょっとワクワクしてきた。まぁ、今は《裁縫》が優先なんだけど。ミシンを走らせていく。今回は性能よりも、デザインと着心地を優先したいと思う。
【ノワールクロース2】防御力20/魔法防御力20〈特殊効果:なし〉〈製作ボーナス:耐火/着心地向上〉
『う~ん、着心地向上が製作ボーナスで付けれたのは、凄く素敵なんだが………また、セットボーナスが付かなかったな』
色々試しているが、いまだに発現しない。防具の一部が2(改良版)になっているのがダメなのか?それとも防具にセットボーナスは無いのか?………悩むところだな。
『ついでだし、他も改良しようか……』
どうせ、そのうちやろうと思っていた事だ。早いか遅いかの差だろう。全てを2(改良版)にしてみる事に、今ある素材で1番良い革を加工していく。そう言えば、鞣す作業は久しぶりだな。今回は始めて3種の革を合皮してみるか、
『3種合わせると、かなり丈夫に仕上がるんだな』
これなら防御力にも期待出来そうだ。ちなみに、1番内側には肌に優しい素材を使用している。
【ノワールブレスト2】防御力35〈特殊効果:耐火〉〈製作ボーナス:重量軽減・中〉
【ノワールブーツ2】防御力20〈特殊効果:速度上昇・大〉〈製作ボーナス:跳躍力+20%〉
早速3つ共に装備してみる………外見は、あまり変えていないのだが、素材が良くなっている為、高級感と存在感を醸し出している。なにしろ着心地が良くて軽い。
『あれ?………マジでか!?………なるほどな。そう言う事か、これではセットボーナスが付かな訳だよな。でも、これはこれで良いのだろうか?』
全て2(改良版)を装備すると【ノワールシリーズ】と言う表記に変わっている。そして、ここが1番の変化ポイントなのだが、1つのアイテムとして纏まった。
しかも、何故だか判らないが、もうアイテムとしては分離が出来なくなった。更にセットボーナスではなく、シリーズボーナスと言うものが現れている。装備を個別に外す事は出来るのだが、その分の能力が正確に下がる。だが、名前は変わらないのでシリーズボーナスも無くならない。
簡単に言うと【ノワールローブ2】だけでも、シリーズボーナスが付いている状態になったのだ。
【ノワールシリーズ】防御力105/魔法防御力40
〈特殊効果+製作ボーナス:超耐火/耐水/回避上昇・大/速度上昇・極大/重量軽減・中/命中+10%/跳躍力+20%/着心地向上〉
※シリーズボーナス:俊敏(行動速度に上昇補正有り)
『なんか、また妙な事になったよな………』
便利になった気はするが………シリーズボーナスとか全く聞いた事がない。特殊効果と製作ボーナスが合わさって効果がアップしてるよな………超耐火とか上昇・極大とか見たことの無い効果だからな。
取り敢えず、あとでフレイ達に相談だな。1人では手に負えそうにない。その前に雪ちゃんやマナさん、ミナさん用の装備?いや衣装になるかな?も考えなければな。
『マナさんとミナさんには店舗の制服を用意した方が良いよな………雪ちゃんは、子供服になるのかな?良く考えると、これ僕が製作するのは難しい………と言うか不味いよな』
取り敢えずは、マナさんとミナさんの店舗用制服のデザインを考えようかな。母さん曰く、制服に身を包むとやる気が違うらしいし。イベント会社を経営してる人の言葉だ。参考になるだろう。
それにしても、2人にはどんなのが似合うかな?【noir】【by buy】両店舗は、お洒落と言うよりモダンな感じになっている。
と言う事は、執事服?2人に似合いそうだが………2人共女の子だからな。自分の安易な発想と想像力の無さが嫌になるな……って言うか、今さらだが僕が採寸するのって倫理的に無理じゃないか。リアルでもゲームでも犯罪者には、なりたくない。
『シュン、どうしたの?』
『あれ?リストの製作は、もう良いのか?』
『一応、今日は終わり、続きは明日。ログアウトしようと思ったんだけど、まだシュンいたから……』
時計を確認すると既に夜の11時を回っている。いつの間に時間が過ぎたのだろうな
『考え事をしてたら、思いのほか時間が過ぎてたみたいだな。でもちょうど良かった、アキラ、マナさんとミナさんに制服作るならどんなのが良いかな?』
『えっ!?それがシュンの考え事?』
『そうだよ。あと、お手伝いをたくさんしてくれてるから雪ちゃんにも衣装と服をプレゼントしても良いかなとか思ってたんだけど、女の子の子供服って良く分からないから、誰かに相談しようかなって………まぁ、そんなところかな』
『なるほどね。確かに、皆にも何か別の衣装が有った方が良いよね。それで、シュンはどんなの考えたの?』
僕は、執事服しか思い付かなかった事を伝える。あと、採寸を僕がするのは問題が有るのにも気付いた事を話す。
『確かに、あの2人なら執事服は似合いそうだよね。分かった。採寸と製作は私がするから、シュンは生地を準備しておいて』
アキラが共感してくれて良かった。気合いを入れて生地を準備させて貰いますよ。
翌日、ログインしてきたフレイを捕まえてシリーズボーナスの事を話して見た。
『シュンは、いったいなんなんやろな。話題に事欠かへんな』
僕も、それについては否定しないが、不本意だぞ。
『残念やねんけど、ウチには分からへんなぁ。そもそも、セットボーナスもアキラの時に1回付いただけやで。まぁ、興味は有るから、ウチが検証するならカゲロウの防具作ってみるくらいやな』
確かに【noir】では、カゲロウしか金属系の装備をしていない。
『じゃあ、お願いしても良い?』
『了解や、その代わりシュンはウチの防具作って検証してや。そろそろ防具の新調しようと思っとってん』
フレイから防具に付けて欲しい製作ボーナスや機能美の事を聞いていく。
『了解した。それとフレイ、生産に必要な工具を自作しないか?』
『!?………それは全く思い付かへんかったわ』
僕も、生地を裁断しながら思い付いたと言う事を話す。普通は気付かないし、1から作ろうと思わないだろうな。
『シュンのアホぅ。検証よりもそっちが先やないか、オークション迄に仕上げるで、金属系から始めよか…………あっ!?ウチの防具?そんなの後回しや』
フレイは、既にやる気になってるな。
『まぁ、上手くいくかは分からないから金槌ぐらいから始めてみるか?』
2人で別々の金槌を作っていく。単に金槌と言っても大小様々なモノが有るし必要になる。
【合金槌】〈特殊効果:作業時間短縮・中〉〈製作ボーナス:耐熱〉※フレイ作
【小金槌】〈特殊効果:失敗を減らす〉〈製作ボーナス:重量軽減・中〉※シュン作
『……やっぱり出来たな。効果もボーナスも新しいの有るし』
武器としても使えそうな形をしているが、武器では無いので当然攻撃力は無い。武器とは別で工具の扱いになっている。その辺の判断はどうなってるんだろうな。
いかに工具とは言え、アレで殴られたら死にそうなんですけど…………
『ノコギリとか彫刻刀等の刃物類は、ウチに任せとき』
刃物類はフレイの方が慣れているので異論は無いな。
『僕は、木製や持ち手の部分を作るわ』
作業を分担して作り始める。全て1つ製作したらメニューから2つ同じ物を作っている。【noir】では、同時に何人かで作業するのも珍しくない為、予備は必要になる。船や露天風呂の製作も待っているので、質の良い木製の工具も必要になってくるだろうな。
その日から2日掛けて、僕らの使う全ての工具を製作した。出来た工具を、どんどん工具の製作に使っていったので出来上りも早い。なおかつ性能が良く、使いやすい工具ができて2人共満足出来たよな。
これで【noir】は、ますます生産活動に忙しくなりそうだな。
装備
武器
【烈火】攻撃力50〈特殊効果:銃弾に火属性が追加〉
【霧氷】攻撃力50〈特殊効果:銃弾に氷属性が追加〉
【雷鳴】攻撃力50〈特殊効果:銃弾に雷属性が追加〉
【銃弾Lv3】攻撃力+15〈特殊効果:なし〉
【魔銃】攻撃力40〈特殊効果:なし〉
防具
【ノワールシリーズ】防御力105/魔法防御力40
〈特殊効果+製作ボーナス:超耐火/耐水/回避上昇・大/速度上昇・極大/重量軽減・中/命中+10%/跳躍力+20%/着心地向上〉
アクセサリー
【ダテ眼鏡】防御力5〈特殊効果:なし〉
【ノワールホルスター】防御力10〈特殊効果:速度上昇・小〉〈製作ボーナス:リロード短縮・中〉
+【マガジンホルスター2】防御力5〈特殊効果:なし〉〈製作ボーナス:リロード短縮・中〉
【ノワールの証】〈特殊効果:なし〉
《双銃士》Lv41
《魔銃》Lv40《双銃》Lv36《拳》Lv35《速度強化》Lv70《回避強化》Lv73《旋風魔法》Lv25《魔力回復補助》Lv71《付与術》Lv38《付与銃》Lv48《見破》Lv60
サブ
《調合職人》Lv18《鍛冶職人》Lv26《革職人》Lv47《木工職人》Lv16《鞄職人》Lv48《細工職人》Lv23《錬金職人》Lv24《銃製作》Lv30《裁縫》Lv25《機械製作》Lv1《料理》Lv31《造船》Lv1《家事》Lv58
SP 43
称号
〈もたざる者〉〈トラウマ王〉〈略奪愛?〉〈大商人〉〈大富豪〉〈自然の摂理に逆らう者〉〈初代MVP〉〈黒の職人さん〉