ギルドメンバー 2
「今日の昼までだったよな。バージョンアップ期間。今回は何が追加されるんだろうな」
「さぁな。楽しみは、楽しみなんだが………それよりも、新規のプレイヤーとかは、どうなんだろな」
僕は、バージョンアップで追加される内容よりも、新規参入のプレイヤー達が。どんな行動を取るかの方が気になる。鞄の時に暴れたプレイヤーみたいなのは増えて欲しくないからな。
「昼休み、サイトで検索」
純も楽しみにしているようだな。確かに、昼休み頃なら情報系サイトに書き込みされている可能性は高いな。
「じゃあ、昼休みに俺等の教室に集合で良いか?」
僕は蒼真と同じ教室だから、別に問題ないけど、わざわざ集合する程の事か?
「分かった、そろそろ行こ」
気付けば、既にいつもの登校時間を過ぎていたらしい。どうやら、いつもよりゆっくりな朝食になっていた様だな。。
「弁当忘れるなよ」
「今日は何だ?」
「サンドイッチ、晶のリクエストだ」
「…………前から思ってたんだが、お前らは、その………付き合ってるのか?」
「はぁ!?」
言っている意味が分からないよな。
「前に約束してただけで、付き合ってないぞ」
知っているはずだよな。君たちと違って僕がモテないのを………
「駿くん、サンドイッチありがとう。美味しいよ」
喜んでくれて良かったと思う。サンドイッチなら3人分も4人分も作る手間は変わらないからな。
「それで、蒼真サイトでなにか分かったのか?」
サンドイッチを口にくわえながら、スマホを凝視している。サンドイッチを食べるか、スマホを見るか、どちらかにして欲しいよな。
「う~ん、分かった様で、いまいち分からない様な内容だな」
自分の確認が終わったのか、気になる部分を僕らに見せてくる。
まぁ、気になっているのも事実だし、見せて貰おうかな。
・【シュバルツランド】の南側に鉱山の街【ヴェルク】追加
・【シュバルツランド】の東側に港湾の街【ポルト】追加
・鉱山ダンジョン、洞窟ダンジョン追加
・上位スキル、複合スキル、上位属性の追加
・市販アイテムの販売数の減少
・NPCからのクエスト受注
「なるほどな……確かにいまいち分かりにくい内容もあるな」
街の追加は分かるが【シュバルツランド】の東側は数kmに渡って断崖絶壁だったはずだよな。
スキルに至っては、追加と言われても、今でも殆んど詳しい事が分かっていなからな。追加されても新しいスキルか、既存のスキルか、判断がつかないよな。
「いくつか気になる事も有るよね。私は上位属性と市販アイテムの販売数減少ってとこかな」
「上位属性、気になる」
純は全属性持ちをプレイスタイルの1つにしている。属性の追加には興味が有るようだな。でも、これ以上取得すると戦闘中に余る属性出てくるんじゃないのか?
「俺は、ダンジョンとクエスト。色々と検証する必要が有るぞ。夜【noir】のホームにパーティーメンバー連れて行っても良いか?」
「良いよ。【noir】も新しいメンバーもいるから紹介するね。皆、知ってる人だけど」
「それなら、純もパーティーメンバー連れて来るか?」
頷いているので来るみたいだな。それにしても、誰も東側の街は気にならないのか?東側は断崖絶壁なんだぞ。まぁ、僕やフレイみたいに普段から採掘してないと断崖絶壁の印象は薄いのかも知れないな。
「じゃあ、夜にホームでな。晶、部活頑張れよ。慌てて帰らなくても待ってるから」
「うん。頑張るね」
そろそろ、インターハイの季節だ。毎日、遅くまで練習している。昼食のサンドイッチは差し入れの代わりだったりする。
ログインしてみると、ガイアからメールで鞄の試作品にOKが出ていたので、待ち合わせの時間まで少しずつだが作り始めている。最後の刺繍はアキラの仕事なので完成する事はないけどな。
ちなみ、ログイン時にSPが貯まっていたので《探索》を《見破》に進化させている。
『シュンいるか?』
ちょっと早いがアクア達が来たようだな。
『いるぞ。うん!?ジュネ達も一緒か………7、8、9人か。まぁ、紅茶でも飲みながら自由にしてて。もうすぐ、アキラ達も来れるみたいだから』
人数分の紅茶を入れていく。何人かは、既に珈琲よりも紅茶が好き派になっていて、僕の淹れる紅茶を楽しみにしてる。仲間が増えたのは嬉しいよな。
『お待たせ』
『ただいま』
アキラとフレイもログインしてきた様だな。
『皆、知ってると思うけどフレイ。ギルドの新メンバーになりました』
フレイの紹介も済んだので、検証の話しを始める。
『《光魔法》、《闇魔法》、取得出来た』
『えっ、もう!?どうやって?』
ジュネは、既に新しい属性の取得が出来たようだ。
『3属性で、光か闇、選択』
どうやら3つの属性魔法スキル取得で、光か闇どちらか1つの上位属性魔法スキルを取得出来るようだ。
ジュネは6属性持ちの為、両方取得出来たようだな。これで8属性ですか、全く半端ないね。
スキルの複数取得が条件だったみたいだけど、これが複合スキルになるのか?生産系でも有るかも知れないな。
『俺とレナは、洞窟ダンジョンを見付けた。まぁ、見付けたと言っても、街の東側の断崖絶壁に洞窟が出来ていただけなんだが』
次はドームからの報告だ。
でも、これで1つ謎が解けたな。洞窟ダンジョンを越えた場所に港湾の街【ポルト】が在るのだろう。これは、皆同意見だった。
『じゃあ、新入りのウチが【noir】を代表して、鉱山ダンジョンでは銀鉱石が採掘出来るねん。それと、これが銀製の武器やで、ちなみにガイアのギルドは既に鉱山ダンジョン攻略中や』
銀で作った剣と槍を取り出す。皆、興味津々と言った感じで見ているな。既に製作の依頼や相談もきているし。
『あっ!!そうだ。消耗品系のアイテムが売り切れとか、買うのに制限が有るアイテムも有ったよ。新規のプレイヤーは買えるみたいだけど、私達第1陣のプレイヤーは買えないとかも有るみたい』
また、意地の悪い設定だな。基本的に自給自足が出来る【noir】は良いが、他のプレイヤー達は大変だろうな。
そう考えると前のイベントは、この為の布石だったのかもな。前回のイベントでは、参加したプレイヤーはかなり幅広い事をさせられている。生産系が無いプレイヤーは攻略がキツかった事だろうからな。新たに取得しているプレイヤーも多くいたしな。
その後も様々な話をしていくが、バージョンアップについては新しい情報は出てこなかった。
ただ、【シュバルツランド】を中心に新規のプレイヤー達や、そのプレイヤー達をギルドに勧誘している者で溢れているらしく、街の周辺でも狩りをしているプレイヤーが多い事が分かった。
『まぁ、今のところ分かるってるのは、これくらいかな。皆はこれからどうするんだ?』
『俺達は、せっかくドームやレナが見付けから、洞窟ダンジョンの攻略がメインかな』
『私達も、洞窟、【ポルト】』
アクアもジュネもパーティーメンバーと相談して答える。
『僕らは、どうする?』
『ウチは鉱山行きたいかな』
『私はどっちでもOKだよ。ただ、依頼の鞄も有るから暫く攻略は無理かな』
そう言えば、リツとの約束も有ったな。
『じゃあ、週末限定で僕らは鉱山の方に行ってみようか。フレイなら他の鉱石も採掘出来る可能性も有るからな。それとリツに案内してもらう約束もしてるし………』
【noir】としての方針も決まったな。週末までは、各自で依頼をこなす事になった。
リツとガイアにもメールして予定を確認しておくか。アクアやジュネ達は早速洞窟に向かって行くようだな。ダンジョン攻略よりも先に消耗品の入手経路を考えたる方が先だと思うけどな………
まぁ、自由が1番だから人の事はそこまで気にしなくても良いかな。僕とアキラは鞄製作に、フレイは街に採掘の道具類を新調しに行った。
土曜日の午後、ログイン直後にガイアとリツにコールをする。リツとは今日、洞窟ダンジョン方面を案内して貰う約束だ。ガイアには濃い青色をした同じ型の鞄100個の納品の為だ。性能も注文通りにギルドメンバーに渡している物並みに高品質に仕上がっている。
作るよりも、価格を付けるのが難しかったのだが、フレイが1つ50,000フォルムと値付けしてくれている。これ以下は性能と価格が釣り合わないらしい。既にガイアにも話して有り、即答でOKを頂いている。
ただ、資金的に一括払いは苦しいので分割払いにして欲しいらしいがな。まぁ、お金に困っていないから別に良いけどな。
『シュン、今日はホームで何か有るのですか?ホームの前が、物凄い人だかりが出来てますよ』
ガイアからコールが入る。
『何もないはずだが?中には入れそうか?』
『やってみます』
コールが切れる。僕も窓から外を見るが、かなりのプレイヤーが集まっている。一体何なんだ?
『外は何があったんだ?』
なんとかホームの中に入ってきたガイアから話しを聞いた方が、考えるよりも早そうだからな。
『入る時に【noir】の人ですか?ギルド入れて下さいとか鞄売って下さいとか言われて、中に入るの滅茶苦茶大変でしたよ』
『はい?最近3人になったばかりの零細ギルド【noir】の事をどうやって知ったんだ?【noir】は、細々としてるはずだが』
『えっ!?知らないんですか?情報系サイトでは極大ギルドホームとか、黒の職人さんの鞄店とか言われていますよ。新人プレイヤーの《銃士》の比率も若干ですが、増えてるみたいですし』
全く知りませんでした。店舗に至っては殆どオープンしてないのだが………普段はゲートを使うのでホームの入口からから出ないからな、街の情勢は分からなかったな。
『シュンさん…………』
リツからも同様のコールが入る。どうにか中に入ってきてくれと伝える。
かなり、困った事になったな。黒の職人さんに関しては、顔がバレてないだけで動画が出回っているし、このままホームの外に出れば、即バレるだろからな。
『リツ、せっかく来て貰ったのに悪いが、鉱山ダンジョンに行く予定を来週末に変更しても良いか?今、ホームのゲート設定をフレンドも使用可能に変更する。ガイアの許可さえ有れば【ワールド】のホームとも…………よし、今ゲートを繋げた。申し訳ないがゲートから帰ってくれ。僕は1週間かけて装備の外見を変える』
ガイアとリツが頷いたのでゲートを繋げさせて貰う。
『まぁ、仕方ないですよね。ゲートを繋いだって事は、今後はゲートから来させて貰っても良いのかな?』
『流石に、ギルドのメンバー全員は無理だけど、ガイアやリツ、それとこの前来たメンバーなら、そうして貰っても大丈夫だ。今回は本当に迷惑をかける。すまない』
頭を下げる。頭を下げるしか出来ないからな。ガイアとリツは、【noir】の関係者として顔がバレてしまったのだ。迷惑をかける事になるだろうな。
まぁ、手軽にゲートを利用出来る様になって、逆に嬉しそうにしてくれているのが、せめてもの救いだよな。
『では、また来週末に。メールかコールしますね』
ゲートからガイア達が帰って行く。窓から覗くが外は、まだかなりのプレイヤーがいるようだ。ちょっと嫌になってくるな。
『ただいま。あれ?まだシュンだけなんか?』
時間通りにフレイがやって来た。
『いや、さっきまではガイア達も居たんだが……』
『あれ?ウチ遅れてもうたんか?かんにんな』
『大丈夫。ちょっと面倒な事になってる』
窓を指差して、外を見るように促す。
『………あれ、どないしたんや?』
フレイに、今までのやり取りと鉱山行きは来週末に延期した事を話す。
『楽しみにしてただけに残念やけど、こればっかりはしゃあないな。これやと暫く入口は使用禁止やな』
フレイも念の為に装備を変えるみたいだ。まぁ、変えると言っても自分たちで全部製作するのだがな。
『ごめんなさい、少し遅れちゃった………あれ、怒ってる?』
暫くして、アキラもやって来た。僕等の険しい表情を見て怒っているように感じたようなので、アキラにも同じ説明をする。
『大変な事になってるね。具体的にどんな装備に変えるの?』
『丁度良い機会だから、装備を全体的に強化するのと、街中用にも違う装備を用意する予定。僕ならローブマントの色や形を変えるとかかな。アキラ達なら新たにローブや帽子を装備するぐらいで、外見が変わるから大丈夫だと思う。あと暫くは、入口の使用禁止にしてゲートを使うくらいかな………各々で欲しい物をリストアップしてくれ。革は僕、布はアキラ、金属と細工はフレイをメインに製作しよう』
すぐに、思い付くのはそれぐらいかな。3人が3人共に装備の要望をだす。フレイの担当する物が少なかったが、どの装備にも宝石や金属を部分的に使ったりするので結局忙しくなるよな。
アキラは、リツと同じような籠手と部分的に金属を使った胸当て、ブーツ、服、扇を新しくした。
【西白星・籠手】防御力20〈特殊効果:弓の攻撃力+10〉〈製作ボーナス:命中+10%〉
【東白星・扇/短剣】攻撃力35〈特殊効果:扇と短剣への変形〉〈製作ボーナス:速度上昇・中〉
※東/西/南/北白星セットボーナス:MP回復速度上昇・大
同じギルドのおかげか?それともデザインが似ているからか?何故かは分からないが、フレイが作った物と僕が作った物を合わせてセットボーナスが付いた。
そして、初めてボーナスに大が付く、生産者としては嬉しいかぎりだな。アキラが作った服とフレイの作った胸当てのバランスが凄く合っている。全て白が基調となっていて、アキラに良く似合い思わず見とれてしまったな。気付かれてなければ良いけどな。
フレイは、この前作ったガントレットに合うブーツと重ね着出来る左右の袖の長さが違う武道着、腰から下に装備するマント、僕とフレイの合作で三節棍を作る。宝石を《細工》で加工したり、《錬金》を使ってアレンジを加えていたらとんでもないものを作ってしまったよな。
【フレイムブーツ】攻撃力30/防御力30〈特殊効果:火属性効果上昇・少〉〈製作ボーナス:回避上昇・中/耐火〉
【三位一体節光棍】攻撃力60〈特殊効果:火/水/風属性〉〈製作ボーナス:光属性〉
三節の部分各々に別の属性が有り、1本の棍状態なら光属性になる。遊び心で3属性の宝石を使ったのだが、上位属性まで付ける事が出来るとは思わなかったな。
フレイのブーツは青を基調とした炎のデザインになっていて、格好良い。青が良く似合うよな。
僕は、今まで3つに別れていたホルスターを1つに纏めて作り直した。更に【ハンドガン】を【デルタシーク】に新調して。1丁だけ色を黒にして状態異常弾専用にする。
【ノワールホルスター】防御力10〈特殊効果:速度上昇・小〉〈製作ボーナス:リロード短縮・中〉
※4丁収納可能
胸当てと腕輪だが、部分的に銀を使いフレイと僕で合作したが、ブーツは僕が1人で。残りの服だが、これはアキラに作って貰っている。
【ノワールブレスト】防御力25〈特殊効果:なし〉〈製作ボーナス:重量軽減・小〉
【ノワールバングル】防御力15〈特殊効果:回避上昇・小〉〈製作ボーナス:命中+10%〉
【ノワールブーツ】防御力15〈特殊効果:速度上昇・中〉〈製作ボーナス:跳躍力+20%〉
【ノワールクロース】防御力20/魔法防御力15〈特殊効果:なし〉〈製作ボーナス:耐火/重量軽減・小〉
セットボーナスが付くかな?と期待していたが、今回は付かなかった。セットボーナスの発生条件がなかなか判明しないよな。
他には頭の上に付けていた【ゴーグル】をやめて【ダテ眼鏡・赤】をかける。銃と眼鏡以外は真っ黒なところに変わりないが、見た目の姿は全然変わっている。
今まで街中では、ローブマントのケモミミフードを被っていたが、これからはケモミミを完全に隠せる物にする。ローブマントのデザインも変更したのでパッと見が《魔術師》にしか見えないよな。
これで、かなり印象も変わっているはずだな。もはや、バレる事もないだろうな。まぁ、1週間も装備の製作に費やしたのだ。簡単にバレて貰っては困るのだが。
土日は、ホームの前で集まるプレイヤー達が多くいたが、平日は少なかった。平日の間に神殿から女性のNPCを雇う契約も済ませて有る。店舗の運営は、当分お任せ状態だな。NPCは、販売と在庫の補充が出来るらしい。それなのでオーダーメイド品は受け付けない。これで鞄や装備品目当てのプレイヤーの出待ちは減るだろうな………ってか言うか頼む減ってくれ。僕からの切実な願いだ。
そして、また次の土曜日がやって来る。
『先週より増えてるよな………何故だ?』
『シュン、今サイト見て来たら、更に情報が充実してたよ』
サイトの確認の為に1度ログアウトしていたアキラが戻ってきた。
『暫くは、ほっとかなあかんやろな。まぁ、今日とこは、ゲートから出て鉱山行こか』
リツ達も待たせているので予定は変えられない。流石に2度連続のドタキャンは無い。それは人として間違っているし、フレイさんなら我慢が限界だよな。
『そうだね。最初に神殿に飛んで南の門までは静に行こ』
アキラの案に賛成する、2人との待ち合わせは門の外を指定しておこうかな。
『お待たせ。少し遅れてごめんなさい』
少し待ち合わせの時間を過ぎてしまった。アキラが代表して謝る。本当に申し訳ないな。
『今日も凄かったですね。先週よりもプレイヤーの数が増えてませんか?』
会話をしながらもパーティー登録を済ませて、歩き始める。壁役はいないが、前衛にガイアがいるので安心できる。フレイも前衛だが、生産がメインなのであまりLvは上がってないようだ。
『多分、増えてるな………一応、店舗の方に対策はしてあるが、ギルドの方はな………どうしたら良いものかさっぱり分からない。【ワールド】は大丈夫なのか?』
リツ達に心配させているのが分かるので、内情1部分を教えておく。
『私達は、たいしたトラブルも無いですね。人数も増えたので、何パーティーかに分けて指導兼Lv上げをしているとこですね』
まともな感じで羨ましいな。
『【noir】は少し特殊ですからね。少人数で大規模。一種のステータスってとこですかね。ギルドマスターがMVPで黒の職人さんですし』
全くもって不本意な話しだな。
『そろそろ、川です。気をつけて下さい』
話しながら歩いていると川まで着いたようだな。
『川はどないして渡るん?』
フレイが確認している、それは僕も気になっていたんだが………
『もう少し向こうに、以前は無かったんですが、橋が出来ていて、その橋を越えて暫く道なりに歩くと鉱山に着きます。バージョンアップで街とダンジョンが一緒になってるんですよ。それと橋を越えるとMOBの強さが一気に変わりますので注意して下さい』
橋とか出来てたんだ。バージョンアップの度に少しずつだが地形に変化があるようだな。
鉱山ダンジョンは街からしか入れないらしい。まぁ、鉱山の街【ヴェルク】も目的の1つなので、僕達には一石二鳥だがな。
今日は、ガイアとリツを含む5人でパーティーを組んでいる。ガイアとフレイが前衛、残り3人が後衛となっている。僕は《探索》スキルが無くなったので全く気付かなかったのだが………
〔『皆、振り向かずに聞いてね。街を出た時からなんだけど、なんか尾行されてるみたいだね………多分、2人かな?初期装備みたいだし新規のプレイヤー?』〕
アキラがパーティーチャットで会話してきた。この機能は以前から有るのは知っていたが、使うのは初めてだな。
〔『皆さん、どうされますか?』〕
〔『近くに魔物もいるから、置いて逃げるのも気が引けるよね』〕
〔『ウチが少し話てみよか?』〕
〔『じゃあ、頼む。僕らは先に近くにいる魔物を片付けるよ』〕
パーティーチャットを切り上げ、各々が行動に移る。MOBは新しい魔物で大きなパンダらしきモノの群れだ。
『一撃の威力が大きいです。後衛は援護より回復と補助を』
ガイアが真っ先に突っ込んで行きながら指示を出す。尾行していたプレイヤーは茫然自失になっているみたいだな。あちらはフレイに任せよう。
『ガイア、リツ、アキラ〈防御力上昇〉〈回避上昇〉〈速度上昇〉だ』
左手に持つ【魔銃】による《付与銃》で《付与魔法》を次々にキャストしていく。右手の【デルタシーク】では援護と牽制を忘れない。
複数の魔物を同時に近付けさせない様に心掛ける。2丁持っているのでリロードに少しだけ時間が掛かるが、今日はソロじゃない。アキラやリツが、その時間を稼いでくれる。
『アキラ、《扇》より《弓》だ。ダメージの通りが良い』
進化させた《見破》スキルのお陰で、手に取るように此方や相手のステータスと名前が判った。パンにゃ、見た目と違い可愛い名前だな。
アキラも弓に変えて攻撃していく。相変わらずなのだが、他の人の攻撃を見ると自分の攻撃力の低さが悲しくなってくるな。
『視認で残り3、ガイアさん1体は任せるね』
残りの2体に矢を浴びせていく。僕はアキラとリツに近付かせないように足元に射撃していく。その隙にアキラもリツアーツを放つ。
『〈フレイムアロー〉』
『〈ウインドアロー〉』
『はい!?』
『うっ、えっ~~!?』
思わず見とれて呆然と立ち尽くしてしまう。火の矢と風の矢が混ざり合って、魔物に突き刺さると同時に炎の竜巻が巻き起こる。
………魔物の影は残らなかったな。アキラ達は何がおこったのか分からないようだ。僕は《見破》スキルのお陰で分かったけどか。
『《跳弾》《曲射》………《零距離射撃》』
まだ1体残っているのだかま、2人は呆然としている様だ。視界の端ではガイアが受け持った1体に止めを刺している。
《跳弾》が地面に反射して銃弾の勢いを増していく。銃弾を反射させている間《曲射》を放ち、更に相手の間合いまで切れ込んで《零距離射撃》を放つ。
……残りの1体も倒れた。まぁ、アーツ3連発で僕に出来る最大限の連続攻撃だ。倒れて貰わないと困る。切実にな!!
『そちらも終わりましたか、それで、あの2人は何があったのですか』
ガイアが近付いてきた。あんな派手だったのに見て無かったらしいな。
『皆には、後で説明するわ。それよりも今はあっちかな………ガイア、アキラ達をお願い』
フレイ達の方が気になっている。まぁ、3人とも見たところ被害は無さそうだが………
『フレイ、こっちは終わったぞ。悪かったな』
〔『その2人、何か話したか?』〕
会話とパーティーチャットの二重会話だ。
『お疲れ、気にせんでもええで。そっちは………あの2人は大丈夫なんか?』
〔『あかんわ、何も話さん。まぁ、ケガはしてないで』〕
多分、アキラとリツの事だろうな。
『大丈夫だ。アレは、後で話すわ』
〔『そうか、ありがとな。お疲れ様』〕
『取り敢えず、名前も分からない2人。僕はシュン、こっちはもう自己紹介終わってるかもだけどフレイ。街迄はついておいでよ。この辺りは新人プレイヤーには辛いから』
今までの戦闘は見ていたのだろ。これには2人共に黙って頷く。
『ほな、あっち行こか』
まだ、呆然としていた2人の方に近付いていく。
『そっちも、まだあかんか?』
〔『こっちはアカンわ。とりあえず街迄は、一緒に行く事になったで』〕
『こっちは、もう少しかかりそうですね』
〔『分かりました。お疲れ様です』〕
暫く、2人が回復するのを待つ事に。この場所で紅茶は無理だがクッキーくらいなら大丈夫かな。名前も分からない2人を含めて全員に配った。
『………アレは何だったんでしょうか?』
リツが、まず戻ってきた。
『アレは何?』
続いてアキラも、
『僕は《見破》スキルのお陰で分かったから後で説明するわ。取り敢えずは街まで行こうか』
『それで、無事【ヴェルク】に着いた訳だが………何か話す気になった?』
2人はガイアとリツを指差す。
『私ですか?』
2人は同時に頷き、口を開く。
『俺はカゲロウ、ダークエルフで|《防衛士》《デイフィンダー》の《調合》持ちです』
『私はヒナタと申します。エルフで《魔術師》をしてます、《木工》を取得しています。私達をギルドに入れて下さい。お願いします』
『お願いします』
2人で頭を下げてくる。どうやら尾行されていたのは、ガイア達らしい。
『ごめんなさい。私達のギルド【ワールド】は、人間種族限定にしているんです。だから、本当にごめんなさい』
それが【ワールド】の唯一無二のルールだから仕方ないだろう。だが、2人は何故かお互いに顔を見合わせ驚きを隠せていない。
『どうかしましたか?』
今度はリツが聞く。ガイアも思わず聞きそうになっていたがリツの方が一瞬早かったな。
『???』
『生産ギルド【noir】の方ではないんですか?』
『はい、違いますよ。私は、ガイアと言いまして【ワールド】のギルドマスターをさせて頂いております。どうして【noir】だと思われたのですか?』
〔『ガイア、頼む僕らの事はまだ秘密で』〕
パーティーチャットで念を押しておく。
〔『はい、もちろん心得てますよ』〕
『私達は、先週えっ~と、ガイアさん達が【noir】のホームに入るのを見たんです。それで、今日また見付けて悪い事だと思いましたが、後を付けさせて頂きました。本当にすみませんでした』
また頭を下げる。
『どうして【noir】に入りたいんだ?』
僕は、その理由が分からないし知りたい。
『僕達は、情報系のサイトで動画を見たんだ』
やっぱりか、あのPVPの動画が原因か………本当に迷惑だよな。
『それで、他人の為にたくさんの鞄を作って売っていたのが格好良かったんだ。一目で憧れたんだ。それで、OOO始めたら2人で黒の職人さんのギルドで生産活動や冒険をしようって話してたんだ。だから………』
『動画ってPVPじゃないのか?』
『それも凄かったけど、僕らはあの心意気に憧れたんだ』
どうやら僕の思い違いだったようだな。でも、少し過大評価し過ぎだよな。
〔『シュン、入れてあげても良いんじゃないかな』〕
〔『ウチも良いと思うで、悪い子や無さそうやわ』〕
〔『僕も悪い子達では無いと思うけど、少し考えさせてくれないか?丁度、試してみたい事が有るんだよ。それに、他にもこんな事するプレイヤーが出てくると知り合いに迷惑をかける事になるから』〕
この2人には、ちょっとした実験台になって貰おうかな。あっ!!今の僕、ちょっとだけ悪い顔してるかもな。
〔『それもそうだよね、分かった任せるよ。だけど、無茶はやめてよね』〕
〔『ウチも、それなら了解や』〕
『君達の話は分かった、僕らは【noir】のギルドマスターを知っているから、君たちの事を話してみるが、期待はしないでくれ。彼は変わり者だからな。また、こちらから連絡するから、どちらか1人フレンド登録をしてくれるか?』
周りのメンバーが笑いを堪えているのが分かる。だが、嘘は言ってないぞ。
『本当ですか?ありがとうございます。では私が』
ヒナタとフレンド登録をして別れる。
『お~い。ゲート登録をして、ゲートで【シュバルツランド】に戻れよ』
離れて行く2人にアドバイスをおくる。
『さて、シュン。色々聞きたいから1回戻ろうか』
『そやな、ここまで来れたら採掘はいつでも出来るしな』
『私達もよろしいですか?』
『じゃあゲート登録して、ホームで話すか。少し聞かれたくない話しも有るからな』
装備
武器
【デルタシーク】攻撃力30〈特殊効果:なし〉×3丁
【銃弾Lv2】攻撃力+10〈特殊効果:なし〉
【銃弾・毒Lv2】攻撃力+10〈特殊効果:毒Lv2〉
【魔銃】攻撃力40〈特殊効果:なし〉
防具
【ノワールブレスト】防御力25〈特殊効果:なし〉〈製作ボーナス:重量軽減・小〉
【ノワールバングル】防御力15〈特殊効果:回避上昇・小〉〈製作ボーナス:命中+10%〉
【ノワールブーツ】防御力15〈特殊効果:速度上昇・中〉〈製作ボーナス:跳躍力+20%〉
【ノワールクロース】防御力20/魔法防御力15〈特殊効果:なし〉〈製作ボーナス:耐火/重量軽減・小〉
【ノワールローブ2】防御力15/魔法防御力20〈特殊効果:回避上昇・中〉〈製作ボーナス:速度上昇・中〉
アクセサリー
【ダテ眼鏡】防御力5〈特殊効果:なし〉
【ノワールホルスター】防御力10〈特殊効果:速度上昇・小〉〈製作ボーナス:リロード短縮・中〉
【ノワールの証】〈特殊効果:なし〉
《双銃士》Lv7
《魔銃》Lv6《双銃》Lv4《拳》Lv31《速度強化》Lv49《回避強化》Lv47《風魔法》Lv44《魔力回復補助》Lv49《付与魔法》Lv53《付与銃》Lv23《見破》Lv5
サブ
《調合》Lv14《鍛冶》Lv24《家事》Lv39《革職人》Lv44《木工》Lv21《料理》Lv21《鞄職人》Lv47《細工》Lv16《錬金》Lv16
SP 3
称号
〈もたざる者〉〈トラウマを乗り越えし者リターンズ〉〈略奪愛?〉〈大商人〉〈大富豪〉〈自然の摂理に逆らう者〉〈初代MVP〉〈黒の職人さん〉