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呼ぶ声  作者: 工藤るう子
20/21

20回目

 赤黒い月の下、潤の悲鳴が鋭くあがる。


 ギリギリと、王妃の鋭く尖った爪が腹に食い込む。


 生理的な涙が、こみ上げる。


 いらない。


 そう思いはした。


 けれど、こんな苦痛を味わって奪われるのか。


 痛い。


 痛い。


 痛い。


 殺される。


 そう恐怖に震えたときだった。


「王妃さまおやめください」


 甲高い声だった。


 涙でかすむ視界に、厳しい顔をしたマルカの姿があった。


「お約束が違います」


 一気に大人びた、威厳とも言えるようなものをたたえて、王妃の手首に手を重ねる。


「こどもは王妃さまのお好きになさってかまいません。けれど、ジュンにいちゃんは殺さないとお約束くださいました」


「マ………ルカ?」


 潤の双眸が見開かれた。


 決然と言い放ったマルカのことばが信じられなかったのだ。


「ジュンにいちゃん大丈夫だから」


 王妃の金の目が、マルカに向けられた。


「そうであったかの。つい高ぶってしもうたわ」


 潤の腹に食い込んでいた王妃の赤い爪から力が抜ける。


「潤を殺さぬように、こどもだけを貰い受ける約束であったかの」


 独り語ち頷くように首を何度も上下に振る。


「ジュンにいちゃん行こう」


「どこに?」


「少し休める所に。そうして、王妃さまにこどもをさしあげよう」


 にっこりと笑うマルカに、潤は、ことばを無くす。


「そうしたら、にいちゃんを自由にしてくださるって、王妃さまがお約束くださったんだ」


 マルカと王妃とを順繰りにみやって、潤は途方にくれた。


「大丈夫だよ。もう。にいちゃんを苦しめるものは、ひとつだけだけど、なくなるんだ」


「潤にいちゃんと約束したから、殺さなきゃって思ってた。色々考えたんだよ僕」


「けど、にいちゃんのこどもなんだって気がついたんだ。王さまのこどもだけど、にいちゃんのこどもでもあるって。だから、殺したりしたら、にいちゃんが後で悔やむかなって思い直したんだ」


「だからね、僕、王妃さまに差し上げるってお約束したんだ。王妃さまがずっとこどもをほしがってるの知ってたから」


「知ってた?」


 声が震える。


「知ってたんだ。僕。王妃さまがなにをしてるか。なにを望んでるか」



 長く時間が空いたので、かなり頭の中で話に変化が。

 冒頭に上手くたどり着くか、心配です。

 少しでも楽しんで頂けると嬉しいですが。

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