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2回目
若者は身内に宿った生命に恐慌した。
彼は元々この世界の人間ではなく、両方の性を持っていたわけでもなかったのだ。
元の世界で、彼はごく普通の高校生だった。
ある日、何かに呼ばれたような気がして振り返らなければ。
立ち止まらなければ、彼は今頃平凡な大学生になっていたことだろう。
立ち止まった時、彼は白金色に輝くなにかを見たような気がした。
すっぽりと抱きしめられたような気がした。
そうして、
『すまない』
男とも女ともつかない声で、謝られたような気がしたのだ。
そのまま、何かがからだの中にはいってきた。
そんな錯覚を覚えて気を失った。
からだが内側から作り替えられてゆくかの苦痛に、どれだけの間さらされつづけたのか。
気がついた時、そこは異世界だった。