白の部屋
お久しぶりです。パソコン壊れちゃいまして。
空きすぎて前回の話の大半を忘れちゃいました。
今回は前半は、謎の二人組みが仙宮寺家をひっちゃかめっちゃかにしてくれます。
サブタイは後半というか最後にちょろっと出てきます。
では、どうぞ!
皆、恐ろしいほどに何も知らない。
世界はこんなにも、
邪悪で
醜悪で
無慈悲だと言うことを。
「ただ今竜夜は出払っております。御用でしたら、言伝しておきましょうか」
口調は柔らかいながらも、玄関先で応対するアヤカシの女性の眼光は厳しい。
「・・・・・鷹海」
中国風の衣装を着た娘は、横に仕える背の高い男に一瞥をくれる。
「はい」
鷹海と呼ばれた男は、一度、眼前のアヤカシの顔をじっと見つめると、ふる、と首を振った。
「・・・・・成る程。強ち嘘でもないらしいな」
娘は腕組をすると、いきなり土足で仙宮寺家の中に入りだした。
「!?お待ちください!!!」
アヤカシが慌てて追う。
娘は顔を真正面に向け、胸をしっかりと張って歩いているものの、なぜか足音はまったく聞こえない。それが、不気味に感じられた。
娘は障子を立て続けに開け、襖を立て続けに開け、ちゃぶ台を飛び越え、とにかく行き当たった部屋から部屋へと渡っていった。
「何なさるんですか!」
「うわっ誰だ!!?」
「ぎゃっ!」
「ええ!?」
「若のお友達!?」
部屋に居た者達が驚きの声を上げるが、その声が娘の耳に届くころにはすでに娘は次の部屋へ行っている。
先ほどの女性のアヤカシが追ってくる。
「ちょっとお待ちください!土足で!」
「大丈夫です。空飛んできましたから、あの人の靴は綺麗ですよ」と鷹海が答える。
「そういう問題!?」
「ふむ。ここだな」
娘がやっと落ち着いた先は、ゆかりの部屋だった。
畳張りの床に、床の間には水仙が活けてある。
大きな箪笥があり、部屋の主の性格がうかがえそうな部屋だった。
「・・・・・・」
娘は無言で指を鳴らす。
「あ」
鷹海が、何も驚いていないような顔で驚いた声を上げる。
「ちょっと!ここはゆかり様の部屋です!出て行ってください!」
と、女性アヤカシが金切り声を上げる。部屋の中央に居る娘に向かって、今にも掴みかかりそうな勢いだ。
「あの、ちょっと下がっててくれますか」
鷹海がアヤカシをなだめる。アヤカシの前に片腕を広げ、通せんぼをしている。
「何故ですか」
「いえ、貴方がたの安全の為ですよ」
と、鷹海が言った瞬間、ゆかりの部屋が爆発した、かのように見えた。
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「やはりな」
娘は地面に向かって拳をつきたてていた。
娘の周りは円状に畳が吹き飛ばされ更地が広がっており、辛うじて残った周りの畳との違いが異常に感じられた。
ゆかりの部屋は無惨にも荒れ放題となり、水仙は倒れ、箪笥の中の着物が数枚はみ出している。
「な、なんてことを」
女性アヤカシは顔面蒼白となって震えている。
「ゆ、ゆかり様が、たたた、大切になさっている着物が、着物が」
「鷹海、見てみろ」
娘は得意げに自分が拳をつき立てていた場所を指差す。
鷹海が行くと、そこには地下室への扉のようなものが、先ほどの娘の強烈な突きにも壊されずに存在していた。
「呪いがかけられているな。弱いものには見ることさえ出来ん」
「それって自分が強いものっていう自慢ですか」
「黙れ」
「ちなみに僕にも見えてますけどね」
「黙れ」
そこでいったん言葉を切ると、娘は勝ち誇ったように
「仙宮寺 竜夜はこの下だ」
その頃、竜夜はゆかりと共に、良く分からない所に居た。
「ここはどこ、母さん」
「白の部屋」
なんとも抽象的な答えが返ってきたが、竜夜はめげずに続けて質問した。
「俺、修行するはずなんだよね。なんでこんなスタイリッシュな部屋に居るの?」
二人が居る部屋は、全てが白色だった。壁も、床も、照明も、全てが白。
「ほんとだってば。白の部屋っていうのよ」
ゆかりは火の付いた蝋燭を四本持って、燭台に置きながら答える。
『白の部屋』は、広さこそ四畳ほどしかないが、天井は恐ろしく高い。
その天井は高すぎて見えず、推し量るしかなかった。
「ここで、修行するの?」
不安になった竜夜は、ゆかりに引きつった顔でたずねる。
「そう!ここで貴方がする修行は―――――」
ここで、一旦言葉を切り、
「臨死体験」