Crow Of The Moonlit Night
まさかの二日連続更新。今日はなんだっけ。なんかで学校が休みです。そろそろ文化祭なのに、いいんだろうか。
サブタイは、これであっていればだいぶ意訳して『月夜鴉』。なんの事だかは本編を読んで頂いたら分かります。それではどうぞ。
「さーいーたー、さーいーたー、バーラとひまわりーのー、はーなーがー♪なーらんだー、なーらんだー、あーかー、ピンク黄色白きいろー♪どーのーはーなーみーてーもー、きーれーいーだーよーお♪」
午前七時三十五分。羽衣町六丁目。色々間違っている歌が聞こえてくる。歌い手はもちろん、神部翠子である。
「はあ・・・・」
歌い終わると、ため息が出た。
「・・・昨日のあれは・・・夢だったのかな・・・」
昨日。学校帰りに友達と遊びに行った帰り、女の人に襲われた。
で、助けられた。着物を着た男の人たちに。気づいたら、家の前に倒れてた。
「・・・・口裂け女とか・・・信じられないもんなァ」
でも、その女の人に投げつけたはずのバックの中の鏡が、粉々に砕けてた。無事に帰ったのなら、割れているはずの無いものなのに。
「それにしても、どっかで聞いた事のある声だったんだけどなあ」
あの、三人の、声は。
「若様ああ!お待ちください!この響、式神なぞに騙されませんぞ!」
「若旦那あ!お待ちください!私は猫缶なんか食べません!変化してる時は、大好物ですが!」
今日も空しく登校中に始業のチャイムを聞く。本日も普段通り遅刻だ。
「うるさい!昨日は夜遅くまで仕事してたし、今日も朝からお前らは俺の邪魔してくるし!」
リューヤは響と寧子にむかって吼える。校門にたどり着き、警備員のおじさんに「いつも大変だねえ」と励まし?の声をかけられる。
「昨日・・・ですか。そういえば、あの女の子、大丈夫ですかね?」
寧子が思い出したように言う。
「ふっ、なめるな寧子。私の陰術は完璧だ。『霧掛け』で意識も消したし・・・あ、ただ若様の勇姿は消したくなくて、昨日の記憶は丸々残ってますが」
「何!」
二階に着いたところで、響が衝撃の告白をした。
「あ、では私はここで」
2年一組の教室に響が入る。
「じゃ、私もここで」
2年二組の教室に寧子が入る。
「じゃ、俺もここに・・・」
2年三組の教室にリューヤが入ろうとした。が、
「させんぞ」
ドアを開けた瞬間、黒板消しが飛んできた。
もうもうと白い煙が立ち込める中、真っ白な顔をしたリューヤはめげずに黒板消しを投げ返した。
「甘い!」
担任の雛川霙教諭は、投げつけられた黒板消しを蹴り返す。が、それをまたリューヤは返した。そして、ただ傍観していた罪の無い友人、黒須太一に直撃した。
真っ白な顔をした二人は、廊下に立たされた。
「なんで俺まで・・・」
「わりい・・・」
ちらっと術使っちまったけど、大丈夫かな・・・なんて事をただリューヤは考えていた。
昼休み。
「リューヤ君、一緒にお弁当、食べない?」
響が三組を訪ねてきた。
「いや・・・」
「どおぞどおぞ。一緒に食おーぜ、塰狗!俺は曽根崎一平!よろしくな!」
「俺は黒須 太一だ。よろしく、塰狗」
「響でいいですよ」
断ろうと思ったリューヤの声は、一平にかき消された。
「おい、勝手に決めんなよ・・・」
「いーじゃねえか。こいつ、話題性たっぷりだぜ?銀髪のイケメン!女子には人気なんだって」
響はすでに弁当箱を開けている。
「リューヤ君、一緒に・・・・・・」
「神部!こいつと一緒にメシ、食ってくれ」
突如やってきた寧子の言葉を、リューヤは制す。名前を呼ばれた翠子は、びくっとなった。
「えー、リューヤ様・・・」
と、寧子が抗議をしようとしたら、リューヤは寧子の耳をひっつかみ、小声で言った。
「これは命令だ。いーな?」
渋々承知した寧子のもとに、翠子が来た。
「えーっと、二組の梁間さんだよね?じゃ、一緒に食べようか」
「寧子でいいですよー」
二人が喋りながら、女子の集団に向かっていく。リューヤはこそっと響に耳打ちした。
「おい、なんだよ急に。今まで学校ではあんまり話しかけんなっつってただろ?」
卵焼きをほおばりながら、響が答える。
「昨日の・・・ように・・・、はむかって・・・来る奴ら・・が、んぐ増えてきているのです。我らは若をお守りせねば・・・と」
「食うか喋るかどっちかにしろ!」
一喝してから、リューヤは考え込む。確かに、最近、街中での事件が増えてきている。何か、あるのか、と。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!」
夜。羽衣町。アヤカシの雄叫びが鳴り響く。
「雑魚ですねー」
着物を着た寧子がコロコロ笑いながら言う。
「最近は、夜に暴れるアヤカシが多くなりましたね。仙宮寺家の配下では無い奴等ですが・・・」
竜夜は答えない。
「・・・?若旦那?」
「黙ってろ」
紅い眼が、鋭く光る。寧子と響は、何が起きているのか、分からない。
「出て来いよ。そんな隠す気もねえ程の殺気撒き散らしながら、姿だけを隠しているなんて、みっともねえぜ」
刀を抜き、ビルの陰に向ける。寧子と響は、ようやく気づいた。狙われている、と。
「月夜鴉・・・・」
何者かの声が響く。竜夜の眉が、ピクッとあがる。
「その刀の名前ですね・・・・」
姿が見えた。黒い着物に身を包み、笠を被っている。手には錫杖を持ち、僧のような格好をしていた。
「・・・てめえは誰だ」
竜夜が刀を構える。寧子と響も、身構えた。
「何、陰陽寮の者ですよ」
寧子と響が眉をひそめる。
「陰陽寮のものが、何の用よ!」
寧子が叫ぶ。何者かは、深く、静かな声で答えた。
「何、仙宮寺 竜夜殿・・・・、アナタを倒しに来たまでですよ」
風が吹く。雲が晴れる。現れた月明かりに照らされた刃と錫杖が、鋭く光った。
いかがでしたか。
今回出てきた術と、この前出てきた術のおさらい。
【幻影】・・・術名ではなく、術全般の名前。リューヤが使ったのは、相手に幻影を見せる、『雲見せ』。数十分後に効果がきれる。どのくらい持つかは、術者の力量によるが、時間設定して何分後に切れるかを決める事も出来ます。
【霧掛け】・・・相手の記憶と意識を奪う術。一般人には普通にかけられるが、強い人には無理。響は翠子の意識だけを奪い、家の前に置いて来た。
ついに明かされた竜夜の刀の名前!そして陰陽寮とは?!おそらくはこの二人、戦いますね、次回。
誤字脱字、感想、矛盾点、いろいろお待ちしておりまする。よろしくお願いします。