Hush!!
サブタイは「しーっ!」っていう意味です。今回は新章序章。伏線一杯。ではどうぞ!
爽やかな風が、グラウンドを駆け抜ける。
熱すぎる事もない太陽の柔らかな日差しを受けながら、羽衣学園の瀟洒な校舎の屋根が輝いている。
今日は羽衣学園中等部の体育祭である。
生徒達は皆、朝から浮き足立っていた。
しかし、仙宮寺 リューヤは、周りの気色ばんだ雰囲気に馴染めないで居た。
「なんなんだよ、あいつは」
先日会った、なんとも不可思議な青年のせいである。
「おい、仙宮寺!!」
リューヤが鬱々とした気分で教室にいると、廊下から担任の雛川教諭の声が聞こえた。
「はい?」
「一年生リレーの準備を手伝ってくれ。お前が一番暇そうだ」
雛川教諭は辛い口調でいい、無理やりリューヤをグラウンドに連れて行った。
グラウンドは教師や体育委員会が忙しそうに走り回っており、リューヤはその一角に放り出された。
「ゴールの準備を頼む」
雛川教諭はそれだけ言うと、さっさとどこかへ消えてしまった。
渋々リューヤがゴールテープを引っ張り出していると、後ろから
「リューヤ様!!!!!」
と、聞き覚えのある声が聞こえた。
「寧子か・・・」
振り向いた瞬間、リューヤは眼をむいた。
「なっ、なんだよその格好!!!!!!」
寧子は、世に言うゴスロリファッションに身を包んでいた。
「似合います?私コスプレリレーに出るんです。翠子!似合う?」
寧子は傍を歩いていた翠子に話しかけた。
翠子は持っていたハードルを置き、リューヤ達に近付いてくる。
「わあ、寧子ちゃん似合う!すごいね」
翠子は感心したようにいう。軽く引いている。
「でも私よりすごく気合が入った人が居るんですよー、リューヤ様。ほら、あっちにはウサギの着ぐるみの人が居るし、向こうには着物の人も居ます」
寧子が指差す先には、なるほど着ぐるみや着物を身に着けた人々が居る。
「では私は準備がありますので!」
寧子は元気良く駆けて行った。あとには翠子とリューヤ。
「あっと・・・、リューヤ君・・・」
翠子が口を開く。
翠子はリューヤの顔を真っ直ぐ見て、不安そうに瞳を揺らしてから、又直ぐに顔を伏せた。
「ううん・・・、なんでもない」
翠子にしては歯切れが悪かった。リューヤは内心腑に落ちなく思ったが、雛川教諭から
「仙宮寺!早くしろ!!」
と怒鳴られたので、確かめる事もできずに翠子から離れた。
翠子は、不安そうに瞳を揺らしている。
その二人を、遠くから眺めているものが居た。