表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陰妖師  作者: スズメバチ
35/51

トビラの店

挿絵(By みてみん)

・・・みなさんこの人が誰かお覚えですか。

月夜です。可哀想な最後を迎えた月夜です。挿絵でのみの登場。櫻シリーズ第二弾。そろそろ櫻も終わりだってのに。

では、月夜は全く関係ない35話、どうぞ!



  憎むべし、かのライオン

   それをば血みどろの口にくわえれば、

    血痕いともなまなまし。





「お前は誰だ」

 警戒心を露にしながら、竜夜(りゅうや)は玉座に座る青年に向かって言った。


「随分なご挨拶だな。礼儀ってモノを知らないのか」

青年は表情一つ変えずに返事を返す。そしてまた一口、紅茶をすする。


「シモンをどこにやった!」

厳しい声で追及する。

 すると、竜夜の傍らにいた、そっくりな二人の少女達がパタパタと青年の横に駆けて行き、

「連れて来た、連れて来た」

「ほめて、ほめて」

「白銀は彼の所へ」

「紅蓮はこちら側に」

と口々にいう。


「はいはい。ご苦労様」

青年は面倒くさそうに言うと、腰を上げ、紅茶のカップを傍の猫足テーブルの上に置いた。

 

「君がここに来たのは、それなりの理由があったからだ。ここは「(トビラ)」。生きとし生けるもの全ての、これからの行く末を決めるところだ」

青年は竜夜に近付くと、何を考えているかわからない眼でじっと竜夜を見据える。


「聞きたい事があるんだろう」

 青年は静かな声で言う。

 竜夜はその声が、青年の口から発せられたと気付くのに、一瞬気付かなかった。

 頭の中に響いてくるような、不思議な声。


「・・・・・・あれは・・・・・」

竜夜は口ごもりながらも、続ける。

「あの・・・アナスタシアという尼僧が持っていたカタリナという刀・・・、力の波動こそは俺らの刀と同じだったが、その後出てきたあの女・・・・、あれは何だ」


 竜夜は数日前に対峙した金髪のシスターを思い出していた。

 「妖魔」と呼ばれる気味の悪いモノを共に祓ったが、その後、そのシスターが持つ刀から出てきた女性の事が、竜夜は引っかかっていた。誰に聞いても判る事が無いような存在。

 

 その女性は、自分のことを「アナスタシアの魂のかけらが生み出したもの」と言っていた。


「あれは何だ」

竜夜はもう一度繰り返した。


 青年は溜め息をつき、

「少しは予想できていると思ったんだがな」

と呟いた。

 しかし、竜夜には聞こえない。


「君達が持っているその刀、それらは遥か昔から力のある者に現れる武器だ。現れ方も様々。君達のように普通の武器として現れる事もあるし、潜在能力として現れる事もある、体と一体化して現れる事もある」

 青年は一息に喋ると、もう一度溜め息をつき、背を向けて再び玉座に座った。


「あのカタリナという女は、その武器の魂が具現化したもの。しかし、「具現化」するには「解放」の数倍の力が必要となる」


「ってことは・・・」

竜夜は祖父から預かった風呂敷包みを落とし、玉座に座る青年に近寄った。


「俺の月夜鴉(つくよがらす)も具現化できるってことか!」

「力さえあればな」

青年は冷たく言い放す。


「そうか・・・・・、あと・・・」

竜夜がさらに質問を続けようとした所、


「ここまでだ」

と青年が声で制した。

「!?どういうことだ」

竜夜が困惑していると、青年は立ち上がり、竜夜の落とした風呂敷包みを拾い上げた。


「おい!」

青年は気にせず、風呂敷包みをあけ、中から巻物を取り出した。


 すると、二人の少女が

「これまで!」  「これまで!」

「ご主人様は未来を与える事はできるけど!」

「未来を選択する事はできない!」

「あるがものを!」

「あるがままに!」

「伝えるだけ!」

「教えるだけ!」



「は・・・・?」

竜夜は訳がわからず眉間に皺を寄せる。


「ま、この掛け軸だけなら教えられるのはここまでだな」

青年はべろんと掛け軸を広げると、壁にかけた。

 そしてつん、と薄墨で描かれた鳥を触った。すると、その鳥はパタパタと羽を広げ、枠の外へ飛び立って消えてしまった。

「・・・・・!?」

あんぐりと竜夜が口を広げていると、青年が向かい側にある鏡を指差した。

 竜夜がそちらを見やると、先程の薄墨の鳥が鏡の中に映りこんでいた。


「ほら、用が済んだなら帰ってくれ」

青年は邪険に竜夜を追っ払う。


「ちっ!何なんだよ!てか、シモンは!?」

「外に出れば会える。(あい)、連れて行ってあげな」

青年は髪の毛をお団子にしたほうの少女を竜夜に随伴させた。


「あ、おい」

去り際に青年が竜夜を呼び止める。

「その羽織、置いていく気はねえか?」

青年が竜夜の羽織を指差す。

「ねえよ」

ぶっきらぼうに竜夜が答えると、

「そうか・・・・・」

と、青年は呟いた。


 竜夜が消えると、残ったもう一人の少女が、青年を見上げて

「ご主人様・・・・・」

と呟いた。

「・・・・それも、あいつの選択だ」

頬杖をつき、青年は呟く。


「気付かないのか・・・・、お前の傍の小さな人間の、大きな変化に・・・・・」



如何でしたか。伏線一杯。

次回は体育祭です。新キャラも登場!

ちなみに出てきた二人の女の子のもう一人の名は「藤」です。適当に決めた。


誤字、脱字、矛盾点、ご感想、お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ