汝、最も邪悪なる霊よ
今回は戦いっぱなし。
挿絵はなんかえらい事になってる。
そこにも注意して、どうぞ!
神は邪悪を憎み嫌われる。
「ッたくよおおおおおおお・・・・・、この姿は力使うんだよおおおおお・・・・・」
妖魔は口から息を吐きつつ、低い声でそう呟いた。
独り言なのか、語りかけているのか、判らぬ口調である。
背中からは蝙蝠の様な翼が生えている。
大きな口から覗く歯は、離れた場所でも認めることが出来る程長く、尖っている。
太く、また長い尻尾はまるで蛇のようにうねっている。
青い髪は長く伸び、爪も、むしろ不自由な位に長い。
それまででも十分おどろおどろしかった妖魔の姿は、さらに気色の悪いものとなっていた。
「・・・・・・・あらまー」
竜夜は他人事のようにそう呟いた。
「やっぱりね。ほら、言ったとおりでしょ」
アナスタシアは竜夜にそう小さく囁いた。
「なーに喋ってんのお?折角この姿になってあげたのに。でもさー、この姿ってちょっとしかもたねえんだよねえええ。ゆっくり楽しみたかったのに、残念だ」
妖魔はそう言い、右足を後方にさげ、左手を前に出した。
ふうううう、と大きく息を吐き、眼を光らせる。
「直ぐにサヨナラだよオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
地が抜けるかと言うほどの大音声でそう叫ぶと、先程とは比べ物にならないほどのスピードで二人に近づいた。
長い腕を振りかぶり、二人をそこに真っ二つにしようとする。
甲子園のピッチャー並だな、と、竜夜は下らぬ事を考えていた。
上半身を下方に下ろし、一直線の攻撃を避ける。
同じようにして攻撃を避けたアナスタシアは、すぐさま体勢を立て直し、次なる攻撃に構えている。
「避けないでぇえええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!」
妖魔はそう叫び、50cmはある長い爪を振り回し、やっと体勢を立て直した竜夜に遅いかかる。
「来んなよ、変態!!!!!」
竜夜はそう叫び、右手で印を結んだ。
「陰術・天元!!!!」
すると、妖魔の体は数m吹っ飛んだが、すぐにまた近寄ってくる。
「はえーな・・・」
竜夜は唇をかみながらそう言うと、月夜鴉を前に横向けに出し、刃を妖魔に向けた。
長い爪が、月夜鴉の刃に当たる。
「爪が長いのって不潔なんだぜ。不本意ながら切ってやろうか!」
竜夜は柄を持つ右手と、横向けの刀身に添えている左手に力を込め、全力で向かう妖魔を押しやろうとする。
すると、妖魔の後ろから剣を片手にアナスタシアが近づいてくる。
「女の子がそんな事しちゃ駄目でしょーが」
と、妖魔は長い尻尾を使い、アナスタシアの右手に当てる。
「!」
アナスタシアは危うく剣を落としそうになる。
「お前は大人しくしてろっての。後でゆっくり相手したげるから」
妖魔はまたも長い尻尾を使い、アナスタシアの胴体に当身を食らわす。
「アナスタシア!!」
竜夜は叫び、さらに腕に力を込める。
吹っ飛んだアナスタシアは、うめき声を上げながら横たわっている。
「おんやあ、あの子の事が心配?優しーねえええええ」
妖魔は気味の悪い笑顔でそう喋る。品が悪い。
「俺はそーいうの嫌いだけど」
と、妖魔は竜夜を押しのけ、竜夜の腹に蹴りを入れた。
竜夜は数m吹っ飛び、公園の広場に転がり出た。
「ゲホッ!!」
竜夜は咳き込み、倒れた体を起こそうとする。
「さあて、そろそろお前を終わらせるか。早くあの女のほうに行きたいしな」
妖魔はそう言いながら、ゆっくりと竜夜のほうに近づいてくる。
「バイバーイ」
と、
妖魔の足元に、
光り輝く魔方陣が現れた。
「ヴェローチェ・上方!!!!!!」
アナスタシアの声が響く。
すると、妖魔の体がものすごい勢いで上へと向かって行った。
「ずえええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!???」
妖魔は声を上げ、花火の如く上へ打ち上げられてゆく。
「たーまやー」
竜夜は笑顔で口元に手を当て、定番の声を掛ける。
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「変化?」
時は少し戻り、竜夜とアナスタシアが口争いをする体を装いながら茂みに入って行った時の事である。
「そうよ」
アナスタシアは竜夜の問いかけに力強く答える。
「あの妖魔は恐らく【驕り】を司る悪魔、『ルシファー』の眷属でしょう。あの風体・・・見覚えがある。そして、あいつらは皆一様に変化するのよ」
声を潜めながら険しい口調で、アナスタシアは早口で喋った。
「奴らの変化体が厄介なのは、その異様なほどのスピードと、小回りのきく尻尾にある。それらがあると、思いのほか私達の攻撃が効きにくい」
「じゃあ、どうすればいいんだよ」
竜夜はぶっきらぼうに答える。
「奴は恐らく変化してくるだろう。その変化が解けるのをを待つしかないわ」
アナスタシアは溜め息交じりにそう答えた。
「・・・って、ただ待つだけ?体力が尽きるのを?」
「・・・まあ、奴の動く量を増やせば、その分尽きるのは早くなると思うけど」
アナスタシアは頬をかく。
「・・・・・・・・・・」
竜夜はなにやら思案顔で押し黙っている。
「いい事考えた」
にっと、竜夜は笑う。
「お前の得意芸を使わせてくれよ」
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「ヴェローチェ・右斜め!!!!!!」
妖魔の体はボールのように空中をあっちこっち光速で行き来する。
その体の先々に魔方陣が現れ、妖魔の体はアナスタシアが言った方向に向かう。
「ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」
妖魔は叫ぶ。
「てか、お前の注文難しかったんだぞ。あそこじゃ狭いから広場まで誘い込めって・・・、あんな隙だらけの攻撃に」
「黙りなさい。第一、初めのあのうそ臭い言い争いの芝居は何よ。何やら考えがあるかと思って乗ってやったけど、結局は相談のためだったろうが」
アナスタシアは掌を空中に向け、魔方陣を繰り出しながらそういう。
「何してくれてんのオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!」
妖魔はそう叫び、煙を体中から出しながら変化が解けた。
翼も尻尾も無くなり、ぼろ雑巾のようになった妖魔に二人は近づく。
「て、てめえら・・・・・・・・」
妖魔は消え入りそうな声で言う。
「さてと」
にいっと竜夜は口角を上げる。
「月夜鴉!!!!!!!!」
「カタリナ!!!!!!!」
闇に断末魔の声が轟く。
如何でしたか。やったね、連係プレー。
だんだん妖魔のキャラが判らなくなってきたけど、今回でそれも終わりです。
次回以降はアナスタシアの事後と、またなんやかや。
誤字脱字、矛盾点、ご感想お待ちしております。