Is Evil An Enemy?
サブタイトルは「悪は敵か?」です。
今回は戦い一直線。だけど当初の予定より大幅にずれた!
では、どうぞ!
神は敵の邪悪な道を見ておられる
「仙宮寺 竜夜。お前、囮になれ」
金髪のシスター、アナスタシアが声を潜めていう。
羽衣町・四丁目、桐鐘区の公園。
昼間は子供達の微笑ましい笑顔で満たされるその場所は、今、戦慄の場となっていた。
「ああ?」
竜夜は怪訝な顔で聞き返す。
敵はその二人と4,5m離れた場所に居る。
灰色の肌をし、大きな口を開け、酔っ払っているように足元が覚束ない。
そんな妖魔である。
「・・・お前、頭も悪ければ耳も悪いのか?お前が囮になれと言っているのだ」
アナスタシアは呆れ顔の中にも少々哀れみさえ思わせる顔で言った。
「何で俺が?てか、何でお前が主導権握ってんだ!」
竜夜は自分が囮になると言う事よりもそれを命令された事に怒っているようだった。
「何を当たり前な事を。お前は悪。私は神に仕える者。神に勝るものは無し。然るにお前より私が優位だ」
アナスタシアは整った顔を竜夜にぐいと近づけて言う。
「優位かどうかを決めるのはそれぞれの力量だろ。よおし!今から俺達のうちどっちが優位かを決める戦いをしよう!」
「無駄な事を!悪は正に下される。古からの決まりだ!よし、今からそれを証明する戦いをしよう!」
二人は言い争いをやめない。
それどころか、二人で茂みの奥へ行き、戦いさえ始めそうな勢いである。
「ちょっとちょっと!どこ行ってんのォ!同士討ち!?駄目だってんでしょ!一割る一って割り切れちゃうじゃない!」
妖魔は金切り声を上げ、二人が消えた茂みへと近づく。
が、
「!?」
ヒュンっと妖魔の左頬を何かが掠めた。
鎖状の紐のようなものである。
妖魔が左頬に気を取られている間に、黒いものが妖魔の目の前に現れた。
アナスタシアである。
「ああああああああああああああああああああああああああっ!!」
大声を上げ、手にした剣を振り下ろす。
しかし、妖魔はそれを右にかわす。
「何、結局は一人ひとりで来るの?」
と言った瞬間、攻撃を避けた右方向に竜夜の姿が現れた。
「!!!!」
竜夜は月夜鴉を妖魔に向かって突き刺す。
が、妖魔は後方に大きく後ずさり、月夜鴉とアナスタシアの剣は大きく交差するようになった。
「お粗末な作戦だなぁ!悪いがそんなんじゃ、俺は倒せねえぞ・・・・」
と、妖魔が言った瞬間だった。
「陰術・破狂!!」
「聖なる巌!!」
二人から同時に衝撃を受けた。
妖魔は口から血を吐き、さらに腹には大きな打撲痕ができた。
数m吹っ飛ばされ、妖魔は無様にも仰向けでねっころがるように倒れた。
「・・・・・・」
三人の間に沈黙が流れる。
「く、ケケケケケケケケケケケケケケケ・・・・・・」
妖魔が気味悪く笑う。
「随分と虚仮にしてくれるなあああああああああ・・・・・・」
一オクターブ声が下がり、口から流れ出る血を止めようともせずに、妖魔は喋る。
「なめんじゃねえぞおオオオオオオオオオオオオ・・・・・・・・・・・・・・・」
そして、
「アアアアアアアアああアアアアアアアアああああああああアアアああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
と叫び、
変化した。
竜夜とアナスタシアはただ軽く微笑んだ。