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陰妖師  作者: スズメバチ
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月に支配されしモノ

一話ぶり。翠子ちゃん登場。

今回は翠子ちゃんが災難に遭います。

今回いよいよ題名でもある『陰妖師』なるものの活躍が見られます。

 夜は月に支配されている。

 月こそ夜の王であり、昼間の太陽から、空の支配権は月に移る。その夜にはびこる闇もまた、月に支配されている。

 ではまたその闇にはびこるモノどもは、何に支配されているのだろうか。光を嫌い、光を恐れ、また光に憧れる。彼らはー・・・・・。



 桜綾(おうりょう)市三丁目。繁華街。建物が密集しているここは、賑やかなところも多いぶん、光の当たらぬところも多い。 

 とある路地裏。表の華やかな雰囲気とは打って変わり、じめっとした、暗い雰囲気がその場を覆っている。

「かーえーるーのーうーたーがー、きーこーえーてーきーたと思うんだっ♪けろん、けろん、けろん、けろん、けろきろかろくろ、くるくるくる♪」

そんな雰囲気にそぐわない訳のわからない歌が聞こえてくる。その声の主は、羽衣(はごろも)学園2年三組に在籍している、神部(かんべ)翠子みどりこであった。

「・・・あれ?こんな所、いつも通ってたっけ?」

学校からの帰り道。そういえば、最近、この市で殺傷事件が起こったって、ニュースでやってたな・・・。怖い、早く帰ろう・・・、そう思った時だった。

 「こんな所歩いてたら、危ないわよ」

女の人の声だった。地味なスーツに、地味なスカート。顔は優しそうで、安心できた。

 だから、油断したんだ、私は。

「あ、はい・・・。なんか、道に迷っちゃったみたいで・・・」

私は女の人に近寄った。

「最近、ここ物騒なのよ。危ない人とか多いし・・・」

「あ、この間、事件あったんですよね」

女の人は、私を導くように前を歩いていく。後ろは振り向かずに喋ってきた。

「そう。よく知ってるわねえ」

「ニュースでやってましたから・・・」

ここで、おかしいと思うべきだったんだ。女の人はどんどん暗闇へ歩いていく。ただ、私はこの人について行くより他に安全に帰れる術は無いと思っていたんだ。

「どこまで知ってるの?」

「どこまでって・・・?」

女の人が立ち止まる。私も立ち止まる。

「その犯人が・・・私だって事とかは?」

くるりと女の人が振り返る。その顔は・・・

「きゃああああああああああああああああああああ!」

女の人の顔は、口が裂け、眼はつり上がり、とても人の顔とは思えなかった。

「何で叫ぶのよお。あんた、初めは私の事いい人そうとか、やさしそうとか、思ったんでしょお。なんで叫ぶの?やっぱり、私の顔が、醜いから?口裂け女なんて、やっぱり怖い?ねえ、怖い?何とか言えよおおおお!!!」

声が出ない。どうしよう。

「た、たす・・・」

足が震える。力が入らない。口がパクパクする。

「助けなんて来ないわよお。ねえ、口裂け女ってさあ、結構不幸なアヤカシなのよお。まあ、私は生まれたときから口裂け女だったから、昔の事は知らないんだけどさ。生まれたきっかけは、整形手術に失敗して顔が崩れたとか、熱いコーヒーをがぶ飲みして、口が裂けた、とか。好き勝手言ってんじゃないわよ!言っとくけど、ポマードも嫌いじゃないし、ベッコウ飴が大好物でもないのよ!そんなん、人間が勝手につくっただけでしょ?何勝手に人のプロフィール創作してくれてんだ!」

 女の人は酔っているような口ぶりだった。ポマードとか、何言ってるか分かんなかったけど、怖いのには変わりなかった。

  逃げなきゃ。

そう思った。そして、手にしていた学校のバックを投げつけた。そして、走った。ただ、走った。

「待てよおおおおおお!」

女の人が叫ぶ。

「きゃああ!やっ・・・、たす、助けて!誰か!」

真っ直ぐな、暗い道を、ただただ走った。だけど、音が、だんだん近くなってくる。

「逃げ切れると思ってんの?」

女の人の手が、私のスカートを掴んだ。もう駄目だ・・・と、思ったときだった。

 「みっともねえこと、してんじゃねえよ」

見えたのは、三日月かと思った。だけどそれは違っていて、刀の刀身だと気づいたのは、女の人の手がその刀によって切り落とされた後だった。

「てめぇ、俺の庭で何してやがんだ・・・」

落ち着いた、低い声。その人は、着物を着ていた。大人っぽい後姿。だけど何だろう。誰かと、似てる気がする・・・・。

「てめえぇ誰だああ!」

女の人が吼える。すると、黒い影が、上から二つ、降り立った。

「まあ、はしたないわねえ。女がそんな言葉遣いするもんじゃないわ」

若い女の子の声。

「若、この子、どうします?」

今度は男の人の声だ。なんだろ、こっちの二人も、どこかで聞いた事ある・・・。

「寝かしとけ」

さっきの男の人が短く言う。はい、と二人が答えた。

「じゃあ、おやすみ」

と、声が聞こえたとたん、目の前が暗くなり、私はそのまま気を失った。


 「誰なんだよ!」

口裂け女が吼える。竜夜(りゅうや)は刀を構えた。

「アナタ、誰に向かって言ってるの?この方は仙宮寺(せんぐうじ)竜夜様。仙宮寺家次期当主よ」

寧子(ねこ)が強い口調で言う。足を一歩踏み出し、両腕を腰に当てた。

「そうい事聞いてんじゃねえよ!てめえのその気、一体なんだ?アヤカシの気も、陰陽師の気も入ってるじゃねえか!何者だ!」

竜夜の髪は長く伸び、後ろでひとつくくりにしている。眼は紅く、炎の色だ。その眼が、鋭く光る。

「その通りだ。俺は陰陽師とアヤカシの間に生まれた。他に質問は?」

それが何だ、とでも言わんばかりに平然と竜夜は答える。その態度が、口裂け女のカンに障る。

「ざけんなよお!そんな禁忌のガキに、私が倒せるか!」

口裂け女が竜夜に掴みかかる。寧子が構えるが、竜夜は目で制す。

「・・・なめるなよ」

刀が口裂け女の体を真っ二つにした。と、眼で確認できたのは、口裂け女の下半身が、はるか手前に落ちたからだった。

「え・・・・」

状況が理解できていない風な声を、口裂け女がもらす。

「何者だ、と聞いたな・・・」

口裂け女の手が、竜夜の着物から離れる。真っ二つにされた上半身が、地面に倒れた。

「答えてやるよ。俺は陰妖師(おんようじ)。アヤカシでも陰陽師でもない。体はまるでアヤカシのように丈夫で、身体能力も常人とは違う。しかし、陰陽師の術も使える。どっちにしろ、受け入れられないんだ、俺は」

自嘲じみた声で言う。口裂け女が、かすれた声で言う。

「・・・はっ。ふざけたことを・・・。てめえみたいな異形のガキ・・・すぐに死ぬさ。目立つものは潰される。それが、世の中ってもんだ・・・」

そう言い、果てた。

「やれるもんならやってみろ。だがな、俺が守れる範囲・・・俺の庭で何かしようとしたら・・・ただじゃおかねえよ」

刀を鞘に納める。口裂け女の体が、灰のようになって崩れていった。

「・・・空も夜も闇も、月に支配されている。だが、その闇にはびこり、俺にたてつくもの共は・・・俺が支配しているんだ」























いかがでしたか。

陰妖師状態のときは『リューヤ』ではなく『竜夜』表記です。わかりにくいかな。

誤字脱字、感想お待ちしております。

次回は、こいつの刀について、ふれたいと思いまする。

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