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陰妖師  作者: スズメバチ
19/51

再会の鎮魂歌 8 ≪I defeat you≫

挿絵(By みてみん)

一日遅れのメリークリスマス。挿絵は女子組です。


今回のサブタイは特別バージョン。カッコの中身がもうもろ判りだったので、英語にさせていただきました。

今回で『再会の鎮魂歌』シリーズは終了!ではどうぞ!


  恐ろしいのは

  

  目の前で大切なものが消え逝く事


  許せないのは

  

  護りたいものを護りきれない自らの醜態







 「許しません、許しませんよおおおおお!!!!!!!!!!!」

 切り裂き男が激昂する。しかし、それと同じくらい、否、それ以上に、竜夜(りゅうや)も怒りを覚えていた。


「それはこっちの科白だ。寧子(ねこ)翠子(みどりこ)に怪我させやがって。切り裂き男、俺はお前を許さねえよ」



 言下に男が斬りかかる。

 竜夜は翠子を抱えたまま、左隣の家の塀に飛び乗った。



「殺す、殺します。私は貴方を殺しますよ」


 通常ならば脅迫のように感じられるが、悲壮な顔のものがそう言うと、むしろ哀れみすら感じられた。

 だからと言って許す気にはなれない。


「うるせえ」


 切り裂き男の脅迫を一蹴すると、右手に握った月夜鴉(つくよがらす)で男の残った六本の脚のうち、二本を斬った。血が飛び散る。



「あああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」


 男が叫ぶ。それは最早悲鳴と呼んでもいいくらいで、決して聞こえの好いものではなかった。



 四、五m離れた男は、喘ぎ声を漏らしながら、傷口から止め処無く流れ出る血を止血しようと必死になっていた。



「ふざけるな、何故こんな事になった、何故こんな事になった、何故だ!?」

 

 男が喚く。その理由を知っているものなど、いない。


「全部お前のせいだ、仙宮寺(せんぐうじ) 竜夜!!!!!!!!あの時、お前にやられてから、私の運命は変わった・・・・全てお前のせいだ!!!!!」


 なんとも自分勝手な言い分である。

 しかし竜夜は何も言い返さなかった。

 言っても無駄であるということを知っている。



「なんであの時あの人と出会ったんだ、何であの時あの人は現れたんだ。そっとして置いてくれれば、こんな事にはならなかったのに・・・・・」


 あの人、が誰であるのか、竜夜には皆目判らなかったが、その者が竜夜たちの味方ではないと言う事は想像できた。



「あの人、って誰だ」



 まるで尋問官のように聞く。


「・・・ふっ、貴方ごときがあの人のことを知るなど恐れ多き事です」

 その時だけ、切り裂き男は勝ち誇ったような顔を見せた。

 竜夜の知らない事を知っているという事が、男を優位に立ったような気にさせた。

 

 気に食わない。 



「答えろ。あの人って誰だ」



 すると男は顔を僅かにほころばせた。

 血がついた帽子を取り、どうにか紳士的な態度をとろうとする。





「・・・それを教えたら、私を見逃してくれますか?」




 すがるような目つきで竜夜を見てくる。

 軽くお辞儀をするような格好をしているため、心なしか上目づかいの様になり、媚び諂う様な顔に見える。実際、そうである。



 竜夜は唇を噛み、翠子を抱えた腕に力を込め、



「・・・答え次第」


 とだけ言った。



「へ、へへへへへ・・・・・・」


 切り裂き男は品の無い笑い声を出す。

 帽子を被りなおし、立場を対等にしようと、背筋を伸ばした。



「・・・・あの人、というのは、陰陽寮(おんようりょう)の幹部の一人です。以前、あなた、玉栄(ぎょくえい)という男に襲われましたね?あの者を仕向けた人物と同じです。私は直接会った事は有りませんが。上に居る(アザミ)さんも、あの人の部下です」


 息継ぎをせず、一息に喋る。喋り終わったら逃げられるものと信じているように。



「あの人の部下は皆、強い。これからも、貴方や貴方の周りの人々を狙うでしょう。何でかは判りませんが。ああ、それと、」



 そこで一旦息をつく。そして、


「あの人は花が好きらしい」


 と、大発見のような顔で言った。



「・・・そうか」



 竜夜は静かに、眼を伏せた。


「で、では、逃がしてくれますよね?」


 男は既に逃げる許しを得たかのように、脚が逆方向に向いている。






「・・・何言ってんだ?」



 竜夜は静かに眼を開け、そう言い放った。



「え」


「言っただろう。俺はお前を許さないと」


 竜夜は翠子をしっかりと抱えなおし、言った。



「え、だって、さっき、答え次第って・・・」

切り裂き男は泣き出しそうな勢いである。



「単にあの答えじゃ俺を満足させられなかった。そう云う事だ」


 

 冷淡な響きで竜夜は言葉を放つ。



「~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!」



 切り裂き男は声にならない叫び声を上げ、逃げ出した。



「馬鹿野郎」


 駆け行く背中に一声、罵りの言葉を浴びせる。


 次の瞬間には、竜夜は切り裂き男の右横に現れていた。




「逃がす訳ねえだろ」


 月夜鴉で男の左肩から右わき腹にかけて、深く斬る。



「ぐうあっ・・・・!!!!!」



 うめき声を上げ、口から血を吐き、切り裂き男は後ろにしりもちをついた。



「やめ、助け・・・・・」


「切り裂き男」


 懇願する男の声を制し、竜夜は言う。



「俺はお前を倒す。依存はねえな」



 月夜鴉を男の胸に突きつける。



「ひいいっ!!!!!」



「残念な事に」




 柄にかけた右手に力を込める。




「俺はお前が思っているほど優しくないらしい」




 月夜鴉が男の体を貫く。
















「なんで」


 周囲にかけた結界の見直しに周りを奔っていた(ひびき)は、思わずそう声を上げた。


「なんで貴方が此処にいらっしゃるのですか」



 響が向かっている相手は、黙って微笑み、右手を響に向け、


                  「霧掛け」


 と、術を出した。



 響はその場に倒れこんだ。



 影はただ微笑む。




































如何でしたか。切り裂き男よ、ご愁傷様。最後はブザマにも程があるって程の醜態を演じてくれました。

次回はアザミの生死の行方と、あとはちょっとしたお話。

誤字・脱字、英語の間違い、矛盾点、ご感想、辛辣なお言葉、お待ちしております!


 あと、もういっちょ挿絵。クリスマス男子組。

挿絵(By みてみん)

ケーキ食ってんのが響、奥のがアザミ、怒ってんのがシモンで、鳥食ってんのが竜夜です。

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