Requiem Of Reunion Part 7 ≪Thing Not Done≫
サブタイは「再会の鎮魂歌7≪してはいけない事≫」です。
今回はちょっとばかし長い。シモンとアザミは一応決着(?)が着いたらしい。
それではどうぞ!!
闇に轟く 獣の声
闇を切り裂く 一振りの刀
「なんだ!?」
女の悲鳴を聞いて、シモンは思わず下を向く。
「おいおい、余所見とは余裕だな!!」
すかさず薊がシモンの右頬を拳で殴る。
「・・・・・っ!!!」
吹っ飛びそうになるが、アザミの紫色の上着を掴み、踏ん張る。
「・・・ふう、てか、誰だよアレ。お前の知り合い?」
アザミが下を指差す。その先には、切り裂き男のアレニエによって捕らえられた翠子の姿があった。
「答える義理はねえな」
シモンはアレスを持った左手でアザミの喉元を狙って突く。
アザミは右に避け、蹴りの体勢をとる。
瞬時にシモンは左手を戻し、さらに突く。今度は眼を狙った。
アザミは体を下に沈め、宙に右手をつく。
その手をと左足を支えにして、右足を上に上げ、アレスの柄に向かって蹴りを入れる。
シモンは一旦レイピアから手を離し、上に投げる。
アザミの脚が目標を失い、シモンはその脚を右手で掴む。
落ちてきたレイピアを左手で掴み、脚を離さずにアザミ目掛けて突く。
「鬼宿!!」
アザミがついていた右手をシモンに向け、砲撃を加える。
「!!」
瞬時にシモンは距離をとる。
その隙を縫って、響が術を出そうとした。
「手を出すな!!!!!!」
シモンは響にむかって手を向ける。
「しかし・・・」
「お前は結界の確認に向かえ。あの女が入ったって事は、他にこの結界の中に人間が入ってるかも知れねえ」
多少不満そうにしながらも、響は素直に従い、下に下りた。
「ケケケケケ・・・」
アザミが笑う。何が可笑しいか分からない。
「何が可笑しい」
耐えかねて、シモンが聞いた。
「お前の弱点みーっけ」
アザミがシモンを指差す。
「・・・・」
シモンが眉をひそめる。
「お前のその刀、レイピアだな」
アレスを指差す。
「だったらどうなんだ」
「それさえ確認できりゃいい」
言うや否や、アザミはシモンに近づき、
「翼星」
と、言った。
すると、アザミの手から光が差し、刀の形となった。
「いくぜえええええええええええっ!!!!!」
シモンに向かって正面から斬りかかる。
シモンはアレスで防ぐより他に無い。
「ケケッ!!」
アザミが笑う。
「レイピアは突きが基本の武器!!その刀身の細さ故、普通に斬ると折れちまったりするからなぁ!!」
言いながらアザミは、手から出る光の束に更に力を加える。
「くそっ・・・、なめるな!!!!」
シモンはアザミの膝を蹴り、二、三メートル距離をとる。
「・・・馬鹿かテメエ。そんな事、使ってるこっちも、太古の使い手も重々承知さ。だからこそ、俺達はこれを実戦で使う事は少なく、決闘で使っていた」
シモンは呼吸を整える。
アザミはシモンに突かせまいと、距離を縮めない。
「・・・しかし、戦闘に決闘だのなんだの言ってられねえからな。このアレスも色々進化してるんだぜ」
シモンはアレスの刀身をなでる。
「師匠にまだ許可取ってないんで、使いたくなかったんだがな。ここまでアレスの事、虚仮にされると使うしかねえだろ」
「竜 騎 剣」
シモンの右手に脇差ほどの短剣が現れた。
「・・・んだ、それ」
言いながらアザミは、背中に冷や汗が流れるのを感じていた。
なぜなら、その短剣が現れた瞬間、シモンの霊気、アレスの霊気までも、段違いに強くなっていたからだ。
「竜騎剣。俺のアレスの対となっている短剣だ。・・・教えてやるぜ、俺のアレスが他のレイピアと違うところ・・・・・・・」
短剣を振る。
「お前がそれまで、生きていられたらな」
と、シモンは消えた。
そして現れた。
アザミの目の前に。
「っな!!!!」
アザミは咄嗟に光の束を構える。
安心しろ、こいつは斬りかかってこない。突くだけだ。
そう言い聞かし、アレスの切っ先にのみ集中する。
「違う」
シモンは一言、そういった。
そして、
斬り付けた。アレスで。
「・・・・・なんで・・・」
肩から腹にかけて深い一撃を負ったアザミは、掠れる声で聞く。
シモンは答えない。
「自刃しなさい」
切り裂き男の声が、竜夜の耳に届く。
「なに・・・・・・」
「その刃で、自らを突き刺せ!!!!」
強い口調で言う。
「・・・・じゃないと、また貴方の大切な人が死にますよ?」
斧を、翠子の喉元に突きつける。ぐったりとした翠子の顔が、斧に映った。
「てめえ・・・」
月夜鴉を握り締める。
「ホラホラ、早く!この女を殺したら、次は上にいる銀髪の男達ですよ!?」
アザミと対峙しているシモン達を八本の脚の一つで示す。
「・・・・・・・・・」
竜夜は月夜鴉をゆっくりと自分の喉元に向ける。
そういえば、兄のために自刃した弟の話を読んだ、等と下らないことを思い出してしまう。
「そうそう。それで良いんですよ。さあ、屈辱にまみれながら死になさい!!!」
切り裂き男は恍惚な顔をして言う。
「・・・・・・・・いや、俺は死なない」
竜夜は妙に良く通る声でそう言う。
「何ですって?」
「俺は死なない」
確信を持った口調でそう言う。
切り裂き男は状況が理解できない。
「天 元・破 狂・紅 時 雨!!!!!!」
竜夜は地面に向かって衝撃波である天元、
切り裂き男に向かって、これも衝撃波の破狂、
切り裂き男の脚に向かって四神呪法の紅時雨を放った。
「・・・・・・・・・・・っ!!」
足元は崩れ、前方と後方から攻撃を受け、切り裂き男は声にならない叫び声をあげる。
竜夜は翠子をつかまえている脚を斬り、左脇に抱える。
しかし、切り裂き男の残っている脚が竜夜を襲おうとする。
「仙 宮 寺、竜 夜あああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
脚の先についた爪が鋭く光る。
「陰術、破狂!!」
切り裂き男の背後から衝撃波が食らわされる。
「な・・・っ!!」
「若様、ご無事ですか!?」
響が駆け寄る。先程の技は、響のものである。
「響、有難う。ただ、頼む。これからは俺の戦いだ。・・・手を出さないでくれ」
響きは一瞬反論しようとしたが、竜夜の眼を見て思い留まる。
「・・・・はい・・・」
切り裂き男は悶え苦しんでいる。
「くそっ、くそっ、くそおおおおおお!!!!!!!!!!!!!」
最早雄叫びにも近い声を上げている。
「こっからだ、切り裂き男。・・・・・テメエは一番やっちゃいけねえことをしたよ」
月が、輝き始める。
如何でしたか。おそらく次回辺りで「再会の鎮魂歌」シリーズは終わりになるのではないでしょうか。
今回は頑張ってカラーの挿絵も入れてみました。よろしければそのご感想も下さい。
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