再会の鎮魂歌 6 ≪再びの屈辱≫
翠子が来た!だけど今回翠子は災難にあっってあって遭いまくる回です!
受難ナンバーワンの翠子サンの今回のご活躍(?)をどうぞ!
「あ、ノートがない。どうしよう・・・・」
神部 翠子は苦悩していた。
国語のノートがちょうど切れた。宿題が出来ない。
明日、学校の行きに買う事も出来たが、宿題という最大の難関があった。
「あーあ、仕方ない、コンビニに買いに行こうか・・・」
部屋着から着替え、台所で片付けをしている母の元に向かう。
「コンビニにノート買いに行ってくるね。直ぐ帰るから」
「気をつけなさいよ」
靴を履き、外に出る。
遠くからパトカーの音がしたが、直ぐに聞こえなくなった。
こんなに夜遅くに外に出るのは、気乗りしない。
短くなった髪の毛を触る。
また、あの人に襲われたらどうしよう。
昔、お父さんが買ってきた防犯ブザーを、翠子はお守りのように握っていた。
心配されるから、あの夜の事は誰にも言ってない。
だけど怖い。
「リューヤ君・・・・」
ぽつりと、呟いた。
ガガアアアアン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
激しい爆音が、上空から聞こえてきた。
「え、何、花火・・・・?」
反射で、上を見上げる。
もうもうと立ち上がる、煙。初めに見えたのはそれだけだった。
だけど、次に見えたのは大きな白い物体と、それに覆いかぶされている人影。その人に対峙している人影ともう一つの人影。計三人の人影が、翠子の視界に入ってきた。
「え・・・・・、う、浮いて、る?」
ガクガクと膝が震える。力が抜け、脚からストン、と崩れこんだ。
すると、直ぐ傍の空き地の方から、またドドオオオオン、という音が聞こえた。
「今度はっ、何・・・?」
恐る恐る音がした方向を見やる。
すると、見覚えのある着物と、長い亜麻色の髪の毛。
その人が、爆風と共に空き地から飛び出してきた。
手にした刀が、妙に眼に残る。
「あっ、あの人・・・・・」
思わず声を上げる。
私が、変な女の人に襲われたとき、助けてくれた・・・かもしれない人。
記憶は定かではない。
だけどあの着物と髪の毛は、はっきりと覚えている。
「!?」
私の声を聞いて、その人がこっちを見る。
ビクッと、肩がすくむ。
「・・・・・」
ぼそり、とその人は何かを呟いたが、翠子にはよく聞こえなかった。
「おんやぁ?翠子さんではないですかぁ。お久しぶりですう。その髪、似合ってますよ」
蛍光灯で影が出来、その声の主はよく見えない。だけど、おかしい。
「何、あの影・・・・・・」
その人の体の半分は塀で隠れていた。
だけど、その影は見えた。
不可解な影。
背中から、八本の脚のようなものが生えている。
「ふふふ、三度目ですね。お会いするのは」
「どういうことだ・・・」
竜夜は状況が理解できないいた。
なぜ、神部がここにいるのか。
竜夜達は、戦時には常に周りに結界を張っていた。
今回も、寧子を響が連れ去った後、しっかりと二重の結界を張っておいた。
一般人にはこの空間は意識の中に入らない。
なのに、なぜ。
切り裂き男が何かを言っている。
「ふふふ、三度目ですね、お会いするのは」
その言葉で意識が現実に戻る。
「どういうことだ」
キッと男を睨みつける。
「おやおや、怖い顔。気になりませんでしたか?彼女の髪の毛」
切り裂き男が座り込んでいる翠子を指差す。
「あれ、私が切ったんですよ」
「・・・・・・!」
何か有るとは思っていた。
でも、吉原雀に言われるまでは、気づきもしなかった。
そして思い出した。翠子が、髪の長いのを大切に思っていたことを。
「て・・・っめえ!!!!」
刀を構え、全力で斬り付ける。
「響!!!!!!!」
上空で戦っている響を呼ぶ。
「はっ!!」
「ここに、視覚防壁と防音壁の結界は張ってあるよな!?」
響が周りを見渡す。
「はい、確かに!私が、その結界の中の住民達を眠らせておきました!」
「・・・っ、だよな!!」
今、神部には俺達の姿が見えているのか?
それが、竜夜が最も気になっている事だった。
願わくば、見えていないでほしい。
だが、座り込んでいる翠子の顔は、この戦場を目の当たりにしているとしか思えない顔をしていた。
「ちっ!!」
一旦、距離を置く。
「ふふ、あの時と同じ状況にしてあげましょう」
男が不敵な笑みを浮かべる。
すると、ふっと男の姿が消え、代わりに聞こえたのは
「きゃあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
翠子の悲鳴。
左の四本の脚で翠子の体を羽交い絞めにし、白い斧を翠子の喉元につける。
「五月蝿いですよ。黙りなさい」
翠子の体をさらに締め付ける。
「てめえ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
竜夜が叫ぶ。
「ふふ、六年前と同じですね・・・・。あなたはまた、目の前で人が死ぬのを傍観するだけだ」
斧が翠子の喉に食い込む。血が、二、三滴落ちる。
「ろ、六年前・・・?」
掠れた声で翠子が言う。
「五月蝿いって言ってるでしょう」
さらに体を締め付ける。
「うあっ!!!!!」
悲鳴をあげ、翠子の体がぐったりした。
「神・・・翠子!!!!!!!!!」
竜夜の顔が青ざめる。
「助けたいなら、条件です。取引ですよ。対価です」
ひひひひひ、と品のない笑い方をし、男が人差し指を立てる。
「自刃しなさい」
竜夜を指差す。
「その刀で!!自らの体を貫け!!!!!!!」
月が、紅く染まる。
如何でしたか。挿絵を入れてみました。なんかもうベタ・・・な状況になってまいりました。
次回はパパッとシモン達の戦いを終わらせて、竜夜の戦いをやっちゃおう。
段々『再会の鎮魂歌』シリーズは佳境に差し掛かってきました。
その次は「月夜鴉」の謎について書いていけたら・・・と思っております。
誤字・脱字、矛盾点、感想、辛辣なお言葉など等、お待ちしております!!