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陰妖師  作者: スズメバチ
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Requiem Of Reunion Part 3 ≪Defend Everything≫

サブタイは『再会の鎮魂歌 3≪全てを護る≫』です。次回辺りの日本語タイトルになりそう。今回は新キャラも登場でやんややんや。では、どうぞ!!

 ドオンッ、という音で、曽根崎(そねざき) 一平(いっぺい)は心地よいうたた寝から眼を覚ました。

「ふむ・・・ふむぅ・・・、なんだあ?花火か?喧嘩か?ったく、喧嘩なら周りに迷惑かけないようにしろよな」

 寝ぼけ眼をこすり、伸びをする。肩がバキバキとなる。

「やべっ、宿題してねえや。雛川(ひながわ)、怒るとこえーんだよな。やっとこ」

 午後九時半過ぎ、ようやく宿題に取り掛かる。鞄からノートとテキストを取り出す。


「兄ちゃん!!今の見た!?蒼い雷だったよ、ほら、向こうの方に落ちたんだ!!」

弟がバタバタと部屋に駆け込んでくる。窓を指差し、新しい元素を発見した科学者のような顔で。

「ああ!?馬鹿、そういうのは青白いって言うんだ。語彙力の無いやつめ。さっ、知識力の無いガキンチョはとっとと寝ろ」

シャーペンで弟の顔を指差す。弟は、なんだよ、とぶつくさ言いながら部屋を出て行った。


「蒼い雷なんかあるかよ」






 蒼い雷が落ちた後には、ドッチボール球ほどの穴が開いていた。

「おお、怖い怖い。いきなり雷を落とすなんて、不躾にも程がありますね」

切り裂き男が、含み笑いをしながら言う。


「女に乱暴を働くような奴よりかはよっぽどマシだと思うがな」

シモンがレイピアを構えもって言う。柄を持った右手に左手をかける。

「心外ですねえ。あんな弱い娘をあんなにゆっくり相手してあげたんだ。むしろ感謝してくださいよ」

クスクス笑いながら男は余裕たっぷりに言う。

 竜夜(りゅうや)は依然として黙ったままだ。


「黙れ」

シモンが既に解放した後のアレスから冷たい霊気を発する。

「ほう、素晴らしい刀だ。貴方の意志の強さを感じさせる。銘はなんと言うのです?」

切り裂き男が顎に手を当てながら言う。

「お前に言う義理ねえよ」

冷たく言い放つ。

「つれないですねえ。さっきの女の子は構ってくれましたけどね」

ニヤニヤと蛞蝓のような唇を動かす。気色が悪い。

「ちっ、埒があかねえな」

シモンはアレスを握り締める。



「さっさと終わらせるぜ」




 と、シモンの姿が消えた。

 立っていた場所には、めり込んだ土の跡。

 

 男の頭上にシモンの足が見えた。

 体を一回転させ、レイピアを男目掛けて振り下ろす。

「しっ」

 短く息を吐き、力を込める。


 が、男はそれを左に避けた。


 男の顔とシモンの顔が同位置に来た瞬間、

「見切ってるよ」

 と、シモンが左手を男に向かって開く。



「水に満ちる聖霊達よ・冷たき水底から姿を現せ!!『雄硬骨(ハイル・ブット)!!』 


 と、シモンの左手から大量の水が溢れ出た。


「ぶっ!!!」


 男は息が出来ず、うめき声を上げる。顔を護ろうと腕を回すが、激しい水圧の中でもがくばかりだ。



 シモンが宙をけり、竜夜の傍に降り立つ。

 シモンが着地した瞬間、今度は竜夜が攻撃にでる。



 数瞬の大洪水を受け、大量の水を飲み込んだ男に向かって、さらに術を仕掛ける。


天元(てんげん)


 と、男が真後ろに倒れこんだ。まるで、前面から鉄球を投げつけられたように。


 シモンが左、竜夜が右に降り立ち、双方武器を構える。


「シモン」

「ああ」



 呼吸もままならならず、さらに前面から激しい衝撃を受けた男は、何とか体勢を立て直そうと手をつき、立ち上がろうとするが、脚がすべり、また尻餅をつく。

 そんな男に向かって、竜夜とシモンは両側から攻めた。


「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」


 

 男の両脇腹に月夜鴉(つくよがらす)とアレスが刺さろうとした刹那、



「ハッ、ブザマだなぁ!!」


 という上空からの声と共に、

 男の姿が消えた。



 竜夜とシモンは一瞬あっけにとられ、

 しかしすぐに考えを張り巡らせた。


 ①、男はどこに行ったのか

 ②、あの声は何だったのか

 ③、今、すべき事は何か




 それら全てを満たす答えは一つ、上を見上げる事。




 靴の先から水滴が滴り落ちる切り裂き男の首を、猫のように捕まえながら、黒髪の男が宙に浮かんでいた。



「だから言ったじゃねえか。お前一人でやれんのかって。案の定、ブザマな負け方しやがってよぉ」

ケタケタと笑いながら、黒髪の男は言う。男は後ろで一本の太い三つ編みに結った長い黒髪を風になびかせ、意地の悪い笑みを浮かべた。


 「なんだ・・・あいつ・・・」

 その黒髪の男は、首輪のようなものを首に巻き、やや丈の短いジャンパーにTシャツ、裾がギャザータイプになったズボンにスニーカーという、いかにも若者らしい格好をした男だった。どう多く見積もっても、二十歳を過ぎているようには見えない。



 「まだ負けていませんよ」

 切り裂き男が言い返す。喧嘩を咎められた子供が使う言い訳のようにも聞こえた。


「お前、あんな蟻っコロみたいな奴らにやられてんじゃん。で、やれんのか、やれないのか?やれないんだったら今ここでお前は殺す。やれるんだったら、さっさとあいつらのして来い」


 切り裂き男の顔色が変わる。

「待ってください、(アザミ)さん!見たでしょ今の!二対一なんてズルいんですよ、不公平ですよ。アザミさんが加勢してくれたら、楽勝なんですが」


 男が媚びるような声で言う。それが、竜夜とシモンの気分をいっそう悪くさせる。

 アザミと呼ばれた男もそう感じたのか、

「やだ。お前なんかのためになんで俺が手を煩わせる必要がある?出来なきゃ出来なかったで、勝手に果てろ」

 と、冷たく言い放つ。


 


 切り裂き男が、よりやつれた顔で地面に降り立つ。

 先程までの余裕はどこに行ったのだ、と呆れる。



 「竜夜・・・・・・」

 シモンがボソッと話しかける。

「上の男は引き受けた。・・・・お前は、仇を討つことに専念しろ」


 「・・・ああ」


 シモンが勢い良く飛び、アザミの前に現れる。

 術で自分の周りの重力を調節する。


 

「あれ、歯向かって来るんだ」

 ポケットからガムを取り出し、口に入れながらアザミは言う。




 切り裂き男と対峙している竜夜の脳裏に、六年前の記憶が蘇る。

「やっと・・・仇が取れる」

再び斧を構えた切り裂き男に向かって、竜夜は眼をつけた。


「いくぜ」















如何でしたか。アザミの年齢設定は竜夜やシモンよりちょい上くらい。では、今回出てきた術と前回出てきた術のおさらい。


『竜磨』・・・四神呪法のうちの一つ。海、および天空を支配。姿は龍。竜夜は竜磨と呼び、響はタツさんと呼ぶ。


『天元』・・・衝撃波を与える。竜夜は鬼ごっこをしている最中、よく近づいてきた友達をこれで突き飛ばしました。


『ハイル・ブット』・・・シモンの技。水が溢れ出る。ハイル・ブットとは、ドイツ語で「オヒョウ」って意味。



 次回の更新は未定。誤字・脱字、英語の間違い、矛盾点、感想、辛辣なお言葉、なんでもかんでもお待ちしております!

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