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陰妖師  作者: スズメバチ
12/51

Requiem Of Reunion Part 1

サブタイの意味は「再会の鎮魂歌 1」です。

サブタイからも判るように、今回から切り裂き男との再戦が予定されております。

では、どうぞ!


 羽衣(はごろも)町六丁目、椿沢(つばきざわ)

 神部(かんべ) 翠子(みどりこ)の家があるこの地域に向かって、寧子(ねこ)は走っていた。

「あ~っ、もう!遠い!遠い!何もかもが遠い!!若旦那との距離もおおおおお!!!」

制服姿で疾走する寧子の後ろに、一つの影。



 寧子は、それに気付かない。





 肩まで短くなった髪を鏡で見ながら、翠子は溜め息をついた。

 

 お母さんにも心配された。

 雛川(ひながわ)先生にも。


 ・・・・リューヤ君にも・・・・。



 三日前。



 おかしいな、と思ったのは、足音だった。


 学校からの帰り道、いつに無く曇天で、春の陽気とは言い難かった。

 どんどん暗くなって、夕焼けなんてどこにも無い。



 心細くなって、早足で歩き始めた。


 そうしたら、私の足音とちょっとずれて、後ろから足音が聞こえて、また私に同調した。


 おかしいな、って思って、また早く歩いた。

 

 そしたらまた、ちょっとずれて、同調した。


 怖くて怖くて、走った。


 そしたら足音は、今度は同調せず、一気に大きくなって、私に近づいてきた。


 髪の毛を掴まれて、足だけが先に行く。

 

 と、思ったら、急に引っ張る力が弱まって、頭が軽くなった。


 よろけて、地面に手をついた。


 短くなった髪の毛が、耳にかかる。


 誰かが、耳に顔を近づけて、言った。

 

「またね・・・・・」



 怖い。怖い、怖い。


 私、なんかしたかな。誰かに、恨まれる事したのかな。怖いよ。

「リューヤ君・・・・・・・・・」



 月は、雲に隠れる。


 


「今日・・・・・・・・・?」

 吉原雀(ヨシワラスズメ)の家のリューヤは、呆然と呟いた。

「そう。神部 翠子。あの子、髪、切ってたでしょ。あれさあ、切られたのよ、切り裂き男に」

スズメが耳をかきながら言う。

「なんで・・・なんで一番にその事を教えてくれなかったんだ!切り裂き男の情報云々より、大切だろ!翠子の元には寧子もいるし、危ない・・・・」

シモン、(ひびき)を見る。

「っ、そうですぞ!スズメ殿!優先順位というものがあります!何故先にその事を教えてくれなかった!!!!!!!」

響が声を荒げる。


「―――――――――だって、あんた達が聞いたのは、切り裂き男(・・・・・)の情報でしょ?」

スズメは事も無げに真っ直ぐリューヤ達を見た。


「え・・・・・」

「この情報はあくまでも、切り裂き男に狙われた神部 翠子の情報よ」

しらっと、まるで当たり前のように、スズメは言う。

「私は求められた情報しか売らない・・・・。当たり前でしょう?」


 リューヤも響も、何も答えられなかった。

「リューヤ、無駄だぜ。それがプロってもんだ・・・。それはスズメ自身の契約でもあり、闇の世界の常識でもある・・・・・」

シモンが椅子から立ち上がり、リューヤの肩に手をかける。

「それより今やるべき事は、その神部って女と、馬鹿ネコを助けに行くことだろ」


 拳を握り締める。

「ああ・・・・・・・!!」


 御所車(ごしょぐるま)の車輪が浮く。

「・・・世話になったね、スズメ」

御所車に乗り込む際、リューヤがスズメに言った。

「思っても無い事言わなくていいわよお。料金は後払いで良いから」

ひらひらと手を振る。夜目に白く生える手だった。

「・・・・行くぞ・・・」



 御所車の車輪が地面から離れ、車体が浮く。

 紫雲と共に空を駆け抜ける。



「ゆるさねえぞ・・・・・・」

ザワザワと、リューヤの体から妖気が溢れ出す。

「護るって、決めたんだ・・・・・」



 眼が、紅くなる。






「・・・・・誰・・よ、あんた・・・・っ!!!」

 息が上がる。

 体力を殺がれすぎた。



 翠子の家の程近くに、寧子はいた。



「おんやあ・・・、忘れてしまうとはツレないですねぇ・・・。私ですよ、私」

黒と白の縞模様のコート。揃えた様な、同じ柄の帽子。真っ白な手袋の先に、柄も刃も真っ白な大きな斧。顔は、やつれた感じ。眼は、氷山の欠片のような、冷たい輝き。

 対峙しているのは、そんな男。


「あんたみたいな気味悪い男に知り合いなんて居ないわ」

眼に入りそうになる汗をぬぐい、隣家の屋根の上に乗る。


死出(しで)(やま)!!!!」

靴の先から無数の針を、男に向かって放つ。


「おお、怖い」

上空に飛ぶ。空と闇の境界線さえあやふやな、真っ黒な背景。



「へえ、制靴でもその機能はあるんですね。参考になりましたっと」

とん、と寧子の後ろに降り立つ。


「ふっ・・・・!!」

振り向きざまに一蹴。手応え無し。


「はい、残念」

寧子の肩の上に手が置かれる。

 グン、と後ろに力をかけられ、屋根の上から落ちる。


「何をっ!」

くるん、と回転し、地面に降り立った瞬間、もう一度屋根の上にのぼる。


「はあああああああ!!」

靴の先から刃を出したまま、男の顔目掛けて蹴る。


「甘い」

その足を寸前で掴み、屋根の上に投げつける。


「けふっ・・・・!!」

うめき声を上げる。


「さあ・・・いつ会えるでしょうねえ・・・貴方のご主人に」



 月は、まだ見えない。












如何でしたか。翠子の髪の毛が短くなったのにはこういう理由があったのでした。

次回から本格的なバトル突入。響きの出番はあるのか!

あと、シモンも活躍予定。

誤字・脱字・矛盾点・英語の間違い・感想などなど、首を長くしてお待ちしております!よろしくお願いします!

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