Eyes Where Flame Lit Up
週末をはさんでまだテスト中。
・・・どーでもいいですね。
サブタイは『焔の点いた眼』。何のことかは本文読んだらまんま書いてあるんで、すぐわかると思います。
では、どうぞ!
二度と
その名を
聞くことは無いと
思ってた
「切り裂き男・・・・・」
竜夜の脳裏に六年前のあの記憶がよみがえる。
目の前で殺された轆轤首。
黒い服に包まれた包帯男。
自分を護って倒れた寧子と響。
血。涙。刀。決意。
自分が『陰妖師』になった日。
「・・・ああ。確かな情報だ。雀のところのだからな、信用しても良いと思うぜ」
シモンがレイピアを鞘に納めて言う。
「・・・竜夜様・・・」
寧子がシモンの腕の中から言う。
「っ、あの下郎!今度は翠子君を!?シモン殿!奴の所在は!?雀サンから、買ったのではないのですか!?」
地上から、響が言う。シモンは響の傍に降り立ち、寧子を放す。
「それが、雀でも判ってねえらしいんだ。どうも、奴のバックに強力なのがついたらしい。容易に近づけないってことだ」
先ほどの技で葉が焼け焦げた木にもたれ掛かり、竜夜に向かってシモンが言った。
「・・・・・・・」
竜夜は答えない。正確には、何を言ったら良いのか分からなかった。
「竜夜様。とりあえず、雀さんのところに行きましょう。情報源は明かせずとも、何か分かる事があるかもしれません」
寧子が手を握り締めながら言った。竜夜を元気付けようと一生懸命である。
「・・・それが良いかもな。俺も、当分日本に居る予定だし」
シモンがさらっと言う。
「はい?」
寧子がおおきな目をさらに大きくして言う。願わくば、聞き間違いでありますように。
「お前弱い上に耳も悪いのか。当分この国に居るって言ってんの。最近、こっちの世界が騒がしいんでな」
シモンが哀れむような目で見てくる。響と寧子は硬直。
「い――――――――――――や――――――――――――っ!!!!!です!シモン様は・・・そのう・・・そう!ドイツに本家をもたれているではありませんか!その大切なお役目をはたさずにここに居るなんて、駄目なのではないでしょうか!」
「その通り!!レイチェル殿がお可哀想です!特別顧問秘書としてのお役目さえ大変でいらっしゃるのに、その上正統後継者のシモン様の名代まで務めるとなると、ご心労は計り知れませんぞ!」
響と寧子が必死にまくし立てる。
「レイチェルは納得させた。アメリカの師匠も承認されてる。ついでに言うと、お前らのところの白竜殿もだ。何か問題でも?」
「だからって・・・!」
寧子と響は何とかしてシモンを帰国させようと必死である。それもそのはず。小学校一年から二年までの約一年間、竜夜・寧子・響・シモンは仙宮寺の家で共に暮らしていた。
シモンの本家である家のその時の当主でありシモンの師匠・アシュリーと、竜夜の祖父・白竜は昔からの親友であり、古くからお互いの家の親交も深かった・・・のだが・・・・・。
「シモン様はイタズラ好きでいらっしゃいますから!ああああ、思い出したくない悪夢!なんで朝起きたらカエルで部屋中が埋め尽くされているのですか!死ぬかと思いました!」
寧子が当時の恐怖を語る。しゃがみ込み、膝を抱え、ガクガク震えている。
「いや、猫ってそういうの好きかなって思って。有り難く思えよ」
さっくりシモンは切り返す。
「俺だって!なんか気付いたら顔が閣下みたいになってたし、朝起きたら何故か烏丸山の山頂付近だった!」
響が堰が切れたようにシモンに突っかかる。
「お前、トップに立ちたいとか言ってたじゃん。よかったな。トップに立つだけじゃなく、寝転べたんだぞ」
返すのも腹立つくらいの屁理屈をシモンが無表情に言い放つ。
「とにかく!我らは反対です、竜夜様!シモン様には、お帰りいただきましょう!」
寧子と響が竜夜に詰め寄る。
じっと目をつぶっていた竜夜が目を開け、じっと二人を見据える。
「・・・言いたい事は、それだけか」
ビクッと、二人が肩をすくめる。
「あの野郎は・・・俺の敵だぜ」
地面に降り、月夜鴉をピュッと振る。むき出しのその刀を前に出し、寧子と響の顔が映る。
「あいつはお前達と轆轤首を傷つけて・・・翠子に、怖い目させた」
刀身に映った自分の眼を見て、竜夜が言う。
「倒さなきゃいけない。その為に、シモンの力はあっても良いんじゃねえか?」
竜夜がシモンを見つめる。
シモンは真っ直ぐその眼を見た。
「・・・やっと、生きた眼ぇしやがったな」
にっと笑ってシモンが言う。寧子と響を押しのけ、竜夜に近づく。
「初め会ったときは、本気で大丈夫か、とか思ってみたりもしたんだが・・・。何があったかは知らねえし、知りたいとも思わない。だが、この分だと大丈夫そうだな」
人差し指を立て、竜夜の紅い眼を指す。
「焔の点いた眼、してる」
「ハッ・・・」
その手を振り払い、
「カッコつけた事、言ってんじゃねえよ」
竜夜がシモンに言った。
「かもな」
シモンがにっかり笑う。
「~~~~~~~~~っ」
寧子はまだ不満そうだ。
「竜夜様っ!早く雀さんの所に行きましょう!さ!早く!夕飯に間に合いませんよ!」
どんっと竜夜の背中を押す。
「これから雀のとこ行ってたらどっちにしろ間にあわねえだろ。式神飛ばして、連絡しとこう。あと、それから・・・」
竜夜が変化を解き、リューヤに戻る。
「寧子は翠子の護衛についてよ」
口調と声質が若干変わる。
「うえ・・・うえええええええ!?」
寧子が自分を指差し、声を上げる。
「頼むよ、寧子。響は・・・その・・・ただのストーカーみたいになっちゃうだろ?」
「若様ひどいっ!」
響の叫びは無視し、リューヤが寧子に頼む。
「う・・・ううう・・・判りましたぁ」
半分泣きかけで寧子が承諾する。
「じゃあ、行こうか」
翠子の家に向かった寧子を見送り、リューヤが言った。
「情報屋・・・吉原 雀の所に!」
如何でしたか。今回は響の内容も少しは入れられたのではないでしょうか。
話の都合上、新キャラが続々出てきます。落ち着く感じになるのは次次次々回くらい。適当なんで、そこんとこは悪しからず。
次回は寧子はほとんど登場しない予定。代わりにおねいさんが出てきます。
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