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32 講習


翌朝。



「ユウト、早く! ギルド行こ!」


リナが元気に扉を叩く。こいつ、昨日あれだけ走ったのに回復が早すぎる。


「朝から走るなよ」


「走らないよ! 今日は講習だもん!」


「分かってるならよろしい」



俺は身支度を整えて、冒険者証を胸元にしまい込んだ。

金属板がひんやりする。これが冒険者の重みか。


ギルドに向かう道すがら、露店の準備をしている人たちを横目に見る。

仕込み中の焼き台の香りが漂い、腹が鳴った。


講習が終わったらここにしよう。


そう心に言い聞かせる。





ギルドに入ると、昨日と同じ受付のお姉さんがいた。


「おはようございます。初期講習の受講で伺いました」


「はい。冒険者証を拝見します」


俺とリナが金属板を差し出すと、彼女は指で刻印をなぞって確認した。


「ユウト・アマギ様、リナ・エルドリック様。……では、奥の講習室へ。今日は監査官補佐が担当します」


監査官補佐。言葉だけで胃が引き締まる。


講習室は木造の広間で、長机が数列並んでいた。

壁には大きな掲示板があり、規約の要点が羊皮紙で貼られている。

文字がびっしり。圧がすごい。


20人ほど座れそうな席数があるが今回は俺たちだけのようだ。



その時、扉が開いた。



入ってきたのは、黒い外套を羽織った中年の男だった。体格は細身だが、目が鋭い。


「監査官のグレイブだ。本日は初期講習となる。重要な規約もあるので覚えておくように」



「まず、これを配る」


羊皮紙の小冊子が回ってきた。表紙にこうある。


《冒険者ギルド規約(抜粋)》


リナが開いた瞬間、顔をしかめた。


「文字が多い……」


「冒険者は戦うだけが仕事じゃない」


グレイブが淡々と言い、リナが「はい……」と小さくなる。珍しい光景だ。


有無を言わさず、説明を進めていく。

規約には、冒険者ランク、パーティ制度、罰則など

様々なことが詰め込まれている

メモをしながら頭に叩き込んでいく



「最後はダンジョンについてだ」


「ダンジョン!」

慣れない座学で元気がなかったリナがピンと背筋を伸ばす


表情を変えずにグレイブは話を続ける

「ダンジョンはその危険度に合わせてランク付けされている

1等級から4等級までの分類だ。いろんな呼び方がある。

数字で呼んだり、色で呼ぶこともある。数字が上がるごとに危険性が増す。

白域(I級)/黄域(II級)/赤域(III級)/黒域(IV級)」


色の呼び名が、やけに直感的で嫌だ。


「なお、ダンジョンはEランクの立入禁止。例外はI級入口周辺のみ。

 D以上の監督者同行。この辺りにI級ダンジョンはないので実質立ち入り禁止だ」


リナが不満そうに頬を膨らませた。


「えー! ダンジョン行けないの?」


「行けない。死ぬからだ」


「……Dになったら?」


「DならI級は可。II級は条件付き。C以上が一名以上。III級以上は不可」


(つまり、Cランクに上がらないとダンジョンに入れないのか)



「CからはIII級可、IV級は特別許可。B以上で条件付き。Aは全級可」


グレイブは最後に釘を刺した。


「補足条項。ダンジョン内の大規模魔術は禁止か許可制だ。

 遺体回収は最優先義務。理由はダンジョンの強度が増すからだ」


「強度が増すとはどういう意味ですか?」

疑問点を聞いてみる


「ダンジョンの特性は完全には解明されていないが、ダンジョン内の魔力濃度が高まると

より強い魔獣や魔物が発生し始める。一定以上の強さを超えると

昇格認定されダンジョンのランクが上がることになる」


「なるほど」


「魔力濃度が高まる要因としては、まず、そもそも魔力が集まりやすい地形ということ。

そして内部で魔法を多用すると、魔力が残留することで濃度が高まる。

また、冒険者や獣がダンジョン内で死ぬと、持っていた魔力がダンジョン内にとどまり濃度が上がる」


「わかりました」

初めて聞く知識を、メモに綴っていく。


講習の最後に、署名を求められた。


「規約を理解し、遵守することに同意する者は署名しろ」


俺は名前を書いた。

リナも渋々書いた。字が勢いで走っている。




講習室を出ると、リナが大きく息を吐いた。


「づがれだ……文字が多い……」

ふらふらと寄りかかってくる


「お前、走った時より疲れてないか」


「走るのは得意。読むのは苦手」



講習で聞いた内容を頭の中で復習する。


ランクEの依頼を5件受ければ昇格試験が受けられる。

Dランクで依頼を重ねて、Cランクへの昇格が出来れば

ダンジョンに好きに入れるという事か。



「ねえユウト。今日さ、依頼見ていこうよ。5回、さっさと終わらせよう」


「……だな」


「で、終わったら何か食べよー!」


「それが目的かよ」


「ご褒美は大事!」


「はいはい」


俺は笑って、掲示板の方へ歩いた。

冒険者としての最初の仕事その紙切れの中に、俺の帰り道がある気がした。


---


ユウトのメモ(規約要点)


* 登録:13歳以上。15歳は未成年枠で夜間・危険依頼に制限

* ランク:S/A/B/C/D/E。登録はE開始

* E→D:初期講習+E依頼5回達成+報告書+違反なしで昇格試験

* 報告義務:虚偽・隠匿は降格/除籍。ダンジョンは時間・魔獣の種類・他異常現象を必ず記録

* 維持:90日依頼未受託=休眠、180日=降格審査、1年=除籍 依頼受託不可なら理由を事前に報告

* ダンジョン:Eは原則禁止(白域入口のみ監督同行で例外)

* 大規模魔術:原則禁止/許可制

* 遺体回収:最優先




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