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異世界、貴女と笑顔でさよならを  作者: 焼魚
4章:スメラギ家────2

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44話:夜明け

革命家は、大きく二種類に分類される。

能力者としての実力によって革命を行う者、そして社会的地位上の革命家。


前者は戦争での活躍から革命家としての地位を得たり、自ら名乗りをあげ、力による恐怖の支配で革命家となったりする者。


後者は政治的活躍からそう呼ばれている者、もしくは名乗りをあげた者。日本で言う政治家にあたる。


前者の例としてはアルガヨ革命家ジョウ、ディーチ、後者の例としてはこのコロシアムに集う革命家たちやルータナ革命家のフウガさんなどが挙げられる。


転生者同士での殺し合いを行わせるのは、主に後者の革命家だ。つまり、さほど実力が備わっていない能力者。ヒビキくん、グロウドさん、リオナさんの三人がいれば、この程度の人数はどうにかなる。


ただ、問題なのは私。

功力を持続的に発動している以上、その間、並行したオーラの操作は疎かになる。無論、至速を用いたとしても。


だからこの状況で襲われなんてしたら────

「随分面白いことしてくれるじゃねぇか?」


背後から聞こえる男性の声。振り返り、私はその声の主を確認した。

全身から立ち上る途方もないオーラ。人を殺すことを何とも思わないような、冷徹な眼差し。私はその顔に、見覚えがあった。


「革命家連合の『ブレイガン・ジューラ』さんじゃないですか。はじめまして」


西側大陸革命家の一人ブレイガン・ジューラ。アタラシ・フウマによって発足された革命家連合に所属する十名のうちの一人であり、ここ数日は革命家としての活動の一切を中断していた。


政府軍の中でも一目置かれるほどの実力者である彼が、今目の前にいる。私の頭には焦燥感が駆け巡った。理由は言わずもがなだ。


今ここで彼と遭遇したのはマズった。この巨大なコロシアムを火の渦全体で消滅させるまで、少なくともあと数分はかかる。それまで会話で時間を潰すのは極めて難しい。


「お前、確かヘビの件で活躍したアキサだよな? 俺と手合わせしねぇか?」

「申し訳ないんですけど、今忙しいんですよ。また今度にしません?」

「そうはいかねぇな」


彼はオーラを激しく立ち上らせる。どうやら、戦闘を避けることはできないようだ。

功力の解除が頭に過った時、上空から一人の男が降ってきた。


「マイさん。あんたは功力の維持に集中してくれ」


ヒビキくんだ。私のピンチを察知して、駆けつけてくれたのだ。

「……感謝するよ」


私は人のいなくなった観客席の方へと飛び、身の安全を確保すると同時に彼ら二人の戦闘を見守ることにした。耳を済ませ、彼らの会話を聞く。


「おいおい。邪魔すんなよ。せっかくの獲物だったんだぜ?」

「……悪いが、あの人とは今協力関係でね。邪魔してんのはあんただ」

「ならば、俺と手を組まないか?」


革命家ブレイガンからの申し出。対しヒビキくんは風を全身に纏って返答した。

「男なら、約束は破れねぇよな。相手が女性ならなおさらだ」

「交渉決裂、だな」


瞬間、両者のオーラが高まる。ヒビキくんのオーラ量は目を見張るものであったが、それ以上にブレイガンのオーラ量が異次元であった。だが、ヒビキくんが臆することはなかった。


途端、戦闘が開始された。


ヒビキくんが地面を削るように風の旋風をブレイガンへと飛ばす。ブレイガンはそれを上回る威力の水の旋風を発動して打ち消し、ヒビキくんを襲う。


水の旋風を盾にオーラを込めることによって受け流し、盾をブレイガンに投げ飛ばす。彼はそれを上方向に蹴り飛ばし、その間にヒビキくんは指の先に凝縮させたオーラを銃弾のようにして数発飛ばした。


直線的な運動をするそれを避けることは容易く、寧ろ反撃することさえ可能。ブレイガンは水を刃状に固め、ヒビキくんの頭と胸目掛けて飛ばした。


ヒビキくんはそれを能力によって掻き消そうとしたが、ブレイガンの能力の威力を見て、それは不可能だと判断したようだ。刃と刃の間を宙に飛んで通過し、そのまま空中で紫電を放った。


紫電の到達よりも早い段階で、ブレイガンは功力の発動に至る。

自身の前に巨大な水の波を構築。あまりにも大きいそれを避けることは難しい。そこでヒビキくんが取った行動は、私とブレイガンの両者を驚かせるものだった。


両目を閉じ、腰を低くして、抜刀術のような構えをする。

すると、彼の左手を中心としてみるみる内に雷の刀が形成されていく。ヒビキくんはその刀を握り、一気に引き抜いた。


瞬く間、いやそれ以上に極わずかな時の中で彼は波に対して十数回の斬撃を入れる。水は当たってもダメージが無いほどに切り刻まれ、その威力を失った。


刀……恐らく功力なのだろうが、どちらかと言えば極限まで功力に近い能力のように私には見える。だからこそ、威力は本来の出力よりは劣るが、至速による脳への負荷が最小に抑えられている。


多分、私にはあれを再現することができない。つまりは、単純なセンス。その点においては、ブレイガンや私は彼に遥かに劣っているということ。ヒビキくんの勝ち目は十分にある。


ただ、一つだけ懸念点がある。

ブレイガンのオーラ量だ。彼は計り知れない膨大なオーラ量を有している。そして恐らく、まだ他にも功力を隠し持っているはずだ。そうでなければ、革命家などという肩書は有していないはずだ。


「やるな。転生者のわりには」

「あんたもな。そんなオーラの量、初めて見たぜ」


ヒビキくんは私の方をちらりと見て、その後で私が発動している巨大な火の渦を見た。渦は既に観客席の半分程度を飲み込んでいる。

「……さあて、そろそろ時間みたいだ。さっさと決着をつけよう」


少し沈黙を挟んだ後で、ブレイガンはヒビキくんへと話し始める。

「少し前に革命家連合が発足しただろ? 俺はそこに所属しているんだが、あそこはどうも居心地が悪くてな。息抜きとしてここに来たんだ。そしたらこんなことに巻き込まれた」

「…………」

「正直、腹が立って仕方ない。コロシアムがこんなことになった以上、再建には途方もない時間を要する。俺たちの娯楽の場を奪った。お前たちは、殺すに値する人間だ」


瞬間、ブレイガンは空へと手を伸ばし、手のひらの上に巨大な水の玉を形成する。玉は時間を経る毎に大きさを増していき、最終的にはコロシアムの四分の一程度の大きさにまで肥大化した。


そこで彼の功力の正体がわかる。

『大きさと質の両立』だ。通常ならば巨大な能力を具現化した際、その大きさを維持することに脳のメモリを費やし、その質に拘ることには過大な疲労が伴う。


だが、ブレイガンはその過程を功力として省略したことにより、消費する脳のメモリを大幅にカットすることが可能。加えてあのオーラ量。推測するに、この巨大な水の玉もあと数発は作り出すことができるだろう。それが彼の強みだ。


「おいおい、随分と物騒なものを作るじゃねぇか。それであの火を消そうって魂胆か?」

「いや、あの火はとんでもない量の制約に基づいて維持されている。こんな水の玉じゃ、弾かれておしまいだ。だが、お前を殺すことはできる」

「……そいつはどうかな」


言わずと知れたピンチ。しかしながら、ヒビキくんの口元には笑みが浮かんでいた。勝つという自身があるんだ。あれの巻き添えをくらえば私も無事では済まないだろうが、ヒビキくんを信じ、私はその場を動かなかった。


「じゃあな転生者」


刹那、ブレイガンの功力が放たれると同時、ヒビキくんは先程と同じ構えをする。先程と同じ攻撃。否。私の目がそれを否定した。


オーラの流れが百パーセント功力のそれとなり、雷のオーラにて刀の形状を模して功力が構成される。ヒビキくんはその刀を握り、今度は雷と一緒に風のオーラも込め、刀身に二種のオーラを混在させた。


したがって、自然とその威力は上がる。


膨大な質量の水が目前に迫った瞬間、その押し合いは一瞬だった。

ヒビキくんが刀を一気に引き抜き、一太刀浴びせる。結果としてそれは水を綺麗に切り裂き、オーラ化した斬撃がブレイガンの胸を切り裂いた。


血を飛び散らせながら、その場に倒れるブレイガン。水しぶきが周囲に舞う中、ヒビキくんは私へと視線を向ける。

「マイさん。こいつはどうしたらいい?」


私は観客席から飛び降り、ブレイガンのもとへと足を運んだ。既に火の渦は観客席の殆どを飲み込んだ。そして観客席にいた革命家らは自ら飛び込んで焼け死ぬか、グロウドさんとリオナさんの手によって拘束された。


ブレイガンの傍らに立ち、苦しむ様子を眺める。

生かしておくことは危険。そんな考えが私の頭にはある。


しゃがみ、彼の顔面に手のひらを向けた。手のひら上に火のオーラを固める。


彼の表情を見ながら、葛藤を重ねる。

生かす。殺す。生かす。殺す。私の脳裏に、アイの姿が過った。


火のオーラを消去し、私は立ち上がる。

「何故だ」と問いかけるブレイガンに対し、私は答えることはしなかった。


……私は、アイと同じ道を辿らない。

アイとは違う方法で、この常世を誰もが安心して暮らせる場所にする。


そのためにも、彼を殺すことはできなかった。


ブレイガンの止血をしたうえで、オーラによって拘束する。気絶させた後、拘束された他の多くの革命家らのもとに彼を寝かせ、私は功力を解除した。


観客席は瓦礫一つ残さずに消滅。コロシアムが今後開かれるとしても、それはまた何年も後の話だろう。


「……まだやることは山積みかな」

私は一人、ぽつりと呟いた。


    **


地下空間。

ハルと霊の集合体が戦闘をしている最中、集合体の男の傷が治癒せず、そこを中心として崩れ始めた。


「な……そんな馬鹿な……」


最後に悲鳴のような声を上げながら、男は消滅した。寿命の前借りを続けていたハルは、全身に疲労が迸り、その場でへたり込む。


それから上を見上げ、一息吐いた。

「助かったよ。アキサちゃん」

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