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異世界、貴女と笑顔でさよならを  作者: 焼魚
4章:スメラギ家────2

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41話:現代の華

『皆様、大変長らくお待たせいたしました! ただいまより、本日の第一試合、ミズカミ・マイとマツシロ・ヒビキの試合を行います!』


途端、拍手が大きな歓声に変わる。貴族という立場からは考えられないような熱烈な歓声へと。それほどまでに、彼らは人と人との殺し合いを渇望していた。悪趣味な世界だ。


私とヒビキさんは向かい合い、その間に審判として一人の男が立つ。私はちらりと視線を移す。

上ってきた螺旋階段へと繋がる道はシャッターで封鎖されていた。つまり、逃げ道を無くされているということ。ここから先は、逃げ場なしデスマッチの世界だ。


本来、作戦は戦闘の前に開始する予定であったが、少々気が変わった。この男の人から、ユウスさんと似たようなオーラを感じる。つまり、天のオーラと他のオーラが入り混じったようなオーラ。


ただ天のオーラ化のためには、オーラをゼロにした状態で天の能力者から能力を受ける必要がある。オーラがゼロということは、防御力がゼロということ。

その状態で能力を受けると、確実に致命傷を受ける。そしてその傷を負った状態から、起死回生する必要がある。


治療を受けたのだとしても、多少傷は残るはず。彼にはそれが一つも無かった。そしてオーラの流れも、健康体のそれと同様。


話をまとめよう。

私は彼に興味があるのだ。


「マイさん。あんた俺を殺す気ないだろ?」


唐突に話しかけられ、私は少し驚いた。

「どうしてそう思ったの?」

「オーラの流れかな」


……これは驚いた。まさかオーラの流れを読めるのか。ということは彼は脱却を済ませているのか。益々面白くなってきた。


私は彼へと言う。

「正解だよヒビキくん。私は君を殺す気なんてさらさらない」

「……でも、殺される気でもないよな? あんた一体何がしたいんだ?」

「いずれわかるよ」


彼は不審そうな顔を浮かべたが、すぐ近く、審判の男が立っていたため、もちろん大きな声で私の目的を説明するわけにはいかなかった。直後、コロシアム全体にアナウンスが響き渡った。


『選手のお二人は準備をお願いします!』


すると、審判が私らへと話しかけてきた。

「久しぶりだろうから一応このコロシアムにおける戦闘の仕組みをもう一度説明しといてやる」


私たちは暫くの間、彼の言葉に耳を傾けることとした。

「まず第一に、戦闘の形式はデスマッチだ。どちらかが死ぬまで戦闘を辞めることを認めない。時間制限はない。ただ、開始もしくは戦闘の途中、五分以上両者による戦闘が行われなかった場合、俺たちコロシアム運営の人間がお前ら二人を殺す」


そこでヒビキくんが口を挟む。

「そういや、武器の貸出もあるんだったよな?」

「ああ。武器を使いたいのか?」


ヒビキくんは彼の言葉に答えるのではなく、私の方を見つめた。私の意見を聞きたい、というわけか。

「私は使わないよ。ただ、遠慮することはない」


私は、大抵の攻撃ならばオーラの集約のみで防ぐことができる。その分のオーラを攻撃へと利用することもできるし、まずまず私は特定の武器の扱いには長けていない。


「それじゃ遠慮なく。審判さん、俺に盾をくれ」


審判はポケットに手を突っ込み、そこから小さな黒い球体を取り出した。ヒビキくんはそれを受け取り、球体の側面に取り付けられたボタンを押す。するとその球体はみるみるうちに、人一人分の大きさの盾へと変貌した。


推測するに、私がフランさんから受け取ったあの魔道具のような仕組みだろう。


「さ、やろうぜ。マイさんよ」


私は審判の男に視線を送る。彼はその視線より、私たちの準備完了を察した。彼はコロシアム観客席の方向、高い位置に備え付けられた放送席のような場所に座っていた男らへと右手でグッドサインを示した。


途端、アナウンスがコロシアム全体に流れる。

『お待たせしました! 試合開始です!』


再び、観客が沸く。鳴り止まぬ歓声の中、審判はオーラを手のひらで球状に固める。そしてそれを空高く投げ上げた。私は理解する。あのオーラが地上に落下したと同時、戦闘は開始されるのだと。


私とヒビキくんは、互いに戦闘態勢を取る。オーラを滾らせ、互いの一挙手一投足に全神経を集中させる。


オーラの球、地面までの距離、残り六メートル。

五メートル。

四メートル。

三メートル。

二メートル。

一メートル。

ゼロメートル。


瞬間、ヒビキくんのオーラが爆ぜるようにして増大した。私は彼のそのオーラ量に合わせ、ある程度増加させる。これ程のオーラ量ならば、手加減する必要は無い。それに、私の新たな功力も試したい。


私は彼の動向を探るため、一度後方へと飛ぶ。彼は盾を持っている。となれば、正面からの打開はキツイ。功力の旋風での攻撃、あるいは二方向からの攻撃。私としては後者の方が遥かに楽だ。


そんなことを考えていると、ヒビキくんが能力を発動した。彼のメインのオーラは風。したがって、殺傷力のある風を生み出すことができる。


彼が生み出した風は、私の真上、そして正面からの二方向の風。

私は至速の状態にて、彼の風のオーラを感じる。今、ここで私が取るべき選択は、“動かない”ということ。


二方向からの風を具現化できるのならば、普通、上と下、右と左、前と後ろといった程度に、挟み撃ちにするのが自然。だが彼はそうしなかった。つまり“誘導”という策が高確率で彼の脳裏にあるということ。


私は一時的に自身の体全体に炎を纏い、向かってくる二つの風を無効化する。直後、ヒビキくんは私の背後へと回っていた。


……やはり、こうして風の能力者と対峙するとひしひしと感じる。彼ら能力者は移動の際、オーラの集約と並立して自身の体に風の効果を付与する。そうすることで、並大抵の実力者よりも優れた移動速度を手にしている。


これが想像の十倍厄介だ。

確実に当たると思った攻撃さえ、風の能力者の前ではその結果が異なって現れる。


背後、ヒビキくんは両手からそれぞれ風を生み出し、それを回して旋風を引き起こす。そしてそれを私の背中へと直撃させた。

「っ……!」


体全体へのオーラの循環。旋風によって飛ばされたものの、私はかろうじてダメージを最小限に留めることができた。地に足をつけ、両足でその場に留まる。


その間に、ヒビキくんは再び私の背後へ。再び風の能力を発動。吹き飛ぶ私。その先にはまたヒビキくん。


ダメージは最小限に留めているとはいえ、これ以上攻撃をくらうのはマズい。ダメージの蓄積は私が想像しているよりも速く進行している。


吹き飛ばされている最中、私は体全体を覆うオーラを全て火へと変化させた。この状態の持続により、ヒビキくんが直に私の体に触れることを防ぐ。ただ、能力による攻撃は私へと触れる必要は無いし、確実に私に当たる。


そこで私は一つの打開策を試すことにした。吹き飛んでくる私を能力によって攻撃しようとするヒビキくん。私は彼に向け、体に纏っていた火の一端を素早く、プロミネンスのように伸ばした。


そしてその策は見事に彼に刺さった。反射的に彼は私の攻撃を避ける。その隙を、私は逃さない。避けた先に彼を囲う形で火柱の座標を定める。そしてすかさず火の竜巻を起こした。


ヒビキくんは一度小さくしていた盾を再び大きくさせ、高く飛び上がり、下方へと盾を構える。


……確かに、今の私の功力は即席のものだ。発動へのタイムロスは普段よりも多く、威力も拙い。だが初見で看破するには、相当の“目”が必要だ。オーラの流れを正確に読み取り、次の攻撃を予測できるだけの。


私にはその目がある。ただ、この世界に転移してから暫く経つ私よりも早く、彼は能力を覚え、その派生である功力を習得、脱却も済ませたと見える。つまり、彼には私以上の才がある。恐らくアイよりも。


彼は盾を駆使し、私の炎の渦を見事無傷で乗り切った。宙にいる彼に対し、追撃をすることは無い。これ以上遊ぶ必要は無い。そう判断したからだ。

作戦を開始するとしよう。

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