表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/38

25話:盲蛇に怖じず

少し離れ、ユウスとファイ。

彼らは互いに能力を放出しながら、戦闘を繰り広げていた。


オーラというのは六つに分類される。

天のオーラ。そして順に火、土、風、雷、水のオーラ。


この順番はオーラの相性を表している。例えば、風と土のオーラは似通う性質があり、風の能力者は分類付与によって得られる土の能力の威力は、土の能力者のそれの七割程度。


つまり、火の能力者と水の能力者は他の能力者に比べ、分類付与に長けていない。

しかしその分、それなりの利点がある。


彼ら能力者は功力の応用の幅が広いのだ。それこそ天の能力者のように。

故に、功力においての戦闘は、天の能力者よりも火の能力者、水の能力者の方が強者であることもある。


但し、火の能力者と水の能力者の相性は抜群に悪い。


互いが互いに能力を打ち消し合い、かつ能力による有効打も特にない。有効打は、物理的なものだ。

故に、彼らが今能力を放ち続けているのは、その物理的打撃を喰らわせる隙を相手に作るため。


だがそれはあくまで、ただの水、火の能力者に限ることだ。

ユウスがそうでないことは、アイが感じていた通りだ。


そしてそれは、今彼と対峙しているファイも強く感じていた。能力によって、自身の体にほんの少しずつダメージが蓄積されているからだ。


「お前、ただの火の能力者じゃないな?」


彼がユウスに対し、そう訊くと、ユウスは笑みを浮かべた。

「正解」


ユウスは一度彼と話をしたいと思い、一度距離を取り、能力の放出を止めた。そして言う。

「ファイ君……と言ったか。君は『天のオーラ化』という言葉を知っているかい?」

「……いや、知らん」


ファイがそう言ったため、ユウスは天のオーラ化について少し話すことにした。

「オーラが枯渇、若しくは制限しゼロになった状態で天の能力者の能力を受けると、その者の天賦の才にもよるが、その者に天のオーラが芽生えることがある」


語りだし、ユウスは自身の過去について思い返していた。


『昔、政府軍の一員として駆け出しの頃。僕は上層部からの指示により、天の能力者である革命家の殺害を命令された。だが、当時の僕はまだまだ能力者としては拙く、見事にボロ負けしてしまった。そしてオーラが枯渇した状態で革命家の攻撃を受け、インデックスがその後で救ってくれたが、命の危機に陥った。そして起死回生、命の危機を乗り越えると、僕には天のオーラがほんの少しだけ混ざっていた。恐らくは、天の能力者としての才能が無かったのだろう』


「僕はその手段により、ほんの少しだけ、天のオーラが体に混ざっているんだ。そしてそれを、操ることができる」


同時、ファイは衝撃を受ける。

自分には物理的攻撃の手段がないのに対し、彼には天の能力という途轍もない攻撃の手段がある。


その事実が、既に彼の心をへし折っていた。


瞬間、ユウスは天の能力によって具現化する。よく跳ねる“ゴムボール”を。

彼はそのボールを数回リフティングしながら、ファイへと言った。


「それじゃあ、俺は急ぐから」

「ちょっ……ちょっと待っ……」


そしてユウスはボールをボレーシュートの形でファイへと蹴り飛ばした。すると忽ちそのボールの内部に仕込まれた無数の投げナイフがボールを突き破って飛び出し、ファイを襲った。


血を吹き出し、倒れるファイを見てユウスは言う。

「相性が悪かったな。ごめんよ」


    **


遊び場。ヘビの三下たちと、インデックス。


インデックスは相も変わらず、彼らをただのオーラの操作により圧倒していた。

功力は使用しない。


理由としては、彼の功力のその性質にある。


インデックスが戦闘を始めてからたった二分。

その場にいたおおよそ三十の敵が彼の打撃により、意識を失った。


彼らが地面に横たわる中、インデックスは見た。オーラを制限しながら、こちらへと歩いてくる、一人の男を。

濃紺の外套を身に纏い、無造作の髪。目つきはインデックスが出会った人々の中で最も鋭く、尚且つ雰囲気は異様としか形容できないようなものであった。


距離として五メートル程。彼はそこまで歩いてくると立ち止まり、インデックスへと話しかけた。


「こいつら全員、あんたが?」

「そうだ。お前がネウルスか?」

「ああ。あんたは?」

「異世界政府軍のインデックスだ」


インデックスは、続けて提案をした。

「少し話をしようか。革命家……いや、ヘビ統率者のネウルスさんよ」

「話? 俺とあんたが何の話をするって言うんだ?」


そう問われたが、インデックスはその言葉を一旦無視して訊いた。

「何故犯罪を繰り返す?」


ネウルスは答える。

「……俺達は自由だ。好きなことをやって、好きなように生きる。快楽に依存した猿のように、草むらに隠れ獲物を狙う蛇のように。俺が好き好んで命令したわけじゃない。奴らがヘビだったから、犯罪は繰り返されてるんだ。……まあ、今となってはヘビも半壊しているわけだが」


瞬間、ネウルスは睨みつけるような視線でインデックスを見た。

「全国各地に散らばるヘビのメンバー。あんたがやったんだろ?」

「ご名答。どうしてわかったんだ?」

「俺達ヘビは、二週間に一度、全国規模で連絡を取り合っている。そして最近になって、メンバーからの連絡が一気に途絶えた。となればその二週間の間に、誰かが、若しくは何等かの組織が驚異的な速度で戦闘不能に陥れた。そう考えるのが普通だ。……あとは勘かな」


「それもそうか」と、インデックスは割り切った。彼はネウルスへと言う。

「会話を拒んでいるような口ぶりだったが、随分流暢に喋るんだな」

「なにも拒んじゃいないさ。話とは、情報を頭に入れるための一つの手段だ。相手の性格、話し方、好む話題、何を目的として自分に近づいてきたか。また、観点をずらすと、相手のオーラ、戦闘経験、大まかな功力の性質などの情報も得られる」

「ほう? じゃあ俺の功力もわかるのか?」


インデックスは半分以下の冗談程度に、そう尋ねた。ネウルスは彼の体裁を再び見つめ、言う。

「身体の筋肉は極限まで練り上げられ、体に武器を忍ばせているような素振りもない。天の能力によって武器を具現化する可能性もあるが、具現化し、わざわざ戦闘に用いるくらいなら最初からそれを持って戦闘に臨む方が効率的だ。排除し切れないが、武器を用いた功力の可能性はこれでおおよそ潰れた。となると、あと残っているのは本人が直接攻撃する功力か能力を放出する等の攻撃。かつての戦闘においてフェイクとして肉体を鍛えずに直接攻撃をする輩もいたが、明らかにそれは愚策。そのことを踏まえると、確定はできないが、あんたの功力は前者だろう。……いや、前者で間違いないな」


彼の推察は、八割ほど当たっていた。故に、インデックスは顔を顰め、感心してしまった。

彼が称賛するに値する強者であると、痛感してしまったのだ。思わずして、彼は笑みをこぼした。


「勘か?」

「……いや、あんたがそんな顔をしてた」


その時、ネウルスは初めてオーラを制限した状態を解いた。瞬時、インデックスはそのオーラの分類を感知する。

「水二割、土三割、雷五割……ってとこか?」

「ああ。分類としては『毒』という分類だ」


インデックスは初めて見聞きするそのオーラに、些かの衝撃を受ける。

『“毒”……か。くらうとヤバそうだ。彼の能力は避けるのが一番。並大抵の能力者ならばそう考えるだろう』


だが彼は違った。インデックスは自身を異常者だと、以前仲間へ語っていた。


『自分くらいの強さの人間を見ると、恐怖よりも先に攻略法を考える』

『そして最後には決まって恐怖など吹き飛んでいる』

『恐怖よりも強いワクワクがあるから』


インデックスは天のオーラを一気に高めた。そのオーラは、天の能力者ではないネウルスの目にも捉えることのできる程の高密度であった。


それを見て、ネウルスは言った。

「久方ぶりだ。これ程の強者と対峙するのは」


一方のインデックス。

「ああ、俺もお前のような人間と出会うのは、それこそ五年ぶりくらいかもな。期待してるぞ」


両者は笑みを浮かべ、見つめ合う。刹那、両者のオーラがほぼ同時に膨れ上がり、互いが互いのオーラを押し合うという形で彼らの間にあった約五メートルの差を埋めた。


かくして、インデックスとネウルスの戦闘が幕を開けた。

先に仕掛けたのは、ネウルスの方である。


ネウルスは右腕全体にオーラを纏わせ、その拳を、両者間に距離があるにも関わらず、思い切りインデックスの方へと突き出した。すると、その拳の先から細長い形でオーラが彼のいる方向に飛び出していく。


その速度は、彼の拳の速度と同等に見えた。


インデックスは左の拳にオーラを集約させ、ネウルスの放った功力であろうものの方向を直角に変化させた。だがネウルスの功力は彼の腕と接続されており、彼は腕をたわませることにより、功力の方向を再びインデックスの方へと変化させた。


それをインデックスは同じ手段で弾く。そしてネウルスは腕の動きにより再度方向を調整。

両者の攻防が続く中、彼を見てネウルスは言った。

盲蛇めくらへびに怖じず、だな」


その時、インデックスの視界がぐらつく。

瞬時、彼は彼の能力、功力を大まかに理解するに至った。


『ネウルスの功力、恐らく相手のオーラによる補強の有無に関わらず、触れた時点でアウトなのだろう。体全体が痺れ、意識が薄れてきた、……まさかこんなにも強力な毒だなんてな』


アイをも気絶させた毒と同等以上の効力を持つネウルスの毒。それは、インデックスの体をも蝕み、痺れさせるに至らせた。だが、彼は一切動じていなかった。


オーラの集約は、時に回復の手段として用いられることがある。

アイが以前、体内にオーラを飽和させることでジョウの支配から逃れたことがあるように、相手のオーラと自分のオーラとが異なる時にのみ、体内のオーラの密度を高めることにより、相手の能力を一時的に体外へと弾くことが可能なのだ。


アイの功力の一つ「回復のアウトプット」も、分類付与とこの性質により実現している。


インデックスはその手段により、毒の効果を一時的に和らげる。そして不敵な笑みをネウルスに向け、言った。

「次は俺の番だな」


刹那、インデックスのオーラが再び飛躍的に高まった。

視認すると同時、爆風がネウルスの元へ飛んでくる。しかし、ネウルスは彼の表情からこのオーラの量がまだ“最大ではない”ということを感づいていた。


インデックスの纏うオーラは、大きさにして、ネウルスの纏うオーラの約三倍。

オーラの量だけが、人の強さを定義するわけではない。だが、ネウルスには後天的に刻まれたその鋭い危機察知能力により、脳へと内発的に「逃げろ」と信号が送信されたのだ。


瞬間、インデックスは地面を思い切り殴った。ネウルスが驚くのも束の間、インデックスは再び地面を殴る。すると、その威力は一度目のものよりも数段強いものとなっていた。


インデックスが地面を殴る。威力は更に高い。彼は続けた。

計五回、インデックスが地面を殴った時、彼の足元の地面は人一人が立つとその頭部が丁度地面の位置に来るような深さにまで到達しており、拳の威力は初撃とは比べ物にならない程にまで膨れ上がっていた。


インデックスは穴の底で彼を見上げながら言う。

「俺の功力の性質。お前にわかるかな?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ