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第8話

学園長室に入ると、険しい表情をした学園長が椅子に座っていた。


『壱君からはだいたいの事は聞いているよ。君達学園の生徒には申し訳ない。今の段階で言えるのは悪しき者達がこの世界の秩序を乱そうとしているという事だ。そして抗えるのは君達学園の生徒達しか居ないと云う事だ』


『学園長、僕達は(きた)る日の為に修練を重ねて来ました。この世界の為に闘う覚悟は出来ております』


壱が1歩前に出て話す。


『学園長、我等にお任せ下さい!魔物も悪しき者達諸共殲滅致します!』


壱の横で大きな声で宣言したのは真凪。


『この老いぼれた身体で何処まで守れるか分からないが、学園の教員達と結界魔法を今以上に強固にはしておく、この学園を……この世界を頼む』


頭を下げる学園長の姿を壱達は黙って見ていた。


必ずこの学園を、世界を守り抜くと云う熱き誓いを各々が想う。


学園長室をあとにして、向かったのは普通科と特別科の共有する学生ホール。


『あら、薔薇の貴公子の皆様だわ』


『今日も素敵ね』


『こうやって揃っていると貫禄あるな』


『確かにな』


口々に学生ホールにいた学生達は囁く。


『突然ですまないが聞いて欲しい事がある』


私語でざわざわしていたが壱の一声で静寂に包まれる学生ホール。


『この学園の生徒の皆で魔物達を殲滅する為に、近々動いて行く事となった。皆には闘いを強いる事になるが武器を持ち悪しき魔物と対峙して欲しい。この学園と世界の為に僕等と共に闘って欲しい』


壱の声に、黙って言葉に耳を傾ける生徒達。


『何、大丈夫だ!(みな)を戦場に駆り立てるが我等(われら)薔薇の貴公子が先陣を切り必ずや勝利への導き手となろう!』


太刀を天へと向けて豪快に話すのは真凪。


そんな姿を目の当たりにし普通科の生徒も特別科の生徒も互いに頷き合う。


『人族を代表し承ります』


そう言ったのはひとりの普通科の女生徒。


以前湊鵺が助けた事がある白鳥 庵だった。


『魔族に引けを取らない剣技で共に闘うから背中は任してちょうだい!』


紅堂 美沙も以前助けられたからか、快く承諾している。


『名家といえど白鳥家と紅堂家だけに任せられないから俺も人族代表として闘わせて貰うぞ』


美沙の次に声をあげたのは如月(きさらぎ) (あきら)


普通科の高等部の2年生で太陽の寮長である男子生徒。


人族のトップに君臨している一族である。


短めの黒髪に群青色の瞳をしている。


他の生徒達も一緒に闘います、と声をあげ始めた。


この日から学園内では講義を全て中断し、魔法戦闘訓練が開始される事となった。


先生方が中心となって生徒達に厳しく魔法稽古をつけていく。


学園の生徒達は弱音を吐かずに必死に食らいついていた。


先生方に魔法で打ちのめされても立ち上がる生徒達ばかりであった。


その中で薔薇の貴公子達は互いに魔法稽古をつけ合っていた。


『湊鵺!防ぐばかりではこの俺に爪痕も残せぬし、勝つべき者に勝てないぞ!』


太刀と大鎌の刃が烈しくぶつかり合い金属音が鳴り響く。


湊鵺がやや押され気味で、一太刀一太刀を受け流している状態が続いている。


いつもの冷静な湊鵺の表情はそこには無く、その蒼い瞳には烈火の如く太刀を振るう真凪の姿が映し出されている。


『私は負ける訳にはいかないのです!』


大鎌を構え直し、一気に真凪の間合いに入り込む湊鵺。


一切の防御を捨て、最大出力の攻撃態勢に入る。


真凪は一瞬驚いて目を見張るも、口角を少し上げて微笑む。


『良い攻撃だ!』


大鎌の刃を太刀で軽く受け流した。


肩で息をする湊鵺に、良く頑張っているぞ!と褒めて頭を撫でる真凪。


薔薇の貴公子の中では戦闘能力がずば抜けているのは壱。


その次に崇と真凪と悠で同じ位。


その次だと湊鵺と藍が良い勝負。


その次は泰と藤になっている。


薔薇の貴公子の中だと位置づけ的にはこうだが、他の生徒達と雲泥の差がある。


生まれ持った素質と幼少期からの努力の積み重ねである。


『悠、本気で頼むぞ』


『俺が藍相手に手を抜く訳ないだろ!』


悠が手にしているのは錫杖。


『この刃が悠に届くまでは諦めない』


藍が手に持っているのは薙刀。


至近距離で互いの武器が激しくぶつかり合う音が響いていた。


『お互いの凄い殺気を感じる……』


近くでふたりの魔法稽古の様子を眺めていたのは藤だった。


その手には太刀が握られていた。


『藤の武器は太刀だっねぇ……白藤と同じ武器だね〜』


藤の後ろに立つのは泰で細剣を手に持っていた。


『そうだよ、だって遠い()に目の当たりにした白藤の剣技が見事だったからさ』


『目標なんだね〜』


『だから俺達も稽古をしよう』


泰へと振り返ると静かに太刀を構え、やや目つきが鋭くなった。


『じゃあ、藤の御相手をしなくちゃね〜』


にっこり笑い、細剣を構え迎え撃つ体勢をとる。

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