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第4話

『湊鵺程の聖属性魔法を扱える者がこの学園には居ないから困ったね』


うーん、と唸りながら首を傾ける金薔薇の貴公子と呼ばれる壱。


神族と人族の混血ハーフなら扱える者もいるが、湊鵺程の力量の持ち主は在学生の中には居なかった。


今現在で確認されているのは玖皇家の一族が唯一、聖属性魔法を扱えると云う事だけ。


その為、同族であろう魔族からも一目置かれている。


『構いません、聖属性魔法は自分自身に治癒魔法をかけられない誓約があるので仕方が無いのです』


『魔族にしては稀有な聖属性魔法の使い手だからね。でも聖属性魔法を使うと力の反動に耐えきれず身体に負荷がかかるのだから気をつけないといけないよ?』


『特に力が暴発しやすい性質(たち)だからな、湊鵺は』


『少し休めば大丈夫です、心配をかけてすみません……』


『まぁ少しでも休め、夜の警備当番も暫くは代わる』


『崇……』


『どうした』


見つめ合うも。


『崇が優しいなんて薄気味悪いです。何か魂胆が』

『ふざけるな、湊鵺(おまえ)の心配なんかしてねぇんだよ』


湊鵺の頬を思いっきり引っ張る崇。


『ふふ、崇も僕も心配なんだよ?だから今はゆっくり休む方が良いと思う』


『そうですね』


目を綴じると眠ったのか寝息を立てている。


『壱、こいつ危機意識が』


『え?ルームメイトなのに今更気にするの?』


『やっぱり異性(おとこ)として見られて無いのか……』


珍しく落ち込み気味の崇。


そんな馬鹿な……と思うも何も言わない壱であった。


『最近、魔物が活発化しているみたいだから気を付けて警備に当たるようにね』


『確かにな、特別科の連中には警戒させるさ』


眠っている湊鵺の頬に触れると仄かに身体が光る。


『本当はキスしなくても魔力渡せるのに、普段からワザと見せつけてるから警戒されて嫌われるんだよ』


『口からの方が本当は渡しやすいんだぞ、吸血だってそうだ。それに湊鵺が取り乱した表情を浮かべるのを想像すると優越感に浸れる』


悪魔のように妖艶に微笑む。


『崇って最低(クズ)だね。そんな君は嫌いじゃないけれど……』


『まぁ自覚はしてるが。お前よりはマシだろ?』


『何の事だかさっぱり』


『今夜は俺の魔力を何度か渡せば少しは傷も早く癒えるだろうしな』


『そうやって普段も振る舞えば嫌われないのに』


『余計なお世話だ』


そう言いながら目を細めて見つめる先はただひとり。


翌朝、目を覚ますと崇の指先が喉元に触れていた。


『湊鵺、だいぶ回復したようだな』


『ずっと起きてたのですか』


まだ覚醒仕切ってない湊鵺はうとうとしている。


『当たり前だ、何度か魔力譲渡しなければならない状況だったしな』


『え……』


目が覚めたようだ。


『あぁ、魔力譲渡をしたんだ。お前が眠っている間にな』


にやりと底意地が悪い笑みをする。


『眠っている間に勝手に魔力譲渡を……?』


『眠っている間じゃなければお前は抵抗するだろ、まぁ抵抗されても別に関係ないが……なぁ?あんな反応されるとは思わなかったぞ』


『ふざけるな……誰彼構わず吸血する万年常春な崇から施されるなんて最悪以外にも何も無い』


『酷い奴だな、俺とお前の仲じゃないか。お前の身体にはたっぷりと俺の魔力を注いでやったというのに……なぁ?』


彼の言動に顔を赤面してしまう。更に言葉を失う湊鵺。


『湊鵺……ずっと知っていた、お前が』

『ふたりとも、失礼するね』


崇の言葉を遮って部屋に入って来たのは壱。


『湊鵺、体調はどうだい?心配だったんだよ。魔力で回復したみたいだね、良かった良かった』


『壱……お前まさかわざと』

『ん?何の事かな。朝から苛苛するのは良くないよ』


笑いながら崇の肩を軽く叩く。


『あぁ、そう言えばね湊鵺。君のお兄さ……』

『湊鵺!』


ドン!と扉を開けて入って来たのは腰まである銀色の髪の毛を紙紐で纏めてある男子生徒。


瞳の色も髪の毛と同じ銀色である。


彼の名前は玖皇(くおう) (ゆう)


実は青薔薇の貴公子と呼ばれている凄い人物のひとり。


高等部の2年生で玖皇 湊鵺の兄である。


『大丈夫なのか?倒れたと聞いたぞ、兄が傍に付いて居なかったせいで……』


『大丈夫ですよ、崇が魔力を分けてくれて回復し』

『なに、あの万年常春の色欲魔が、か』


『兄弟揃って失礼過ぎないか』


苛苛しているのか肩がピクピク震えている。


そんな様子を大爆笑しながら見ているのは壱。


『まぁ大切な弟を助けてもらって感謝する、ありがとう』


氷の笑みを浮かべる兄。


全くもって感謝していないようだ。


『悠、心配かけてごめんなさい』


しょんぼりしている湊鵺に。


(みや)が無事だったのならそれで良いんだ』


湊鵺の頭を優しく撫でる。


『そう言えば今日は午後から実技演習だけど、大丈夫か?』


『はい、大丈夫です』


『俺も上級生代表で1年の実技演習の監督をするから一緒に行こう』


『げ……そうなのかよ』


『なんだ、崇。文句あるのか?』


氷の笑み再来。


『当たり前だろ、実技演習で毎度氷漬けにするじゃねぇか』


崇の言う通り毎回氷漬けにされる生徒が多数いるのである。


悠は氷属性魔法を扱う。


因みに崇は闇属性、壱は風属性である。


『氷漬けになるような体たらくが悪い』


『悠、やり過ぎじゃないですか……いつも』


流石に弟である湊鵺がフォローするも。


『こいつ弟馬鹿だから湊鵺には手抜きして』

『氷の精霊よ、彼の者を凍てつかせよ……雪氷結(アイシクルフリーズ)


『くっ!』


一瞬で崇の腰から下が氷漬けになっている。


流石の崇も避け切れなかったようだ。


『おや?中途半端だな、もう一度……今度は逃がさないからな』


目が本気である。


『悠!私は大丈夫だから物騒な事辞めて下さい!!』


兄の制服を引っ張る湊鵺。


沈黙が流れるも。


『湊鵺が言うなら構わないさ』


ふふっと笑う悠。


笑い方が壱にかなり似ている。


(みや)を溺愛している(ゆう)であった。


『とりあえず(これ)どうにかしろよ、弟馬鹿』


『はぁ?誰に言ってんだ』


にこにこと笑いながらドス黒いオーラを放つ悠。


出会った時から仲が宜しくないふたり。


『悠……万年常春だけど氷漬けにされたままだと流石に』


『湊鵺が言うなら仕方がないなぁ』


そう言うとパチンと指を鳴らす。


氷が見る見る溶けていく。


『俺のようになれば解除なんて、詠唱なしでいけるぞ?』


『やはり悠は凄いですね』


兄馬鹿なのかも知れない湊鵺。というよりこの兄弟は特殊。


この兄弟のやり取りを暫く黙って見ている壱と崇であった。

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