第13話
湊鵺の浄化魔法により、学園全体を聖なる光が包み込む。
幾つもの光の粒子と、銀色の花弁が舞い続けた。
学園の上空に居た壱は、直ぐに風魔法の盾を解く。
『この聖属性魔法は……』
この力の波動は湊鵺の魔法だと気付き、発現場所へと向かった。
壱が初等部・中等部の棟へ着いた時には仲間と生き残った高等部の生徒達が揃っていた。
『悠達も無事だったようで良かった』
『あぁ、俺達は無事だ。怪我も問題ない』
泰、藍、藤は黙っていた。
『俺と湊鵺は…………』
言葉を濁す悠に壱が首を振った。
『僕たちは仲間だ、君達が例え同じ種族じゃなくても共に闘う大切な仲間だよ』
壱の言葉に藤が口を開いた。
『副寮長は、俺達を信じて無かったの?』
続いて藍も口を開く。
『俺達は仲間だろう……悠』
更に泰も。
『魔族じゃないなんて、長年傍に居れば気付くよ〜』
『勿論、僕らは湊鵺が女の子だって事も薄々気付いて居たよ。ただ理由あっての事だと思っていたから黙っていたんだ』
『あの調子だと白藤も多分知ってるはず〜白銀の双翼を目の当たりにしても湊鵺を護ってるし。何も言わないけど湊鵺を大切に思ってるの伝わるんだよね〜』
泰がにやりと笑う。
『そうか……長年、すまなかった』
もう謝るのは無しで、と仲間達から諭される。
『それはそうと湊鵺の魔法が解けないのは何故なんだい』
壱が悠に訊ねた。
『……更に聖属性魔法を発動させようとしているのかも知れない』
『え……だってもう湊鵺の身体、ボロボロだよ?』
信じられない、と泰が口をはさむ。
『なら俺が止めに……』
『おい、……天凰司、待て!』
間髪入れずに止める悠。
『傍らに白藤が立っているのが見えないのか』
『だから何だっていうのさ……湊鵺が死んだらどうするのさ』
『湊鵺の邪魔をすれば傍らに居る白藤が全て叩き斬るだろう。太刀を携えたままだ』
今の白藤は闇夜月ノ宮の一柱と遜色ない闘気を纏っている。
今は見守るしか無い、と藤を宥めた。
この場には先生方と学園長も揃っている。
が、怪我を負っているのか血塗れだった。
教員棟にも闇夜月ノ宮の一柱と名乗る輩が現れたのだ。
襲撃された同時刻に庵と美沙と晶が偶然だが教員棟に居合わせていた。
直ぐに藍が教員棟に駆け付けた為に大事に至らなかった。
皆、怪我はしたが命に別状は無い。
聖なる光は輝きを失わずに更に強く光を放ち始めた。
光の中心部には白銀の双翼を広げたままの湊鵺と、傍らには漆黒の双翼を広げたままの真凪が太刀を握り締め佇んでいた。
全ての者から湊鵺を護るかのように佇む姿は騎士のよう。
死体魔物を天へと還した湊鵺は、真凪にお願いをした。
“魔法学園に幾重にも結界をかけるから、終わるまでは何人足りとも近付けさせないで”と。
吐血をし息も絶え絶えの中で、必死に懇願したのだ。
真凪は頷いた。
“君の盾となり、剣となろう……安心して任せると良い”
『聖なる光の守護を司る智天使・ケルビムよ、悪しき者から守り給え、聖なる盾の代償なる対価は我、玖皇 湊鵺の心血を注がん……聖天翼光防壁陣』
詠唱すると学園全体を包む光の翼が幾重にも重なりゆっくりと結界を創り上げていく。
同時に空から舞い落ちる光の粒子が、負傷した生徒や先生の傷を癒す。
『何て暖かな光なんだ……』
『傷が癒えていく……』
『これが聖なる力なのか……』
口々に言う生徒や先生達。
怪我を負っていた庵と美沙と晶の傷も癒した。
『玖皇様……貴方にはまた助けて頂きましたね』
庵と美沙は湊鵺に向かい敬意を込め、礼の姿勢をとった。
その姿を見た人族の生徒が庵達と同じように深い礼をする。
学園全体に結界が張り直されると、幾重にも重なっていた光はおさまった。
湊鵺の意識は既に無かったが倒れずに踏みとどまっていた。
銀色の髪も制服も白銀の双翼も自らの血で紅く染まり、口からは吐血、綴じらた眼からも血の涙を流していた。
魔法の反動が大きいのだ。
禁忌魔法のひとつを発動させたばかりでなく、高度な聖属性を付与させた結界魔法を発動させたから。
身体に負荷がかかり過ぎた。
傍らで見守っていた真凪が優しく抱き抱える。
『立派だった、己を誇れ……』
意識が無い湊鵺の耳元で囁いた。
魔法学園はいつの間にか夜明けを迎えていた。
夜明けの空を生徒達は見上げていた。
初等部・中等部の生徒を護れなかった、と。
何の罪も犯していない幼い子達であった。
輝かしい未来があるはずの子達。
犠牲となった者の為にも今後は命を賭して闘わねばならない。
深い哀しみの中でも立ち止まれない生徒達は夜明けの空に誓う。
闇夜月ノ宮と、この世界に巣食う悪しき者を必ず殲滅する事を。
亡くなった者への哀悼と決意を胸に、己の武器を天に掲げる生徒達。




