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外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!  作者: 武蔵野純平
第四章 中級ダンジョン

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第69話(最終話) ロング・ウェイ・トゥ・ザ・トップ

 俺たちはコボルトの追撃を振り切り、何とか鉱山フィールドを脱出した。

 中級ダンジョン一階層から地上へ。

 そして冒険者ギルドに戻ってきた。


 捜索隊に参加した他の冒険者パーティーは、既に戻ってきていた。

 アンのお父さんたちが冒険者ギルドに入ると、ギルド内はドッと湧いた。


「うおお! 生きてやがったのか!」

「心配させるなよ! この野郎!」

「ガハハ! 死に損ねたな! バカ野郎!」


 アンのお父さんたちは、強く背中を叩かれたり、小突かれたりと、冒険者から手荒い歓迎を受けた。

 俺たちは冒険者をかき分けて受付に進む。

 受付嬢のドナさんが、俺を見てニコッと微笑む。


 アンのお父さんは受付で帰還を報告し終えると、冒険者たちに向き直り礼を述べ始めた。


「みんな! 俺たちを見捨てずに捜索をしてくれてありがとう! おかげで娘と再会することが出来た!」


 アンのお父さんがアンをグッと抱き寄せた。

 ギルド内が盛り上がる。


「おう! 娘さんを大事にしろよ!」

「家に帰ったら、母ちゃんも大事にするんだぞ!」


 乱暴だが仲間への愛情がこもった言葉が、冒険者の口から次々と発せられ、冒険者ギルドの中は温度がグッと上がった。


「ユウト君のパーティーが俺たちを救出してくれた。決死の行動だった! 群がるコボルトを蹴散らして、新人パーティーとは思えなかった! ミレット様! ユウト! そして娘のアンに感謝を!」


 アンのお父さんが、アンを抱き上げた。

 アンもお父さんも嬉しそうだ。


 俺は心底ホッとして、隣に立つミレットに気の抜けた声で言葉をかけた。


「無理はしたけど、助けられて本当に良かったね」


「はい。領民を守れて、私も満足です」


 ミレットは誇らしげな表情でアンとアンのお父さんを見つめた。


 受付嬢のドナさんが微笑みながら俺とミレットに寄ってきた。

 ドナさんはキチンとした口調と姿勢でミレットに頭を下げた。


「ミレット様。冒険者の救助に感謝いたします」


「領主一族として務めを果たせたことに満足しています」


 ドナさんは頭を上げると、俺の方を向いた。

 一気に態度が崩れる。


「ユウト! お疲れ~。やるじゃない!」


 ドナさんの態度は非常に気安い。

 だが、それが嬉しい。


 俺は頬を片側だけ引き上げて微笑む。


「結構、ギリギリだったけどね……。まあ、なんとか!」


「そう? 新人としちゃ上出来よ! あら? 表情がイマイチね……。疲れてる?」


「ちょっと無理したから……。腕が上がらないよ……」


「見せなさい!」


 ドナさんは、俺を受付カウンターの椅子に無理矢理座らせた。

 ドナさんが、俺の装備を外そうとするが、痛くて腕が上がらない。


「痛い! ドナさん! 痛い!」


「我慢しなさい! 男の子でしょ!」


 ドナさんは、俺の革鎧をはぎ取り、シャツをはぎ取った。


「ちょっと! ユウト!」


「何ですか! これ!」


 ドナさんとミレットが、俺の体を見て驚いている。

 俺は痛くて首を動かすことが出来ない。


「どうかしたんですか?」


 ドナさんが、眉根を寄せて答える。


「内出血してる……。これは筋が切れたわね……」


「えっ!?」


 筋が切れてる!?

 どうりで腕が上がらないわけだ……。


「スラッシュを連発したからかな?」


「……」


 ドナさんは、無言で俺の肩をなでる。

 ドナさんの手はヒンヤリとして、とても気持ち良い。


「ユウト! よくやった! うん? どうした?」


 今度はタイソン教官がやって来た。

 ドナさんが、タイソン教官に呆れた声で俺の行動を教える。


「スラッシュを連発したんですって! まったく!」


「それで、これか……。随分、無茶したな。必殺技は強力だが、体に負担がかかるのだ。ここぞという時に使うようにしろ」


「わかりました。ちょっと連発しすぎましたね。でも、アンのお父さんたちが助かったから良かったです」


 俺が痛みを堪えてタイソン教官に返事をすると、タイソン教官は目を大きく開き、そして優しく笑った。


「ふ……。そうか。もう、新人とは呼べんな」


 タイソン教官は、腰の道具袋からポーションの瓶を取り出し、俺の肩にダクダクとポーションをふりかけた。


「これは俺のおごりだ。今日はゆっくり休め」


「ありがとうございます!」


 タイソン教官がポーションを使ってくれたので、俺の肩はすっかり良くなった。


「ドナさん。ショートソードが壊れちゃいました。ギルドに中古の剣はないですか?」


「あるけど、有料よ!」


「ああ、今回は赤字だな……」


 俺は服を着て、装備を身につけながらぼやいた。

 するとアンがニマニマしながら寄ってきた。

 ミレットもニコッとしている。


 何だろう?


「ふふん! ユウト君! 安心したまえ!」


 フンス! フンス! とアンの鼻息が荒い。

 何だろう?


 ミレットがニコッと笑って、腰に下げたマジックバッグに手を入れた。

 するとマジックバッグから次々と魔石が出てくる。

 ミレットはカウンターにドンドン魔石を置き、魔石の小山が出来た。


 俺とドナさんは、驚いてカウンターに積み上げられた魔石を見る。


「えっ!? この魔石はどうしたの!?」


「コボルトの魔石です。アンさんが、ちょこちょこ拾い集めて私の所に持ってきたのです」


「ほら、お父さんたちを助けに行った時に、沢山転がっていたでしょ? 戦闘中も倒したコボルトから魔石がドロップしたし。もったいないから拾っておいたの!」


 アンとミレットはドヤ顔だ。


「よくそんなことが出来たな……。アンは意外としっかり者なんだね」


「まあね! これでショートソードが買えるでしょ?」


「ああ! ありがとう!」


 冒険者ギルドでは、酒樽が開けられアンのお父さんたちの帰還を祝った。

 俺とミレットも、ちょっとお酒に口をつけて顔を真っ赤にした。


 誰かが歌を歌い出し、自然と手拍子が始まり、踊り出す者、はやし立てる者、バカ騒ぎが続く。

 外の店から料理が運ばれ、冒険者たちの空腹を満たす。


 俺とミレットは、ホールの空いているテーブルにつき、俺は骨付き肉にかぶりついた。


「ねえ、ユウト。気になっていたのだけど、ユウトは使徒なの?」


「使徒? 神様の使いってこと?」


「そう。ほら、スキルのこと。どう考えてもユウトのスキルはおかしいの。だから使徒なのかなって……」


 ミレットは、真剣な目で俺を見た。


「俺は使徒じゃないよ。スラム出身のただの冒険者さ。ただ、神様からもらったスキルがちょっと特殊で、他の人と違ったスキルの獲得が出来るんだ」


「そうなのね!」


 俺はミレットを見て考えた。ミレットとは一緒に死線を越えた。仲間として、友として、俺のスキルを教えても良いんじゃないか?


「ねえ。ミレット。俺のスキルを教えるよ。他の人には内緒にしてくれる?」


「フフ……。二人だけの秘密ですね?」


「そうだね」


「わかったわ!」


 俺はミレットにスキルを打ち明けた。

 ミレットは驚いていたが、信じてくれた。


「その【レベル1】というスキルのレベルが上がるとどうなるんでしょう?」


 ミレットの疑問に俺は答えを持っていない。

 だが、とても楽しみだ。


 外れスキルだと思った俺のスキル【レベル1】は、まだまだ可能性がある。

 これから俺が冒険者として成長するとともに、スキル【レベル1】も成長するんだ!

 明日からの冒険が楽しみだ!


「ミレット。これからもよろしくね!」


―― 完 ――

◆あとがき◆

お読みいただきありがとうございました!

当小説『外れスキルは、レベル1!』は、コンテスト用に書いた小説です。

今話で完結です。


文字数は十一万文字ちょいでまとめられたので、だんだんコンテスト用に書くことに慣れてきたなと思っています。


反省としましては……、


1 討伐ポイントが複雑で分かりづらかった。

⇒戦略性を出そうとしたが、生かし切れなかった。普通に経験値で良かった。


2 アンのキャラクターがハッキリしなかった。

⇒もうちょっと特徴をつけた方が良かった。例えば、『獣人で差別をされていて、お父さんを助けて欲しいのに、誰も助けてくれない』といった背景設定があった方が良かった。


――と、作者は書き終わって思っております。

よろしければ感想欄に、感想をお願いします。

また、下のボタンから★評価、作者お気に入り追加もしていただけると大変嬉しいです!


次の小説は、既に書き始めています。

『左遷されたオッサン、移動販売車と異世界転生でスローライフ!?~貧乏孤児院の救世主!』

https://ncode.syosetu.com/n7749ji/


こちらの新作も、ぜひ読んでみてください!


どうもありがとうございました!

また、お会いしましょう!

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