第53話 捜索隊
翌朝、冒険者ギルドへ行くとギルド内がザワザワしていた。
いつも通りに出発する冒険者たちもいるが、一階のホールで立ち話をしている冒険者たちもいる。
俺は混み合うホールでミレットとアンを探して合流した。
「ミレット! アン! おはよう!」
「ユウト! おはようございます!」
「おはよう! ユウト!」
二人とも昨日の疲れはないようで、顔色も良いし、声にもハリがある。
ミレットの後ろには護衛のシンシアさんが立っていて、俺が挨拶をすると無言で礼を返してくれた。
俺はホールを見回しミレットに状況を聞く。
「何か雰囲気が違うね?」
「アンさんのお父さんたちを探す捜索隊を募集しているのです。あちこちで参加するかどうか相談しているようですね」
「そうか! 捜索隊か!」
冒険者たちは、かなり真剣に議論している。
俺、ミレット、アンで周囲の様子をうかがってみる。
「探しに行ってやろうぜ!」
「ああ、明日は我が身だからな! 俺は参加するぜ!」
「いや、待て! 気持ちはわかるが、ボランティアだぞ? 金は出ないんだ! 生活はどうする!」
「ウチはダメだぞ! 今日は商人の護衛だ。約束を破るわけには、いかないからな!」
うーむ。
お金の問題や仕事の問題か……。
あくまでボランティア、善意の捜索隊だから、無理強いは出来ないよな。
ミレットは、ちょっと不満そうな顔をしている。
「ねえ、ミレット。仕方がないよ。みんな自分のことで精一杯さ……。人を助ける余裕なんてないんだ。捜査隊に加わりたいと思っても、子供に食べさせるために仕事を休めない人もいるんだよ」
俺がミレットを穏やかに説くと、ミレットはハッとして顔を上げた。
「そう……ですよね……。ごめんなさい。私が世間知らず過ぎました」
「いや、良いんだよ。ミレットの優しいところは大事にして欲しい。仕方のないこともあるとわかってもらえれば……」
ミレットはお嬢様みたいだから、お金の苦労をしたことがないのだろう。
でも、こうして話せばちゃんと理解してくれるところは素晴らしい。
アンがスッとミレットに寄り、嬉しそうに話す。
「ミレット様。ありがとうございます。ミレット様の優しいお気持ちはありがたいです」
「アンさん……」
「さあ! 受付カウンターに行こう! 捜査隊に加わるんだ!」
俺はミレットとアンを促して受付カウンターへ向かった。
受付カウンターに近づくと、受付嬢のドナさんが目ざとく俺を見つけて、人差し指を、クイッ! クイッ! と動かして俺を呼ぶ。
「ドナさん。おはようございます」
「ユウト、アン、ミレット様。おはよ~う。良いニュースよ! 捜索隊の集まりは良いわ。アンのお父さんは義理堅く面倒見の良い人だったから、先輩、同期、後輩の冒険者が志願してくれてるわ。ざっと五十人は出せそうよ」
「「「おお~!」」」
「ただね。そう何日も続けるわけにはいかないから……。わかるでしょ?」
ドナさんは、アンを気遣う。
アンは、真剣な表情でうなずく。
「ええ。お金は出ないから、皆さんをずっと拘束するわけにはいかない……。ですよね?」
「そう。だからタイソン教官が指揮をとって、効率的に中級ダンジョンを捜索するの。アンタたちも捜索隊に加わるんでしょ?」
「「「もちろんです!」」」
「良い子ね~! あっ、ちなみに、捜索隊に加わると、ギルドからの評価が上がるのよ。お給金は出ないけど、評価がアップ! ね? ちょっとお得でしょ?」
ドナさんは、明るくおどける。
お父さんが行方不明のアンを気遣っているな。
俺もドナさんに乗る。
「良いですね~。冒険者ランクを上げて、デカい顔出来るように頑張ります!」
「ガツガツして良いわね~! 新人はそうじゃなくちゃ! じゃ、集合場所は訓練場だから、訓練場へ行ってちょうだい」
「「「はい!」」」
元気よく返事をして、俺たちは訓練場へ移動した。




