第51話 初心者ダンジョン突破認定
転移の魔方陣に乗ると、目の前に七色の光が溢れ軽い酩酊感があった。
クラッとしたのは一瞬で、俺たちは地上に立っていた。
ホーホーとフクロウの声。
月明かりに照らされた木々。
辺りを見回すと、背後にダンジョンの入り口があった。
「ここは……ダンジョンの入り口か!」
五階層から転移した先は、ダンジョンの入り口だった。
ミレットとアンも辺りを見回す。
「行きは大変だったけど、帰りは楽ちんだな」
「そうですね。話には聞いていましたが、転移の魔方陣に初めて乗りました。ラクラクですね!」
「不思議だね~。いや~、戻ってこれて良かった!」
ミレットもアンも、いわゆるオフの気分のようで、口調がかなり柔らかい。
「さあ! 帰ろう!」
俺たちは、城塞都市トロザへ向かって歩きだした。
俺はダンジョンで使った松明を持ち前方を照らす。
「今回、一番活躍したのは、この松明かもしれない!」
「ふふふ、そうですね。松明くん大活躍でしたね!」
「いや~松明さまさまだねぇ~」
俺の冗談に二人が機嫌良くこたえる。
ちょっと歩いたら、前方から灯りが見えてきた。
「冒険者だと思うけど、一応警戒して」
「「了解!」」
俺はミレットとアンに注意を呼びかけ、右手に持った松明を大きく振った。
前方の灯りに向かって呼びかける。
「こちらは城塞都市トロザ所属の冒険者ユウト! ミレット! アンの三人だ! そちらは?」
俺が大きな声で呼びかけるとすぐに反応があった。
「いたぞ!」
灯りが近づいて来た。
灯りはカンテラで、冒険者ギルドのタイソン教官がカンテラを手に持っていた。
後ろには、ベテラン風の冒険者が四人と受付嬢のドナさんが続いていた。
そして、ミレットの護衛シンシアさんが飛び出してきた。
「ミレット様!」
「シンシア!」
シンシアさんが、ミレット様のそばに駆け寄り、ふう~と深く息を吐く。
「ご無事でようございました。お帰りにならないので心配しました」
「シンシア。ごめんなさい。遅くなってしまったわ」
ミレットはシンシアさんに詫びて、色々と話している。
俺のところには、タイソン教官と受付嬢のドナさんがやってきた。
「ユウト! 新人がダンジョンから戻って来ないから、捜索隊を出すところだったのだ! 他の新人に聞けば、オマエたちがダンジョンの奥へ走って行ったと言うし……。あまり遅くまで潜るな!」
「そうよ~。張り切るのは結構だけど、ほどほどにねっ!」
タイソン教官は威圧感タップリに、ドナさんは色っぽいお姉さん口調で俺を叱る。
「ご心配をおかけして、スイマセンでした」
俺は素直に頭を下げた。
俺たちには俺たちなりに理由があってダンジョンに長時間潜っていたのだが、結果、大人たちを心配させてしまった。
事前に行動計画をドナさんに教えておくとか、誰かに声を掛けておくとか、何らか手配が必要だった。
俺たちは城塞都市トロザに向かって一緒に歩き出した。
俺は歩きながらタイソン教官に事情聴取を受ける。
「それで、こんな長時間ダンジョンに潜って何をしていた?」
「初心者ダンジョンを攻略していました」
「そうか。どうだった?」
「突破しました」
「何!?」
タイソン教官が足を止める。
一緒にいるベテラン冒険者も、ドナさんも、護衛のシンシアさんも足を止め、驚き目を見張った。
タイソン教官が野太い声で、俺に厳しく問いかけた。
「ユウト……。確認するぞ。三人で初心者ダンジョンを突破したというのか?」
「はい。時間はかかりましたが、突破しましたよ」
「バカな! あり得ん!」
タイソン教官は、ギロギロっと目を光らせ俺を見た。
俺はすぐに反論した。
「嘘じゃありませんよ! このマジックバッグを見てください! 五階層ボス部屋の宝箱から出たんです!」
「むうう……。戦いの様子を詳しく話してみろ。歩きながらで構わん」
俺たちは再び歩き出し、俺、ミレット、アンがボス戦の様子を語った。
俺たち三人が一通り話し終えると、受付嬢のドナさんと護衛のシンシアさんが褒めてくれた。
「三人とも凄いわね! 初心者ダンジョン突破の最短記録よ!」
「さすがミレット様です!」
タイソン教官が厳かに告げる。
「うむ! ユウト、ミレット、アンの初心者ダンジョン攻略を認める」
「では、中級ダンジョンに入っても良いでしょうか?」
「ああ。立ち入りを認める。だが、明日以降にしろよ? 今日は帰って休め!」
「「「はい!」」」
「あー、それから三人とも……、よく頑張ったな!」
最後にタイソン教官が、優しい口調になり、俺たちを褒めてくれた。
俺たちは誇らしい気持ちで、城塞都市トロザに戻った。
家に帰った俺はサオリママに夢中で話をしたが、急に眠くなりバタンキューだった。





