第44話 レッサートレントを松明で燃やす
通路をノソノソと歩くレッサートレント。
見た目は木そのものなのに、根っこを足のように動かして移動する。
なかなか器用なヤツだ。
「やるぞ!」
俺は振り向いて、ミレットとアンに声を掛けた。
ミレットとアンは、無言でうなずく。
俺は盾を構えて、慎重に距離を詰める。
あと三メートルの距離で、ノソノソ歩いていたレッサートレントが足を止めた。
さらに距離を詰める。
ニメートル。
レッサートレントが、こちらへ向くと同時に枝をムチのようにしならせて攻撃を開始してきた。
ヒュン! ヒュン! と空気を切り裂く音。
レッサートレントの枝がしなりながら俺を襲う。
俺は盾を右、左と動かし、レッサートレントの攻撃を抑える。
レッサートレントの攻撃は一定のリズムで左右交互に行われるので、タイミングを間違えなければ抑え込むことが出来る。
俺は完璧にレッサートレントの攻撃を抑えた。
頃合いだ。
試してみよう!
「松明を!」
「了解!」
俺が指示を出すと、後ろからアンがこたえた。
アンは、俺の真横まで来て松明をレッサートレントに放り投げた。
松明はクルクルと回転して、レッサートレントの胴体に当たった。
ガサガサ! ガサガサガサ!
レッサートレントは、体を揺すって火を嫌がった。
だが、松明の火はレッサートレントの胴体を燃やし始め、あっという間にレッサートレントの全身が炎に包まれた。
既にレッサートレントからの攻撃はない。
俺は盾を下ろして、レッサートレントが燃える姿を眺めた。
「うわっ! 派手に燃えるな!」
「お父さんから聞いた通りだった」
「凄い! アンさん! 凄いです!」
レッサートレントは苦しそうに体を揺すっていたが、火の周りが早くなるだけだった。
レッサートレントは、あっという間に燃え尽きてしまった。
どれだけ乾燥してたんだよ。
レッサートレントが消え、緑色の魔石がドロップした。
今回はドロップアイテムはナシ。
ドロップアイテムがないのは残念だが、被ダメージナシで悪くない戦闘だった。
何より松明でレッサートレントを倒せるとわかったのが大きな収穫だ。
これでミレットの魔力を節約できる。
「良い感じだね! この調子で行こう!」
俺はミレットとアンに声を掛けて、再び通路を駆け出した。




