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外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!  作者: 武蔵野純平
第三章 行方不明

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第37話 三階層レッサートレントとの戦闘

 ミレットの護衛シンシアさんから提供された地図を片手に、俺はパーティーを先導した。

 三階層も今までと同じで、石造りの通路が続く。


 スキル【気配察知】が前方に魔物をとらえた。

 俺は走るペースを落とす。


(いた!)


 二十メートルほど進むと前方に木の魔物が見えた。

 レッサートレントだ!


 レッサートレントはモサッとした木で、体高は通路の天井まで届きそうだ。

 根が足になっていて、ノソノソと根を動かして移動をしている。

 移動スピードは遅い。

 しかし、レッサートレントは枝を左右に伸ばして通路を塞いでいるので、戦闘は避けられない。


(ここは戦うしかないな!)


 俺は足を止めて、ミレットとアンに振り返る。


「いたよ! レッサートレントだ! 避けられないので戦闘する!」


「了解です! 私が魔法で焼き払います!」


 ミレットが力強い言葉を放ち、手にした杖をギュッと握った。


 アンは息を整えながら無言でうなずく。

 アンの目には力がある。

 父親を助けたい気持ちが、アンを支えているのだろう。

 大丈夫そうだ。


 俺は二人に指示を出した。


「俺が前に出る! ミレットは後方で魔法の準備をして! アンはミレットの守りを頼む!」


「「了解!」」


「行くぞ!」


 俺は右手に剣、左手に盾を持ち、レッサートレントへ向かってダッシュした。


「おおおおおお!」


 声を上げてレッサートレントの注意を自分に引きつける。


 レッサートレントが足を止めワサワサと枝を揺らす。

 俺に気が付いたのだろう。

 俺は構わずレッサートレントとの距離を詰めようとする。


「うおっ――!」


 まだ距離があるにも関わらずレッサートレントの攻撃が横から飛んできた。

 レッサートレントは、枝をムチのようにしならせて攻撃を仕掛けてきたのだ。

 俺はかがみ込むことで、レッサートレントの枝攻撃をかわした。

 頭上で空気を切り裂く音が聞こえる。


(ヤバいな……結構威力があるぞ……!)


 俺は足を止めて盾を構える。

 レッサートレントは、俺にめがけて連続で攻撃を繰り出す。


 右! 左! 上!

 左! 右! 上!


 レッサートレントは、枝を腕のように使って、俺に枝を打ちつけてくる。

 俺は盾を使ってレッサートレントの枝攻撃を受け止めているが、遠心力がついた枝攻撃はかなりの威力だ。

 盾越しにビシバシと衝撃が伝わってくる。

 俺は盾に攻撃が当たる瞬間、しっかりと腰を落として足を踏ん張る。


(こいつ……! レッサーというわりに強いじゃないか!)


 レッサーは、『○○より小さい』とか、『○○より劣る』という意味だ。

 目の前のコイツは、トレントよりは劣るのだろうが、攻撃の威力はなかなかだ。

 直撃したら吹き飛ばされそうだ。


(ミレットの魔法は、まだか?)


 俺は、だんだんジレてきた。

 地味に盾を持つ腕が痛い。


「撃ちます!」


 気合いの入ったミレットの声が背後から聞こえた。

 俺はミレットとレッサートレントの射線から飛びのく。


「ファイヤーボール!」


 ミレットの叫びと同時に、真っ赤な火球がバチバチと火を爆ぜながらレッサートレントへ飛ぶ。

 俺が退避する側を火球が通過すると、熱せられた空気が俺の頬を叩いた。


 ドン! と爆発音。


 ミレットの放った火属性魔法ファイヤーボールがレッサートレントの幹に直撃した。


「ブオー!」


 レッサートレントが木をこすり合わせるような鈍い悲鳴を上げた。

 レッサートレントの幹が、ベキベキと音を立てて崩れる。


(完勝だな! ミレットの魔法は強力だ!)


 レッサートレントは、緑色の魔石を残して消えた。

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